※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2025年06月30日

ニューロダイバーシティ側の意見に対して(2)



 今回は

How much compliance is too much compliance - Is long-term ABA therapy abuse
Aileen Herlinda Sandoval-Norton, Gary Shkedy & Dalia Shkedy(2029)CLINICAL PSYCHOLOGY & NEUROPSYCHOLOGY,

 私が題名を訳すと

「どれだけの「指示に従う」が「指示に従う」をやりすぎになるのか ー ABA 療法を長く続けるのは虐待じゃないの?」

について

 第一著者の Aileen Herlinda Sandoval-Norton さんは神経心理学博士で専門領域が
o 臨床神経心理学
o トラウマ、神経認知、発達障害(ASD)、学習障害
o 法廷心理学・フォレンジック評価
o 小児神経心理アセスメント

 この論文のキーワード、compliance って言葉、行動分析学会で初めて聞いた時、その発表者の方から「(ABA で)アイコンタクト、常同行動、コンプライアンスなどを狙うのはちょっと考えないと」という話が出て、私はコンプライアンスという言葉で「法令遵守」という意味しか頭になく、発表者さんに質問しに行きました。

 そしたら ABA では「指示に従う」という意味なんだそうです(私はそんなことも知らないやつです)。

 この論文は「自閉症と診断されれば、無料で ABA セラピストが週に1回来てくれるようにできる」というアメリカの現状からのもので、そのあたり日本とはめちゃめちゃ状況が違っています。(州によって違うかもしれません。少なくともジョージア州ではそうなっています)

 この論文中でも、

2017年、ある投資会社は、ABAサービスの市場規模は年間170億ドルにも上ると推定しており、様々なABA専門家、認証、プログラムの継続的な創設により、その数は今後さらに増加する可能性が高いとしている
Crocker Capital Advisors. (2017, November). 
   
ところが、この記事は、紹介された URL が無くなっています。そこで ChatGPT に

「アメリカでの 自閉症児への ABA 療育についての法制度、また市場規模について教えてください。」と質問しました。

 これはまた別記事にします。

 で、私など、題名を見ただけで「そりゃ『指示に従う』に重点を置いての指導とか、長期間の治療(treatment は治療とか療育という意味になります)なんて虐待そのものやん」、と同意してしまいます。

 で、望月先生の場合は「指示に従う」を論文中でよしとされている部分はなく、言語コミュニケーション行動(「音声言語が使えるようになる」ではないことに注意)の方法をまず確実にし、「行動的QOL を高める(本人が get しに行く選択肢を増やす)」をよしとされています。

 その中で本人が選択を通じて主体的に get しに行くようになる。ってことは「指示に従う」とは随分違ってきます。

 そして、私なども「自閉症の方ご本人とコミュニケーションできるようになり、選択して自分のやりたいことがたくさん実現するようになると、それができない場合でも事情を(わかる方法で)伝えれば、我慢(指示に従う)をしてくれるようになる」という体験をたくさんしているのですが。

 では、ChatGPT に頼んで作った論文の要約にもとづいて、回答してみます。※以下が私の回答、あるいは考えたこと

🔍 主な主張と問題点

1. ABA の理論的・実践的問題

• ABAは、外的な報酬や罰(オペラント条件付け)を用いて行動を変容させようとするが、この方法は自閉症の神経学的特性に合っていない。

※いわゆる「ABA は飴とムチを使う」とよく誤解(?)されているやつですが、日本では「外的な報酬や罰(オペラント条件付け)を用いて行動を変容させようとする」というのはちょっと当てはまらないのと違うかな?「罰」は使わない方向で考えられていると思います。レスポンスコスト法を使う例はたまにあるけれど。また私の指導教授は「飴と飴無し」でええんやで、とおっしゃってますね。
(まあ、私が周囲で見ている、あるいはお会いしている ABA 研究者・実践者に限ってのことで、ひょっとしたら「流派」の違うところでは違う可能性もありますが・・・)
日本行動分析学会の声明・ガイドラインのところにある「体罰に反対する表明」「強度行動障害に関する支援ガイドライン」

※神経学的特性に合った関わりって何だろう?よくわからない・・・

• 自閉症の子ども、とくに非言語の「重度」自閉症児は、ABAの効果を測る研究から除外されており、科学的根拠のないまま対象にされている。
※日本では望月先生はじめ、多くの研究があり、除外されていないと思うし、アメリカでもどうなんだろう?読んだ論文の中にあったような気もするけれど。


2. 負の影響と「順応」の強制

• 長期にわたるABAは、以下のような副作用を引き起こすとされる:

o プロンプト依存(指示がないと動けない)
※プロンプトフェーディングが重視されていると思うけど?
※PECS なんてプロンプト依存の弊害を無くすために開発されているのだが。
※「指示待ち」にされてしまうと困る、というのはよくわかります。

o 学習性無力感・自発性の欠如
※望月先生の試みは 選択肢を get する行動を増やし、自発を増やすと思うけど?

o 低い自己肯定感・自己効力感
※これも「治す」のではなく「今できること」で選択肢を増やしていけば増大すると思うが。

o 感覚調整行動(stimming)の抑制
※日本でこれをやってる研究者・実践者いるだろうか?もちろん「周囲が困っている」状態なら代替行動を探すだろうけれど。

o アイコンタクトの強制による心理的・生理的ストレス
※これも日本でやってる研究者・実践者はいるだろうか。もちろん結果的にアイコンタクトができた、ってのはある。ABA というわけではないけれど、私も体験しました
(なお、ChatGPT はアイコンタクトを「眼球接触」と訳してくれました・・・これは怖い・・・)

o 外的報酬依存による内発的動機の喪失
※「内発的動機の喪失」なんてことが起こったら「そら困る」と思うわけですが、「依存」って何だろう・・・
例えば「褒めてもらえれば嬉しい」「感謝されれば嬉しい」それを求めてさらに適切な行動をしよう、と思うのは依存とか呼ばれるようなことなのか?


3. 心理的・倫理的な問題

• 非言語の子どもたちは意思表示できないため、ABAによる「指示に従う」の強制は、虐待に近いとされる。
※まず意思表示できるようにしようよ、ですね。それをやってないのかな?

• 精神的トラウマ、PTSDのリスク、性的・身体的被害への脆弱性の増加も指摘されている。
※アメリカではそうなんやあ、としか・・・

• Board Certified Behavioral Analysts (BCBA) には自閉症の神経学的理解や発達心理学の専門知識が十分でなく、倫理的にも問題がある。
※行動分析士認定資格取得者のことですね。これ、ひょっとしたら、日本の「特別支援学校教諭資格」などと同じような現状になっているってことかも。「資格」にはいつもついてまわる問題かも。

📊 著者の提案と結論

• 研究と倫理の再検討が必要:非言語児への長期ABAの科学的有効性は不明であり、効果を証明する縦断的研究が乏しい。
※ だいたい「長期 ABA」ってのがおかしいのかも。暮らしの中で「行動的 QOL を上げていく」というのじゃなく、「ABA 療法」と考えるならおかしくなっていくと思う。

• 多様なアプローチの導入を:心理学の他分野では複数の理論や手法を組み合わせることが常識であり、ABAだけに頼るのは非専門的かつ有害。
※1987年の望月論文は「福祉との連携」がどのように可能か、を考察している。また実践者ってのはもともと折衷主義になるものじゃないかな?特に日本では。

• 倫理的責任の追及:「害を及ぼさない」という専門家の誓いに反する実践が横行しており、見直しが急務である。
※アメリカではそうなのか。日本では?


 しかし、ABA の専門家でもない私がこんな記事を書くのはおかしい、とも思えるし、ABA の専門家でなくてもつっこみはこれだけ入れられる、という話でもある。

 また、ここで語られている批判的言辞は日本でだと

 保育園、幼稚園、こども園、就学前施設(センター)、学校、の特別支援教育担当者(特別支援学校は全員が特別支援教育担当のはず)などでのお子さんへの関わり方。児童発達支援、放課後等デイサービス、成人向け福祉事業所、などでの成人さんへの関わり方(別に ABA ということではなく)。

 その多くのところに当てはまる批判かもしれない、と思いました。ちゃんとやれてるところのほうが少なそうだから。



posted by kingstone at 20:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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