※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2023年02月07日

「知的障害者の「親なき後」に関する研究動向と課題」について



伊藤美和,水内豊和,拓殖雅義(2021) 『とやま発達福祉学年報』,12,27-34

 Cinii で「障害者+親なき後」などで検索して出てきた論文のうち、知的障害のある障害者(発達障害、ダウン症、重症心身障害など)に関わる日本語で書かれた文献をレビューしたもの。

 最終的に43本を対象にしています。

 書かれている問題意識はだいたい仕事の中で感じてきていたことだけれど、「言語化」してくださっているのがいいですね。また

「親なき後」と「親亡き後」の違いということは気づいていなかったので、ほほうと思いました。

 良い「親なき後」が過ごせるようにしておき「親亡き後」を迎えるというのが理想なんだろうな。

 自立、そして依存という言葉に対する考え方(定義)の違いや変遷(?)についても触れられています。

 例えば

障害者の自立の定義や考え方について,大野(2019)では親は「ADL自立を自立イメージの基準として考えている」とし,一方で支援者は当事者が自立するためには「当事者自身が意思を持ち,他者とのコミュニケーションをとることが必須である」と考えているとしており,家族と支援者間によっても「自立」へのイメージが異なると言える。

のように。

 で、もちろん「現在、適切に意思表出できる」人だけでなく、「今まで適切な意思表出の手段(もちろん音声言語に限らない)を知らず、教えられず、まるで意思疎通できない人のように思われている人」に対してはどのような年齢であれ地道にいろいろ試していくことが必要になるだろうな。

 なお最後の「IV, 今後の「親なき後」に関する研究の課題」に

第一に研究の対象及び方法についてである。知的障害者本人にもっとも近い家族としての母親の存在の大きさが指摘されている(植戸,2015)が,母親を対象とした研究の数としては十分ではないと言えるだろう。また母親への過度な役割期待を研究が担う危険性も考える必要があるだろう。対象となった親に対して「親なき後」を不安にさせている要因を尋ねるものやそれを解消するための入所施設への思いに対するインタビューが比較的多いが,親なき後に対して過度に不安を感じていない保護者を対象とした研究は見当たらない。障害のある子どもをもつ保護者にとって,不安を全く感じていない保護者はいないだろうが,その中でも過度に不安を感じていない保護者を対象とし,その要因を明らかにすることには,相談場面などの心理臨床において大きな意味があると考える。

とあります。

 この論文を紹介してくださった若い院生さんは「なんで父親は出てこないんでしょう」と純粋に不思議がっておられましたが、まあある程度歳のいった方なら瞬時に「わかってしまう」ことでしょうね。しかし純粋に不思議に思う世代人口が増えて来ると世の中が変わってくると思いますし、ここ 2〜3 年、少しずつ実感できるようになってきています。

 あと、この後半の「過度に不安を感じていない」というのが「必要なだけ不安を感じているが、大きく不安を感じていない」なのか「もっと不安に感じなければいけないのに、気楽すぎる」という意味なのか、日本語の特徴で判然としないのですが、前者だとすると、本当に大事だな、と思いました。

大野安彦(2019)『名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究』Vol.32, 85-105





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2023年01月20日

「『療育』と『支援』の違いについて考える」小川修史(おがっち)先生の講演会



※画像はクリックすると大きくなります。
令和4年度後期あおぞらセミナー.jpg

明石市市民会館で小川修史 (おがっち)先生のセミナーがあります。

主催:明石市立あおぞら園・きらきら

日時:2月11日 10:00 - 11:30
   @「療育」と「支援」の違いについて考える
   A ICT技術のご紹介

場所:明石市民会館 第1・2会議室

下記連絡先から事前にお申込みください。
電話、FAX、メールの方はご応募される際にお名前と人数をお知らせください。
※事前申し込みにご協力よろしくお願い致します。

明石市立あおぞら園・きらきら
〒674-0092 明石市二見町東二見1836番地の1
ふれあいプラザあかし西 2階
TEL. 078-945-0280/FAX. 078-945-0281
E-Mail : aozorakirakira@sandaya.or.jp

申し込み用 QR コードの画像。
QRコード.png

下記から PDF がダウンロードできます。






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2022年07月25日

「くるめさるく」の事件について



 今回の「くるめさるく」の事件、私にはものすごくショックで、しばらくこの事件については、何も書けませんでした。

 6月から始まった歯周の炎症からの発熱と痛み、大学院でどう進路をとったらいいのかの迷走、つい先日のワクチン4回目の副反応による発熱など、睡眠・覚醒のリズムも大きく狂い、気力・体力が無くなっているところにこの事件で、自分の中でいろいろなものが混乱してしまっていました。

 「何も書けませんでした」と書きましたが、実は事件のことには触れず、こうツイートしています。

「2012年に某放デイに行きはじめて、直接支援と同時に、スタッフ研修もしていったのだけど、評判が悪かったのが私が「私のマネをしちゃダメ」とよく言っていたこと。私が「ここまでは大丈夫」と見極めてやってることをマネされると危険なので。安全に穏やかにする方法は伝えていたんだけどね。」

「でも、圧倒的な体力差があってはじめて安全にできることとかもあるので、こちらの体力が弱ってくれば、できなくなる。ほんま小さい頃から学校園などで適切に対応してもらってたら必要の無いことであったりするのだけど。」

 これを書いたきっかけとなった YAHOO!ニュースの第一報は、私には探せなくなっています。そもそも同じ URL でも新たな情報を加えて書き直されているのではないかと思われます。

 その第一報を読んだ時は「また誤解した記事が出たのだろうな」と思いました。

 私はネット上で長瀬さん(記事には最初「長瀬」という名字が出てきて、その後「坂上」という戸籍名が出て来、ネット上では「偽名を使っていたのか。怪しいやつ」というような風評も流れていました。でも長瀬が旧姓というお話をあるところから聞きました。このあたりも夫婦(強制)同姓制度の弊害ですね)

 私はネット上で長瀬さんとも少しはやりとりがあり、「(どういう単語を使われたかは正確には忘れましたが)ホールド(抱きとめ)することもある」というお話はうかがっており、そのあたりを誤解されたのではないか、と感じていました。またそういった時、「いつまでできるだろう。もう体力的に限界かな」とかおっしゃっていたのにも共感を覚えていました。

 私自身のことを書きます。

 例えば幼児さんで、何かで遊んでいる。次は自立課題学習だよ、というのをいろんな手立てで伝える。すると無視するとかならまたいろいろな手を考えますが、明確にこちらを他害しようとしてくる。普段からそうやって意思を通している、という場合。

 さっと捕まえて、課題をやり切らせて「できたね」と褒めて終わる。そして後は自由にしていいし、当然元の遊びに戻ってもいい。

 いつもではないですけど、まあそういう場合もある、ということです。

 これも、本当にやるなら、いろいろ周囲の人に根回しし、段取りや意義を説明したり、本当にそれしか手立てが無いのか、考えるポイントはまだまだあったと今思っています。(私にはできていなかった)

 実際に、課題の量が普段の量設定してあったままやらせて、子どもの負担が大きく、もっと課題量をその場で減らすべきだった、ということもありました。

 いずれにしても、「他害では意思を通すことはできない」というのを、説教したり叱ったりするのでなく理解してもらう必要がある。

 もちろん「こうしたら意思は通るよ」も他の場面でどんどん教えてあげる必要はありますし、人とのやりとりが楽しい場面もいっぱい作っていく必要がありますし、全ては同時進行になります。

 でも、そんなことができるのは、私の場合、小学校低学年から下の年齢のお子さんまでですね。もう今はそれも無理かもしれない。

 また

 これは他害がひどくてある放課後等デイサービスから「来ないでくれ」と言われたお子さんの例です。

 この例で虐待ととられがちなところ。

 一番最初のアセスメントの段階で、他の子に他害に行こうとした時、間に入り壁になって止めました。もう中学生でしたし、背も私とほぼ同じ、止めるのが精一杯でしたので、字義通り四つに組んでわめくお子さんを押し戻したり、また少し引いたり・・・力づくであることに間違いはありません。

 あるスーパーで。毎回外出時には買い物もしました。自分で自分の買い物をひとりでする、という体験は今まで無かったようで、意欲的に取り組んでいました。しかしある時、財布に入っているお金で買えるより多くカゴに入れてしまいました。そこで「お金がこれだけしかないので、何品か返す」ということを絵で描いたり、音声も使って伝えたりしたところ、怒って大声で泣きわめきつかみかかってこようとしました。私は黙って押し返していました。そのうちあきらめたのか、納得したのかわかりませんが2品ほど返して、レジを通りました。その時、店員さんたちは全員私達から目をそらしておられました・・・

 しかし、これもひょっとすると私から伝えるのではなく、店員さんから伝えてもらったら問題無かったかもしれないなあ、とも思います。

 明確な虐待。

 初めての外出の時、横断歩道を渡り切り、信号が赤になったらこちらを見て笑いながら横断歩道を逆走した。そこで私はそのまま車に注意しつつ(停まってくださってました)同じ方向に走りきったところで胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた。

 駅で切符を買い、持たせてあげると破いた。それはセロテープでくっつけてあげ、ダメだよとこれは音声言語で伝えた。帰りにまた切符を買ったが、また破いてニコニコと見せに来たので、胸ぐらを掴んで怒鳴りつけた。

 なお、ほとんど子どもを怒鳴ったりすることは無くなっていたのですが、一応自分で10秒ルール(10秒以内で全て終わり、切り替える)、オープンな場のみ(人の目のあるところでやる)という2つのルールを決めていました。

 しかし、前者は私の位置取り(子どもの前を歩いてしまった)の失敗ですし、前者も後者も「機能分析」を知っていたらやらなくて済んだことだと思います。明らかに「注目」の機能ですから。

 なお、全ては親御さんに伝えています。

 こんな失敗もありつつ、いろいろなところと連携し、1年後はほぼ問題なしに、2年後はまったく問題なしになりました。お子さんの生活もどんどん広がっていきました。その後、私の手からはまったく離れましたが、連携されているみなさんのおかげで順調です。(しかし・・・という後日談はあるのですが、それはまた別の話)

 長々と書いて来ましたが、こういう私ですので、長瀬さんの言動には共感する部分が多くありました。

 また、つい最近も長瀬さんが長瀬さんのセラピーを受けられた親御さんとともに、セラピーの動画を見つつ解説して頂けるという研修も受けていました。

 私はホールドの場面なども見ることができるかな、と期待していましたが、そんなこともする必要はなく、ほんの少しのラポール形成と、その後の頻繁ではあるけれど、小さなプロンプト(手をつないだりはするがあとはちょんちょんと少し触れる程度)であれこれできるようになっていく様子には驚嘆してしまいました。

 もちろん、それ以前の映像も親御さんが見せて下さいましたが、親御さんは既にすごく努力をされ、スケジュール提示も表出コミュニケーションの獲得もしているのに、出てきてしまった行動の多くの問題に疲弊しきっておられる状態でした。

 それが長瀬さんのセラピーを受け、親御さんでもできるようになり、それを学校の先生に伝えて学校でもできるようになっていかれたようでした。いや「何かができる」というようなことではなく「安心して生活できるようになった」というほうがより正確ですね。


 この本の中で長瀬さんは「強度行動障害は5日間(100時間)で改善できる」という題でコラムを書かれています。

 これは「治る」とか「普通になる(?!)」とかという意味ではありません。周囲の人が「どうしていいかわからなくなっている」状態のご本人さんに長瀬さんが関わり、その情報を周囲の人とも共有し、5日間で長瀬さんはフェードアウトし、周囲の人でうまく関われるようになるところまで持っていく、という意味だと私は捉えているのですが。長瀬さんもそう書いておられますし。「治る」とか「普通になる」とかはひとことも書かれていません。

 最初、私はある報道機関から取材を受けたさいに、長瀬さん擁護の論を述べました。ただ法人の女性スタッフが昨年秋に暴行容疑で逮捕された、という点には少しひっかかっていました。

 しかしその日のうちに第2報(かどうかはわからないのですが、確か第1報の段階では書かれていなかったような・・・)が目に入り、結束バンドで手足を縛った、無理やり家から事業所(?)へ連れていった、というようなことが出てき、記者さんに確認するとご本人も認めているとのこと。私は擁護を止めるので取材音声を使用することは止めて頂くことにしました。

 結束バンドで縛るのは誰も許されるものではありません。それって拷問の手段です。また無理やり家から連れて出るって、それは「ひきこもり」の人に対する「ひきだし屋」と同じことをやっています。これも犯罪行為です。

追記 2022.7.25.20:45
 それと「頭に袋を被せた」というのもありましたね。もちろんこれもアウト。
 ただし、あるところからは長瀬さん自身が「認めている」とお聞きしたのですが、別のところからは「認めていない」とお聞きしました。情報が錯綜しているので、まだまだ注視していく必要はありそうです。

 また女性スタッフが暴行しているという動画もどこかで見ました。その様子を見てもうこれはあかんと思いました。

 私はスタッフ指導には気を使っていました。最初の方に書いたツイートの中の

「評判が悪かったのが私が「私のマネをしちゃダメ」とよく言っていたこと。私が「ここまでは大丈夫」と見極めてやってることをマネされると危険なので。」

というような部分です。

 またスタッフが善意で強引なことをしているのを見つけたら、さっと側に行って肩をトントンし、小さな声で「交代」と言って対応を代わり、子どもたちが帰ってから、そういう状況であれば、こう考えて、こういう対応を取ったらいいよ、と説明していたりしていました。

 上司は部下の行動に責任があります。理事長は当然スタッフの行動に責任があります。またこれは推測ですが、女性スタッフは上司(長瀬さんですね)の行動の真似をしていた可能性もおおいにあります。

 「結束バンド」「家から事業所への連れ出し」などはある程度知的に高い触法少年に対してでは、というような話も聞こえてきます。家族の緊急分離が必要と考えられたのでしょう。しかし、対応の中で「本人を大事にする」というのがすっぽり抜けて物扱いになってしまっています。もちろんご家族も大事なのです。しかしまず一番大事なのはご本人だし、もちろんご家族も大事なんだけれど、全部一度にできないというなら、連携で分担することはできます。

 また私自身のことを書きます。

 ある公的機関から不登校・引きこもりの事例に関わってくれないか、という話がフリーランス(何の制度にものっていない)の私に来ました。で関わりだし、外出活動が何回か楽しめました(なお親御さんと私の直接交渉で時給1000円だったかな?)。その公的機関・児相・学校・私の知人・ご家庭と連携し情報共有しながらやっていきました。

 そうこうしているうちにご家庭の内情が分かって来て分離が必要と確信しました。しかし児相も「親から子への身体的虐待」などがあれば分離に動けますが、そんなことはないので動きようはないし、他のところも具体的手立てでできることはないわけです。もちろん事前に里親制度も調べ、私が里親になる手も探りましたが、時間がかかりそう。

 なので「本人の意思で私の家で暮らす」計画をたてました。そして連携先に伝えましたが全員に反対されました。そりゃ普通はそう考えます。
 しかし「では私は手を引くので、この状況をあなたは責任をもって好転させてくださいますか」と言うと黙り込まれます。
 そこで、連携は維持しつつ、私は勝手に計画を進めました。

 今までの外出活動からわかったいろいろなことで「これはできるのでは」というバイトをしてもらいお試しで私の家に一泊しました。その上でずっと泊まりに来ないか、と伝えると泊まると言ってくれました。(なお本人が「泊まらない」と言えばまた別の計画をたてないといけないな、と思っていました)

 私は最長18歳までその状態が続いてもご家族のご負担にならないよう「一泊1000円」で開始しましたが、ご家族が「それではあまりにも少ない」と「一泊1500円」にあげてくださいました。
(なお私への謝礼は制度にのっていないので、一見非常に安くてもご家庭の負担は大きいです。しかもこれは私が年金生活者だからできる金額かもしれない。)

 まあ何がどうなったのか、わかりませんが、土日は帰宅するようにしていたら、そのうち家庭内の問題が無くなって行き、半年ほどで終結しました。
 
 長々とすいません。なぜ長瀬さんが犯罪行為といえるものにまで至ってしまったか。私の推測です。

○長瀬さんは知的に重い自閉症の人たちの強度行動状態を改善しご本人も楽にし、周囲の人も楽にする力があり、ご家族にも感謝されてきた。

○ご家族に感謝されているうちに、ご本人軽視に陥った?(このあたりはよくわかりません)

○連携をいろいろな機関や個人と、情報共有しつつとっていれば、暴力とかまずい対応をした時に指摘してもらえたのではないか。しかし、その本人・家族を含めた周囲にそういう連携(コミュニティと言ってもいいかもしれない)を作り出すことができなかったのではないか。(私は突っ走りますが連携というか報告はし続けます。私は私が一人でやることを信頼してはいません。間違いもするし、下手もうちます)

※しかしこれについては「長瀬さんの仕事なのか?」という疑問は大きくあります。というより、今まで関わってきた学校園・緒機関が専門的支援とともに、連携をとれていれば長瀬さんが登場する必要はさらさらなかったはずですね。

※3日間で100万円という記事内容にいろんなご意見がありますが、じゃあそのお子さんご本人に関わってきた学校園・公的機関の方に支払われた人件費は総額いくらになるのでしょうか?別にそれを減らせとかいう気はありません。しかし同じような額を、少なくとも強度行動障害で知的に重いタイプの人への支援のために安定して長瀬さんに供給するような仕組みがあってもいいはずだとは思います。

 この連携の重要性というあたりは最近集中して読んだ「引きこもり者への CRAFT の適用」 関係の文でも強く感じました。例えば

 この中で山本彩さんはこう書いておられます。

誰のニーズにより、どこが、どんな法的根拠に基づき、どんな支援を行うか、などの枠組み、支援(治療)構造を整える。「何ができるか」だけでなく「何ができないか」もその理由とともに押さえておく。「他機関が助けてくれない」と感じる時は、その機関に関して「何ができるか」「何ができないか」がわかっていない時。
過不足の無い「本人の役割」や「家族の役割」の設定。それらの人々の力を奪う支援計画にしてはならない。

 重要なことだと思います。

 最後に、収監されるのか執行猶予がつくのか、量刑のことはわかりませんが、しっかりと罪を償って頂きたいと思います。
 そしていろいろ考えられ、気持ちが落ち着いて、ご自分で安全に活動できると判断され、再起される時には、幾許かの支援をさせて頂こうと思います。


(でもなあ、「専門性に基づいた支援」も大切なのだけど、「近所のおっさん(私)とかおばはんによる支援」をコーディネーターがうまく使ってくれる、とかいうのもあっていいような気がするのだけど・・・)
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2022年07月18日

『「ひきこもり」から考える』石川良子著





 この本は ひきこもり者への CRAFT の適用について調べていて、CRAFT の改善に対する有効性は(本来の意図通り運用されれば)間違いないとして、論文には改善できなかった数とか、場合によっては危険が大きくて適用をやめた例とかも出てきます。もちろんそこが論文として素晴らしいところです。

 で、じゃあ改善されなかった人に対してはどんなことがいいのか、違った方向の意見も知りたくて読んでみました。

 筆者の石川さんは、松山大学人文学部教授。ずっとひきこもりについて研究されてきた方。筆者は「ひきこもり」という書き方をされ、「 」に「いわゆる」という意味を込めておられるそう。

 筆者は冒頭「本書は支援のあり方について、<聴く>ということに焦点を当てて考えようとするものです」と書いておられます。

 確かに私には半分程度は ロジャース派で言うところの「受容」「共感的理解」「積極的傾聴」「純粋性」の話だなあ、と思って読んでいました。もちろんそんな言葉は出てきませんが。

 最初の方で過去の支援は当事者不在であったが、最近、当事者が声を上げるようになった、というような歴史を書いてくださっています。その例が下で紹介する「UX会議」であったりするわけです。

 このあたりは他の障害支援とも同じですね。って引きこもりは障害ではなく、状態ですが。

で当事者からの「表1 支援批判の内容」に書かれた支援批判が興味深かったです。一瞬「何を甘えたことを・・・」とか思ってしまいそうになるのですが、読み替えて行くと「なるほどなあ」と得心できるといったような部分が多いです。

 当事者が声をだしづらいのは、「ひきこもり」が語るのが難しいものである、ということであり、それだけに聴く態度というか、聴くことの必要性を説いておられます。

 ところが最初の頃、当事者として声を挙げられた方たちは消えてしまわれた、と書かれてますね。どうしても講演会などで人前で話すと迎合的になり、少しずつ相手に合わせようとしてしまうところが出てきて、消費されてしまったのかも、と筆者は書かれています。

 難しいもんです・・・

 あと

「ひきこもる人々は社会的に反抗してひきこもっているのではなく、むしろ『こうあらねばならない』という規範や要請に対して従順であるがゆえに逆に引きこもってしまうということは、これまで繰返し指摘されてきました」

と書いておられのはなるほどなあ、と思いました。

 第7章は「居場所論」なのですが、「居場所への期待も人によってそれぞれ違う」のでいろんな居場所があったらいいよね、というこですね。その直後に筆者も書いておられますが、田舎の方だとそもそもそんな場所が無い、というのが普通なのかもしれない。

 そして支援方法にも言えて、引きこもりの要因もいろいろあるし、本当にいろいろな支援方法が必要なんだろうな、と思います。

 しかし支援者の態度といい、やはり藤里町での実践は参考にする点が多いのじゃないかな。


 勝山実さんの「安心ひきこもりライフ」は2011年に出版されましたが、それ以前の歴史を詳しく書かれています。 





「ひきポス(HIKIPOS)」当事者の声を発信するサイト。


 一般社団法人ひきこもりUX会議というのは当事者団体。
 そこが2019年に調査したものの一部を無料で公開しているのがこちら。


 それに分析を加え書籍化したものがこちら。

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2022年07月10日

自閉症スペクトラムが背景要因のひとつと思われる引きこもり者・児に対する CRAFTB



 次は地域の発達障害者支援センターで行われた、9家族 12名(夫婦揃ってというのが3組。なお1組はお母さん1人にお子さん(成人)が2名)本人10名(全員成人)に対して行われたもの。


※なお、私が読み取れていなかったり、まとめ方が言葉足らずだったりするところは多々あると思うので、興味を持たれた方は是非元論文にあたって下さい。

 まず

「ひきこもり新ガイドライン」(2010)で注目すべきは、ひきこもり状態にある人を
  1 精神疾患が要因 にある群
  2 発達障害・知的障害が要因にある群
  3 パーソナリティ障害が要因にある群
という3群に分け、それぞれの治療方針を薬物療法、発達特性を踏まえた支援、心理的支援を中心に進めていくことが示された点である。

と書かれていますが、日本語、むつかしいですね・・・筆者にそう意図は無いと思いますが、精神疾患→薬物による支援、発達障害など→特性に応じた支援、パーソナリティー障害→心理的支援という読み取られ方をしてしまう可能性がある。それぞれに、(多くの場合は)全部必要だ、という意味で書かれたのだとは思いますが。

 実際の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」では、P24にこういう表が書かれています。
 そこにkingstoneがそれぞれの部分に線を引いてみました。
 ※図はクリックすると大きくなります。

ひきこもりの3分類新.png

 どの場合でも3つとも必要(薬物については使わない場合もありますが)なわけですね。

 対象者の選定についてですが、書かれている内容をkingstoneが表にしてみました。

対象者の選定のみ.png

 相談に来られた本人19名の中で、
 家族からの誘導のみで本人相談可能になった 6名( 32% )
 著しい家庭内暴力などで家族の介入リスクが高い 1名( 5% )
 本人を自宅に留守番させる不安・家族の精神疾患 3名( 16% )
 で10名を適用除外とし、CRAFT 開始を 10名 

と9家族、10名で開始しています。
「家族からの誘導のみで本人相談可能になった」が6名おられますが、やはりご家族が支援センターにやって来られて相談にのってもらい、またいろいろ情報をもらったからこそ、だと思います。ご家族が家の中でじっとしていたら動くに動けなかったんじゃないかな。

で紹介した論文の中でも、山本彩さんも、30名中9名( 30% )が「相談機関を上手に勧めるのみで(本人が)相談に至った」と書かれていましたから、今困っている中でも 30% くらいは少し相談にのって頂けたら動きはじめる方もいらっしゃるんじゃないかな。


そして

(当時)問題行動の発生リスクが高い家族をAグループ、低いグループをBグループと分けられました。

進め方
アセスメント(1回)

・主訴・生育歴の聴取
・スクリーニングアンケートの実施
・日常生活アセスメント票への書き込み
※シート作成により、ASD 特性について理解を深めることも大きな目的

事前セッション

・ASDの理解
・ASDとひきこもりの関連

グループセッション

・全6回(2週間に1回(10週間?))
・1回2時間
・Aは5家族 Bは4家族(本人は5人ずつ)

個別セッション ・月1回(全3回)

・「個別7」は上記個別セッション時に。本人に相談に行くことなどを勧めるため慎重に行うことが必要。結果としてグループセッション6終了後になった。

フォローアップ ・家族の本人への関わり方や、家族のQOL を確認(16週間後)

  kingstoneが Table2 を少し改変したものがこちらになります。
  ※表はクリックすると大きくなります。

グループセッションの内容.png

 グループセッション1回目はオリエンテーション(?)
 グループセッション2回目は「環境調整の視点」も入っています。
 グループセッション3回目は「コミュニケーションの練習」その細かい中身としては
・ポジティブなコミュニケーション(否定的な言い方は関係を悪化させる)
・「Iメッセージ(私を主語にする話し方)」の練習
・スモールステップ
・論理的な話し方
・自己選択の機会つくり
・暗黙の理解の言語化
・会話の視覚化
 グループセッション4回目(上手に褒めて望ましい行動を増やす 褒める練習をしよう)
・TEACCHの「氷山モデル」の視点
 グループセッション5回目(イネーブリングを止め、望ましい行動を増やす)
 グループセッション6回目(家族自身の生活を豊かにする)

 それぞれの回にホームワーク(宿題)が出ます。上の表には簡単に書いています。

 なお、「Iメッセージ」や「イネーブリング」の例は、横浜市のホームページの中のここが参考になりました。


これらのセッションを通して、ご家族がこういうことに気づいて、できるようになっていかれます。

◎介入後の家族の関わりでは、 すべての家族が本人に対して視覚的に、明瞭に、具体的に、そして「ポジティブなコミュニケーショ ン」を利用しながら関わった
◎機能分析により短期的結果と長期的結果を意識することによりイネーブリングに気づいた


結果
本人         10名中
相談や受診につながる 6名
アルバイト開始    1名
改善割合       70%

なお、家族からの誘導のみで本人相談を開始した 6名 と
CRAFT を実施しなかった他の3名を加えると
13/19 で 68%となる

参考 山本彩他(2014)では 21/30    70%

 今回の論文でも、山本さんの論文でも約70%の方に改善が見られたわけですね。
(注。改善は「本人が自分で相談に行く」「本人が自分で社会参加する」の2点のうちいずれか1点ができるようになれば改善としています)

 もちろん30%の方には改善は見られなかったのですが、論文内に家族関係が良くなった様子は書かれています。

 この30%の方々にも継続的に関わっていくのは福祉の仕事になるのでしょう。しかし、もちろんそこに時々でも心理職の方も加わってくだされば福祉職の人への支援にもなるなあ、と思いました。


 ところで、これは私の利益相反「私はおめめどうのフェローです」というのを書いてから述べますが

「すべての家族が本人に対して視覚的に、明瞭に、具体的に、そして「ポジティブなコミュニケーショ ン」を利用しながら関わった」

というの、おめめどうの大きな柱「視覚的・具体的・肯定的」とまとめているのとほぼ同じ。

 また、「自己選択の機会作り」というのも、口を酸っぱくして「選択活動」と言ってる部分。

 そして「イネーブリング」に対しては、「自己責任」「責任をとる」と「(特に思春期以降は周囲は)言われた(要求された)ことだけする」そして「(周囲が何か言いたくなる本人の行動を)見ない」でいけるだろうし・・・

 もちろん、これらはおめめどうに限らず、支援に関わっておられる方には常識だと思いたいのですが・・・


 あと、スクリーニングというのは親御さんが幼児期とかも思い出してアンケートに記述していくのですが、幼児期に気づかれていない方が多い。もちろん「手遅れというのは無い」「いつからだってOK」ではあるのですが、幼児期に気づかれて、「視覚的・具体的・肯定的」に接することができ「選択活動」もいっぱいやり、「責任をとる」ことをさせてあげていたら、ここまでこじれなかったのじゃないかなあ、という残念さは強く感じました。


 なお、「引きこもり者」への対応については、秋田県藤里町の社会福祉協議会の取り組みは有名でした。今はどうなっているのだろう。


週プレニュース(2019年10月12日)
週刊プレイボーイは時々、すごくいい記事が出てます。

2006年からの藤里町社会福祉協議会の取り組み 
2010年 実数調査 総世帯数1300 ひきこもり者 113人
 当時者から悩みを聞いて相談に乗るカウンセリングを始めようとしたのだ。だが、訪問しても悩みを聞くどころか、会うことも困難だった。

「引きこもり者への『相談、指示、助言』はNGにして、情報提供に徹した。具体的には『こみっと(居場所)』のチラシを作って自宅訪問時に配布し、『今後も情報提供に伺っていいですか?』と尋ねる。すると彼らは面倒くさそうではありますが同意してくれて、『もう来るな』とは言わなかった」

(イベントには来ないので)「もしかして、働く場やそのきっかけを求めている?」菊池氏はそう仮説を立て、介護の資格取得にもつながる、ホームヘルパー2級養成研修の情報提供をひきこもり者にもしようと決断。これが当たった。当日、研修会場にはひきこもっていた人たちが次々に姿を現したのだ。菊池氏は仮説が正しかったと確信し、その後は就労支援にも力を入れるようになった。農家や酒屋店主やガス販売店主など、地域のさまざまな職種の人たちを講師に迎え、それぞれの仕事の実務を伝える『社会復帰訓練事業』も始めた。

記事の時点でひきこもり者は 10人 足らず

    (ということは 10人としても、103人は社会参加し始めたわけだから 103/113 91% !!)
(もちろん、この方たちの引きこもっておられた要因は様々で、背景要因が自閉症スペクトラムの場合とは単純には比較できませんが、それにしてもすごい数字です)












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