I. はじめに(経緯)
2004(H16) 強度行動障害支援事業開始
2013(H25) 厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)」開始
千葉県ではグループホーム建設・運営の補助事業開始予定
11.26 千葉県養育園事件(利用者を支援者が蹴り殺した)
検証委員会は養育園の定員を半減させ、地域に戻すよう提言。
しかし入所施設の70.8%、グループホーム68.1% が受け入れられないと回答。
受け入れに必要な「空き」と「対応できる職員がいない」という問題。
千葉県は体系的な研修事業を始めることが以前より決まっていた。そしてこれらの経緯を受け、千葉県独自の事業としてより高度な人材養成研修として始まった。
II. 目的
「受講者の行動変容を介して、支援にあたるチーム全体(所属事業所)の行動変容を目指す。」
III. 方法
対象者
障害児(者)入所施設、生活介護、生活共同援助の職員16名
行動障害のある方への支援経験5年以上
支援計画立案や勤務調整ができる立場の人
期間
1年間で、30日間以上
(すごい!!これだけの日時を福祉事業所が捻出するのはたいへん。でも学校だと福祉事業所より簡単に捻出できるはず。1年間内地留学させることと比べたらどれだけ簡単か)
研修の内容
「受講者はあくまで支援チームの代表であり、受講者が所属する施設の利用者(モデル事例)に対して、研修で学んだことをチーム全体で実践することを課題としている。受講者には、支援に従事する全員が理解して、実践できる支援計画を立案し、一貫した支援を提供できるように、チームをマネジメントしていくことが求められる」
(すごくいい。ちゃんと現場で実践することが義務になっている点。これが無いと「ええ話聞いた」で終わってしまう)
「実践の最後には公開報告会を開催する」
(300人以上の参加申し込みがあるそう)
(これもいい。効果のあった実践を他の方から褒めてもらえれば継続へのすごいモチベーションになるし、見に来た方は「あっ、こんな方法があるのか。私もこの研修を受けてみたい」、と思ってもらえるだろうし)
様々な図や表
※クリックすると大きく鮮明になります。
図3 研修の構成
図4 モデル事例検討の構成
表1 受講者とモデル事例検討対象者について研修前後に測定した尺度
表2 支援に関する受講者の自己評価アンケート
(これを見ると、「私はできるようになった」と自己評価が5点満点で約1上がっていることがわかります。)
基礎統計量
平均 実施前 2.78 実施後 3.73
中央値 実施前 2.8 実施後 3.7
最小値 実施前 2.4 実施後 3.4
最大値 実施前 3.2 実施後 4.0
t検定結果 p値 = 6.843e-08
表3 事前事後の評価
(このグラフの「C実施した項目数」を見れば、今までどうやっていいかわからなかった部分に「こうやったらいいのかな」と介入できた部分が増えたことがわかります。「D行動関連項目」では問題となる項目が減り「E行動障害の評価尺度」では頻度も重症度も下がったことが見てとれます)
最後の表ですが、こういうの本当に変化があったのかT検定をするのかもしれませんが、「そんなんせんでも見たらわかるやん」と思ってしまうのはダメなんだろうか・・・
と言いつつ、「対応のあるt検定」を R を使ってやってみました。
ってかエクセルで csv ファイルを作って、R に入力しただけですが・・・
「C実施した項目数」
基礎統計量
平均 実施前 10.94 実施後 13.25
中央値 実施前 12 実施後 13
最小値 実施前 1 実施後 8
最大値 実施前 18 実施後 18
t検定結果
自由度 = 15 (これは n = 16 だから1引いて15になる)
p値 = 7.882e-05
これでわかるのは「実施前より実施後に介入できるようになった項目が多くなったのは、偶然でなく明らかに違いがあるよね」ってことですね。
e-05 っていうのは、7.882 の10の5乗分小さい、つまり小数点を5個左にずらす(0.00007882)ということで、5%でもなく1%でもなく、もっともっと小さいので確からしさがアップしてるってことでいいのかな?
ふ〜〜、後は明日以降。
「D行動関連項目」問題となる行動の項目がどれだけあったか
基礎統計量
平均 実施前 10.94 実施後 8.31
中央値 実施前 12 実施後 8.5
最小値 実施前 1 実施後 2
最大値 実施前 18 実施後 15
t検定結果
自由度15
p値 = 0.01949
最小値は上がってるが、他はきれいに下がってる。(最小値については、今まで見えていなかった部分が見えだした、ってことでは?)
T検定の結果は約 2% 。ってことは 5% よりは小さい。
「E行動障害の評価尺度」のうち 頻度について
基礎統計量
平均 実施前 47.44 実施後 33.88
中央値 実施前 48.0 実施後 31.5
最小値 実施前 7 実施後 9
最大値 実施前 96 実施後 71
t検定結果
自由度15
p値 = 0.001552
これも、平均、中央値、最大値は大きく下がっている。
P値は約 0.2% 。ということは1% よりも小さいから、「違いは偶然ではない」となるよね。
「E行動障害の評価尺度」のうち 重症度 について
基礎統計量
平均 実施前 31.81 実施後 21.81
中央値 実施前 29 実施後 22
最小値 実施前 5 実施後 4
最大値 実施前 63 実施後 39
t検定結果
自由度 15
p値 = 0.003336
基礎統計量、最小値以外は大きく下がっている。
t検定のp値は、約0.3% でこれもまた小さい。「違いは偶然ではない」