読書メモ。
この本の取材チームの問題意識は、
「なんでまた地上げが始まっているのか」
というところから出発。再開発で権利変換方式で高層ビルを建てるには地権者の 2/3 の同意があればいいのだけど、少し広い土地を持つ地権者が狭い土地に分割して売ったことにして、地権者を増やせば無理を通せる、と。
なお、高層ビルだと、元の地権者にビルの一部の権利を与え、高層部分をマンション等にして売れば、地権者はお金を出さずに再開発できる、という仕組みだそうですが。
まあ、地上げとかばかりでなく、地権者達の必要性で再開発をしているところがたくさんあるわけです。
実例がいろいろ出てきます。
で、最近はコロナ以降、建築費の瀑上がり(以前の1〜1.5割)があり、作業員の不足でさらに工期が伸びて元の計画を見直さなくてはいけなくなったり、地権者がお金を出さざるをえなくなったりしている例がたくさんあると。
まず取り上げられるのが
秋葉原
地権者の推進派としてオノデンの小野さんは、秋葉原のビルが老朽化し人が集まれる場所が少ない、電気店街からサブカルの街に変化してきているなどから
「再開発でできるビルや大型の広場を多くの人が使える拠点にしたい」
反対派の石丸電気の石丸さんは
「秋葉原の街が変化をとげてきたのは、計画的なものではなくて、時代の変化を敏感に感じ取って自由に商売ができる土壌があったから」
とおっしゃっている。変化への対応ということでは両者同じ主張なのだけど、うむむ。
なお、千代田区は耐震性の強化を掲げている。この耐震、防災の必要性は多くのところで言われている。
福岡市の天神地区
ここは市長さんがはっきりと耐震を言ってはる。
私は覚えてなかったのですが、2005年「西方沖地震」の衝撃が大きかったと。
で、再開発するために、高層ビルを建てたいのだけれど、福岡空港がすぐそばにあるため、高さ制限があった。それを国家戦略特区を活用して、エリア単位の高さ制限を約 115mにすることができた。
で、再開発するために、高層ビルを建てたいのだけれど、福岡空港がすぐそばにあるため、高さ制限があった。それを国家戦略特区を活用して、エリア単位の高さ制限を約 115mにすることができた。
須磨コーストタワー 115.99m
アーバンライフ神戸三ノ宮ザ・タワー 114.300m
アーバンライフ神戸三ノ宮ザ・タワー 114.300m
たぶん、全国のタワマンの中ではちっちゃいほうですね。なお、今作ってる最中だけど、
が垂水廉売市場付近の再開発で作っているところですが、これが 114.893m でやはり天神地区での最高峰と同じくらい。ここも廉売市場が廃墟っぽくなっていたし、火事もあったりしたから、ここの再開発には期待したいですけど、建築費高騰で計画を変更せざるをえなかったとか。
で、話をもどして、天神地区の再開発物件には九州中はもちろん東京からも投資マネーが入ってきていると。
たまたま取材に行った時に不動産屋さんに来てたフランス人が「東京なら4%、福岡なら8%の賃貸利回りが期待できる」と言ってたとか・・・
う〜〜ん、投資マネーで賃貸料が上がると、若い人とかお金があまりない人が起業しづらくなるなあ。
しかし、地元の人が天神にできた新しいビルにオフィスを求めると、元のオフィスが空く。その「二次空室」をどうするか、も問題だと。
また福岡市の2018〜2022の合計特殊出生率は九州ワースト、全国でも下から6番目と。「仕事をするところで子どもを産み育てるところではない」ということか。
なお、「ユニークなまちづくり地域の取り組みとは」という章もある。
1964年に都市計画が策定され、小田急線の地下化が完成したのが 2013年。
1970年代には、計画に反対のデモもあり、また高いビルを建てることへの反対運動も(2000年代?)起き、2006年には50人の地権者を中心とした原告団で「まもれシモキタ行政訴訟の会」もできている。
で、小田急電鉄まちづくり事業本部の方は、徹底的に話し合うことを選び、世田谷区が主催していた「北沢デザイン会議」や「北沢PR戦略会議」にも出席し、街の人々の「こうしたい」を実現する「支援型開発」という考え方だと。例えば
1.チェーン店ではなく個人のチャレンジを応援したい
2.街に緑を増やしたい
2.街に緑を増やしたい
1.は安めの賃貸料で実現し、2.は「シモキタ園芸部」というのを作って、住民が緑の世話をするシステムを作ったと。
で、結果はどうなったかというと、小田急の乗降客が全体として減るなか、下北線路街の3駅の乗降客は増えている、と。
「補助金に依存しない」で開発されてる。まあそれは紫波町が「実質公債比率」で、当時岩手県ワースト1位だったということもあるだろうけれど。
で、目指したのが
・人が住みたい街を作る(別に観光地に住みたいわけではない)
・徹底的に話し合う(どちらかというとここは先導していってるけれど、それでもワークショップ100回とかやってはる)
・最終的には地価を上げ、税収増を図る
・徹底的に話し合う(どちらかというとここは先導していってるけれど、それでもワークショップ100回とかやってはる)
・最終的には地価を上げ、税収増を図る
ということ。
そのためにまず作ったのが「普遍的集客装置」としてのサッカー場、そしてバレー専用体育館、図書館etc.
その後、商業スペースを作り、しかし「大型チェーン店」を呼び込むのではなく、その地域の人が無理なく払える賃貸料を考え、そこから逆算して作っていく。また小児科が必要となれば、スカウトしに行き、要望をよく聞き、それがすべては実現できなくても、代替の方法を考え出し、コストカットしながら、相手が満足できるようにして作る。
つまり、「最初に建物ありき」じゃなく「最初にニーズありき」で考えていってはる。
で、結局、(時間をかけてだろうけれど)地価も上昇し、税収もアップしてはる。
ちょうど、同じようなことが漫画で書かれてた。
やっぱり、下北沢も紫波町も徹底的な「話し合い」はひとつのポイントやな。
しかし、話し合いはどうかわかんないけど、
・建築費高騰前にできた
・普遍的集客装置(図書館)を入れた
・普遍的集客装置(図書館)を入れた
点で、パピオス明石(2016年から2017年にかけて開業)はめちゃラッキーだったんだな、と思う。
泉前市長が反対がありながら、市立図書館を入れたということだけど。
なお、パピオス明石のタワマン部分は
プラウドタワー明石(116.975m) と言って、垂水と同じブランドやな。
うまくいくかどうかまだわからないが、ユニークな例として最後に出てくるのが
神戸市三宮地区のタワマン規制
久本市長にインタビューしてはるけど、やはり「防災」と「人口減少」。
人口減少でかつ三宮にタワマンが林立すると、避難民救助だけでもたいへんなことになる。また三宮にばかり人が集まって、周辺部に人がいなくなって地域がさびれても困る、と。
で周辺の再開発例として出て来たのが須磨区名谷地区。
またここには詳しくは出てこないけれど、垂水駅東地区もだよね。
久本市長も頑張ってはるのとちゃうかな。
保育所だとか、子育て支援については泉前明石市長と競争してはったし。(こういう競争は大歓迎。なお泉さんは垂水駅前で「住むなら明石市」と演説して、久本市長が不快感を表してはった(笑)まあ泉さんやし・・・)