私の関わりのある法人
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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年03月21日

暴力・暴言・物壊しが無くなった取り組み



実践研究
広汎性発達障害児が示す暴力・暴言・物壊しの低減を目指した自己記録を中心とした介入パッケージ
小笠原恵・末永統(2013)『特殊教育学研究』51, 2, 147-156

 なんか、めちゃ面白かったです。
 ものすごくかいつまんで紹介するので、興味をもたれた方は、リンクから原文にあたってください。

 まず、どんなお子さんだったか。

・小学校1年生
・週2回通級指導を受けていた
・本人からは「聞くことが苦手」との訴えあり
・虫のフィギュアや電車や車の玩具、組み立てブロック、ゲームで遊ぶのが好き
・他者に感謝されたり賞賛されることを非常に喜ぶ
・自分だけではなく他者が叱られることを極端に嫌がる
・些細なミスでも自分が犯すことは許せない

そして

・5歳時より、他者に対して叩く・蹴る等の暴力や暴言、物を投げたり職飛ばしたり破くなどの行動が頻発

どういう時に起きていたか

・自分の行動が自分の達成基準に満たなかったことがきっかけになる場合
・他人の行動が自分の思いと異なった場合
・状況に適合しない無理な要求をして拒否された場合

それまでの親御さんの対応や状態

・言葉で状況を説明して説得したり、注意をしたり、理由を聞く
・抑え込んで制止
・最終的に、本児の要求を飲むことも
・これらの行動が頻繁に生起するため、賞賛されたり感謝されたりすることは極端に少ない

また

・担任では対処できないため母親が1日中つきそい

そこで方針を

・「叩く・蹴る等の暴力や暴言、物を投げたり職飛ばしたり破くなど」の低減
・自らいやな事態から逃避でき、賞賛される行動、他者から感謝されることを増やす

とします。手続きとして

@標的(困った)行動を自分自身で記録
A良い行動(適応行動)が起こった時は褒め、回数を自分自身で記録
B記録内容から「良い行動の記録」ー1/3✕「困った行動の記録」(つまり3回で1点引くイメージ)で著者が計算し、点数に応じて強化子を渡す
※記録用紙は「ムシキング成長日記」。強化子は「ムシキングカード」

 ここまで読んで私は「自分で記録するって、めっちゃ難しいのじゃないかな?特に困った行動なんか記録するの嫌やん。そんなことだいたいやってくれるのか?」と思いました。

 しかし、インフォームドコンセントのところで著者が本人にも説明し、本人が

・キレるのを減らしたい
・(この試みを)やりたい

と言ってから始めてはる。

 ということはここまでの時点で、(ABA の専門家はこんな言葉は使わないかもしれないけれど)かなりの関係性を作っておられたのだな、ということがわかります。

 なお強化子のムシキングカードですが、いろいろ点数があるらしく、私などややこしすぎてさっぱり頭に入ってきませんが、たぶんよく知ってる人ならびっくりするほど理路整然と、やり方が組み立てられていたのじゃないかな(ちゃんと論文には書かれています。私に理解できないだけ)

 ひょっとしたら、もともと詳しい方だったのかもしれませんが、本人さんが好きだから、改めて勉強されたのかも。

 なお適応行動としては「キレかけた時」に「保健室へ行く」「家へ帰ってゲームをする」など言えること(以前はそういう場合に親が本児に言っていた言葉)とし

・適応行動が起きたら「さすがだね」「がんばったね」「よくやった」という言葉をかける
・家事活動を「やって」と依頼して、あるいは自発的にやってくれたら「ありがとう」「たすかった」「うれしい」という言葉をかける

ことを親御さんに依頼している。また著者は本児には上記の言葉を他者に無理に言わせることがないように言っている(このあたりも関係性ができているのを感じる)。そして親御さんにはまた

・自己記録をつけるよう指示しない
・キレた時は危険がない限り黙って離れておくこと
・介入期間はムシキングカードを買ってあげないこと
・親も記録をすること

をお願いしている。

 で、開始したのだが、グラフを見てみると自己記録に、適応行動はたくさん記録されているが、困った行動はあまり記録されていない。母親の記録には困った行動もそれなりに記録されている。そらそうやろなあ・・・なのですが・・・

 しかし、増減を繰り返しながらも困った行動は減っていっている。

 また母親にお願いした記録は、最初「困った行動」が起きた時だけだったので、母親が「良かったこと」も記録したいと工夫して、記録し始められたと。

 推測ですが、このことで「良いところを見る」視線になり、「さすがだね」「がんばったね」「よくやった」「ありがとう」「たすかった」「うれしい」という機会も増えたのではないかと思われます。

 そして、28週目には「困った行動」はほとんど出なくなったので、母親のつきそいが終了しています。

 なお6年時の母親からの報告で、これ以後、学校でも家でも「困った行動」は起きていない、と。また本児からの報告として

「あのころはキレざるを得なかった」
「もうキレないことにしたんだ」

ということでした。

 むつかしげな言葉を使えば、自己記録によるトークンエコノミーとレスポンスコストの併用、ということになるのかもしれませんが、意図を越えて(しかしそれは著者の関係づくりのうまさ、親御さんへの的確な指示があってのことだと思う)周囲が変容し、お子さんが変わっていった、と思われます。

 また機能的アセスメントでも説明できるだろうな。

 なお、かいつまんで、私の雑な言葉で紹介しているので、興味を持たれた方は、是非、本文にあたってみて下さい。

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2024年03月12日

排泄物の異食が消失した事例



 異食について調べていて、このレポート(論文?)を見つけました。

「重度知的障害者に対する行動障害軽減〜の取り組みー排泄物の異食が消失した事例の支援からー」
伊豆山澄男・田口正子・篠原浩貴:『国立のぞみの園紀要』(2014),7:72-77

 しかし、参考文献について検索していたら、下のニュースレターを見つけ、この事例も載っていました。
 ひょっとしたらこちらのほうがカラー写真もあるしわかりやすいかと思います。

のぞみの園ニュースレター 第40号平成26年(2014)4月1日発行
(特集ーのぞみの園における強度行動障害への取り組み)

 ではレポートから。

対象者 Aさん
重度知的障害・自閉症
IQ測定不能、障害区分5、男性、レポート執筆時 50代後半。
乳児期よりクレヨン・紙・砂などを口にする異食が頻繁に見られた。
7歳で知的障害児施設に入所後も、タバコの吸い殻、コーヒー粉、石鹸、茶葉、毛髪、ベニヤ板、紙、毛糸、靴下のゴム、自分の排泄物の異食が頻繁だった。

1996年(43歳)のぞみの園に入所。安全や健康に対する配慮のために生活に一定の制限。

2004年 これまでの支援を見直し「異食改善への援助について」をまとめる。

・当時,激しい異食のため,支援員による絶え間のない見守りや生活全般で多くの制限
・意図的と考えられる尿失禁の回数が増えた
    ↓
絶え間のない見守りが行動障害を助長している可能性
    ↓
支援会議により,「異食改善への援助について」の以下の内容をB寮全体で周知

@過干渉をやめ穏やかに見守る
A寮内の役割・当番の習慣化に試みる(コップ配り,洗濯物たたみ)
B 夜間に他利用者の居室で寝ている時は特に注意して見守る
C支援方法について職員の意識統一を図り実施すること

結果
寮全体で統一的な支援を行ったことで,寮内の役割・当番の内容を理解し、次第に本人にとって心地よい環境へ向けて改善が見られ、異食が軽減していった(消失はしていない)。

2005年(52歳)より専門的な支援を受けられるC寮転所。
転所当初はそれまで減っていた異食が増加。

実践は TEACCHプログラムのアイデアを参考に

・居住環境の構造化「居住の場における混乱防止の為の応急措置」
・日中活動「居住の場から通い,安定した活動を行うことにより自尊心を高める」
・自立課題は「居住の場における余暇対策としての自立課題の設置」
・スケジュール「見通しを持ち,安定した生活を送るため」

行動障害全般は,次第に穏やかになり,安定した生活を送っていた。
しかし,異食,特に排泄物の異食が消失することはなかった。

2009年(56歳?)同様な支援を受けられるD寮転所。

D寮で新たに工夫されたこと

(5)作業の代替活動
 D寮に転寮してから,これまでの 4つの取り組みに加え、新たな支援の検討が加えられた. 天候などの様々な都合により作業活動へ出られない日の代替活動として,居住場所で作業の代替活動を行うこととした。毎日行う作業活動と同等の時間が過ごせるよう,居室において自立課題を用意した。 また, 自立課題棚の最下段には「お茶カード」を用意し,課題終了後にはお茶と交換することとした(写真3.自立課題とお茶カード).A さんの大好きなお茶カードは,自立課題終了の見通しを持つとともにモチベーションを高めることが可能となり,居室における代替活動の意欲に繋がった.

(「やることがあること」「楽しみがあること」ですね)

(6)報酬の工夫
 A さんは,お茶だけでなく,缶コーヒーも好きである。そこで,缶コーヒーを報酬とする方法を検討した.缶コーヒーと交換ができるコーヒーバックを片手に日中活動へ出かけて行くことが日課となり、作業が終了し D 寮に帰すると、楽しみにしていたコーヒーを飲むことが日課となった。このコーヒーバックの利用は、日中活動の場所と寮との移動を,支援員の付き添い無しで移動する初めての試みでもあっ
た。
 また,週末の活動後の報酬はお茶と決め,活動後にお茶と交換した。A さんは曜日の理解は難しいが,このバックにより平日(日中活動のある日=缶コーヒー)と週末(日中活動のない日=お茶)を区別し,経験的に一週間単位の見通しが持てるようになったと考えられる

(これも「楽しみがあること」と、ひょっとしたら「カレンダー(月・日の見通し)の必要性」という話もあるのかも)


 このレポートが出た時点(2014年)で過去2年半、異食が完全消失しているということだから、2011年くらいに消失したと考えていいだろう。D寮に転所して2〜3年くらい、ということか。

 1996年から考えれば、いろいろ考えてから15年、支援の見直しが2004年ですからそれから7年くらいかかっているわけです。
 もちろん長くかかっているのですが、成人になっても改善できるんだ、という希望でもあり、また幼少時からこのような暮らしができていたら、もっと早い段階で「異食の消失」は起こったかもしれません。

 なお、参考文献にあげられていた『あきらめない支援』は検索をかけても手に入れる(購入する)方法を見つけることはできませんでした。私は持ってて記事も書いているので、そちらのリンクを貼っておきます。

参考文献
1) 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園:あきらめない支援−行動問題をかかえる利用者に対する入所施設における実践事例集一.朝日印刷工業株式会社(2011).


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2024年03月11日

「行動的QOL : 「行動的健康」へのプロアクティブな援助」望月昭(2001)を読む



望月 昭
『行動医学研究』2001 年 7 巻 1 号 p. 8-17

 これ、題名からほぼ提言みたいなことを書いてあるのかな、と思い、持ち歩いてはいたものの長い間読まずにいました。

 読んでみてびっくり。特別支援学校だとか、福祉事業所で働こうだとか、このあたりを学ぼうと思う学生とかの必読論文じゃない?なんで誰もそういうことを強調して私に教えてくれなかったんだろう?

 って、そのあたりを勉強したくて大学院に入り、3年も過ぎてるのに、わかってなかった私の勉強不足か・・・(まあ自覚はある)

 しかも2001年に出てる・・・つまり20年以上前に出ているのに、ここに書かれていることがなぜ特別支援学校などで常識になっていないんだ?


proactive:先のことを考えた、事前に対策を講じる

reactive:受け身的な、待ちの姿勢の


1.行動主義とQOL

行動主義の枠組みと価値観

 応用行動分析では行動は環境との相互作用と考える。なので

「同様に「障害」というものも、個人が持つ属性(impairment)として捉えるのではなく、そのような行動成立の不全の状態として捉える。従って「障害」への対処も、個体の側の状態を変化させ環境へ適応させるという、一方的な治療・教育的な発想はとらず、あくまで個人と環境との関係性を修正することによって改善しようとする。」

(引用には□枠を使おうと思ったのですが、今日はなぜかうまくいかないので「 」で)


 そして"正の強化"を提示するのは基本であるとしながらも

「しかし、行動分析学の基本的作業方路は、「正の強化」というものを、本人が現状社会に適応するまで一時的に使用するという「手段」としてのみでなく、それを個々人が生活の中で常に得られるよう環境設定の側に配置すべきという、むしろ「目的」として考えるものである。」


 で自発的な行動というものは


「環境側に「正の強化」を配置するということは、対象者が一方的に、何か好ましいものを「与えられる」(given)ということではない。あくまでも本人の行為によって「獲得する」(get)ことにより、さらに当該行動が継続されるという状態を作ることである。」


 なるほどなあ。

QOL
指標
1) 生活環境側の物理的社会的設定の尺度
(問題となるのは、個人の好みなどが希薄になりがち。→他の誰もやってないから我慢しろ、とかかな)

2) 個人の主観的な満足度の尺度
(問題となるのは、例えば「この施設のご飯は美味しいですか?」と尋ねた時「おいしいです」と答えたほうが、社会的に強化を受けやすい)

行動的QOL
第3の尺度
 行動的な観点からQOLを拡大するという作業は、「正の強化を受ける行動機会の選択肢を増大する」という形で表現される。

行動的QOLの3つのレベル
@まず「(選択性はないが)正の強化を受ける行動」を成立させる段階
(PECSRのフェーズ1やね)
A選択肢があり選択できる段階
B既存の選択肢を本人が否定できたり、本人が新たな選択肢を要求できる段階

 これが2001年に語られてる。

 私が昔勤務していた知的障害養護学校には@〜B全て無かった。

 通常校より教師が圧倒的に多い(通常校なら1:40と養護学校1:3、そしてたいていは運用で1:2)せいで、通常校なら選択させなければうまくできないような場面でも、無理やり人手に頼って選択させないで「これをやれ」で運営していた。(1例をあげれば、通常校なら当時給食で苦手なものが出たら量を減らしたり、食べないという選択肢も行われていたが、私の勤務していた養護学校では無理やりスプーンを突っ込んでも食べさ、完食させていた)
 授業でも、教師が「こういうのが授業」というものに、人手を頼って参加させていた。
 現在の特別支援学校はどうなんだろう?

 なお、(この論文とは無関係だけれど)こういうことを目で見える形にしたのがおめめどうの「えらぶメモ(そのたバージョン)」(2020年頃にできたかな?)であり、否定(拒否)については、おめめどうのセミナーではその重要性を繰り返し繰り返し言っている。
えらぶメモ(その他つき).jpg


 で、当たり前かもしれないけれど、望月さんは応用行動分析家として、「行動の選択機会」で考えると、客観的に測定できるメリットをあげておられる。

 なお

「個々人の選択性の拡大という作業は、可能な部分からスタートすることができ、その実現は、当該組織の職員の環境改善行動自体を支える「正の強化子」となるであろう。」

 これは、「この子(この方)はこういう物(こと)が好きそうだな」というのを見つけて、実際に生活のちょこちょこっとした部分で始められるということなのだけど、結構そういうことしちゃいけないんじゃないだろうか、と思われたり、「この子(この方)は何が好きなんだろう」ということを判然とさせるような意思表出の方法が無い、として諦められたりしがちなもんだろうな。


2.重度障害を持つ個人における選択決定(choice making)に関する実験例

 まず先行研究を概説したあと、ご自分の関わった例を2つ出している。

1)聴覚障害と思われていた成人女性
・成人女性
・重度知的障害
・雑誌のページめくりなど触覚を楽しむ
・周囲で音を出したり、名前を呼んでも反応せず、聴覚障害と思われていた
・本人にとって特に不快とも思えない課題の指示でも急に泣き出す

 約1年かけて「ドライブなら車のキー、散歩なら帽子を机に置き、離れた場所から接近して1点を選択」という方法で選択できることが確認できた(というか、シェイピングできた、と言ったほうがいいのかな?)。

 そして、活動の終わりにはノートを選択することを、最初は指示して教える。これが「終了(あるいは「しない」)」の合図となる。

 これらの活動で「カセットテープで音楽を聞く」ことが好みであることがわかる。つまり聴覚障害ではなく、音に反応しなかったのは、わけのわからないことを指示されることからの逃避の表現であったと考えられる。

 またウーロン茶と苦手な運動訓練とノートの選択肢の場合、ウーロン茶を飲み、ノートを手にとりにこやかに(泣かずに)セッションを終了した。

 なお、セラピールーム(?)で音楽を楽しみだしても、居住棟でスタッフがテープを用意しても逃げていたが、本人が曲を選択するようにすると、職員や他の施設居住者と音楽が楽しめるようになった。

2)強度行動障害の30歳男性

・知的障害(とは書かれていないが、12歳から知的障害児施設に入所しているので)
・破衣
・裸で過ごす
・破壊
・放尿便
・異食

このような方への対処の問題点。

・行動問題により個室管理(要するに閉じ込められていた?そして記録を見ると放尿便はこのために必然になったよう)
・マンツーマン(責任を負わされた職員はリスクを犯したくなくなる。そして全面受容(やりたいほうだい)か強制(虐待)に陥りやすい)
・他の利用者の選択機会を増やすためにも、この人は閉じ込められがち

対応

・部屋の施錠を解く(本人の自発的行為の機会を保障する)
・個室外で(たぶん他の方とも一緒の)「コーヒータイム」への参加
・「選択箱」を用意し、様々な活動に関連する物品を選択し、活動できる

結果

・排尿失敗数の減少
・着衣時間の伸び
・破衣の日常選択場面での消失

 ある意味、当たり前のノーマライゼーション(社会参加)ができることによって行動が落ち着いた。(勉強させたり、SST で教えたりしたわけじゃない!)

3.行動的QOLの拡大作業が示唆するもの

Whitaker(1989)の知的障害を持つ個人のQOLを決定する変数

1.個人の行動に関する要因
(a)スキルと能力のレベル
(b)適応的な活動のレベル
(c)ネガティブな行動のレベル

2.環境・制度に関する要因
(d)快適度、食事、健康などの観点から見た物理的環境の条件
(e)その地域のメンバーと交流したり、施設を利用したりする機会が与えられているかどうか
(f)有益な活動の妥当性と総量
(g)選択の機会
(h)その社会の貴い一員としてどの程度扱われているか

 そして「(g)選択の機会」の重要性を述べている。

望月さんのまとめ(?)

「行動的QOLという枠組みは、障害を持つ個人の「障害性」(impairments や disablities)を改善し、その結果として「生活の質」を高めるという「能力のボトムアップ」の展開を想定したものではない。現状の障害性のままに、その障害の軽重にかかわらず、行動の選択、つまり環境あるいは社会的参加の決定権を本人に委ねるというものである。その意味では、個人における個別の行動の成立としての「権利のボトムアップ」をはかるものであると表現することもできよう。」

 すごい・・・

 私が望月さんに関連して書いた記事

いずれも1998年度末(1999年3月の記事)





















posted by kingstone at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月09日

『VB指導法』(メアリー・リンチ・バーベラ著)を読む




『VB指導法 発達障害のある子のための言語・コミュニケーション指導』
著:メアリー・リンチ・バーベラ 協力:トレイシー・ラスムッセン
監訳:杉山尚子 訳:上村裕章
原著は2007 日本語版は2021

 すごく興味深く、今までわからなかったところがわかった部分もあったりしました。

 一部、見出しとかも紹介してますが、自分のこころ覚えのためで、全部では無いので、興味を持たれた方は、本を購入して実際に読んで下さい。

 著者メアリー・リンチ・バーベラは、長男ルーカスが1歳9か月で自閉症の診断を受けた時、看護師(当時看護師長)で、夫は医師。

 夫が長男に自閉症の可能性がある、と言った時、強く反対した。

 しかし、その後1999年の診断(診断を受けるまでには時間がかかったとのこと)の後は、ABA による療育を受け、またメアリーも BCBA(認定行動分析士)の資格をとり、大学院に行き、地域の自閉症協会を立ち上げ、指導的立場にまでなった。

 1999年からロヴァース研究所から1名のコンサルタントに月1回来てもらい、セラピスト3名とメアリーをトレーニングしてもらった。

 その後、ロヴァース法(DTT)でない「VB(言語行動)指導法」をするようになっていく。

 VBではスキナーの『Verval Behavior』(1957)を重視し、1998年にサンドバーグとパーティングトンの出版した『Assessmento of Basic Language and Learning Skills』(ABLLS:エーブルスと発音する)をよく参考にし利用(評価用紙としても使える)する。

追記
『Verbal Behavior』はアマゾンの kindle 版だと今日の価格で 649円。
ただし・・・英語だけど・・・



第2章 応用行動分析の"いろは"

 この本全体を読んで、メアリーさんが非常に慎重に、かつ「強化子」「強化」を使って、教えようとすることがよくわかる。

 あなたは、子どものすべての要求が満たされ、強要されない状況を作ってから、子どもと課題を始める必要があります。しかし、心配しなくてもそのような状況を長く続ける必要はありません。私は、親と専門家が、悪気はないのにこの有意義な出発点を見落としていることをずっと見てきましたが、その結果は子どもと専門家の双方にとって、悲惨なものでした。

 また問題行動はコミュニケーションであるとし、しかし

 大多数の行動分析学者は、問題行動がいつ起こるのかを知りたいものです。これは重要なことではありますが、私は同時に、その問題行動が起さないのは、どこで、いつ、なのかも確認します。それによって、何から手をつければよいのかがわかるのです。

 とも述べている。

 また行動の機能を分析することの大事さも言っている。

 ジョニーの噛む行動には、2つの異なる機能があることがわかります。1つは彼が望むものを手に入れることであり、もう1つは望まないものから逃れることです。これらの2つの噛む行動には、それぞれ別々に対処する必要があります。

1.行動の ABC 分析
2.データを集める
3.行動の機能を特定する
4.問題行動の機能に基づく介入計画の作成
5.注目やものの獲得が機能の行動に対処する(「『注目』や『ものの獲得』という機能をもった行動」に対処する)
6.逃避が機能の行動に対処する(「『逃避』という機能をもった行動」に対処する)
7.感覚刺激で強化される行動
8.問題行動に対処するためにあなたが今すぐ始めるべきこと
(8.では介入したい行動を選び、計画を立て、また周囲の人とも情報共有し、一貫した対応をすることを述べている。)

第3章 子どもをアセスメントする
第4章 強化子を最大限に増やし、強化のしくみをつくりあげる

1.誰もが強化子に反応する

2.強力な強化子を見つける
 レイサム博士は、Power of Positive Parenting (1990)の著者ですが、すべての人間は、否定的なコメントや「ああしろこうしろ」という指示1つに対し、8つの肯定的なコメントが必要だと述べています。彼の講演を聞いたことは、私にとって人生の転機でした。彼は否定的なコメントが多い学級と、肯定的なコメントが多い学級とを比較し、否定的なコメントの8倍の肯定的なコメントを与える必要があることを学んだのでした。
(これは「強力」というのではなく、数の問題だけど)

3.強化子を選ぶ
(量的には小さい、あるいは小さくできるものが使いやすい)

4.テレビや DVD を強化子として活用する

5.強化子を見つけるために自己刺激行動や問題行動を調べる

6.強化子をアセスメントする

7.年齢に適した強化子の開発
(年齢相応)

8.学習環境と強化子のペアリング
ペアリングとは、環境、人、教材と、子どもにとって既に強化子となっているものとを組み合わせる(ペアにする)方法です。

(場所、部屋、人、教材とかが嫌なものにならないように。居心地のいいものになるように、ってことだよな。不登校になる、ってことは学校がペアリングできていない、ということだよな)

 私は専門家たちが、「私たちはまず1週間でペアリングを行ない、それからプログラムを始めます」と言っているのを実際に聞いたことがあります。しかし、それは効果的ではありません。親や専門家が子どもと一緒に作業をする間は、ペアリングを続ける必要があります。学校やセラピー中など、指示が非常に強力な場面では絶対です。

9.強化子とペアリングする方法

(ここで、人とペアリングする時は、まず強化子を渡してから離れることを推奨している。人への不信感がある場合も多いだろうしね。そんなふうにゆっくりゆっくり近づいていく、というような態度がこの本のいろんなところで見ることができる)

10. 指示は出さない

(まず最初にするのは、子どもからマンド(要求)ができるようにすること。それまで指示はしない。これ、めちゃ大事かも)

11. VR強化スケジュール
 強化子のペアリングと簡単な指示を出すときは、VRスケジュール(変率強化スケジュール)を知っておく必要があります。VRとは、強化と次の強化の間に子どもが行なった正反応の平均数です。始めは、指示なしで強化子を与えます。その後係々に指示の回数を増やしながら、すべての正反応の後に強化子を与えます。これを“連続強化"といいます。その後にVRのスケジュールに移行します。
 VR 強化スケジュールでは、強力な強化子を1つ得るために、子どもに何回課題をすればいいかが予測できないから有効なのです。VR スケジュールは、時間の経過とともに強くて安定した反応を起こさせることが証明されています。

(ここらへんになると、むちゃくちゃ難しいのじゃないかな)

第5章 マンド(要求言語)

(ここで非常に面白かったのは「1つだけ(例えば「ビデオと言う」→「ビデオを見せてもらえる」)のマンドを教えるのでなく、複数のマンドを教える」というところ。過剰汎化、なんでも欲しいものがある時「ビデオ」と言う、が起こるから。しかし・・・例えば「ください」ですべての要求を伝えるとかはこの本で否定的に語られているけれど、別にいいんじゃね、と思うのだが、目の前のお子さんによるのかな?)

第6章 無発語あるいは最小限の発声しか出ない子どもの発話の増加と改善

1.手話とその他の代替コミュニケーション
(著者は代替コミュニケーションとして手話推し)

2.音声出力装置
(VOCA:Voice Output Communication Aid のことで専用機もあれば、最近だとスマートフォンやタブレットのアプリでもあります)

3.絵カード交換式コミュニケーション・システム
PECSRのこと)

その他略

第7章 誤反応をさせない教え方と言葉を転移させる方法

1.プロンプト

2.侵襲性の度合いによるプロンプトの階層
(言語プロンプトは侵襲性が低いと考えられているけれど、あまり繰り返してやっていると、まるで小言になる、っての面白かった)

3.誤反応をさせない教え方と言葉を転移させる方法

4.誤反応の修正
(ここらへんも難しいなあ・・・というか正確な発語をさせる方法なのだけど)

第8章 受容言語とその他の非言語行動の指導

1.受容言語または聞き手スキルの指導
(スキナーが「受容言語」という言葉の「受容」は認知的すぎると考えていたので、マーク・サンドバーグが「聞き手スキル」という言葉を使ったという話。
 ここ、私が「認知主義」の立場にあるからだけなのかもしれないけれど、「聞き手スキル」という言葉は音声言語に偏りすぎじゃないか。「見てわかる」受容性コミュニケーションもあるじゃないのかな。そして自閉スペクトラム症のある人にはそこが非常に大切になるのじゃないかな。必要な情報が簡単に手に入るのに、スキルアップしないと必要な情報が入ってこない、というのは困ると思う)

2.日常的な環境の中で受容言語を伸ばす

3.集中指導で受容言語を教える

4.模倣の指導

第9章 言語行動の指導

1.タクトの指導

2.エコーイックの指導

3.イントラバーバルの指導


第10章 集中指導と日常生活の中での指導を組み合わせる
第11章 トイレとその他の重要な身辺自立スキルの指導
第12章 最後にお伝えしたいこと

1.診断をすぐに受け入れること

2.失敗の定義
(「普通」にならなければ「失敗」と考えることの間違い。治りはしないけれど成長する、という話)

3.高機能・低機能の罠をさける

4.できる限りたくさんのセラピーをできる限り早く受ける
(この「たくさん」は種類ではなく、「良いセラピー」という前提があっての「時間数」のことと考えられる)

(リンク先に別記事)

6.新しい治療は1つずつ試す
ルーカスを診断した児童発達精神科医であるジェームズ・コプラン博士は、自閉症治療に投薬を使うのは良質な行動的プログラムが実施された後だ、けだと言ってくれました。
(ここは深くうなずく。)

7.子どもの治療のためにできることすべてを学ぶ
(たぶん、この「治療」は「treatment」の訳だと思うのだけど、治すための「医療」ではなく、「treatment」には「もてなし」というような意味もあるから「良き関わり方」みたいなことだと思う。)

8.体に気を付けて、一日一日を大切に
(子どもに関わらない自分の余暇を大切にすることも)

9.逆境を最大限に利用する

 もともと親御さんで、ひとごとでなく自分のこととして学んで来られた方の言葉はすごく参考になりました。

 しかしもともとメアリーさんは、修士をもっていて、お子さんがどうであれ博士課程にも入るつもりだった方。お子さんが診断を受けた当時看護師長もしておられたということはリーダーシップもある方。とても、多くの親御さんがマネできることとは思えません。

 アセスメントのところでも、表を使ってすごく多くのことにチェックを入れたり、もうたいへん。

 ただ、特別支援教育担当教師や障害のあるお子さんに係る保育士さんなどは、専門性を身につけるためには読んでみるとすごく参考になりそうです。

 しかし私にはやはり音声言語にこだわりすぎてるような気がして、「しんどいな」「めんどくさいな」と思えてしまい、もっと楽にできるところですませてもええやん、別に正確に聞き取れたり、しゃべれたりしなくても、視覚的支援で簡単に(受容的に)わかってもらったり、視覚的支援も併用して意思表出してもらったりしたらええやん、と思ってしまいます。

 エリック・ショプラーがロヴァース法に対して「家族を圧力鍋の中に入れてしまうというリスクがある」と述べた、というのを思い出してしまいます。

自閉症に関する The NewYork Times の 1987年の記事 
 
 しかし、メアリーさんは、いたるところで「あせらないように」「子どもが強化される環境で」という意味のことを書いておられるのは強調しておきたいです。だから子どもは圧力かけられないけど、支援者側が圧力かけられる感じかな・・・もちろんプロになるにはそれも必要な時期があるのかも。で「考えるんじゃない。感じるんだ」というレベルで使いこなせるようになり、と。しかし親御さんは、知っておくといいけど、できなくても全然問題ないのじゃないか、と。

 ただ、私がこんなことを書けるのは、「本当にたいへん」な状況をまだ目にしていないからかも。世の中には音声言語にこだわってなくても「親子で圧力釜の中に入るしかない」場合もあるのはわかりますから。

 う〜〜ん、しかし特別支援学校には最低2人、このレベルで「わかっている、できる」人は欲しいな。1人は校内指導、1人は地域の学校からの相談にのる。それでなきゃ「センター機能」なんて、口はばったくて言えないでしょう。

 あと、メアリーさんも、いろんな人に相談をかけています。相談できる人、欲しいよなあ。

 放課後等デイサービスのスタッフだったらどうだろう・・・やはり「放課後」だからのんびりしたいよね。まあ ST さんとか心理士さんとかがいらっしゃるなら、このレベルのことをやってもいいかとは思うけれど、一般職員に「できて当然」というのは酷だと思う。

 で、親御さんにものんびりして頂き、成果だけ受け取って頂きたいけれど、メアリーさんがそうであったように、日本もまだまだ親御さんが勉強しないとお子さんを守れないからなあ・・・










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2024年03月08日

住んでいる地域を変えていく(『VB指導法』より)




 ちょっと必要あって読んでみました。

 著者メアリー・リンチ・バーベラさんは、元々看護師さん(当時看護師長もしていた)で、夫は医師。

 長男ルーカス君が1歳9か月、夫氏がルーカス君に自閉症の可能性がある、と言った時に「ルーカスに自閉症の可能性がると言い出したのはどうかしている。ルーカスは自閉症ではないし、二度と『自閉症』という言葉は聞きたくない」と抗議されてます。

 しかし、その後1999年の診断(診断を受けるまでには時間がかかったとのこと)の後は、ABA による療育を受け、またご本人も勉強され BCBA(認定行動分析士)の資格をとられ、大学院に行き、地域の自閉症協会を立ち上げ・・・という指導的立場にまでなられた方です。

 いろいろ面白かったのでまたまとめたいのですが、今日、こんな記事を見つけました。


 この中で渡米したママさんの思いとして伝聞で伝えられたのは

「子どもが支援級行きになることがわかり、入るはずだった学童もそれを理由に断られてしまい、日本の教育はクソなので渡米して9月入学に備える」

ということなのですが・・・『VB指導法』の他の部分はまた別にして、まずこのあたりを書いてみたいと思います。

 『VB指導法』は、最終章で、自閉スペクトラム症のあるお子さんをもった親御さんたちに語りかけているところがあります。

 その中の

5 子どもの権利を擁護する

 の中にいろいろなことが書いてあります。

 私が住んでいた郡は(他の多くの郡と同様に)少なくとも10年は遅れており、1990年代後半でもABA セラピーが提供されていませんでした。しかし、子どもが危険にさらされていると確信していたので、すぐに動きました。適法手続きのために同時期に動いていた友人たちの助けもあり、教育機関の上層部の人々が動いてくれ、ルーカスだけでなく郡の子ども全員のためのサービスが向上しました。

 権利擁護をしたくないという家族もいるでしょう。擁護する代わりに、より良いプログラムを求めて、学区を文字どおり「追いかけて」引越しをする人もいます。私の考えでは、引越しをするよりも住んでいる地域の教育プログラムの選択肢を変える方がよいと思います。なぜなら、引越しをしたとしても、そのサービスはいつ変わってもおかしくないメンバーで構成されている教育行政や教育委員会によって決定されることが多いからです。「自閉症の治療に良い」区域に引越ししたとしても、1年後に選出されるメンバーがプログラムの予算を打ち切ってしまうかもしれないのです。あるいは、素晴らしい先生を見つけて家を売って家族ごと引っ越しても、その先生が病気にかかり、いなくなってしまうかもしれません。

 「ここが良い」と思っても、年度変わりで変わってしまう可能性はアメリカも同じです。

 結局は「今、住んでいる地域を自分の力で変えていく」というのが一番確実なわけですね。まあメアリーさんほど頑張れる人は少ないでしょうけれど。

 で、「地域」もかなわなければ、まずは「自分の家」だけでも、というところから。

 また、上の引用のところでも、アメリカでも「そんなに整っていない」ことが書かれています。

 私は1990年頃からアメリカの教育制度に興味を持ち「なんかIEP(個別教育計画)があって、IEP会議では専門家も出て来てくれて支援方針を決められるらしいで。すごいなあ」とか思っていましたが、前掲書の同じ権利擁護のところにこんなことも書かれています。

 アメリカでは、特別なニーズのある子どもは無料で適切な公的教育(FAPE)が受けられます。こういうと聞こえがよいですが、学校の管理者が FAPEに該当すると思われるサービスを子どもに提供したがるわけではありません。

 すべての資料をファイルに綴じて準備しておきましょう。必要な報告書をすぐに見つけられるようにしておきます。必要があれば、子どものプログラムの欠陥を指摘しておくとよりよいでしょう。

 個別の指導計画(IEP)やプログラムを検討する場、お子さんの教育について話し合うすべての場に家族や友人も連れて行きましょう。そして会議の記録をとってもらうか録音をしてもらいます (これを行なぅ場合は責任者に数日前に知らせておく必要があります)。このような会議にひとりで臨むと怖気づいてしまうものです。

※FAPE(Free Appropriate Public Education:無料で適切な公的教育)米国連邦法では、障害のある3〜21歳の子どもはこの教育を受ける権利がある。(とされている・・・連邦法でそうだからといって州によっては結構ええかげん)

 また私がかつて見た映画いろとりどりの親子」を見ていても、IEP できちんとした教育を受けてきているようには見えませんでした。

(ただし、良い IEP を作ってもらって教育を受けて帰国したお子さんを、私は担任したことがあります。ですから機能していないわけではないのですが、地域差、学校差がえぐいくらいにある、ということです)

 でも支援会議に、夫婦で参加はもちろん、友人にも来てもらう、というのは良いアイデアやなあ・・・


posted by kingstone at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする