先日の特殊教育学会60回大会でのポスター発表 P5-8
「行動上の問題を示す重度知的障害と自閉症スペクトラム症のある生徒への自己欲求を充足する支援の検討」小林愛・下山真衣
この実践研究は
行動上の問題については、 PBS の 1.個人を中心とした支援計画の作成 2.機能的アセスメントの利用 3.正の強化による支援・指導方略の使用 4.包括的な支援の実施 5.環境変数の操作 6.社会的に妥当であること 7.日常への般化 8組織レベルでの介入 (Anderson & Freeman, 2000;Carr & Sidener,2002) を行うことが有効であると考えられている。 |
ということで
本研究では、重度知的障害と自閉スペクトラム症が伴う児童生徒の自己欲求を充足するという観点から正の強化による支援方略を立案し、実施した行動上の問題に対する包括的な支援について事例検討を行う。 |
という問題意識・目的で行われたということです。
対象
高等部男子生徒。
知的障害も重度。頭部を片手で何度も叩いたり、異食をしたりする。
(そしてその後に「教室や集会で頭部を叩くことが多く、別室にひとりでいるときはほとんど叩かない」という記述が出てくる。もちろん筆者は気づいておられただろうが、それ以前の小学部・中学部の先生方はここから何かを気づき、適切な対応を考えられなかったのだろうか?)
(そしてその後に「教室や集会で頭部を叩くことが多く、別室にひとりでいるときはほとんど叩かない」という記述が出てくる。もちろん筆者は気づいておられただろうが、それ以前の小学部・中学部の先生方はここから何かを気づき、適切な対応を考えられなかったのだろうか?)
実施期間はほぼ1年
アセスメントによりわかったこと
引き継ぎ資料
行動観察
保護者からの聚き取り
実際に支援した際の姿
行動観察
保護者からの聚き取り
実際に支援した際の姿
これらから実態把握をし、加えて
N C プログラム
感覚プロファイル
感覚プロファイル
による評価も行った。
感覚プロファイルは低登録と感覚過敏が非常に高く、感覚探究と感覚回避も高いという結果であった。異食は埃や砂など身の回りで見つけた細かいものを食べる、教室で騒音がある、何もすることがなかった場合や作業の見通しや、やり方が分からなかった場合などに頭部を叩くことが多かった。 |
そして
教員の手を引っ張り自分の肩を叩かせることも頓繁であった。 |
あっ、ここ質問するの忘れてたな。コミュニケーション行動がある、ということですもんね。「肩を叩かせる」というのはどんな感じなのか知りたかったな。
肩トントンなのか、「痛い!」というレベルなのか・・・
私の知っている例で、ほっぺたを平手打ちしてもらわないと食べられない、という高等部の生徒がいました。これは小さな頃、誰かに叩かれて食べさせられていたために同一性保持を起こしてしまっている例と思われました。
そんな悲しい話なのか、あるいは注意喚起された後良きことが起こった体験を再現しようとしていただけなのか。
まあそれは置いておいて、このアセスメント結果でもう何をすればいいかがいくつも浮かんできますよね。それはつまり小林さんがアセスメントで何を明らかにすればいいかちゃんと頭の中で整理されているからですが。(こういう書き方は上から目線?)
支援計画、介入、結果は簡単に(数字は筆者のものから改変)結果は【】で
I 口腔感覚の保証と余暇
1.(異食に対して)口腔感覚の保証として飲み込む危険性の無い複数の素材を用意し、本人の気に入るものを使わせてあげ、あきたらまた他の物に更新。
(これなんか、「物を口に入れるなんて!」と反対する意見は出なかったかな)
(これなんか、「物を口に入れるなんて!」と反対する意見は出なかったかな)
2.本人の好きな楽器や音楽を楽しめるようにした。
【教室や作業の合間の過ごし方として定着】
II 作業学習
3.作業学習で作業が本人にわかりやすいようにした。
4.作業の1セットの量がわかりやすいようにした。
5.作業が数セット終わった時にお茶と余暇グッズを提供したりした。
【賞賛の声かけをすると笑顔を見せるようになった。その後の活動再開もスムーズになった(これは質問して教えて頂いたのですが)できる作業のバリエーションが増えた】
III コミュニケーションと嫌悪事象に対する対応
6.「トイレ」「飲む」などの要求の絵カードコミュニケーションができるようにした。
7.「個別のスケジュール」に使った絵カードで教師から働きかけたりした。
8.本人が興味をもった物を絵カードにして余暇グッズに追加した。(つまり要求できたり、教師が「次はこれだよ」と知らせることができるようにしたってことだろうな)
【要求カードを手渡しして伝えるようになった。またカードを使って周りの教師に関わろうとするようになった】
9.教室や集会で嫌になった時、まずはそのままにして見守った。(その後、かな?)近くに休憩場所を設定し、休憩の絵カードを用意し、その場を離れようとしたり、した時に
【本人が休憩カードを選ぶ姿も見えるようになった。また行動の切り替えがよくなった】
で、グラフとかは無かったのですが、「頭叩きは減りました?」とお聞きすると、激減したとのことでした。まだ0ではないですが、とのこと。
素晴らしい総合的な取り組みだと思います。1年で大きく変化されました。
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さて、ここからはまったく書かれていないことです。
さて、ここからはまったく書かれていないことです。
しかし、それぞれの介入と結果を見てみれば、
「ってことは小学部・中学部ではこういう取り組みは無かったってことだよなあ。ほんの少しはやってみたことはあったかもしれないけれど、うまくいかなくてあきらめたか、うまくいっても引き継ぎされなかったことだよなあ」
と、私は勝手に推測してしまいます。
それでいいのか?いいはずないよね。
ある意味、小林さんはそういう現状に抗おうとしてはる方だと思います。しかし「学校」「教育委員会」「文部科学省」はそういう現状は非常に良くない、ということはわかっておられるのだろうか。
そして、教育委員会や文部科学省は、現在の「特別支援教育免許」をもっている専門的な先生方がそういう現状をよしとしている、あるいは変えようがないという現在の姿をおかしいと感じて、じゃあ「免許」云々ではなく、どういうシステムを取り入れたらいいのか、ということを考えてほしいなあ。