あとがきによると「ノンフィクションではないし。自伝でもない」とのことですが、「本当にあったことも若干まざっていることは否定できない」とのこと。「私小説」だと。
短編集で読みやすいです。
ホスト・ファミリーにいいように使われたり、ええしの家に住み込みのナニー(子守役)だけでいいから来ないか、と行ってみたら、その前に行った時のお上品な部屋とはうってかわって、地下の窓もない部屋で、かつ白人の父親がなんかスキあらばネンゴロになりに来ようとしてみたり(しかし日本でもアジアから出稼ぎに来てる人に同じようなことやってる人がいるだろうな)。
「スタッフ・ルーム」
あと、「子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から -」の時かその前後の体験かと思われる話。
労働者階級の保育士希望の娘さん(apprentice:見習い(?)、非正規というか、正規職員の半分の給料)が、中産階級の上司からすごく上から目線であれこれ言われるのとか、めちゃ胸が衝かれました。
「ソウルによくない仕事」
ランチを作る仕事も面白くなく、ランチもうまくできず、まわり(仕事先の、英国から帰りにくくなってしまっている日本人達)から無視されたり悪口を言われたりして、どんどん自尊感情も低くなってきている主人公に対して。下宿先の移民の大家さんが言った言葉。
「自分のソウルによくない仕事はやめるべき」
で、主人公は決断して辞めると社長に宣言して、もう周囲を気にせず「自分が食べたいと思うもの、自分が美味しいと思うもの」を作り出したら、どんどん楽しくなってきて、美味しいものが作れるようになって、周囲の態度も変わってきた・・・これ、思い当たるところがあります。
私が肢体不自由養護学校に勤務していた頃、「動作の学習」というコマで動作法が教師全員で取り組まれていました。
まあいろいろ考え方は変わってきていきつつあったとはいえ、やはり「訓練」の色は濃かったです。
で、3年間、熱心に「訓練会(動作法も動作法以外も)」に通った後、「私は訓練捨てた」と宣言・広言して AAC と取り組むようになりました。
その頃から SV さんなどから「最近のkingstoneさんの動作法に取り組む姿勢が素晴らしい。みなさんも真似してください」と言われたり、なんか周囲からの評価が上がってきたのですね。
あれは何だったんだろう。
久しぶりに小説が読めました。