大久保圭子・八木修司(2020)『関西福祉大学研究紀要』Vol.23, 3, 39-50
「視覚支援」で検索して出てきた論文の1つ。
知的障害のある生徒を雇用した15社からの聞き取り。
特別支援学校高等部を卒業する生徒が就労する割合は年々増加しており,2004年では20.4%であったのが2018年には31.2%となっている |
文部科学省(2019):日本の特別支援教育の状況について.新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議.
(?私はこの資料の中から、この数字に行き当たることができなかったのですが・・・)
兵庫県の最新(?)のものだと
によると、障害種別全部含めてですが、24.2% となっていますね。
この論文にはいろいろな調査の結果が表にまとめられて出ています。
「表3 知的障害者を雇用する決め手となった事柄」
など、なかなか面白いです。ただし、「だからこの点に関する指導をしよう」と考えた場合、私がおつきあいすることの多かった知的に重いタイプの方にはしんどい可能性がありますので、あまり学校全体に一般化して広げるのは止めておいて頂きたいですが。やはり、ひとりひとりに合わせて考えて頂いたうえで、できる生徒さんにはおおいに指導して頂いたらいいのじゃないかな、と思います。
「表4 知的障害者を雇用するに当たって配慮していること」
の中で、視覚支援に関わるところを抜き出してみました。(著者が視覚支援と別項目にしているところでも、私が考えるに視覚支援に入ると思える部分は抜き出しています)
障害状況に応じた作業内容,方法の改善
(前略)
(前略)
4)チェックリストの活用
・水やりのチェック表を作成.
・「星取り表」の活用.縦軸は従業員の名前,横軸には仕事上覚えなければならない事柄や,習得しなければならない操作など項目を上げ,できた人には星印を入れていき,志気を高めている.
・「星取り表」の活用.縦軸は従業員の名前,横軸には仕事上覚えなければならない事柄や,習得しなければならない操作など項目を上げ,できた人には星印を入れていき,志気を高めている.
5)スケジュールを提示し見通しを持たせる
・長期のスケジュールを一ヶ月半先まで分かるように渡し,見通しがもてるようにしている.
・日々のスケジュールは時間帯毎に色分けし,時間のイメージを持ってもらうようにしている.
・変更があったときは,早めに必ず伝えるようにしている.
・日々のスケジュールは時間帯毎に色分けし,時間のイメージを持ってもらうようにしている.
・変更があったときは,早めに必ず伝えるようにしている.
6)視覚支援
・一日の記録表を作成.(目標,できたこと,失敗したこと,注意を受けたこと,反省などを記入.)
・メモ帳,ホワイトボードにするべきことを書きだしてチェック.
・改善してほしいことを文章で書いて掲示.
・メモ帳,ホワイトボードにするべきことを書きだしてチェック.
・改善してほしいことを文章で書いて掲示.
7)指示の仕方の工夫
・具体的には,現場で「ええ具合にやっといて」「それをここに運んで」など,曖昧な指示を出さず,極めて具体的に明確に出すこと,などを徹底している.
(これは視覚的なものを使っているかどうかはわからないわけですが、絵なども使って具体的に明確に出すこともあるのではないかな、と)
8)道具の工夫
・メジャーにしるしをつけている.
・物品仕分けでは,棚の中のトレーの色を配達する場所毎に色分けし,番号をつけたり,必要な物品一覧をわかりやすくしたりするなど,本人が理解できやすいようにしている.
・支援の方法に構造化を取り入れている.
・物品仕分けでは,棚の中のトレーの色を配達する場所毎に色分けし,番号をつけたり,必要な物品一覧をわかりやすくしたりするなど,本人が理解できやすいようにしている.
・支援の方法に構造化を取り入れている.
9)マニュアル等を作成
・知的障害者に対してマニュアルブックを作っている.失敗したときなどはそれを見てリピートして教育する.
10)作業日誌の記入
・作業日報を記入することにより,振り返りを行うように指導している.
・本人の能力,できぐあい,仕事の効率などを見て,あまり負担にならない配慮をしながら,新たな仕事を指示している.
・仕事の計画や実施状況を記入するノートを作り知的障害従業員が記入し,援助者(副店長)が毎日,目を通し,困った点などを把握するようにしている
・本人の能力,できぐあい,仕事の効率などを見て,あまり負担にならない配慮をしながら,新たな仕事を指示している.
・仕事の計画や実施状況を記入するノートを作り知的障害従業員が記入し,援助者(副店長)が毎日,目を通し,困った点などを把握するようにしている
結構たくさんの項目があります。
これら以外にもたくさんの手立て(従業員研修など)が取られていることがわかります。
また企業の感じている問題点の表もあります。
なお、こんな記述もありました。
これらの配慮は,雇用の段階で準備されていたものではなく,雇用後,試行錯誤を繰り返しながら知的障害者が働く過程で生み出されてきたものであることが聞き取りを通して明らかとなった. |
もちろん、雇用してからでないとわからないことはたくさんあるのですが、「こうしたら作業がうまくいく」「こうしたらコミュニケーションがうまくとれる」などの学校からの引き継ぎは十分なされていたのでしょうか?
というか、学校時代に「こうしたら作業がうまくいく」「こうしたらコミュニケーションがうまくとれる」がわかっていたのでしょうか?
と言いますのも、2020年の特殊教育学会でのポスターや自主シンポジウムで発表されていたのが、高等部の生徒で作業学習ができない(暴れる、逃げ出すなど)人に対して、(たぶんそれまでされていなかった)手順書を作る、課題内容を個人にあったものを考える、しんどい時はそれを表現して休める、などをすることによってうまくいくようになった、という報告を2件見たのですね。
小学部でなく、高等部なのですね。それまで、手順書を作る、課題内容を個人にあったものを考える、しんどい時はそれを表現して休める、などをし、うまくいくようにし、それを引き継ぐ、ということがされていなかったのか、不思議に思ったのです。もちろん、企業に就職する方たちより知的に重い方だとは思うのですが、校内にそういう発想が無いのなら、知的に軽い生徒に対しても行われていなくても不思議は無いかな、と・・・
まあいくらうまく引き継ぎされたとしても、常に現場で考えていくことを続けなければいけないとは思いますが。