『発達障害研究』Vol.46, 1 は発達障害学会第58回大会(昨年)のまとめ。
でも「到達点」というよりも、結局同じ意味ではあるのだけど「現時点の状況」と言ったほうがいいかも。(到達点ってなんか山を登ったぞ!極地まで到達したぞ!って感じしない?)
読書メモ(抜書きなので、興味を持たれたかたは本文にあたってね)
1.はじめに
村中智彦・神尾陽子
村中智彦・神尾陽子
教育・福祉・医療それぞれの機関内、また機関を超えた連携協力は鍵になる |
まったくその通り。
しかし「連携」については思うところがいろいろある。
「連携」は各機関が責任を持ち、責任を果たしてから、そこで補えないことを「連携」するんじゃない?
私が今までに体験したひどい支援会議。
・各事業所が子どもの悪口だけ
・各事業所がこのお子さんはこんなに素晴らしいと褒めるのに終始
・各事業所(学校含め)自分のところではこうだ、と言い放し
・各事業所がこのお子さんはこんなに素晴らしいと褒めるのに終始
・各事業所(学校含め)自分のところではこうだ、と言い放し
いずれも、私、あるいは私の事業所だけが「こういう所で困っていましたが、こう対応したら、こううまくいくようになりました」を動画つきで報告した。別に困っていることを報告してもいいけど、じゃあ自分のところはどうするか、を考えなきゃ。(もちろんいい支援会議もあったよ)
学齢期に見られる「教える一学ぶ」教授関係や指導を柱とする学校教育の場では、対象者の行動障害の多くが問題視され改善すべき指導対象として扱われやすい。 一方で、卒後の成人期における通所・入所施設の場では、例えば生活介護と言った事業目的によって行動障害による拒否要求を自己決定と解釈し、前向きな支援から回避することも可能である。 |
いや、これ、学齢期だってできるはず。
たまたま、今日、目にしたサイトの記事。
2024年10月3日にアップされてます。
・椅子と机に固定し長く丈夫な紐で机と椅子ごと縛る(教室のドアは鍵がついてたぶん閉まってる)
・嫌いな野菜を無理やり口に入れる
・嫌いな野菜を無理やり口に入れる
学級は4人の教師。
こころを痛めているのはこの新人さんだけらしい(まあ心の中はわからないのだけど)
私が赴任した 1996年の知的障害養護学校を思い出して、めちゃくちゃデジャブです(紐で縛る、は無かったけど)
これって「まずこういうのが授業だ。お前らちゃんと授業を受けろ」みたいな、教師側の思い込みありきだよね。子どもを中心に考えていない。
「また福祉事業所なら拒否要求を前向きに・・・」
と書かれていますが、それを裏切るような事件は昔から今も続いています
2010年に起こったのはこんなのがありましたが、その後も連綿と続いていますよね。
これも「たぶん、何も知らない短大生」が実習に行き、変だ、と思って教授に話したところから発覚してるのね。
中にいるとマヒしてしまう。
う〜〜ん。
おっとっと、記事から離れてしまった。
2.行動問題を示す重度知的障害 ASD 時への特別支援学校のチーム支援
宮田賢吾
宮田賢吾
・A児の行動問題やこだわりから、特定教師による個別支援や1日の大半を個室で過ごすことが多かった」
・活動参加をうながすと大声や他害で拒否
・登校場面では、スクールバス下車後に続く座り込み
・活動参加をうながすと大声や他害で拒否
・登校場面では、スクールバス下車後に続く座り込み
という中で標的行動を
・登校場面で望ましく期待される歩行
として、あれこれやられ最終的には
・歩行を立つ、歩くに分けた身体ガイドや歩行時の教師の称賛により、教室への歩行が高まり、座り込みや脱衣が軽減した
・福祉事業所との支援会議でも、担任の報告により自施設でも取り組みたいとの申し出があった
・福祉事業所との支援会議でも、担任の報告により自施設でも取り組みたいとの申し出があった
というところまで持って行かれているのですが・・・
あれこれとしては
・チームを組む(特定教師にしない)
・個別の指導計画への明記
・課題分析
・言語称賛の積極的利用
・一貫した指導(指導計画への明記と支援前の短時間の打ち合わせによる)
・個別の指導計画への明記
・課題分析
・言語称賛の積極的利用
・一貫した指導(指導計画への明記と支援前の短時間の打ち合わせによる)
とかなのですが・・・
私、宮田先生は、もう実情に応じて悩みまくって標的行動を決めたのじゃないかなあ・・・と推測します。結局教師からのA児への称賛を引き出すにはこれしか無かったというか・・・
本当の標的行動は「そっちじゃない」とよくお分かりになってはったのじゃないかなあ・・・
私なら、そのお子さんが「歩いて来たくなる学校」「参加したくなる授業」を作るための、何か標的行動を考えたいけれど。
なお、これも私にとってデジャブ案件です。
3.福岡市の強度行動障がい者支援事業と相談支援を通して
池田顕吾
池田さんは相談支援の立場からの発信。
なお、事例対象者ご本人に支援研修事業の2回目の協力者になって頂き、支援者が被研修者となる研修もされている。これはすごく良いことですね。私は TEACCH の 2デイや 5デイの研修を思い出しました。やはり、ASD の方ご本人にトレーナーになって頂き、支援者がトレーニーになるのは、良い OJT に次いで良いものだと思います。
で、結局この方は
・行動支援センターとそこから通所する生活介護事業所に絞った取り組み
・コミュニケーションボードを用いた本人の自発的発信に対応する支援形態
・コミュニケーションボードを用いた本人の自発的発信に対応する支援形態
などで
・他害を中心に行動問題が低減し
・行動支援センター運営法人の自主事業である移行型ホームへ
・行動支援センター運営法人の自主事業である移行型ホームへ
というところまでいったのだけど、地域移行をしようとしたら
・受け皿が無い
という状態だそうです。
4.地域における教育・福祉・医療連携の提案ー佐賀CBネットワークー医療の立場から
會田千重
海外では類似の Challenging Behavior という概念があり、その定義は「本人や他の人の身体的安全が深刻な危険にさらされるような強度、頻度、または持続時間のある文化的に異常な行動、もしくは通常の地域の施設の利用を制限されたり、利用できなくなってしまうような行動」である。 |
この佐賀CBネットワークの CB とは Challenging Behavior の CB だって。
このネットワークができたのは2018年。
参加者は2020年度〜2022年度で累計 416名。
・発達障害者支援センター 2
・療育支援センター
・障害福祉課
・自閉症協会
・特別支援学校 4
・普通小学校 1
・保育園 2
・福祉事業所 19
・療育支援センター
・障害福祉課
・自閉症協会
・特別支援学校 4
・普通小学校 1
・保育園 2
・福祉事業所 19
が参加して、研修会・事例検討会を行っている。で、この活動が「佐賀県強度行動障害支援者サポート事業」に引き継がれ、また強度行動障害者支援者養成研修(基礎・実践)の上位研修として「強度行動障害支援者フォローアップ研修」が開始されている。
このフォローアップ研修は
教育から6名・福祉事業所から7名(成人4名・児童3名・医療機関から3名の研修生が、講義・グループワーク・事例検討を行い。内容としては氷山モデルに応用行動分析(機能的アセスメント)の講義も取り入れたものになっている |
というのは「ママ」なんだけど、どこかに「 )」が抜けてるような・・・たぶん「成人4名、児童3名をそれぞれ担当する福祉事業所支援者7名」ということだと思うのだけど、ご本人さんたちだとすると、すごく興味深いけれど、それはないか・・・
16人が定期的に集まって、事例検討するというのは良い取り組みだろうな。
肥前精神医療センターが事務局を務めている「強度行動障害医療学会」が 2020年10月から研究会として発足し、2023年4月に学会となった |
とのことです。
なお、Challenging Behavior を含めて問題行動と呼ばれるものについて、これらは問題提起行動と呼ぶほうがいい、という門眞一郎先生の主張が、私にはしっくりきます。(ただし、相手の方が問題行動という言葉を使っていれば、特に訂正せず私も問題行動という言葉を使って話をするけどね)
5.討論
井上雅彦
宮田報告について
身体的ガイダンスを用いた実践が、直接指導にかかわらない教師にどのように理解されたかという点については、指導の社会的妥当性という側面から検討することが望まれる |
池田・會田報告について
支援方針や支援の進捗状況の確認だけでなく、共通の行動記録とその記録に基づく本人の「支援マニュアルの共有」が有用なツールとして機能していたことが報告された。在学中からの持続的な情報共有のツールや共通言語としての行動記録の活用は重要である。こうした連携活動に関しては、それをコーディネートし、動かしていくシステムをどの機関が担うのかという課題が残される。 |
しかし・・・どう手間暇かけずに簡単に記録がとれるか、だな。井上先生はアプリを開発されてる。
また私はエピソード記録を好むけれど、TEACCH にしろ ABA にしろ専門家から「この記録では何もわかりません」と言われたことがある。(で、そんな中、鈴木伸吾さんは「困ってるんだよね。じゃあ一緒に考えよう」と言って下さった)
う〜〜ん。
神尾陽子
どのような支援でも大事なことは、進捗や事後での評価であることを指摘しておきたい。取組みの結果、当該生徒の学校、家庭、その他地域での生活にどのような変化が生じたか、ほかの自傷等の望ましくない行動は減ったのかという変化を評価することで、初めてその取組みの成否を議論することが可能となる。 |
「こうやりました。やってみました」だけじゃダメってことだよね。
ご本人、周囲の暮らしがどう変わったか、そこが大事。