私の関わりのある法人
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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2022年05月18日

『対話から始める 脱!強度行動障害』読書メモその2




読書メモ

第5章 対話を止めるな 人権侵害が行動障害を生む(樋端佑樹)

 本田先生は「自分がかかわってきた人で強度行動障害になった人なんて見たことないけどなあ」とおっしゃっていた。
(めちゃよくわかります。適切な対応を継続していたら、思春期、成人期になっても起こらない。起こらないから「この取組がいい」と証明しづらい。そして「あの人は障害が軽かっただけ」と言われる)

 佐々木正美先生がおっしゃっていたことであるが、母性と父性はどちらも大切だが、大事なのは順番である。
(これ、今後は言葉を変える必要があるだろうな。母性→受容、承認。父性→教える、訓練(?)、外部の価値観とのすり合わせ(?))


   早期から家族を取り巻く強力なチームが無いと無力。
(吉川先生のおっしゃる「とにかく人手を集めること」ですね。別に専門家・職業支援者のみの集団とかでもなく、保護者同士であったり、爺ちゃん、婆ちゃん、ご近所の人とかでも)
 チーム内外での対話が継続されていないと、ババ抜きのように誰かが苦しみながら丸抱えするか、結局、自分たち以外の誰かに丸投げすることになる。
(私は爆弾ゲームの爆弾と言ってます。もちろん「この子は爆弾ゲームの爆弾ちゃうぞ!人間やぞ!」という文脈でです)
 チームとして生き残り、できるだけ課題を社会の中に広く問い、開いていくことが大事なのだ。
(別のところで、地域の連携があまり無かったところで、荒れる当事者さんを何とか支援しなきゃ、ということで集まり、連携が形づくられていった例が出てきます)


オープンダイアローグからの学びとツールの活用

  当事者抜きで当事者のことを決めない、相手を変えようとしない、結論や落とし所を想定しない、多様な声を共存させる、それぞの主観をテーブルに並べてみんなで眺める。そういうコミュニケーション様式である。見えていない部分が見えると、無意識であっても歩み寄りが始まる。落とし所を想定せず、対話を継続することだけで関係性の修復プロセスが動き始めるのだ。(中略)
  問われているのは専門性か関係性か。どちらが先というものではなく、相手をリスペクトし、相互性、対等性をもった対話が継続できているかどうかなのだろう。(中略)
  たとえば、大荒れで立てこもっていた本人も衝立の裏から自分の支援会議に参加し、となりにいる私と筆談や選択肢で言葉を探し、親に対する思いを直接打ち明けられたところから、周囲のまなざしが変わり、本人の主体性を尊重できるようになった。その後、家族や支援者とも LINE や筆談でやりとりするようになり、落ち着いた暮らしが維持できてきている。

  問われているのは専門性か関係性か。どちらが先というものではなく、相手をリスペクトし、相互性、対等性をもった対話が継続できているかどうかなのだろう。

(私も計画相談(相談支援)をしていた時、できるだけご本人にも担当者会に参加して頂けるように努力してきたけれど、まだまだ甘かったかな)


人として対等に付き合える支援者とは

(ここのところが難しいと考えています。私が関わっていろいろ連携し、行動問題の無くなったお子さん。高等部入学から再び行動問題が起きたのですが、教師が対等に関わっていないから、と感じられます。「強制」のほうでなく「言いなり」のほうなんですが・・・しかし「言いなりは良くないですよ」とか言えば、じゃあということで「強制」になりそうだし・・・どっちもちゃうねんけど・・・)


(メモで書き出したところも、前後に詳しく他のことも書かれていますし、他の方の部分も勉強になる(めちゃつらくなるところも・・・)ので、是非、ご購入して下さい)
posted by kingstone at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月17日

『対話から始める 脱!強度行動障害』日詰正文・吉川徹・樋端佑樹編




すごくいいです。(まだ半分までしか読めてませんが)


読書メモ


まえがき(樋端佑樹)

「大事なことは彼らをがっかりさせず、世界はまんざらでもないと思ってもらうこと」

(佐々木正美先生の「この世の中がこれだけ美しいものだということを伝えたいのです」

を思い出すな)


1章 強度行動障害の背景にあるもの、予防のための工夫(吉川徹)

DSM-5 診断につながる自閉症スペクトラム症の特性

○社会的コミュニケーションの困難

○常同的反復的行動

(これ、以前の3つ組から、DSM-5で2つ組になって、どうわかりやすく説明したらいいんだろうか、と悩んでいましたが、これはわかりやすそう)

さらに根っこにあるもの(吉川による)

@人づきあいが行動の動機になりにくい

A好きなものが増えにくい

B嫌いなものが増えやすい

「これ好きだな」から「こういうの、好きだな」になかなか広がらない

(「これ好きだかな」から「こういうの、好きだな」への難しさ。めちゃくちゃわかる)

強度行動障害に見られるパターンとその予防

(1)嫌悪的記憶の蓄積(感覚の過敏さ。馴れは生じにくい)

(2)動機の不十分な活動が多い(動機が十分あることの大切さ)

活動の後、少しでもその活動が好きになっているように

(3)命令と強制されることが多い(力を使われること)

(4)人で遊ぶ

「人と遊ぶ」とは似ているが違う。大人が不快な遊びはちゃんと断る、逃げるということを続けること。ついつい受け入れがちになりやすいが」

対策 1.遊びを求める要求のコミュニケーションを身につける

   2.断られた時に、穏やかに引き下がれるようになる

(5)行動レパートリーの不足(退屈に著しく弱い)

筋の良い退屈しのぎをたくさん用意しておく

(6)報酬のための活動の不足

(なるほど・・・これが無いと、あるいはわからないと、成人後「遊び」でばかり暮らしを形づくっていかなくなり、それはたいへんと・・・確かにそうだ)

(7)カタトニア

専門の研究者によると、自閉スペクトラム症のある人の1218%にみられる[1]

[1] DeJont, H,, Bunton, P,, Hare, D.J,; A systematic review of interventions used to treat catatonic symptoms in people with autistic spectrum disorders. J Autism Dev Disord 44: 2127-2136, 2014

(ちょっと「うわっ」と思いました。そんなに多いのか・・・ただ、これもどう対応したら防げるか、を書いてはって、要するに、「強度行動障害に見られるパターンとその予防」で書かれていることが起こらないように、嫌悪的な活動を避け、動機が十分ある活動をし、命令や強制されず自らやりたくなる活動をし、ひとりであるいは人と遊べるようにし、行動レパートリーを増やし、報酬のための活動を入れていけばいいってことだよね)

予防のための資源

(1)とにかく人手を集めること

(2)子どもと対話する余力を確保する

(3)「できること」より「やりたくなること」を目指す

(4)大人になったときの暮らしをイメージする

将来の暮らしをあらかじめ決めてしまうのではなく、その子に似合う暮らし方を想像するというような向き合い方ができることが望ましい


 (なんかめちゃめちゃわかりやすくて、他の人に説明する時に使える、と思えました。メモで書き出したところも、前後に詳しく他のことも書かれていますし、他の方の部分も勉強になる(めちゃつらくなるところも・・・)ので、是非、ご購入して下さい) 

posted by kingstone at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月07日

横浜市のASD児童の20年後の姿(信州大学の報道発表から)



信州大学医学部子どものこころの発達医学教室と横浜市総合リハビリテーションセンター(YRS)の共同研究が英国の専門誌に掲載された。

横浜市の疫学調査で7歳までに把握された自閉症スペクトラム症(ASD)の人たちを対象とした成人期の長期追跡調査(Yokohama Longitudinal ASD Birth Cohort Study; Y-LABiC スタディ)のはじめての報告。

(このエントリは私の要約ですので、興味のある方は是非とも本文にあたって下さい)

対象:1988年〜1996年 の出生コホート(31426名)における7歳までの累積発生率調査で特定された 278 名

全員が20歳を超えた2017年から2020年にかけて追跡調査が行われた。(約20年後)

278名中170名(61.2%)から同意を得て調査。

調査参加者の心理的転帰の内訳。

・とても良好 13.7%
・良好    25.0%
・まあまあ良好31.0%
・不良    25.6%
・とても不良  4.8%

(円グラフにしてみました。クリックすると大きくなります)

ASDの人たちの20年後の転帰.png

この結果は海外の同じような先行研究では「不良」「とても不良」が多いので、海外よりも良い転帰が多い結果になった。

(この海外の場合は調査の対象がほとんど医療機関を受診した人だけを対象としている、というバイアスがあるのかもしれない)

(ただ今回の調査に同意頂けなかった 38.8% の人たちに「とても不良」の方が多くいないかは心配だな。でも、それは海外でも同じことだろう)

大多数の人が仕事と教育(参加者全体の96.4%)、スポーツ(82.1%)、余暇活動と趣味(98.8%)に参加し、日常生活で家事やセルフケアを行っている人の割合は一般人口と同程度だった。

○5歳児の IQ が 50 未満の人は、それ以外の人より転帰が不良だった。
○IQ50 以上では、IQ による転帰の差は見られなかった。


結果から言えること

○就学前に診断された ASD の人たちの心理社会的転帰が従来言われているよりも悪くはない
○完全な自立は難しいものの地域や家庭で充実した生活を送っている

(また、「海外と比較すれば」、日本の教育・福祉はよく頑張っている方である、とも言えるのだろう。もちろん今後とも「不良」「とても不良」の部分を減らすように努力していくことは必要だろうけれど)



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2021年12月12日

「千葉県における強度行動障害者支援の人材養成研修について」講読メモ



「千葉県における強度行動障害者支援の人材養成研修について」
田熊立(2019)『発達障害研究』Vol.41, 2, 134-140


I. はじめに(経緯)

2004(H16) 強度行動障害支援事業開始
2013(H25) 厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)」開始
 千葉県ではグループホーム建設・運営の補助事業開始予定
11.26 千葉県養育園事件(利用者を支援者が蹴り殺した)
2014(H26)千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会設置
      「養育園」の第三者検証委員会報告
検証委員会は養育園の定員を半減させ、地域に戻すよう提言。
しかし入所施設の70.8%、グループホーム68.1% が受け入れられないと回答。
受け入れに必要な「空き」と「対応できる職員がいない」という問題。
千葉県は体系的な研修事業を始めることが以前より決まっていた。そしてこれらの経緯を受け、千葉県独自の事業としてより高度な人材養成研修として始まった。

II. 目的

「受講者の行動変容を介して、支援にあたるチーム全体(所属事業所)の行動変容を目指す。」

III. 方法

対象者

障害児(者)入所施設、生活介護、生活共同援助の職員16名
行動障害のある方への支援経験5年以上
支援計画立案や勤務調整ができる立場の人

期間

1年間で、30日間以上

(すごい!!これだけの日時を福祉事業所が捻出するのはたいへん。でも学校だと福祉事業所より簡単に捻出できるはず。1年間内地留学させることと比べたらどれだけ簡単か)

研修の内容

「受講者はあくまで支援チームの代表であり、受講者が所属する施設の利用者(モデル事例)に対して、研修で学んだことをチーム全体で実践することを課題としている。受講者には、支援に従事する全員が理解して、実践できる支援計画を立案し、一貫した支援を提供できるように、チームをマネジメントしていくことが求められる」

(すごくいい。ちゃんと現場で実践することが義務になっている点。これが無いと「ええ話聞いた」で終わってしまう)

「実践の最後には公開報告会を開催する」
(300人以上の参加申し込みがあるそう)

(これもいい。効果のあった実践を他の方から褒めてもらえれば継続へのすごいモチベーションになるし、見に来た方は「あっ、こんな方法があるのか。私もこの研修を受けてみたい」、と思ってもらえるだろうし)

様々な図や表
※クリックすると大きく鮮明になります。


図3 研修の構成
研修の構成.png

図4 モデル事例検討の構成
モデル事例検討の構成.png

表1 受講者とモデル事例検討対象者について研修前後に測定した尺度
研修前後の測定尺度.png

表2 支援に関する受講者の自己評価アンケート
支援に関する自己評価アンケート.png

(これを見ると、「私はできるようになった」と自己評価が5点満点で約1上がっていることがわかります。)

基礎統計量
平均  実施前 2.78 実施後 3.73
中央値 実施前 2.8  実施後 3.7
最小値 実施前 2.4  実施後 3.4
最大値 実施前 3.2   実施後 4.0

t検定結果 p値 = 6.843e-08


表3 事前事後の評価
事前事後の評価.png
(このグラフの「C実施した項目数」を見れば、今までどうやっていいかわからなかった部分に「こうやったらいいのかな」と介入できた部分が増えたことがわかります。「D行動関連項目」では問題となる項目が減り「E行動障害の評価尺度」では頻度も重症度も下がったことが見てとれます)


 最後の表ですが、こういうの本当に変化があったのかT検定をするのかもしれませんが、「そんなんせんでも見たらわかるやん」と思ってしまうのはダメなんだろうか・・・

 と言いつつ、「対応のあるt検定」を R を使ってやってみました。
 ってかエクセルで csv ファイルを作って、R に入力しただけですが・・・

「C実施した項目数」
基礎統計量
平均  実施前 10.94 実施後 13.25
中央値 実施前 12   実施後 13
最小値 実施前 1   実施後 8
最大値 実施前 18   実施後 18

t検定結果
自由度 = 15 (これは n = 16 だから1引いて15になる)
p値 = 7.882e-05

 これでわかるのは「実施前より実施後に介入できるようになった項目が多くなったのは、偶然でなく明らかに違いがあるよね」ってことですね。
 e-05 っていうのは、7.882 の10の5乗分小さい、つまり小数点を5個左にずらす(0.00007882)ということで、5%でもなく1%でもなく、もっともっと小さいので確からしさがアップしてるってことでいいのかな?

 ふ〜〜、後は明日以降。

「D行動関連項目」問題となる行動の項目がどれだけあったか
基礎統計量
平均  実施前 10.94 実施後 8.31
中央値 実施前 12   実施後 8.5
最小値 実施前 1   実施後 2
最大値 実施前 18   実施後 15

t検定結果
自由度15
p値 = 0.01949


 最小値は上がってるが、他はきれいに下がってる。(最小値については、今まで見えていなかった部分が見えだした、ってことでは?)
 T検定の結果は約 2% 。ってことは 5% よりは小さい。

「E行動障害の評価尺度」のうち 頻度について
基礎統計量
平均  実施前 47.44 実施後 33.88
中央値 実施前 48.0  実施後 31.5
最小値 実施前 7   実施後 9
最大値 実施前 96  実施後 71

t検定結果
自由度15
p値 = 0.001552

これも、平均、中央値、最大値は大きく下がっている。
P値は約 0.2% 。ということは1% よりも小さいから、「違いは偶然ではない」となるよね。

「E行動障害の評価尺度」のうち 重症度 について
基礎統計量
平均  実施前 31.81 実施後 21.81
中央値 実施前 29   実施後 22
最小値 実施前 5   実施後 4
最大値 実施前 63   実施後 39

t検定結果
自由度 15
p値 = 0.003336

 基礎統計量、最小値以外は大きく下がっている。
 t検定のp値は、約0.3% でこれもまた小さい。「違いは偶然ではない」





posted by kingstone at 22:36| Comment(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月14日

「発達障害に対するペアレント・トレーニングの実際と課題」読書メモ


「発達障害に対するペアレント・トレーニングの実際と課題」
 井上雅彦(2017)『発達障害研究』39:87-91

II. ペアレント・トレーニングの発展(2つの流れ)

1. ASD に対するペアレント・トレーニング
子どもの新しいスキル獲得
単一事例実験による評価

2. DBD(disruptive behavior disorder : 破壊的行動障害)に対するペアレント・トレーニング ADHDに対するPTへとつながっている
問題行動の改善
親のストレス低減などを評価

日本では、明確に分けず、子どもの診断名は多種多様で混在していることが多い


IV. ペアレント・トレーニングの実際と展開

1. 幼児期のプログラム

井上ら(2008)「子育てが楽しくなる5つの魔法」
「ほめ上手」(強化方法)
「整え上手」(視覚化と構造化)
「伝え上手」(指示の出し方)
「観察上手」(行動の見方と問題行動への対応)
「教え上手」(課題分析と家庭での指導方法)

 親が家庭で実施するプログラムは、親自身が自分の子どもに合わせて課題を選択する。

 参加者は、事前にプログラムの目的、内容、費用、回数などについて十分な説明と同意を得たうえで決定される。グループで行うため重篤に精神疾患などがなく、グループで話し合うことができる状態であることを基準にしている。PTよりも個別面接が適している場合はそちらを紹介する。

2. 思春期のプログラム
 コミュニケーションの悪循環からの、親の抑うつの改善や関わり方の変容、子どもの問題行動の改善

3. ニーズに特化したプログラム
兄弟関係について

4. 地域への展開

V. まとめ

一定の質を担保していく工夫

posted by kingstone at 23:47| Comment(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする