ケインズって、大学に籠もって研究している人ではなく、いろんな提言をする実践よりの人だったんですね。
ドイツのハイパーインフレーションの時
1919(大正8)年 『平和の経済的帰結』
ケインズ曰く
| 本書における私の目的は、カルタゴの平和は、実際上の観点からみても、正しくもなければ、可能でもない、ということを示すことである。 (ポエニ戦争で勝ったローマがカルタゴに多額の賠償を要求した故事による) |
1921(大正10)年 ドイツの賠償額が決定。1320億マルク(金マルク)ケインズは約400億マルクを主張。1922年には支払い猶予の主張も。
著者は
通貨をたくさん発行したとしても、その通貨を持ちたいと思う人々が大勢いる限りは、価値は必ずしも下落しない。 (中略) 当時のライヒスマルクはドイツ人からすら信用されていなかった。人々はドイツの未来に絶望していた。 |
この「未来への絶望」が問題ですね。
特に経済にとって。
特に経済にとって。
1923(大正12)年 『貨幣改革論』
ケインズ曰く
| インフレーションは不当であり、デフレーションは不得策である。ドイツのような極端なインフレーションを除けば、2つのうちでは、おそらくデフレーションのほうが悪い。なぜなら、貧困化した社会では、金利生活者を絶望させるよりも、失業を生ずるほうが悪いからである。しかし、両方の悪を比較する必要はない。両方とも悪であり、忌避されるべきだとするほうが意見の同調を得やすいものである。 |
1925(大正14)年 イギリスが金本位制に復帰
デフレへ
1931(昭和6)年 イギリスが金本位制から離脱
デフレへ
1931(昭和6)年 イギリスが金本位制から離脱
著者は
| 1910年代のケインズは、インフレよりもデフレを肯定し、国際金融センターとしてのロンドンの地位を重視し、均衡財政の立場をとっていたが、1920年代にはこれらの全てを放棄した。 |
1936(昭和11)年 『雇用・利子および貨幣の一般理論』
「合成の誤謬(部分最適が必ずしも全体最適にならない)」というのは、アリストテレスの時代から、同じようなことを言っていた人は多いだろうけど、ケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936) で書き、それをサミュエルソンが引用して広く言われるようになったんだってね。
合成の誤謬の例として著者が上げているのが
| 企業が利益追求のために従業員を軽視し、人件費を節約して非正規雇用を増やすという「合理的」行動をとると、社会の購買力は低下してしまう。人々が将来に不安を抱き、節約をするという「合理的行動」をすると、有効需要は低下して経済は停滞する。 |
なお、ルーズベルトのニューディール政策について、「未曾有の公共事業でアメリカを大恐慌から救った」と通俗的に言われているけれど、最近は「言われているほど効果はなかった」というのが定説になってきているみたいですが、その点について著者は
| ローズベルト本人は緊縮財政主義者であり、選挙公約に均衡予算を掲げていたため、大規模な公共事業はやりづらい立場に置かれていた。 |
と説明しておられる。
しかし『国家はなぜ衰退するのか』の著者は、ルーズベルトがやろうとしたことが、議会で反対されて十分にはできなかったから、とし、そしてそれをポジティブに捉えておられます。
独裁者ではないから、思うようにはいかない。しかしそれこそが長期的な経済的発展につながる、ということのようです。
なるほどな、です。


