※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年05月28日

「普及と実装を科学する ーその方法と実際ー」島津太一を読む



「普及と実装を科学する ーその方法と実際ー」島津太一
『日本健康教育学会誌』第31巻第4号2023年

 私の書くことは、ほんとかいつまんでいたり、適当な読みなので、興味を持たれた方は元論文をお読み下さい。

 先日のポジティブ行動支援ネットワークのオンライン研修で「実装研究(implementation research)」という言葉を知りました。

 で Google Scholar で検索して引っかかったのが、上の論文。

 確かに「社会的実装」なんて言葉も聞くし、社会にどう広めて定着させていくか、が大事だし、どちらかというと「何が障害となっているか」を研究する、みたいな方向が強いみたいだけど、その障害をどう突破するかと考えると大事ですね。

 もともと医療分野で、 EBI(evidence based inervention,根拠に基づいた介入)の普及と実装を科学的に進めるためにできたものだって。

 近年では、患者や市民の役割を重視した参加型アクションリサーチの方法も取り入れられてきている.


 研究者が実践者ともなる、ということかな。

 2002年に「Designing for Dissemination(普及のためのデザイン)」という会議が開かれ、この会議で

 研究者はエビデンスを創出する役割を担い,実践家は具体的な方法を教えられれば実施するという考えであった.両者は研究成果の実装に関する責任を負う立場になく、その責任を負うのは米国国立衛生研究所(NIH) や他の研究資金配分機関であるという結論となった.

ってことは、これを日本の教育分野・福祉分野で言い換えれば

研究者はエビデンスを創出する役割を担い、教師やスタッフは具体的な方法を教えられれば実施する。実装の責任を負うのは文部科学省・自治体教育委員会・厚生労働省・自治体障害福祉課(局)である。

ってことになるかな。

まあそうは言っても、アメリカでもうまくいっているわけではなく、

 最終的にはエビデンスとプラクティスのギャップが残り、これが課題となっている

ってことだから、ある意味、どこでも同じやなあ、と。

 で、そのギャップを埋めるのが「実装研究」であると。

1.EBI についてはエビデンスを3つに分類し

タイプ1:疾病とその負荷→例:喫煙と肺がん、生活習慣と糖尿病
タイプ2:介入の有効性→例:禁煙治療の有効性、米国糖尿病予防プログラムの有効性等
タイプ3:特定の現場の文脈に合わせた必要な方法について→例:禁煙外来受診の促進・阻害要因、米国糖尿病予防をYMCAが主導する等

 教育で言えば、スクールワイドポジティブ行動支援(SWPBS)はタイプ3をよく研究した結果出てきた感じではあるな。

2.実装戦略(あくまでも1例として)

監査とフィードバック(しかし・・・行政の監査って・・・お金の出入りの監査は有効だと思うけれど、教育や福祉の内容についてはほとんどの場合無力というか・・・)
教育ワークショップ(研修だな)
コンピューターによるリマインド(物を使う)

3.実装アウトカム

1.受容性(主観的満足度)
2.適切性(客観的な評価)
3.実施可能性
4.採用(組織レベル)
5.忠実度(どのくらいEBI実施の手順に従っているか)
6.浸透度(どれだけ多くの対象にアプローチできているか)

 この1.2.3.あたりは応用行動分析で言う、社会的妥当性に近いな、と感じるのだけど、どうだろう?

4.理論・モデル・フレームワーク

 そのうちの「決定要因フレームワーク」が「なぜ現場で実装されないか」の理由を整理するためのフレームワーク。これを視覚的支援についてあてはめてみると・・・

実装研究のための統合フレームワークCFIR(Consolidated Framework for Implementation Research)

1.「介入の特性」介入そのものを現場の方がどう認識しているか。現場の方がどう認識しているか。

あまり必要性、有効性を認識していない。(きちんとやっているところは認識しているが、そもそもそういう場は少ない。また「できるだけ外したほうが良い」という考えも強い

2.「外的セッティング」制度など、自分たちの組織の外にある要因

厚生労働省の強度行動障害支援者研修などではかなり詳しく言及されるようになってきた。教育会はまだまだと見える。(なお、2002年頃からいっせいに特別支援学校の時間割が前の黒板に「大きな絵」や「おおきな字」で示されるようになったのは、どういう力学が働いたのだろう。ただし、それによって視覚的支援が無効化されてしまった例を多数見てきている)

(「視覚支援」と書いてはいるが「視覚の檻」でしかない)

なお、令和6年2月、東京都教育委員会が

を出しており、視覚的支援や機能分析のこと、環境整備のこと、かなり詳しく書いている。これをどう現場が取り入れるかだな。

3.「内的セッティング」リーダーシップやコミュニケーションなど組織内部の要因

例えば、厚生労働省の強度行動障害支援者研修を受けても、現場でベテラン(リーダー)からの適切な OJT が受けられなければ、「ああ研修終わった。これで加算がつく」で終わってしまいがちである。

4.「個人特性」個人の自己効力感や知識

学校や福祉事業所で、きちんと実践してみた人は「わっ、ちゃんと通じあえる!」と自己効力感・喜びが得られるのだが、それを周囲に伝えることによってかえって孤立する、という現状が多そう。

5.「プロセス」計画を適切に運営するための活動の観点から実装に影響する要因を整理する

 で、もちろん「阻害要因」を整理するのは、「じゃあどうすればいいか」を考えるためで、私もそこ(と言っても、私は組織には属してないから、保護者に対して、だけど)を考えていきたい。

 で、論文内で下のページが紹介されており、そこにある動画に、論文内に出てきた図があったり、解説があったりする。




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2024年05月04日

NHK「世界はほしいモノにあふれてる」に出てきたオモチャ



2024年4月29日に放送された(2023年8月に放送されたものの再放送らしい)

NHK 「世界はほしいモノにあふれてる 夏のスイス&ドイツSP美しきオモチャめぐる旅」

に出てきたメーカー

※図はクリックすると大きくなります。

スイス キュボロ社

検索画面
スクリーンショット 2024-05-04 20.06.47.png

 番組で言ってたけど、ピタゴラスイッチみたいなことができる。

 創業者は障害者施設で働いていて、利用者さんにとって当時あったパズルは難しすぎると感じて開発したとか。



スイス ネフ社

スクリーンショット 2024-05-04 20.09.16.png

 トイオブジェ 美しいオモチャ

 創業者さんが家具職人で、お客さんが「美しい家具はあるのに、美しいオモチャが無い」と言ったことに触発されて作り始めたんだって。


 後半はドイツの職人さんの技とかで、会社って感じじゃなかったな。


 これらを買付に行ってる 西川涼さんって方は アトリエ・ニキティキ の経営者さん。







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2024年04月30日

給食指導についての記事へのリンクを集めてみました



 給食指導についての記事へのリンクを集めてみました。

 最初に書いてある日付は記事にした日。( )内はその年度のできごと、日付がわかっているものはその日、ということを表しています。

 「過去の記事」カテゴリのものはリアルタイムで書いていたので日付がわかっています。
 「過去の記事」カテゴリのものは、何も知らない新人さん2人と私、そしてベテランさんの1998年2学期から(正確には夏休みの準備段階から)1998年度いっぱいの記録です。

 いろいろ迷いながらやっていた、ということはわかって頂けるでしょう。
 また、「今ならやらないな」「もっと別の工夫をするよな」という点も多々あります。


2010年2月14日(1996年度)
給食の思い出1
 当時勤務していた知的障害養護学校では手早く完食させられる教師が指導力があるとされ、威嚇や、スプーンを子どもに突っ込むなども、普通にやられていた話。


2010年2月14日(1996年度)
給食の思い出2
 何か違うよなあ、と思い出した話。 


2010年2月14日(1997年度)
給食の思い出3
 超ベテランの先生が威嚇して食べさせているのに、私がキレて教室を飛び出してしまった話。



2010年2月15日(1997年度)
 1997年に初めて特殊教育学会に行き、齊藤宇開さんの TEACCH 的な視覚的支援を利用した給食指導の例を知りました。そして「残してもいい」という指導をクラス打ち合わせで提案したら、4人担任中、2人(無理やり食べさせるのが上手な人達)が反対、1人棄権で、否決された話。

2010年2月14日(1998年度)
給食の思い出4
 クラスで「給食は自分で食べる。全部食べさせなくて良い」と宣言した話。


 指導についてあれこれ考えている。


2010年3月26日(1998年10月13日)
過去の記事73(給食指導について)
 基本はおいしいものを楽しく頂く、だろうな。


 私は、クラスのみなさん宛のレターもよく書いていました。そのひとつ。
 我々のクラスは職員室でみんな静かに事務処理をしている最中、突然子どもについて相談し始めたり、どこでもクラス打ち合わせのチームだったのですが、それでも時間が足りないので。


2010年4月5日(1998年11月14日)
過去の記事105(BさんとC君の給食指導)
 試行錯誤や、起こった不思議なできごと(というのもよく起こる)について。


2010年4月6日(1998年12月7日)
過去の記事137(給食指導その後)
 いろいろ観察し、相談している様子。


2010年4月6日(1998年12月9日)
過去の記事144(給食指導その後2) 
 もう試行錯誤し、観察し・・・


 わかってる、と思っていたカードがわかってなかったのでは!?



 C君の給食指導の僧だ何を専門家にした時「この資料からでは何もわかりません。とにかくC君のコミュニケーションサンプルをとってみないことには」と言われたことを書いています。それももっともです。
 しかし、現在の私だったら、相談されたらその資料からわかる範囲で、一緒に考えると思います。


2010年4月12日(1998年2月28日)
過去の記事238(C君への給食指導・その後)
 振り返り


この動画の7分10秒あたりから、1999年6月の給食に関しての部分になります。


BさんとC君が映っています。
Bさんは、1997年度まで、私以外の教師からはスプーンを口に突っ込まれて給食を食べていました。
C君は、1997年度までは、やはり手が止まると、私以外の教師からはスプーンを口に突っ込まれて給食を食べていました。
なお、2024年現在、この後継の学校では、スプーンを口に突っ込まれることは無くなっているようです。


2010年2月15日(2001年度)
給食、ある時
 支援級の前担任が威嚇して牛乳を飲ませていたことが発覚した話。引き継ぎでは「私が指導して飲めるようにした」とおっしゃってました。私は「できていたこともできなくさせたダメな教師」と親御さんに思われていたでしょう。



2010年10月31日(1996年からかなり後について)
食事指導について




なお、「過去の記事」カテゴリの最初の部分は


から始まり、順番に読んでいけます。



 

posted by kingstone at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月29日

強迫症への対応で我々にできること『子どものための精神医学』から



 強迫症というのは、自閉スペクトラム症の方でも、そうでない方でも、結構聞くことがあります。

 その対応方法について、『子どものための精神医学』を見てみました。


 主として3つに分けて書いておられます。

1.底にある不安への対処をはかる

 環境状況になんらかの不安の材料がみてとれれば、それが「原因」か否かは問わず、その解決をはかる支援を工夫する。原因除去という医学モデルで考えず、何であれ負荷が減れば自然の治癒力が上がって回復しやすくなると考える。不確かさに耐える力に弱さがあれば、うつ病の治療のところで述べたのと同様、「レジリエンス」を伸ばすためにメンタルな成熟をうながすかかわりを工夫する。子どもには、このような成長モデルに立った支援が、長い目でみて役にたつ。

2.イマジネーションと強迫行為の悪循環を断ち切る

 ここには「暴露反応妨害法」について書かれていますが、お医者様か公認心理師さんの協力の元でやるものでしょうね。

 あと、最近は「認知行動療法」について述べられているものも多いですが、これもお医者様か公認心理師さんの協力の元でやるものでしょう。


3.薬による支援

 1.2.の支援だけでうまくいかない時に考慮するそうですが、これもお医者様にしかできません。


 結局、私や多くの保護者は一般人ですから、1.の「底にある不安への対処をはかる」しかできず、そして私自身はそれを幸せなことだと思っています。

 私が自閉スペクトラム症の方に対応するとしたら、

@時間の見通しがつかなくて不安 →   スケジュールやカレンダー
Aだんどりの見通しがつかなくて不安 → 手順書やワークシステム
B世の中の意味理解ができなくて不安 → 様々な視覚的支援
C意思表出ができなくて、あるいは周囲に理解してもらえなくて不安 → 適切な意思表出方法を身につける(視覚的支援も使い)
D感覚の過敏で不安 → 刺激の少ない環境を作る、心地良い刺激の環境を作る(感覚の鈍さのほうは不安を呼ぶのかな?)
E不器用で不安 → 便利グッズなどで対応


 などで負荷を減らし、居心地の良い環境を作っていくことぐらいかなあ。


posted by kingstone at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

暴言などある子の適切なコミュニケーション行動の形成



自閉スペクトラム症児に対する支援ツールを用いた適切なコミュニケーション行動の形成
― 放課後等デイサービスにおける取り組みを事例に ―
松田 光一郎
人間福祉学会誌/20 巻 (2021) 1 号p. 49-57

 ものすごくかいつまんで紹介するので、興味をもたれた方は、リンクから原文にあたってください。
 ※図はクリックすると大きくなります。

 著者のお立場は、京都文教大学臨床心理学部臨床心理学科とのことで、論文を読んでみると、放課後等デイサービスのスタッフとして入っているのではなく、+αとして現場に入られた感じかな。

 これまでは、自閉スペクトラム症児が示す問題行動をなくすといったリアクティブな対処が優先されることが多かった。現在は、そうした問題行動の機 能を分析し、その機能性により QOL(生活の質)を向 上できるように環境との関係を再編成していく、プロア クティブな方法が求められるようになった(平澤, 2003)。 それゆえ、日常生活において、 1 つのコミュニケーショ ン・モードにこだわらず、自閉スペクトラム症児の実情 に合わせて複数のモードを組み合わせていくことの重要性も指摘されており(野呂・山本・加藤,1992)、好まし いコミュニケーション行動が生起した時に、メリットが 得られる環境や、代替手段を用いて自発的に何かを要求 したり応答したりする経験を蓄積できる環境整備が求められる。

リアクティブ → 事後的な(リアクション芸とかで使われている単語)
プロアクティブ→ 予防的な

対象のお子さんについて

特別支援学校小学部3年。
母親の仕事の都合で、夏季休業期間だけ放課後等デイサービス利用。

放課後等デイサービスに来た時の様子(数字はkingstone)

1.気分のむらが激しく、状況を考えず衝動的で攻撃的な行動が生起し、他の利用者に対してもトラブルが発生
2.筆者や職員への暴言、暴力が頻回に発生
3.対象児への個別対応に時間がとられ、通常業務に支障が見られる状況
4.トランポリンやレゴブロックを自由に使用できないことが自制できず、花瓶などの器物破壊、 突然に事業所外に逃避する
5.コミュニケーション面では、音声や文字による指示理解や意思伝達はできるが、嫌悪場面でのあいさつや会話など、他者に対する適切なコミュニケーション行動は困難

ABC分析し、機能的アセスメントで推測された機能

・逃避
・注目

支援ツール

著者は「PECS が適当だと判断した。」

期間

7月26日〜8月30日、午前9時〜午後3時、27回。

方法

代替コミュニケーションのために

「おはようございます」、「少しまってください」、「教 えて下さい」、「行ってきます」、「済みません」、「ありが とうございます」等が書かれた文字カードを作成し、そ れらをリングでとめ、必要なカードを訓練者に提示する ことで、コミュニケーションの代替手段として機能する よう教授を行なった。


チェックリスト

チェックリストの項目は、「暴言」、「暴力」、「唾 吐き」、「器物破壊」、「逃避」、「その他」の問題行動で構 成され、対象児がそれぞれの項目の行動に対し、その行 動が生起しなかった場合に項目欄に〇印を記入する。さ らに、文字カードの項目は「おはようございます」、「少 しまってください」、「教えて下さい」、「行ってきます」、「すみません」、「ありがとうございます」、「その他」で 構成され、対象児が事業所に来所してからの課題場面で 使用した文字カードについて、対象児がその項目欄に〇 印を記入し、チェックした〇印の合計数を記録する加算 方式とした。また、チェック項目の〇印の 1 日の合計が7 個以上連続して 5 回記録された場合に、トランポリン または、レゴブロックによる遊びを提供するため、トー クン・エコノミーを適用して課題場面の観察と記録を行った。

Fig.2 チェックリストの様式
チェックリスト.png

経過

7月16日〜7月25日
ベースライン期「放課後等デイサービスに来た時の様子」に書いたようなことがいろいろ起こる。

7月18日、19日
プレテスト。ツールの使い方を説明すると、対象児がすぐに使いたいと言い、B職員に「おはようございます」と書いたカードを提示すると「おはようございます」と返してくれた。それに続けてチェックリストの記入方法を教えた。
(このさい対象児に称賛や結果のフィードバックを与えなかった、と書かれている。でもまあ例えばB職員は反応しているわけだ。しかし後のグラフを見て頂くと、20日以降も問題行動は減っていないので、その後25日まではベースライン期でいいわけか・・・)

介入例

7 月26日:対象児は来所するなり、「喉が渇いた。何か飲み物を用意しろ!」とA職員に暴言を吐いた。A職 員は興奮している対象児に落ち着くように促したが、唾 を吐いて抵抗した。訓練者は、チェックリストを見せて 記録するように促すと、素直に記述し始め、項目欄で少 し迷っていたが、「暴言」と「唾吐き」に〇印を記入し たため、「よくできました」と賞賛を与えた。訓練者は、「今からでも遅くないので、文字カードを使いません か?」と促した。対象児は、「おはようございます」カー ドと「すみません」カードを提示する適切な行動が生起 したので、「よくできたね」と賞賛し、加えてチェック リストの合計が 7 点になったため、結果のフィードバックを与えた。

 すごいな、と思うのは(当たり前なのかもしれないけれど)「暴言」と「唾吐き」はとがめず、それを記録することを促し、記録できたら「よくできました」と褒めるという対応。

 で、その後の経過も詳しく書かれています。是非元の論文をお読みください。単に問題行動が減っただけでなく、良いコミュニケーション行動を身につけていってるな、と思われました。

Fig.3 「文字カード」を用いた代替え行動

代替行動.png

 「おはようございます」とか「すみません」とか「ありがとうございます」とか、しゃべることのできる子なら簡単にできそうなのに、今までできなかったのか。それとも、カードを提示するというのが新鮮で面白かったからできたのか、そのあたりはよくわからないわけですが、より簡単に行動に表せたようです。


Fig.4 問題行動の推移

代替行動.png

 見事に減っていってますね。

 で、ここで私が学んだことは

◯字も読め文も理解できる、暴言できるほど口が達者な子でも、改めてカードコミュニケーションを適切に使うことで良いコミュニケーションが改めて身につくことがある

◯音声言語のみを使っていると、良いコミュニケーションを身につけてもらおうと思っても難しいことがあるのではないか(簡便性の意味で。カードなんか使うより、音声を使ったほうが簡単なはず。しかしそれだと良いコミュニケーション行動を発言しにくい場合があるのではないか)

というあたりかな。しかし・・・ということは

「暴言できるほど口が達者な子」は「音声言語が理解できている」と言っていいのだろうか?

 対象のお子さんの様子のところの

5.コミュニケーション面では、音声や文字による指示理解や意思伝達はできるが、嫌悪場面でのあいさつや会話など、他者に対する適切なコミュニケーション行動は困難

は「指示理解や意思伝達ができる」と書いていいものなのだろうか、というのはいつも感じるところです。

 そして私も口が達者な子とカードコミュニケーションをしようとしたら、「うちの子しゃべれるのに、そんなもの使うな」と言われたことは結構あります・・・

 なお、7月27日と30日に、対象児は、来所するなり「家に帰るから、止めるな!」と言っているの、「言い方」が暴言なのかな?帰りたい!!という意思の表明かもしれないと思い、私等は気持ちがグラグラしてしまうと思う。でももちろん、家に帰ることはできないだろうし、なので私も何とか居てもらうようにするけれど。

 結果的には放課後等デイサービスが居心地の良い場所になったようで、このケースでは良かったのですが。

 また、そのまま外に行き、5分後に戻って来た、という記述があるのだけど、その時、著者やスタッフはどうしていたんだろう?めちゃ怖い事態なのだけど・・・

 それとも「戻って来る」という確信があったのだろうか。

 なお、著者は「PECS が適当だと判断した」と書いておられる。しかし、様々な視覚支援物(ツール)を使っておられるけど、これを PECS と言っていいものかどうか。PECS の考え方を応用しておられるのは確かだけど、私ならこれを少なくともPECSR(商標登録されている PECS という意味です。商標登録のRがこのブログではうまく出ないかもしれない)とは呼ばないな。といっても、著者の実践を否定しているわけではなく、本当のところ現場ではこんなふうにやるしか無いし、それで良き結果を出しておられるのがすごいと思うのですけどね。

参考文献で読んでみたいもの
posted by kingstone at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする