シネ・リーブル神戸で見て来ました。
私は映画を観る時に『週刊文春』の映画評欄を参考にすることが多いのですが、この映画はほとんど星3つ。ってことは「まあ見たいなら見たらいいんじゃね」と、あまりお勧めではない評価が多かったです。
しかし、移民や難民問題は、現在は欧州ほどでは無いにしても、既に日本でも直面している問題だし、興味があったので観に行きました。
パリ郊外(バンリュー)というのは、移民が主として住んでいるスラム地区のことです。シャンゼリゼだ、エッフェル塔だとかいうパリとは大違い。
もちろん、シャンゼリゼだ、エッフェル塔だというパリも本物ですが、パリ郊外も本物・・・
ラジ・リ監督は、主人公の女性と同じくマリ共和国出身の両親の元、自身もマリ共和国で生まれ、3歳の時に移民して来た人。こういう場合、1世ということになるのかな。
なお、マリ共和国は、日本外務省からは退避勧告が出、首都バコマには渡航中止勧告が出ています。ってことは、移民というよりも難民に近いのかもしれない。
そして、路上販売していた人たちが蹴散らされたり、集合住宅から数時間で全員退去させられたり、もうウワーーーッというエピソードの連続なのですが、監督の体験に基づいているとか。
めちゃひどい話なのですが、しかし登場人物はそれぞれ一生懸命、良かれと思って、あるいはしかたなしに、行動を選んでいて、しかしひどい摩擦が起きる・・・
警察官もやりたくないのがありありしながら規制させられていたり。
これもまた本当のパリ。
これ、例えば教育システムを学びに海外に行く時、もちろん相手先は、「できるだけ参考になるように」と良かれと思って、一番うまくいっている部分を見せてくれがちです。
何度もアメリカに見学に行っている知人が「アメリカでは〜〜なシステムがあって・・・」とか言うのだけれど、私が比較教育学で学んだ例としてはかなりまずくなってるし、「そんなシステム、州によっても、学校によっても違いがありすぎやで」みたいなことがよくあります。こちらの本にもそのあたりのことが出てきます。
なお、パンフレットに『移民社会フランスで生きる子どもたち』を書かれた増田ユリヤさんがエッセイを寄せておられ、その中でこんなことを書いておられます。
この街の再生は、2005年の暴動以降、教育現場を中心に行われていた。そこには、幼稚園から中学校まで、教員をはじめとした関係者はもとより、警察や消防、地域住民(移民)の代表や保護者、パリ市を拠点に活動するNPO団体なども参加。成績優秀者には大学進学への道やエリート教育機関であるグランゼコールに進む道筋がつけられ、そうでない子には、最低限の資格を取得して、社会に出て働くことができるカリキュラムが組まれた。貧しさから外出の機会すらない子どもたちには、フランスの名所旧跡を訪ね歩くイベントを提供したり、日頃の悩みを相談したりするカウンセリングの時間もあった。 警察官は一市民として行事に参加し、住民との交流を重ねていた。フランスでは、校長以下、最低3人の行政職員が学校の敷地内か隣接した場所に住む決まりになっているが、中学の校長は「ただただ、子どもたちと向き合っていたという記憶しか残っていない」というほど、無我夢中で地域の再生に取り組んでいた。 |
それでも、問題は収まっていないわけですが・・・
日本も「労働力を移民に頼ろう」としたり、難民が入ってきたりするわけですから、同化策・融和策(別に悪いもんじゃないと思ます。少なくとも「困っているまま放置」するよりは)にお金を最初からかける必要があるんだろうな。
なお、ラ・ジリ監督『レ・ミゼラブル』という映画も2019年に撮られてますね。有名なミュージカルのほうじゃなく。