私が支援で関わった人の中で ASD でかつたぶん「配慮の無い教育」によって「動けなくなった人」がお二人います。
それに対する理解が深まれば、と思って読んでみました。
この本の最終章にこう書かれています。
本書は非定型精神病とカタトニア、そして拒絶と服従という副題を掲げた。心と体のせめぎあい。複雑な病気が発症する。最終章の内容とどのように結び付くのかちんぷんかんぷんの貴兄も多いだろう。奇病とされたカタトニア、いわゆる発狂、とりつかれた魔女のごとく扱われていた非定型精神病、両者とも心と体の戦争である。 |
はい。
私にとって見事にちんぷんかんぷんでした。
著者は、最近の操作的定義(DSMのような)に少し批判的であるようで、もっと「病因論」を深めるべきではないか、と考えておられる。
しかし、ちゃんと(当たり前か)DSM についても言及されておられ、DSM-5 によるとカタトニアはこう分類されるそうです。
295.x5 カタトニアを伴う統合失調症、統合失調症様障害 あるいは統合失調感情障害 296.×5 カタトニアを伴う Major mood disorder 293.89 カタトニアを伴う一般身体疾患 298.99 特定不能のカタトニア 29x.x5 物質誘発性精神病性障害 298.85 短期精神病性障害 |
ただ、それらのカタトニアとは別に
カタトニアとは別にカタトニア・スペクトラム(症候群)がさまざまな疾患の症候として現れる。自閉症や廃用性症候群でみられる。 |
とあるので、私が関わってきた例はカタトニアではなく、別物のカタトニア・スペクトラムということになるのか。
しかし、治癒に関しては
治療は、多くの症例が自然治癒によって回復する。待ちの医療である。 |
自然治癒に導くには十分な時間の休養が必要である。 |
とあります。この部分に関しては周囲の者、家族、支援者が協力できる部分が多くありそうです。
また、私の知っている方たちは養護学校時代に「理解できる視覚的支援」「視覚的支援物を使っての意思表出」ができていて、その頃は問題(少なくとも「動けない」という問題)が無かったのに、それらをしてもらえない学年になってから動けなくなり、しかし卒業後、拘束的でない自分がある程度自由に動いて良い成人事業所で、また場合によっては視覚的支援もありで、時間をかけて動けるようになっていった、というあたりも関連しているような気がします。
しかし、後半はゴッホや、中原中也、高橋新吉、キューブラ・ロス、モーツァルト、ドストエフスキーとか出てきて、知らなかったエピソードもいっぱいあり、なかなかおもしろかったです。
また森田療法についても出てきます。
(私がカウンセリングの体験と学びを続けていた頃、仲間が「体験してみよう」と実際に入院してやってみて、興味深い体験をしたことを教えてくれました)
なにか、古い(貶めているのではなく、懐かしい、という感じ)精神医学の本を読んでいるような感じがしました。
また、著者が「全日空松山沖墜落事故」でお父上を亡くされたらしいことも書かれていました。
ご冥福をお祈りしたいと思います。