※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年12月19日

『私労働小説 ザ・シット・ジョブ』ブレイディ みかこ著




 あとがきによると「ノンフィクションではないし。自伝でもない」とのことですが、「本当にあったことも若干まざっていることは否定できない」とのこと。「私小説」だと。

 短編集で読みやすいです。

 ホスト・ファミリーにいいように使われたり、ええしの家に住み込みのナニー(子守役)だけでいいから来ないか、と行ってみたら、その前に行った時のお上品な部屋とはうってかわって、地下の窓もない部屋で、かつ白人の父親がなんかスキあらばネンゴロになりに来ようとしてみたり(しかし日本でもアジアから出稼ぎに来てる人に同じようなことやってる人がいるだろうな)。


「スタッフ・ルーム」

 あと、「子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から -」の時かその前後の体験かと思われる話。

 労働者階級の保育士希望の娘さん(apprentice:見習い(?)、非正規というか、正規職員の半分の給料)が、中産階級の上司からすごく上から目線であれこれ言われるのとか、めちゃ胸が衝かれました。






「ソウルによくない仕事」


 ランチを作る仕事も面白くなく、ランチもうまくできず、まわり(仕事先の、英国から帰りにくくなってしまっている日本人達)から無視されたり悪口を言われたりして、どんどん自尊感情も低くなってきている主人公に対して。下宿先の移民の大家さんが言った言葉。

「自分のソウルによくない仕事はやめるべき」

 で、主人公は決断して辞めると社長に宣言して、もう周囲を気にせず「自分が食べたいと思うもの、自分が美味しいと思うもの」を作り出したら、どんどん楽しくなってきて、美味しいものが作れるようになって、周囲の態度も変わってきた・・・これ、思い当たるところがあります。

 私が肢体不自由養護学校に勤務していた頃、「動作の学習」というコマで動作法が教師全員で取り組まれていました。

 まあいろいろ考え方は変わってきていきつつあったとはいえ、やはり「訓練」の色は濃かったです。

 で、3年間、熱心に「訓練会(動作法も動作法以外も)」に通った後、「私は訓練捨てた」と宣言・広言して AAC と取り組むようになりました。

 その頃から SV さんなどから「最近のkingstoneさんの動作法に取り組む姿勢が素晴らしい。みなさんも真似してください」と言われたり、なんか周囲からの評価が上がってきたのですね。

 あれは何だったんだろう。


 久しぶりに小説が読めました。






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2024年12月14日

野木亜紀子脚本ドラマ(「逃げ恥 新春スペシャル」はコロナ禍を記録した記念碑的作品だと思う)




 ちょっと前にすごく人間不信になり、激しく落ち込み、SNS から離れてました。

 その間、アマプラで野木亜紀子さんの脚本のドラマを見続けてました。

2016年10月 より

2018年1月 より

2018年10月 より

2020年7月 より

2021年1月2日放映

 どれもこれもコメディ的であったり、設定が突飛であったりしながらも、なんかすごく大事なことをセリフでやりとりしてはる。

 10秒飛ばしで見るなんでできない感じ。

 で『逃げ恥 新春スペシャル』は、2021年の1月2日放映。

 今 Wikipedia の『COVID-19ワクチン』の項目を見てみたら

2021年3月時点で、308のワクチン候補が様々な段階で開発されており、73件が臨床研究中

 つまり、ワクチンもまだ出てきていない段階。

 日本では、2021年2月から医療従事者への接種が始まり、4月から65歳以上の高齢者、そして年内に「日本国民のほぼ8割に当たる1億119万人あまりが国内で少なくとも1回の接種を受けた」ってことですから、ほんとそれ以前の話。


 これは菅義偉首相、河野太郎大臣以下政府のみなさんのおかげだと思います。

 『逃げ恥 新春スペシャル』は、当時の「恐怖感」「どうなるのかわからない感」がすごく出てて、これは記念碑的作品じゃないだろうか。

 なんか最近は、弱毒化やワクチンがある程度普及したことにもより、喉元すぎれば感が世に出てきてますけど。


 で、最近ヒットした映画『ラストマイル』も野木さんの脚本なんですね。


 『アンナチュラル』や『MIU404』の人たちも出てくるし。

 また現在やってる『海に眠るダイヤモンド』 はリアルタイムでは未見ですが、またアマプラに来たら見てみたいと思います。


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2024年11月03日

映画『アイミタガイ』黒木華





 良かった。





ーーーーーー ネタバレ(?公式にも書いてるけど)あり ーーーー

 妻が、黒木華ファンにして近鉄ファンということで、私はつきあいで観にいきました。

 しかし、これがまた良かった!

 なんか、しみじみ幸せな気分になれる、というか。

(でも冒頭で大悲劇があるんだけどね)

 もう、どの年代でもカップルにお勧め映画です。

 しかし・・・そんな中、私達の何列か後ろに並んで観ていた中学生男子3人組。

 特にアイドルが出てるわけでもなし・・・すごい映画通な中学生?

 なお、公式サイトにロケ地マップがあって、こういうの嬉しいな。

 でも、桑名市・名古屋市・蟹江町・四日市市とあるけれど、近江八幡市が抜けてる・・・

 で、近鉄はあちら方面ばかりで、大阪や奈良のは出てこない。そりゃそうか・・・

 あと草笛光子さん、先日、映画主演もしてはったけど、91歳でめちゃお元気。すごい。

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2024年10月05日

『人口減少時代の再開発』NHK取材班




 読書メモ。

 この本の取材チームの問題意識は、

「なんでまた地上げが始まっているのか」

というところから出発。再開発で権利変換方式で高層ビルを建てるには地権者の 2/3 の同意があればいいのだけど、少し広い土地を持つ地権者が狭い土地に分割して売ったことにして、地権者を増やせば無理を通せる、と。

 なお、高層ビルだと、元の地権者にビルの一部の権利を与え、高層部分をマンション等にして売れば、地権者はお金を出さずに再開発できる、という仕組みだそうですが。

 まあ、地上げとかばかりでなく、地権者達の必要性で再開発をしているところがたくさんあるわけです。

 実例がいろいろ出てきます。

 で、最近はコロナ以降、建築費の瀑上がり(以前の1〜1.5割)があり、作業員の不足でさらに工期が伸びて元の計画を見直さなくてはいけなくなったり、地権者がお金を出さざるをえなくなったりしている例がたくさんあると。

 まず取り上げられるのが


秋葉原

 地権者の推進派としてオノデンの小野さんは、秋葉原のビルが老朽化し人が集まれる場所が少ない、電気店街からサブカルの街に変化してきているなどから

「再開発でできるビルや大型の広場を多くの人が使える拠点にしたい」

 反対派の石丸電気の石丸さんは

「秋葉原の街が変化をとげてきたのは、計画的なものではなくて、時代の変化を敏感に感じ取って自由に商売ができる土壌があったから」

とおっしゃっている。変化への対応ということでは両者同じ主張なのだけど、うむむ。

 なお、千代田区は耐震性の強化を掲げている。この耐震、防災の必要性は多くのところで言われている。


福岡市の天神地区

 ここは市長さんがはっきりと耐震を言ってはる。

 私は覚えてなかったのですが、2005年「西方沖地震」の衝撃が大きかったと。

 
 で、再開発するために、高層ビルを建てたいのだけれど、福岡空港がすぐそばにあるため、高さ制限があった。それを国家戦略特区を活用して、エリア単位の高さ制限を約 115mにすることができた。

 ちなみに、115mというのは神戸市のタワマンで言うと、「神戸市・超高層ビルデータベース・ランキング一覧」によると


須磨コーストタワー 115.99m
アーバンライフ神戸三ノ宮ザ・タワー 114.300m

たぶん、全国のタワマンの中ではちっちゃいほうですね。なお、今作ってる最中だけど、


 が垂水廉売市場付近の再開発で作っているところですが、これが 114.893m でやはり天神地区での最高峰と同じくらい。ここも廉売市場が廃墟っぽくなっていたし、火事もあったりしたから、ここの再開発には期待したいですけど、建築費高騰で計画を変更せざるをえなかったとか。

 で、話をもどして、天神地区の再開発物件には九州中はもちろん東京からも投資マネーが入ってきていると。

 たまたま取材に行った時に不動産屋さんに来てたフランス人が「東京なら4%、福岡なら8%の賃貸利回りが期待できる」と言ってたとか・・・

 う〜〜ん、投資マネーで賃貸料が上がると、若い人とかお金があまりない人が起業しづらくなるなあ。

 しかし、地元の人が天神にできた新しいビルにオフィスを求めると、元のオフィスが空く。その「二次空室」をどうするか、も問題だと。

 また福岡市の2018〜2022の合計特殊出生率は九州ワースト、全国でも下から6番目と。「仕事をするところで子どもを産み育てるところではない」ということか。

なお、「ユニークなまちづくり地域の取り組みとは」という章もある。


 1964年に都市計画が策定され、小田急線の地下化が完成したのが 2013年。

 1970年代には、計画に反対のデモもあり、また高いビルを建てることへの反対運動も(2000年代?)起き、2006年には50人の地権者を中心とした原告団で「まもれシモキタ行政訴訟の会」もできている。

 で、小田急電鉄まちづくり事業本部の方は、徹底的に話し合うことを選び、世田谷区が主催していた「北沢デザイン会議」や「北沢PR戦略会議」にも出席し、街の人々の「こうしたい」を実現する「支援型開発」という考え方だと。例えば

1.チェーン店ではなく個人のチャレンジを応援したい
2.街に緑を増やしたい

 1.は安めの賃貸料で実現し、2.は「シモキタ園芸部」というのを作って、住民が緑の世話をするシステムを作ったと。

 で、結果はどうなったかというと、小田急の乗降客が全体として減るなか、下北線路街の3駅の乗降客は増えている、と。


 「補助金に依存しない」で開発されてる。まあそれは紫波町が「実質公債比率」で、当時岩手県ワースト1位だったということもあるだろうけれど。

 で、目指したのが

・人が住みたい街を作る(別に観光地に住みたいわけではない)
・徹底的に話し合う(どちらかというとここは先導していってるけれど、それでもワークショップ100回とかやってはる)
・最終的には地価を上げ、税収増を図る

ということ。

 そのためにまず作ったのが「普遍的集客装置」としてのサッカー場、そしてバレー専用体育館、図書館etc.

 その後、商業スペースを作り、しかし「大型チェーン店」を呼び込むのではなく、その地域の人が無理なく払える賃貸料を考え、そこから逆算して作っていく。また小児科が必要となれば、スカウトしに行き、要望をよく聞き、それがすべては実現できなくても、代替の方法を考え出し、コストカットしながら、相手が満足できるようにして作る。

 つまり、「最初に建物ありき」じゃなく「最初にニーズありき」で考えていってはる。

 で、結局、(時間をかけてだろうけれど)地価も上昇し、税収もアップしてはる。

 ちょうど、同じようなことが漫画で書かれてた。


 やっぱり、下北沢も紫波町も徹底的な「話し合い」はひとつのポイントやな。

 しかし、話し合いはどうかわかんないけど、

・建築費高騰前にできた
・普遍的集客装置(図書館)を入れた

点で、パピオス明石(2016年から2017年にかけて開業)はめちゃラッキーだったんだな、と思う。

 泉前市長が反対がありながら、市立図書館を入れたということだけど。
 なお、パピオス明石のタワマン部分は

プラウドタワー明石(116.975m) と言って、垂水と同じブランドやな。

 うまくいくかどうかまだわからないが、ユニークな例として最後に出てくるのが


神戸市三宮地区のタワマン規制

 久本市長にインタビューしてはるけど、やはり「防災」と「人口減少」。

 人口減少でかつ三宮にタワマンが林立すると、避難民救助だけでもたいへんなことになる。また三宮にばかり人が集まって、周辺部に人がいなくなって地域がさびれても困る、と。

 で周辺の再開発例として出て来たのが須磨区名谷地区。

 またここには詳しくは出てこないけれど、垂水駅東地区もだよね。

 久本市長も頑張ってはるのとちゃうかな。

 保育所だとか、子育て支援については泉前明石市長と競争してはったし。(こういう競争は大歓迎。なお泉さんは垂水駅前で「住むなら明石市」と演説して、久本市長が不快感を表してはった(笑)まあ泉さんやし・・・)


posted by kingstone at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月31日

『非定型精神病とカタトニア』中山和彦著




 私が支援で関わった人の中で ASD でかつたぶん「配慮の無い教育」によって「動けなくなった人」がお二人います。

 それに対する理解が深まれば、と思って読んでみました。

 この本の最終章にこう書かれています。

 本書は非定型精神病とカタトニア、そして拒絶と服従という副題を掲げた。心と体のせめぎあい。複雑な病気が発症する。最終章の内容とどのように結び付くのかちんぷんかんぷんの貴兄も多いだろう。奇病とされたカタトニア、いわゆる発狂、とりつかれた魔女のごとく扱われていた非定型精神病、両者とも心と体の戦争である。

 はい。
 私にとって見事にちんぷんかんぷんでした。

 著者は、最近の操作的定義(DSMのような)に少し批判的であるようで、もっと「病因論」を深めるべきではないか、と考えておられる。

 しかし、ちゃんと(当たり前か)DSM についても言及されておられ、DSM-5 によるとカタトニアはこう分類されるそうです。

295.x5  カタトニアを伴う統合失調症、統合失調症様障害
      あるいは統合失調感情障害
296.×5  カタトニアを伴う Major mood disorder
293.89  カタトニアを伴う一般身体疾患
298.99  特定不能のカタトニア
29x.x5   物質誘発性精神病性障害
298.85   短期精神病性障害

 ただ、それらのカタトニアとは別に

 カタトニアとは別にカタトニア・スペクトラム(症候群)がさまざまな疾患の症候として現れる。自閉症や廃用性症候群でみられる。

とあるので、私が関わってきた例はカタトニアではなく、別物のカタトニア・スペクトラムということになるのか。

 しかし、治癒に関しては

治療は、多くの症例が自然治癒によって回復する。待ちの医療である。

自然治癒に導くには十分な時間の休養が必要である。

とあります。この部分に関しては周囲の者、家族、支援者が協力できる部分が多くありそうです。

 また、私の知っている方たちは養護学校時代に「理解できる視覚的支援」「視覚的支援物を使っての意思表出」ができていて、その頃は問題(少なくとも「動けない」という問題)が無かったのに、それらをしてもらえない学年になってから動けなくなり、しかし卒業後、拘束的でない自分がある程度自由に動いて良い成人事業所で、また場合によっては視覚的支援もありで、時間をかけて動けるようになっていった、というあたりも関連しているような気がします。

 しかし、後半はゴッホや、中原中也、高橋新吉、キューブラ・ロス、モーツァルト、ドストエフスキーとか出てきて、知らなかったエピソードもいっぱいあり、なかなかおもしろかったです。

 また森田療法についても出てきます。
(私がカウンセリングの体験と学びを続けていた頃、仲間が「体験してみよう」と実際に入院してやってみて、興味深い体験をしたことを教えてくれました)

 なにか、古い(貶めているのではなく、懐かしい、という感じ)精神医学の本を読んでいるような感じがしました。

 また、著者が「全日空松山沖墜落事故」でお父上を亡くされたらしいことも書かれていました。

 ご冥福をお祈りしたいと思います。



posted by kingstone at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする