国の借金について
高橋 返す必要なんかねえよ、あんなの。企業は返さないのが普通だよ。
山ロ ですよね。企業活動の目標は、借金を返済することじゃない。金儲けすることが目的なんだから。
高橋 まあ、返さないと言うと怒られちゃうけど、借り換えるのが普通だよね。借金はずっと消えない。貸す側の銀行だって、その企業がずっと借金をしたままで、金利を払い続けてくれるほうが嬉しいんだから。その借金でこんなに立派な工場を建てましたよ、という成果さえ見せれば、「すべて返済しろ」なんて求めないよ。
山ロ だから普通は借り換え、借り換えの連続です。借金を全部返済しようなんて企業のほうが珍しい。ところが、これが国の話になると、なぜか「すべて返済しなきやいけない」という前提で語られてしまう。それを聞いた側も、すべて返済するのが当然かのように聞いてしまう。財務官僚は頭がいいですよ。
高橋 国民をだまそうとしてるんだよ。じゃあ、なんで借金をすべて返したがるのか?もちろん理由がある。さっき国の資産680兆円のうち、貸付金が138兆円、出資金が70兆円と言ったけど、これらはみんな天下り先に流れている金なんだ。
山ロ 各省庁の天下り先への出資金であり、貸付金だと。
高橋 膨大な数の天下り先があるんだけど、なかでも財務省所管の貸付金が突出して多い。これこそ、財務省OBの天下り先が他官庁より圧倒的に多い理由なんだ。国の借金を税金で返済すれば、天下り先の資産や出資金はまるまる残っちゃうじゃない。「借金をすべて返せ」と叫ぶ理由はこれなんだ。借金返済は国民に負担させて、自分たちは他人の金で悠々と老後を送りたいってことだよ。
山ロ 国の借金を全部返したら、いま以上に「天下り天国」になっちゃいますね。いま消費増税にしぶしぶ賛同している人も、こういうカラクリを知ったら意見を変えるんじゃないかな。
高橋 なんだかエグイ言い方になっちゃったけど、もうそれしか合理的説明がつかないんだ。だって、借金をすべて返す理由がないんだもん。実際、彼らが天下り先にいっさい手をつけさせないようにしてるのは事実なんだよ。私も第一次安倍政権で公務員改革をやろうとしたけど、ことごとく潰された。
山ロ 高級官僚が甘い汁を吸いたいがために、天下り先を温存する。
高橋 そりゃ、そうだよ。退職後、特殊法人に2〜3年いるだけで、また数千万円の退職金がもらえるでしょ。いまは監視の目が少し厳しくなったけど、かつては「渡り」といって、特殊法人を渡り歩いて、そのたびに退職金をせしめる輩もいたんだ。絶対に天下り先は減らさないよ。
アベノミクスについての評価
高橋 なんとなく雰囲気で評価する人が多いんだけど、私の場合、全部、数値化なんだよ。だって、「アホノミクス」なんて感情論で批判しても、生産的じやないでしょ。拠って立つデータを提示しないと、議論にならないから。
山口 数字で見れば、アベノミクスで何が変わったか、変わらなかったかが比較できますもんね。で、数値としてはどこを見ますか?
高橋 マクロ経済政策で見るべき指標はふたつしかない。GDPと失業率。このふたつだけ。株価はGDPの先行指標でもあるから、これは株価の評価でもあるし、GDPは国民の所得の合計だから、これは所得の評価でもある。失業率のほうも、べつに就業者数に置き換えてもいい。まあ、別の数字を見てもいいんだけど、とりあえずGDPと失業率で評価する。
山ロ 点数をつけるとしたら、何点ぐらいですかね?
高橋 失業率のほうは満点に近いんだ。いま失業率3.0%ぐらいなんだけど、2.7%ぐらいで完全雇用になると私は計算してるから、ほとんど底に近い。アベノミクスが始まる前は5.1%の時期もあったわけで、劇的に改善している。就業者数で見ると、民主党時代は30万人ぐらい減ってたんだけど、安倍政権では100万人以上も増えている。失業者を最小化することこそマクロ経済政策の目的だとすれば、十分に正しい政策をとっていると言える。
山ロ 失業率はそうですけど、GDPのほうは問題がありませんか?
高橋 GDPのほうはダメだね。政権発足当初は良かったんだけど、消費税を8%に引き上げたせいで失速しちやった。実質GDP成長率を見ると、アベノミクスがスタートした2013年度は2.6%あった。ところが、消費増税後の2014年度はマイナス0.4%と、マイナス成長になっちやった。2015年度は1.3%に持ち直しだけど、それでもまだダメだよね。こっちは40点ぐらいしかつけられない。だから、私の評価としては、GDPが40点、失業率が90点というところかな。財政政策が40点、金融政策が90点と言い換えてもいいけど。
で、確かに自殺率が減ってきてるもんなあ。
これはアベノミクス=金融緩和の成果だろうな。
消費税を上げなければ、もっと経済成長もし、自殺率も減ったのかも。
つぶれちゃいましたが、TPPについて。
でも二国間での交渉も始まるし、同じような条件を飲まされるのかもしれないし、考えどころです。
TPPについて(自由貿易について)
高橋 今回のTPPの条件で計算すると、消費者のメリットが年間6兆円、生産者のデメリットが年間3兆円。つまり、国全体では年間3兆円ぶん得するわけ。当然ながら、損する人は文句を言うよ。そんなの当たり前じやん。だから、損したぶんは補填してあげる。得をする消費者から税金をとって生産者に渡しても、差額の3兆円は残るでしょ。どっちがいいかは明らかだよ。
山ロ 要は再分配の問題ですよね。だけど、どうしても損得の議論まで行き着かないんだよなあ。その前にカーッとなっちやう。もちろん、なかには違う反応を見せる人もいて、実は「TPPでアメリカ市場に輸出できるようになれば、いまより高く売れる」って、ワクワクしている農家もたくさんいるんです。僕は何人も知ってる。カーッとなっちやうのは、アメリカでは勝負できない農家なんだ。
(しかし、こういう言い方をすると、余計にカーッとさせちゃうよね・・・)
高橋 最大限に再分配しても、お釣りがくる。これが自由貿易のメリットなんだ。私も反対論者によく言うのよ。「どんだけ損するか言ってくれ。損したぶんをすべてあげるから」って。だけど、「そんな問題じゃない」とか言うんだよなあ。
山ロ 僕のときは安全問題にすり替えられちゃった。「TPPで得をするのかもしれない
けど、海外の農薬漬けの農産物が入ってきたら、子供たちの健康が」とか言って。だけどね、調べてみたら、日本が認めてる農薬は320種類ぐらいあるんですよ。一方、アメリカが認めてる農薬は60種類しかなかった。
高橋 アハハハハ。日本のほうが農薬漬けだ(笑)。
山口 べつに農薬の数が少ないから安全だと言うつもりはないですよ。だけど、こういうデータすら頭にないのに「国産だから安全だ」と妄信する態度は、かえって危険だと思うんですよね。
「無形資産」あるいは地方へのお金のばらまきについて。
(「ばらまくのが一番いい」ということだそうです。へええ、ですが、これ読むと、なるほど、と思います)
山ロ ベつにバラマキで地方が良くなるんならいいんですよ。でも、逆効果になっちゃってる。例えば秋田県は240億円もかけて立派な美術館を追って、毎年、大赤字を垂れ流し、税金で補填してるわけです。変な建物を造っちやうと、維持管理費は未来永劫、地元が背負わなきやいけない。
高橋 だからね、建てなきやいいんだよ。お金そのものを配ればいいんだ。
山口 僕もそう言ってます。施設って建設費は3分の1で、残りはすべて維持管理費。建てる以上にお金がかかる。だから、地方の豪華なハコモノを、僕は「墓標」って呼んでる。これ以上、墓標を増やさないでほしい。
高橋 変なハコモノを建てるからいけないんだ。そのお金で派手に飲み食いすりゃ、あと腐れがないんだよ。飲み食いなら何回でもできるし。
山ロ そうですよね。何百億円って規模の建物だと、地元の工務店では建てられない。スーパーゼネコンが仕切るしかない。そうすると、地元の建設会社は孫請けぐらいになっちゃって、いくら巨額の予算があっても、地元にはほとんど落ちないんです。一方、飲み食いなら、100%地元に落ちる。
高橋 でね、予算をもらうときに「飲み食いに使います」なんて言ったら通らないから、「無形資産を作ります」って言えばいい。一瞬、何だかわかんないでしょう。そこがポイントなの。研究開発が無形資産の典型なんだけど、知識に投資する。そういう建前にすれば、飲み食いに予算がおりる。
山口 僕も東日本大震災のとき、救援物資を送りたいと申し出てくれた人に、よく言ったんですよ。「そんなことより、岩手県に来てキャバクラで飲んでくれ」と。「君たちがキャバクラでお金を使ってくれたら、それがもっとも有効な支援になるんだ」って。飲み食いなら、地元経済は確実に活性化しますからね。
なお自治体でも財務諸表を作って財務状況がわかるようにすれば、破綻するかどうかなんてすぐわかる、と。そもそもそういう知識というか、金融の知識が無いことが問題、というのも書いてはります。
お二人とも、どん底に落ちたというか、周囲からさっと人がいなくなる経験をされています。
山口さんは会社から懲戒解雇処分を受けて。高橋さんは窃盗の疑いをかけられて。
で、お二人とも、裸一貫になったらどうしようか、と考えた時、山口さんは「農業」(農家の方に「私が食べていくだけならどれだけ田んぼや畑を作ったらいいですか?」と尋ねたら二畝(にせ)でいいと言われたとか)
1畝 99m^2
1反 990m^2
1町 9,900m^2
ってことは約200平方mだから10m×20mくらいの広さか。
高橋さんはマッサージというかまあもみほぐしというやつだな。資格無いし。
そこまで思ってたら、まあ安心立命して暮らせる、ってことか。