※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2023年12月14日

『たった一つの図からやいのやいの言ってみる PISA2022』畠山勝太



畠山勝太さんの


という記事が面白かった。

畠山さんの記事のグラフは横軸が切れているので、こちらにグラフを再掲

※クリックすると大きくなります。それをもう一度クリックするともっと大きくなるけれど、ブラウザの戻る矢印では戻れなくなります。まあもともとの URL を入れればいいだけですが。

スクリーンショット 2023-12-14 13.00.23.png

縦軸が数学の国の平均得点
横軸が1人あたりGDP

畠山さんの指摘は

・カンボジアとベトナムは、経済的格差以上に学力格差は大きくなっている
隣国で、(戦争も含め)影響しあっているのに

・今こそ(凋落した)フィンランドに学べ(GERM汚染)
フィンランドの Pasi Sahlberg さんは、フィンランドが優秀な時代にその分析もしていたが、いちはやく凋落の危険性も指摘していたみたい。
Pasi Sahlberg さんの指摘。Global Education Reform Movement (GERM)に侵され始め、フィンランドの凋落の兆候に言及していた。
※ GETMって、要するに PISA の得点だけにこだわり、一喜一憂するような、そして得点だけを上げにいくような動きのことを言うんじゃなかろうか?例えばアメリカの「落ちこぼれゼロ法案」なんてのも、それに入りがちなもんじゃないのかな。


・カナダとイギリスは移民の子供と非移民の子供の成績に遜色が無い
今後の日本に参考になるのでは、と。

・日本の国民一人当たり所得が東欧と同じぐらい
つまり・・・あまり豊かでは無いってことね







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2022年05月09日

2019年度公立学校で体罰で処分された都道府県別件数



2019年度に文部科学省が体罰の実態把握のための調査をしました。


これをエクセルのデータにして他の統計データと相関をとってみたりしたくて、 Adobe Acrobat DC(Adobe Acrobat)でエクセルの表に変換してみました。

噂には聞いていましたが、めちゃくちゃ神エクセルで、データを抽出しにくい・・・

また都道府県の児童・生徒数との相関をとってみようと思ったのですが、都道府県別児童・生徒数を私が見つけられない・・・(全国集計したものは見つけました)

しかし、やってみて、都道府県・指定都市の公立の学校(小・中・義務教育学校・高校・特別支援学校)での体罰での処分件数は、興味深かったので、こちらにアップします。

結局、.csv ファイルにしてお見せするのが一番見やすいだろうと思い、csv ファイルをコピペします。

これだったら、テキストエディタにコピペして、拡張子を .csv にして保存してもらえば、そのまま表計算データとして使えるし。

また、データをダウンロードしてもらう時もウィルスに汚染されることもない(ですよね?)からデータとしてもリンクを貼れるし。

ということで、以下のようなものです。



都道府県・指定都市の公立の学校(小・中・義務教育学校・高校・特別支援学校)での体罰での処分件数

※元データのセルが空欄になっている部分には0を入れました。(入れなくても良かったのかな?)

都道府県指定都市,発生件数(公立),発生件数のうち特別支援学校分,,
1 北海道,11,0,,
2 青森県,15,0,,
3 岩手県,5,0,,
4 宮城県,7,0,,
5 秋田県,0,0,,
6 山形県,2,0,,
7 福島県,2,0,,
8 茨城県,9,0,,
9 栃木県,5,0,,
10 群馬県,7,1,,
11 埼玉県,19,2,,
12 千葉県,9,0,,
13 東京都,19,1,,
14 神奈川県,12,0,,
15 新潟県,9,0,,
16 富山県,2,0,,
17 石川県,6,0,,
18 福井県,1,0,,
19 山梨県,0,0,,
20 長野県,7,0,,
21 岐阜県,9,1,,
22 静岡県,6,0,,
23 愛知県,10,2,,
24 三重県,11,1,,
25 滋賀県,3,0,,
26 京都府,3,0,,
27 大阪府,21,6,,
28 兵庫県,34,1,,
29 奈良県,0,0,,
30 和歌山県,3,0,,
31 鳥取県,5,0,,
32 島根県,0,0,,
33 岡山県,1,0,,
34 広島県,15,0,,
35 山口県,7,0,,
36 徳島県,2,0,,
37 香川県,4,0,,
38 愛媛県,1,0,,
39 高知県,2,2,,
40 福岡県,14,1,,
41 佐賀県,9,1,,
42 長崎県,17,1,,
43 熊本県,8,1,,
44 大分県,10,0,,
45 宮崎県,10,0,,
46 鹿児島県,18,0,,
47 沖縄県,17,0,,
48 札幌市,8,0,,
49 仙台市,8,0,,
50 さいたま市,3,0,,
51 千葉市,4,0,,
52 川_市,3,0,,
53 横浜市,8,0,,
54 相模原市,0,0,,
55 新潟市,2,0,,
56 静岡市,0,0,,
57 浜松市,2,0,,
58 名古屋市,4,1,,
59 京都市,2,0,,
60 大阪市,63,0,,
61 堺市,3,0,,
62 神戸市,4,0,,
63 岡山市,4,0,,
64 広島市,2,0,,
65 北九州市,11,0,,
66 福岡市,2,0,,
67 熊本市,30,0,,
合計,550,22,,

都道府県で一番多いのは兵庫県の 34件。
それに神戸市の 4件 を加えると兵庫県全体で 38件。

しかし、大阪市は 63件 でそれをも上まわっています。

でも、これは、大阪市がまじめにやっていて、他のところがあまり体罰の報告が上がってくるシステムになっていないからかもしれない。

あと体罰の認識がそもそも無かったり・・・

下から .csv ファイルをダウンロードすることができます。


posted by kingstone at 11:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月26日

ゼロ・トレランス施策について



 アメリカのゼロトレランス施策(寛容性ゼロ施策)について。

片山紀子(大阪女子短期大学)
比較教育学研究第30号 2004年

現在(2004年)アメリカで行われている懲戒処分

タイムアウト(Time-Out)
早朝登校/放課後の居残り(Detention)
学内停学/学外停学(In School Suspension/Out of School Suspension)
オルタナティブスクールへの一時的転学、退学(Expulsion)

(タイムアウト以外は日本でもよく行われているだろうな。しかし、このタイムアウト、ABA で定義されたタイムアウトとは違うだろうな・・・一部は機能として同じになることはあるけれど)

 よくある対応。問題行動を起こすと所定の用紙に記録。その日のうちに校長、副校長に面接に行かされる。尋問(!)の後、過去の履歴も鑑みて処分などの判断がくだされる。(これが ORS システム)

 で、どのような子どもが懲戒リスクにさらされているかというと、

男   > 女
貧困  > 貧困でない
有色人種(特に黒人)> 白人
障害児 > 健常児

 しかも銃器持ち込みや破壊、落書き(あの街の中に大きく描かれたタイプの落書きだろうな)などは少なく、より小さな違反行為に対するものが多い。

(日本の校則違反みたいなものか・・・日本の校則違反の取締も「不服従」の観点からされているような気もするし)


1989年カリフォルニア州のオレンジ(Orange)郡やケンタッキー州のルイビルLouisville)学区で、ドラッグの使用があった場合やギャングに関連する活動に参加した場合に退学を求める政策として公表されたことに始まる

1994年の「学校における銃規制法:Gun-FreeSchoolAct」制定によって公的に承認され、公民権局も全米の各初等・中等学校を対象とした調査でゼロ・トレランス政策を根拠に退学した生徒数を問うなど(30)、アメリカでは周知の施策となっている。

全米一般に、ゼロ・トレランスという厳格な施策を確立し実行したことによって、問題行動が激減した結果、規律が向上し、学習環境が整ったといわれている。

 しかし、著者は「6. 懲戒に求められる新しい視点」で

 懲罰的な懲戒の対象と見るのか、教育のチャンスと見るのかで、違いが出てくるのではないか、と書いている。


伊藤秀樹(東京学芸大学)
日本教育学会第76回大会 (2017)

ゼロトレランスの理念は2006年に国立教育政策研究所の報告書でその意義が報告されて以降、賛否両論を巻き起こしながら全国の学校に普及していった。(結構、最近?しかし1990年代からアメリカで普及していってたということなら、もっと早く紹介されてそうなもんだけど)

(で、対抗言説を主張する人たちは、教育困難校などの教師がゼロトレランスを指示する言説に回答できていない、というのが著者の主張かな。しかし対抗言説と、教育困難校の課題解決は、並立できそうな気がするのだけど・・・)
posted by kingstone at 00:33| Comment(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月26日

「アメリカで“警官の黒人殺害”がこれからも続くと言える「構造的理由」」 を読んで





 畠山さんは、2017年8月よりミシガン州立大学教育大学院、教育政策・教育経済学コースの博士課程に在籍中で、現在もそれ以前も世界中で様々な実践をされている方です。


 ジョージ・フロイドさんが警官に長時間喉を膝で押さえつけ続けられて、殺された事件から警察改革の掛け声が大きくなったことから

そこで今回は、教育改革の見地から、ジョージ・フロイド正義法を中心とする警察改革の問題点を指摘しつつ、教育改革とジョージ・フロイド正義法に共通する問題点から、アメリカの構造的人種間格差が解消される見込みが薄い理由を解説していく

という問題意識で書かれています。

これらの警察改革のポイントをまとめると以下の6点になる。

(1)警察の武器取得・使用の制限
(2)警官への人権研修の実施
(3)警察の仕事を肩代わりできるような地域社会の創出
(4)これまでバラバラだった警察の活動基準に対してミニマム・スタンダードを制定
(5)警官の職務上の免責を制限しつつ、アカウンタビリティを果たさせるための組織作り
(6)アカウンタビリティを果たさせる手段として、警察の武器使用に関するデータベースを整備する


ということなのですが、これらが今までの失敗した教育改革と同じである、と。

(1)クリントン政権からトランプ政権に至るまでの教育改革の一つの肝は、これまで教育の役割を一手に担っていた教育委員会(警察)からその権限を引き離し、州政府・市役所・私立学校・チャータースクールなどにその権限を担わせようとした(警察の仕事を肩代わりできる組織作り)

 う〜〜ん、単純に学びの多様性ができるのはいいことかと思っていた。
 しかし「お金をケチるため」というねらいでやると、どんどん「いい学びの場が減る」「格差が広がる」という結果になるんだろうな。

 また第一感として、相手の人権を抑制する機関としての警察権力は他に渡してはいけないんじゃないか、というのは強く思うな。

(2)オバマ政権におけるコモン・コア・スタンダードの普及(警察活動のミニマム・スタンダード)

 コモン・コア・スタンダード というのは初めて見る(?忘れてるだけか)言葉なので調べてみると


 なるほど。
 学習指導要領みたいなもんか。

(3)ブッシュJr.政権のNo Child Left Behind法・オバマ政権のRace to the Top法において、教員・学校はテストの成績においてアカウンタビリティを果たすことを求められた(警官のアカウンタビリティ)

 No Child  Left Behind法ってのは「落ちこぼれゼロ法」だな。

 私が「おちこぼれゼロ法」に関連して書いたエントリ。





 でもって、第一感としては、「テストの成績」を説明責任の証拠としてもってきてはいかんやろ。

(4)オバマ政権はRttT法の中で、教育に関するデータベースの整備を求めた(警察・司法内でのデータベース整備)
 
 これは?
 しかし、教育に関してはデータベースに入れるデータとして、何が適切か、ってのは大問題だよな。


「問題は資金が足りないこと」という見出しのところで

K-12教育も警察も、欠員を補充できない、低賃金で雇用せざるを得ない、パートタイム雇用に頼らざるを得ない、という状況が広がっている。

 K-12教育というのは、日本の小学校から高校の教育にあたる。

 しかし・・・日本でも教育はパートタイム雇用というか「非正規」の講師が増えているけれど、警察はそんなことないよね。
 警察でパートタイム雇用って、よりやばいんじゃ。

人材の話は追って詳述するが、教育改革においても、資金不足が問題なのか、それとも資金の使い方が問題なのかは、長らく議論の的となってきた。


 あっ、「使い方の問題」もあるのか。
 しかし、もともとの「資金の絶対量」が少なければ、どっちもダメになるよな。


 この論文によって、

この研究は、貧困層においては教育資金不足が問題だということを明らかにしたのみならず、幼児教育の資金が増えるとK-12教育の効果が増加し、K-12教育の資金が増えると幼児教育の効果も増加するという相互補完性を発見した点が重要である。

とのこと。

「人権研修か、警官養成か」の見出しのところ。

教職研修も、教員養成も、英語では「training」と表現され、前者は「in-service training」、後者は「pre-service training」である。そして、研修と養成ではどちらが重要かと言われると養成の方だ。

 で、


によれば

(1)教員は自分が生徒の時に受けてきた教育経験から、こうあるべきという教育像を持っている
(2)養成段階で受けてきたこうあるべきという教育像を持っている
(3)日々教室で実践してきたことから、こうあるべきという教育像を持っている

という、養成前・養成中・養成後の三段階に渡ってすでに作り上げられた教育像を持っており、これから大きく外れたものを今さら受け入れられないということが挙げられる。


ってことですが・・・

 だとすると「特別支援教育」はどうなる?

 過去においては「特別支援教育(障害児教育)」を受けて、そのイメージをもって教員になった人はいないだろう。

 現在そして未来は出てくるかな?

 現場ではもともと発達障害をもった教師はいただろうけれど、その方たちはいわゆる「特別支援教育」は受けてはいない。

 でもって、私の周辺で、「いい仕事をしているなあ」と思う人たちは、私を含めて多くは「診断は受けていないがスペクトラムの色は濃い目」の人なのだが。

白人の子供は白人の子弟のみが在籍する学校で学び、黒人の子供は黒人(+ヒスパニック)の子弟のみが在籍する学校で学んでいるのがアメリカ国の実情である。大学段階になり、初めて白人・黒人が相対することになり、全くもって不十分としか言えないが、異なる人種の人たちとやっていくことを学んでいく。

 なので、そもそも相手の背景に実感や背景が考え及ばない、ということなのだけど、これはインクルーシブ教育に関連してくる話だな。

 しかし、私は「養成」にはあまり期待していなくて、現場の OJT や研修がおおいに必要という意見を持っているのだが。

警察改革法案の中心ともなっている「アカウンタビリティ」という概念は日本語にしづらい。「説明責任」という日本語訳が当てられているようだが、誰が誰をどういう理由により吊るし上げられるか、という4要素からアカウンタビリティは成り立っていると私は考える。このため、日本語一語でこれを表すことは難しい。

 あっ、これは目からウロコだ。

 「誰が誰をどういう理由により吊るし上げられるか」か・・・

 そう言われれば・・・というやつだな。

 しかし、フィンランドのパシ・サールバーグ氏の見解

かつてのフィンランドでは、教員は地域社会の中で信頼されていたので高いパフォーマンスを発揮していたのに対し、アメリカ(・イギリス・世界銀行)は、教員が信頼されておらず、アカウンタビリティで吊るし上げざるを得ないため、高いパフォーマンスを発揮できずに学力的にも低迷している(そしてそれが世界銀行を通じて途上国にも広がっており、「Global Education Reform Movement: Germ」を通じてフィンランドにも侵食してきたため低迷し始めた)。


しかし、氏の議論で興味深いのは、信頼の重要性もアカウンタビリティの枠組み内で捉えることが可能だという点である。


 「信頼」とは「専門家同士の切磋琢磨」

 なるほど。

実は、これはかつての世界に誇る日本の教育にも存在していた。地域社会の名士であった教員は、修養概念に支えられ、子供たちにより良い教育・授業を届けるために自主研修という形で切磋琢磨し合うことが広く見られた。

 だよなあ・・・

 何か、いろいろなことが「高度」になり、却って教員の自由度が減り、余裕がなくなって自主研修ができなくなっているような・・・

 しかし著者は今後については楽観してはるとのこと。

 理由は

 1.バイデン大統領がプロテスタントでなくカトリックであること。
 2.大学でも人種問題に取り組み始めていること。

だって。

 1.はへえええ、だし、2.は「まだ取り組んでなかったんかい!」と思ってしまう。

 じゃあ、日本はどうしていったらいいのかな。
 特に特別支援教育分野は。








posted by kingstone at 11:17| Comment(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月30日

2020年 玉川大学 教師教育フォーラム 12月13日(日)オンライン




 申し込み締切りは 12月10日(木)


 チラシ画像。
 ※クリックすれば大きくなります。
 ※下にダウンロードできるリンクもあります。

教師教育フォーラム表.jpg
教師教育フォーラム裏.jpg


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