※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2025年03月24日

スコットランドの大学での視覚的支援に関する家庭訪問支援の試行



「Piloting a Home Visual Support Intervention with Families of Autistic Children and Children with Related Needs Aged 0-12」
「自閉症児および0〜12歳の関連ニーズを持つ子どもの家族に対する家庭視覚
支援介入の試行」
(2023)
Marion Rutherford , Julie Baxter , Lorna Johnston , Vaibhav Tyagi , Donald Maciver
International Journal of Environmental Research and Public Health


 この論文、手に入れたのですが、直接の URL にはたどり着けてません。
 こちらの出してる Jounal にあるわけですね。

International Journal of Environmental Research and Public Health
国際環境研究公衆衛生ジャーナル

 興味を持たれた方は何とか手に入れて直接読んでください。

 少しだけ引用してみます。なお訳は DeepL です。

 論文の要約から

 視覚的支援は、自閉症者や神経発達に違いのある他の人々にとって重要な介入である。
 しかし、視覚的支援へのアクセスは限られており、家庭で視覚的支援を使用するための情報や自が不足していることがしばしば報告されている。このパイロット研究では、家庭を基盤とした視覚支援介入の実施可能性と有効性を評価することを目的とした。


 Introductionから

 本研究が実施された地域(イギリス、スコットランド中部)では、視覚的支援のトレーニングはすべての保育園や小学校で実施されており、視覚的支援はこれらの環境で一般的に使用されている。親の介入、親のトレーニング、自閉症に関する情報も利用可能であるが、家庭での視覚的支援の提供にはギャップがあると家族は報告している。また、親は親の会で視覚的支援について学んだが、その知識を日常生活に移すことは困難であると報告している。

 すげえ!
 「視覚的支援のトレーニングはすべての保育園や小学校で実施されており、視覚的支援はこれらの環境で一般的に使用されている」
だと。
 しかし、肝心の家庭では難しいと。

 日本ではまだ保育園や小学校でも使用されていなかったり、反対されたりすることはよくあるし・・・それだと日本ではまだまだ・・・ということはよくわかります。

 支援は、地域の法律に従い、診断ではなく必要性に基づいて行われる。スコットランドでは一般的に、あらかじめ指定された治療時間数や行動主義的な支援は提供されていない。ニーズや発達段階に応じて、また自然に発生する環境への適応を考慮しながら、普遍的な支援、対象を絞った支援、専門的な支援など、さまざまな支援が提供されている。これには、保健と教育の専門家間の協力的なアプローチ、親を介した介入、親の情報セッション、教育現場のスタッフによるトレーニング、モデリング、コーチングなどが含まれる。
 それでも家庭ではむつかしいわけですね。

 そこで、3〜5回の家庭訪問をして、一緒に課題を考え、視覚的支援物を作ってあげてやってみるといいのではないか、と考えて試行してみた、というわけです。


 適用された原則の部分

1.家族は対等なパートナーである。
2.家族が視覚支援の資料を独自に作成できるよう支援を行う。
3.評価および計画プロセスは、保健および教育スタッフを含む多分野にわたるものであり、親を中心とし、発達および機能に関連するものである。
4.専門家および親が視覚支援に長期的にアクセスできる「時間的余裕のある」支援である。
5.家族にやさしい情報および案内表示が提供される。
6.専門家による支援へのアクセスに柔軟性を持たせ、集中的な立ち上げオプション、立ち寄りセッション、ピアサポート、家庭支援、親のトレーニング、コーチング、モデリングなどを含める。
7.視覚支援に関する専門家のトレーニングと意識向上が含まれる。
8.よく使われるリソースのシンボルセットやテンプレートが、すべての環境で一貫して使用されている。

 子どもの発達段階に応じたリソース

選択ボード
個人用フォトブック
テクノロジーベース(例:コンピュータまたはタッチデバイス
現在/次のボードとシンボル
絵による意思伝達システム
一連の動作のシーケンスチャート(例:トイレに行く
カウントダウンカード(例:あと3回寝たら...
ヘルプカード
参照対象(例えば、食事を表すスプーン) これが「今」私たちがしていること 参照対象
今/次のボードと対象
対象 一日の一部または全部の時間割 歌の象徴(参照対象)
「待って」カード
歌のシンボルブック
視覚シンボルの買い物リスト
1日の一部または全部の視覚シンボル・タイムテーブル1週間または1か月の視覚タイムテーブルまたはカレンダー
「OK/NG」カード
感情(例:感情コントロールの視覚化
ソーシャルストーリー


 どの段階でも利用できる、保護者向けリソース/環境

家庭・学校のビジュアル日記 コミュニケーションパスポート
物の位置や収納場所を示す環境ビジュアルラベル(例:上着の写真)
次の活動への準備や待つことを学ぶための砂時計

 でやってみた結果、29家族(ASD確定診断あり、と診断はまだないがアセスメントを受けている子の保護者)が参加し、親の QOL が有意に改善した、と。

 保護者の感想

 家庭訪問の仕組みは保護者に高く評価された
 保護者は、この介入、特に家庭訪問の有益性、そしてそれが以前の情報を受け取る方法よりも有益であったことについて、強い感情を持っていた。保護者は、子どもをサポートするために日常生活に工夫を加えることに強い意欲を持っていた。保護者は、生活の中で多くのストレスや困難を経験しているが、それにもかかわらず、子どもを支援するために変化を加えることに意欲的であったと報告した。家族は、介入の一環として受けた家庭訪問を高く評価した。
「学校から家庭で使用するためのビジュアル資料を提供されたことはありませんでした。スタッフが)家庭訪問に来てくれて初めて、本当に理解できました」。
「私が気に入ったのは、彼らが戻ってきて、私たちの現在の状況に合わせて、それをフォローアップすることができたことです。」
「保護者会もやりました......誰かが自分の家に来るという体験は、まったく違うものでした」。
「他のビジュアル・サポートの経験とは違っていた。」
 保護者からの報告によると、家庭訪問によりスタッフは家族の状況やニーズをより深く理解し、個々のニーズに合わせた支援を提供することができたとのことです。スタッフは、家族とのやりとりにおいて、前向きで協力的、かつ共感的な姿勢を示していたと見られています。スタッフは適切な質問をし、保護者のニーズに耳を傾け、フィードバックと励ましを提供しました。その結果、保護者は自信を深め、子どもを支援する能力に確信を持つことができました。

 なお、これは大学内の図書館ですが、「図書館のボードメーカー 'Boardmaker in Libraries' 」プログラム(下図参照)にも、家族が「ドロップイン( 'drop-ins' ふらりと立ち寄る、という意味ですが、ワークショップのことかな?)に参加したり、自分で資料(視覚的支援物と思われる)を作ったりできるそうです。
(図はクリックすると大きくなり、もう一度クリックするとさらに大きくなります)
4.41-Boardmaker-in-libraries.jpg


 これ、ボードメーカーという名前は今残っているのかどうかはわからないのですが、(ボードメーカーは Picture Communication Symbol という、日本で言えば Drops みたいなもので、絵カードを作れるソフト) 今は、tobii dynavoxR 社が販売している様々なハード・ソフトに進化しています。


 日本での販売はこちらの tobii というサイトになるのかな。

 で、ここで思うのは、これ、1営利企業の商品なわけですね。堂々と名前が出てる。
 日本でも、おめめどうはじめ、いろいろな支援グッズ・支援ツールを販売しているところを、堂々と論文で紹介や、公的機関での使用などできるようにしたらいいのに・・・

 なお、もちろんこの試みは試行であって、だからこそ論文にまとめられた、ということだと思います。スコットランド中部でも家庭ではうまくいっていない・・・(まあ、保育所や小学校では一般的に使われている、ってのにはびっくりしましたが、それも実際に見てみないとわからない、と思う私ではあります)


この記事を書いたkingstoneの利益相反について

 kingstoneはおめめどうフェローです。
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2025年03月23日

『仏教を『経営』する』蔵元龍介著




 この画像を貼り付けようとして、これは kindle 版ですが、紙のほうでは金額が2倍に達しようかというのがずらずら出てきました。

 2025年2月25日に出たばかりの本なのですが・・・

 それで売れると転売ヤーさんが思ってる?

 
 つかみがすごくいいな。

 著者がミャンマーの上座部仏教の寺タータナ寺院で出家者として托鉢に出た時。いつも布施をしてくれる老婆がぬかるんでいる道に跪いてただ礼拝しているだけだった(つまり食べるものも無かった)。そのことを師僧に相談すると

「出家者としてやるべきことは、あのおばあさんの肩を抱いてあげることではない。自分の背中を通して、世俗的な幸せとは違う、超俗的な幸せを示してあげなければいけない」

 僧が律を守り、出家修行をすることこそが、在家の人々の幸せにつながる、という考え方。

 そして、その対極(?)にあるのが、同じくミャンマーのダバワ瞑想センター。ここには病に倒れた人、薬物依存者、ホームレスその他その他の人がボランティアとともに過ごす。ボランティアは「善行」という原理にそって行動する。また瞑想もおおいに勧められる。

 真言律宗の僧侶でかつ武道家であった松波龍源師が、蔵元龍介さんとも話し合い、檀家を持たない実験的な寺として始めたのが寳幢寺(ほうどうじ)

 いずれの寺も檀家は持たず布施で運営されている。そのあたりが題名にある『経営』ということに関わってくる。

 まずミャンマーの上座部仏教では律をしっかり守れば出家者は「お金に触れてもいけない」それを解決する手段として「浄人」という在家者が金銭を管理するシステムがある。

 そしてこの「律をしっかり守る」というのは人間が生きていれば本来矛盾するというか、葛藤するものであり、古代インドでも仏滅100年頃に十事論争が起き、撤廃緩和を求める修正派と、律不可侵の原則を主張する保守派の論争の中で

修正派→大衆部→大乗仏教
保守派→上座部

に分裂した(根本分裂)ということらしい。

 ところでもともとのミャンマー仏教ではかつては葬儀は行わない。遺体も埋めたり焼いたりはあるけれど、何かそれっきりだったみたい。これは輪廻転生するから古い体には意味は無い、ということだろうか?

 しかし、だんだん葬儀もされるようになり、1990年頃からの葬儀費用の高騰を受けて葬儀支援協会ができた、と。

 日本では資料としてわかっているのは、貴族以外では、平安時代に空也が野原に打ち捨てられていた死骸を集めては1か所に集め、油を注いで焼き、阿彌陀佛の名を唱えて回向していたということだけど。

 で、鎌倉時代の曹洞宗あたりから葬儀の形がしっかりできてきた、というのを読んだことがあります。私などは「葬式仏教」と揶揄されることはあるけれど、葬儀や回向ってのは大事だと思うのだけどね。

 またミャンマーでは社会福祉も低調だったのが、福祉ブームが起こってきた、と。その中で出てきたのがダバワ瞑想センターのような福祉に力を入れる仏教組織なのかな。(そして仏教ナショナリズムも高揚し、ロヒンギャ問題がクローズアップされる)

 寺院経営については、ミャンマーの2寺とも在家組織が運営・管理していて、やる気になれば住職も罷免できる。これは日本でも「檀家組織」があるけれど、実質は寺の中で全てやっているな。

 なお寳幢寺では「日本仏教徒協会」というのを作って、そこが運営していく形をとっているが、まだ道半ばであるらしい。

 発足当時に「布施」だけでやっていこうとしたら、大赤字でえらいこっちゃ状態。説法の会をしても10人、1万円集まれば良いところで、中には「檸檬」が1個入っていたこともあったとか。

  しかし似たような名前の団体がいっぱいある。

全日本仏教会は既成仏教宗派の大同団結した老舗みたい。

日本仏教協会は千原せいじが得度したところだけど、なんかよくわからない・・・

 で、ミャンマーの福祉と言えば、岸田奈美さんの
記事は2019年に書かれているが、写真のキャプションには 2016年11月とある。

にも、この話は「ミャンマーで、オカンがぬすまれた」という題で載ってます。
 この頃って民政の年代だな。
によると
1948年〜1962年議会制民主主義期
(1958年〜1962年軍事クーデター)
1962年〜1988年社会主義的軍事政権
(1988年軍事クーデター)
1988年〜2011年直接軍事政権
2011年〜2021年民政移管
(2016年スーチー政権発足)
(2021年軍事クーデター)
2021年〜現在直接軍事政権
となっている。
 岸田さんが行かれたのは、民政の時代だな。

 基本的にミャンマーの僧(仏教)は律に関心があり、政治にはあまり関心がなかったのだけど


「僧侶がデモをしたので、僧衣の色から「サフラン革命」とも呼ばれる」

 この時、日本人ジャーナリストも射殺されている。

 なんだかんだありながら、岸田さんが行かれた時代は「自由」ではあったのだろうな。


 私も、「行きつけの寺」があれば良いな、とは思っているのですが・・・





posted by kingstone at 15:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 宗教 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月16日

2024東京特別区の総人口と障害児通所支援支給セルフプラン率(ランキング)



 先日、各基礎自治体(特別区市町村)ごとの集計が


で出たので、これをまず Excel のファイルに変換。


 今回は、東京特別区分だけ見てみました。

 まずこの表を得ました。
 (図はクリックすると大きくなり、もう一度クリックするとさらに大きくなります)

特別区セルフ率.png

これをセルフプラン率の少ないものから順に並び替えると

特別区ランキング.png

杉並区  0.00%
品川区  0.40%
練馬区  1.10%
荒川区 15.60%
北区  22.00%
渋谷区 22.10%
江戸川区27.70%
中野区 34.70%
港区  38.30%
葛飾区 44.20%

 私は東京に土地勘は無いのですが、人口によってセルフプラン率が上がる、というものではないですね。

 杉並区、品川区、練馬区あたりの福祉課(局)担当者がどうやったのか知りたいところです。

 それとも、献身的な相談支援事業所が多いのか?

 でもって、21位の千代田区までは神戸市よりマシ・・・


 年度はちょっと違うのだけど


の支援級在籍児童数と比べてみる手もあるな。





posted by kingstone at 16:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

垂水区から西の JR 線沿い自治体推計人口の変化(2024年3月から2025年2月)



 神戸新聞NEXT(Web版)に


という記事がありました。2025年2月1日の推計人口です。

 この播磨町のみ増加というのに「おおお」と思って、似たような記事が無いか調べてみました。

 すると、毎月、神戸新聞に1月ごとの推計人口の変化の記事がありました。

 記事の下にあった同じような記事へのリンクをたどっていくと、上記の記事のように表がついたものと、つかないものがあり、とりあえず、私が見た中で表がついて一番ふるかった 2024年3月1日時点のものと数字を比較して、下のような表を得ました。
 (画像はクリックすると大きくなり、もう一度クリックするとさらに大きくなります)

垂水区から西の人口.png

 う〜〜ん。約1年を通してみると

垂水区 -0.80%
明石市  0.17%
播磨町 -0.47%
加古川市 -0.52%

と、やはり播磨町も減ってますね。まあ垂水区のほうが大きく減ってるし、加古川市より少しまし?誤差の範囲?

さすが、明石市だけは増えてます。



posted by kingstone at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月15日

2024政令指定都市の総人口と障害児セルフプラン率(相関とランキング)



 昨日から障害児通所支援受給者証のセルフプラン率を出していますが、「人口規模が大きくなると計画相談を全員受けるというのは無理があるのではないか(セルフプラン率が高まる)」というご意見を頂きました。

 そこで政令指定都市のまず総人口とセルフプラン率の相関図を描いてみました。
 (図はクリックすると大きくなり、もう一度クリックするとさらに大きくなります)
2024政令指定都市人口セルフプラン率相関.png

 これを見ると、確かに総人口との相関(人口が多くなるとセルフプラン率が高くなる)がありそうではありますが、100万人前後を見てみると、セルフプラン率が0の浜松市があるかと思えばそれより規模の小さい相模原市や岡山市が60〜70%台と非常に悪い。

 これらの都市の条件、あるいは福祉課(局)の動きの違いに着目すると何かがわかるかもしれません。

 また、セルフプラン率のランキングを作ってみると

2024政令指定都市セルフプラン率ランキング.png

上位3位

浜松市 0%
新潟市 0.2%
熊本市 1%

(全部70万都市。このくらいの規模が住みやすいのかな・・・)

下位3位

横浜市 80.2%
札幌市 84.7%
神戸市 88.3%

 神戸市・・・

参考






posted by kingstone at 13:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする