ルポ児童相談所 慎泰俊(しん・てじゅん)著
きつい本でした。
しかし、単に何かを弾劾するとかいうスタンスではなくて、非常に公平に書こうとされていると思いました。
自分のつきあってきた、児童相談所の一時保護所を体験してきた人の話。
自分も複数の現場に泊まり込んで実態の体験。
たくさんの職員の方へのインタビュー。
里親さん、児童養護施設の方。(私、一時保護所と児童養護施設の区別がついてなかった)
そして統計などからの考察。
最後に提案。
これらのうち、特に「問題を明らかにしよう」というのはもちろんもともとありますから、行政・現場・実親の方たちと会って話を聞いたり、体験したりするのはすごく難しいことだと思います。しかし慎さんは「G1サミット」という政財界、そして文化の第1人者(多くの首長も)の集まる会に参加しておられたので、そこを通じて実現できたそうです。
まず、一時保護所というのは、児童相談所附属の、何らかの理由でお子さんをいったん児童相談所が措置する場所で、基本的にはそこからすみやかに里親さんや児童養護施設につなげていく、一時的に宿泊する場所のことです。
最初に紹介された慎さんのつきあってきた、一時保護施設出身の方たちは、「あそこには戻りたくない」と言い、どれだけひどい場所だったかを骨身にしみさせています。
しかし、これも場所により、都会の中心部にあるところは厳しく、地方はそうでもない傾向があるとか。
例えば。たいていの児童相談所では「脱走」を防ぐために子どもは出ることができないようになっていますが、比較的都会であっても神奈川県の中央児童相談所はカギが内カギで、出る気になれば子どもは自由に出れるようになっています。そして所長さんがおっしゃるには
「当たり前のこと。ここは保護所であって、子どもを守るための場所なのだから、子どもか逃げ出したがるような場所であるほうがおかしいと思います。子どもが脱走するのであれば、自分たちのやり方がちゃんとしているのか、それを考えるべきでしょう」
めっちゃ正論やなあ・・・
とまあそういう所もあるのですが、たいていはひどい状態であるらしい。
でも、慎さんは一方的に現場の人たちを責めることはしません。自分の体験を通して見てこられて、その労働環境が過酷であることも、書いてはります。
提案としては
1.子ども向け支出の抜本的な拡大
2.人事改革
1)一般職でなく福祉職を増やす
2)ベテランを増やす(3年のローテーションとかでなく)
3)一時保護所の職員の地位向上
3.児童相談所の第三者による厳格な外部監査
(しかし、よくある「必要書類があるか」「お金は」
というものでなく、援助とケアにの内容について、
受益者である親と子どもに聞き取りをしながら
評価軸を作る、ということを書いておられる。
本当にその通りだと思うのだけど、その評価軸って
できるだろうか・・・)
4.(これは別のところに書かれてましたが)
「親を支援する立場」の人と「強権で措置する立場」を分ける
(なるほど、です。上記二つの立場は「弁護士」と
「検事」みたいなもので、どっちも必要だけど、
同じ人や機関がやってはまずいのかも)
なんか、さすがだなあ、と思います。
あと、行政の責任だけにせず、民間もできることがあるはず、と
「地域で見守り、地域で支援し、地域で預かる」
ということも提案してはります。
今、話題になっている「子ども食堂」もそうだろうし、また釜ヶ崎の「子どもの里」にも触れられています。「子どもの里」は私のエントリ
にも出てきています。
あと、
里親制度の充実
かな。
なお、慎さんは朝鮮高校時代、「先輩が後輩をカツアゲする」という伝統があったのを、確か生徒会長になって、全生徒を巻き込んでやめさせた方のはず。(AERAの現代の肖像に書いてあった)
また慎さんに関わるTogetterまとめ。