※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年05月25日

映画『バティモン5』(パリ郊外(バンリュー)の話)




 シネ・リーブル神戸で見て来ました。

 私は映画を観る時に『週刊文春』の映画評欄を参考にすることが多いのですが、この映画はほとんど星3つ。ってことは「まあ見たいなら見たらいいんじゃね」と、あまりお勧めではない評価が多かったです。

 しかし、移民や難民問題は、現在は欧州ほどでは無いにしても、既に日本でも直面している問題だし、興味があったので観に行きました。

 パリ郊外(バンリュー)というのは、移民が主として住んでいるスラム地区のことです。シャンゼリゼだ、エッフェル塔だとかいうパリとは大違い。

 もちろん、シャンゼリゼだ、エッフェル塔だというパリも本物ですが、パリ郊外も本物・・・

 ラジ・リ監督は、主人公の女性と同じくマリ共和国出身の両親の元、自身もマリ共和国で生まれ、3歳の時に移民して来た人。こういう場合、1世ということになるのかな。

 なお、マリ共和国は、日本外務省からは退避勧告が出、首都バコマには渡航中止勧告が出ています。ってことは、移民というよりも難民に近いのかもしれない。

 そして、路上販売していた人たちが蹴散らされたり、集合住宅から数時間で全員退去させられたり、もうウワーーーッというエピソードの連続なのですが、監督の体験に基づいているとか。

 めちゃひどい話なのですが、しかし登場人物はそれぞれ一生懸命、良かれと思って、あるいはしかたなしに、行動を選んでいて、しかしひどい摩擦が起きる・・・

 警察官もやりたくないのがありありしながら規制させられていたり。

 これもまた本当のパリ。

 これ、例えば教育システムを学びに海外に行く時、もちろん相手先は、「できるだけ参考になるように」と良かれと思って、一番うまくいっている部分を見せてくれがちです。

 何度もアメリカに見学に行っている知人が「アメリカでは〜〜なシステムがあって・・・」とか言うのだけれど、私が比較教育学で学んだ例としてはかなりまずくなってるし、「そんなシステム、州によっても、学校によっても違いがありすぎやで」みたいなことがよくあります。こちらの本にもそのあたりのことが出てきます。


 なお、パンフレットに『移民社会フランスで生きる子どもたち』を書かれた増田ユリヤさんがエッセイを寄せておられ、その中でこんなことを書いておられます。

 この街の再生は、2005年の暴動以降、教育現場を中心に行われていた。そこには、幼稚園から中学校まで、教員をはじめとした関係者はもとより、警察や消防、地域住民(移民)の代表や保護者、パリ市を拠点に活動するNPO団体なども参加。成績優秀者には大学進学への道やエリート教育機関であるグランゼコールに進む道筋がつけられ、そうでない子には、最低限の資格を取得して、社会に出て働くことができるカリキュラムが組まれた。貧しさから外出の機会すらない子どもたちには、フランスの名所旧跡を訪ね歩くイベントを提供したり、日頃の悩みを相談したりするカウンセリングの時間もあった。
 警察官は一市民として行事に参加し、住民との交流を重ねていた。フランスでは、校長以下、最低3人の行政職員が学校の敷地内か隣接した場所に住む決まりになっているが、中学の校長は「ただただ、子どもたちと向き合っていたという記憶しか残っていない」というほど、無我夢中で地域の再生に取り組んでいた。

 それでも、問題は収まっていないわけですが・・・

 日本も「労働力を移民に頼ろう」としたり、難民が入ってきたりするわけですから、同化策・融和策(別に悪いもんじゃないと思ます。少なくとも「困っているまま放置」するよりは)にお金を最初からかける必要があるんだろうな。

 なお、ラ・ジリ監督『レ・ミゼラブル』という映画も2019年に撮られてますね。有名なミュージカルのほうじゃなく。



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2024年04月28日

「差別」とは何か?(『日本の死角』講談社現代新書)




 この本は、多くの著者が短い文を書いている。その中の1つ。

"「差別」とは何か?アフリカ人と結婚した日本人の私がいま考えること"

 著者の鈴木裕之氏はアフリカ音楽を研究する文化人類学者。パートナーはギニア人女性。

 その結婚に至るあれこれは、この著作に書かれているとのこと。


 なお、詳しい書評はこちらにある。





 印象的なエピソードを2つ書かれている。

 婚約時代、ジャマイカでレゲエについて調査しようとした時。老舗の音楽グループが著者を受け入れるかどうか相談するのだが、長老が強く反対していた。そこで親しくなっていたメンバーが「お前は、アフリカ人のフィアンセがいるんだよな」と言うので、フィアンセと2人で写った写真を見せると、長老が満面の笑みとなり「ノープロブレム」と言った。


 夫婦でコートジボワールに里帰りした時、出入国審査のさい、テロ事件で神経質になっている係官が妻氏に厳しい顔で「ひとりなの?」と尋ねた。妻氏が「いいえ。夫と一緒です」と答えると怒ったような表情で「どこ?」と言った。
 妻氏がすぐ後ろにいた著者を指差すと、まずびっくりし、すぐ恥ずかしげにはにかんだような表情を浮かべた。


 また、黒人内でも民族により、あるいはアメリカ黒人とその他の黒人の間、というように多様な差別が存在するし、著者自身、アジア人として差別された体験も書かれている。


 で著者は人間は分割し、群れて安心する。「われわれ/他者」と区別し、そこで「われわれ=優/他者=劣」という意味づけがなされる。この「分割=差異化=意味付与」がしばしば人を傷つける。

 しかしそれらは人間がもともと持っている機能(?という言葉は使われておられないが)だから著者は、善意(理念?)による差別反対はあまりにも無力だ、と。

 で、それを乗り越えるには、人と人とのコミュニケーションしかないであろう、と。

 まあそうやろな。もちろん「差別はあかんよ」という教育も必要だろうけど、腹の底からわかるにはコミュニケーションしか無いやろな。

(そうか・・・Twitter(X) とかでは自分の言いたいことだけ主張して、相手の言いたいことを受け止める双方向になりにくいところがあるのかな)

posted by kingstone at 11:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月19日

『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道を行く』宮島未奈著






 かなり、以前に『成瀬は天下を取りにいく』は購入し、しかし積読になっていました。

 今回、本屋大賞を受賞されたので、読んでみたらすいすい読めて、1日で読んでしまいました。

 こんな子、いたよなあ。

 本人すごく楽しく感じてるのに、表情には出ない。

 やりたいことが周囲の子からかけ離れてて、小学校や中学校では浮いていじめられるが本人は気づかず、少数の理解者と居場所がある。

 高校くらいから「とんがったやつ」と認識されだす。

 みたいな・・・

 で、『成瀬は信じた道を行く』を昨日買って来て、やはり1日で読んでしまいました。

 私としては、1か所不満がありました。

 やはり1冊に1章は西浦航一郎君を出してほしい。

 ここはひとつ西浦君には京都の私学か、滋賀の立命館、あるいは滋賀大あたりに進んで頂いて成瀬とのロマンス(?)を期待したいところ・・・

 宮島未奈さんの X(Twitter)を見ると、大津市、滋賀県が聖地巡礼で期待大なことがよくわかります。

 私も行ってみたい。
posted by kingstone at 09:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月17日

映画「あまろっく」





イオンシネマ明石で

昼間 14:40 からの回でしたが、20人くらいは入ってたかな。

パンフの後ろにあったロケ地マップがいいです。
最近のパンフにはついてるのが多いですね。

まあ「そうはならんやろ」という話ではありながら、フィクションそしてファンタジーとして、見てほのぼのしました。



ーーーー ネタバレあり ーーーー



江口のりこさん(39歳独身ニート役)がいろんな役ができることは今までの映画・ドラマでよーく知ってますが、ダブル主演の中条あやみさん(20歳で65歳と結婚する役)が、「かわいい」モードから「戦闘モード」に変わるところがめちゃリアル・・・

もちろん脚本・演出あってのことでしょうが・・・

しかしもともと大阪出身でパンフに

本来「あれ、なんやっけ?おヘソ出して踊るやつ」というセリフを

「あれ、なんやっけ?ハラ出して踊るやつ」

と間違えたエピソードが載ってました。

さもありなん、です。
なんか私の周囲にいた人の顔を思い出します・・・

最終的には、なんか NHK でやってた「逆転人生」を思わせるストーリーです。

今週の映画.com の国内映画ランキングには入ってませんが、たくさん入って欲しいなあ。


追記
 江口のりこさん演ずる優子は、どっかで44歳と書いてあったけど、たぶん間違い。
 あっ、公式サイトにちゃんと39歳となってた。
 それが2023年のことだとすると、阪神淡路大震災は28年前。
 優子は11歳。
 合う。
 ってことは31歳でリストラされたわけね。
 本文も訂正しとこ。

posted by kingstone at 19:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年04月03日

『舟を編む』三浦しおん著




 今、NHK BS でドラマ『舟を編む』を放映しています。

 もう毎回、泣かせられながら見ていますが、昔(なんともう10年以上前になるんですね)、映画版を見ていて、ドラマはその後のオリジナルストーリーかと思っていました。池田エライザさんがやってる岸辺みどりさんというキャラクターの記憶が無く・・・

 で、小説を買って読んでみたらちゃんと岸辺さん、重要なキャラクターとして書かれていました。で、映画のパンフを取り出して見てみたら、なんと黒木華さんがやってられました。びっくり・・・というか記憶が抜けてるな・・・

 もちろんドラマは10年後ですから、当時のままではすまず、小説には出てこなかった電子化の必要性なども取り入れられていて、またストーリーもオリジナルな部分(そこもいいですね)もたくさんあります。

 私自身もアプリ版、紙版の辞書、どちらも欲しくなりました。(今は、購入した物は家にまったく無い・・・)

 しかし、ドラマにアイデアとして出てくるアプリ版もついてくる辞書とか、現在あるんだろうか?





posted by kingstone at 20:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする