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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年03月25日

勝敗へのこだわりのあったお子さんがゲームを楽しめる(学校、放デイ向き)




 これは、ご家庭ではあまり使えない方法かもしれません。

 しかし、学校(支援校・支援学級・放課後等デイサービス)などでは「参考になる」「使える」論文だと思います。

 私も「そうか、なるほど」と思いながら読みました。

 またまた私流にかいつまんで説明しますので、興味を持たれた方は原文にあたってください。

 「I 問題と目的」のところにこう書いてあります。

 自閉症もしくはそれを疑われる児童(中略)は、社会性・対人関係や想像力等に困難さを抱え、スキルを学習するためのゲームにおいても、勝敗へのこだわりが強く、周りの児童と楽しく活動できないことも多い。ゲームはやりたいのだが、自分勝手と思われるような振る舞いや負けたら怒り出すという行動に、周りの児童が不安を感じることもある。
 それら対人関係の困難さへの支援として、ティーチ・プログラムや応用行動分析等の様々なアプローチがなされてきた。しかし、それらは個別的・療育場面で取り上げる内容であったり、方法上の工夫であったりするため、支援学級の教育活動として展開するには限界もあった。

 わはは、その言や良し。「私は TEACCH でも ABA でもない、学校の授業で役に立つ方法を考えた」というわけですね。

 ただまあ、ここで言う「TEACCH プログラム」や「応用行動分析」という言葉は誤用だと、私は思うのだけど、しかしこちらの誤用のほうが一般的には流布しているのかもしれない。

 そして実践においても誤用している人が多いのが実情だと、残念ながら思う。

 そうなると、誤用のほうも語釈としては正しくなってしまうのか?

 私が誤用だという根拠は、実際に著者自身が 「IV 考察」で「なぜうまくいったのか」書き出しているのだけど、そこにこう書いているのですね。

まず

(1) プログラムの流れを一定にしたこと
 表2で示したように、各回のグループ学習の内容そのものに変化はあるが、その流れ・ユニットは一定にして見通しをもって取り組めるようにした。それにより、本児の安心感は高まったと思われる。また、表3のように、プログラムの中身も全て替えてしまうのではなく、前時までに取り組んだゲームも取り入れた。(後略)
  
この「変えることはひとつだけ(あるいは少なくする)」とか「フォーマットは一定に」は、私は TEACCH から学んだのだけど。また

(2) ルールの明確化
@説明書の活用-自閉症のある人にとっては、「書き言葉が第一言語・話し言葉は第二言語」と喩えられるように、視覚情報は必須の文援となる。今回の取組では、ゲームの説明を話し言葉ではなく、説明書という形で提示したことで本児への分かりやすさは格段に高まったことが示唆される。

 これって、まさに TEACCH プログラムそのもののように思えます。「書き言葉が第一言語・話し言葉は第二言語」だから「見てわかるもの」で伝える。

A負けたときの対応の明確化−勝敗へのこだわりの強い本児にとって、負けは受け入れがたい事実となっていた。今回は、“負けてもいいことがある”、すなわち、万が一負けても、次のゲームのテーマなどを選べる権利を得られるというルールを設定した。それにより、勝敗そのものよりも、ゲームそのものを楽しむことに気持ちが向いたと思われる。

 つまり、強化子を随伴させる・・・

 そして大事なことはより多く流布している誤用の「TEACCH プログラムだからこうします」「ABA でやるからこうします」と機械的に当てはめる実践はたいてい失敗し、違うのではないか、と考えてそのお子さんに合った対応を考えていくと、本当の TEACCH であったり、ABA であるようになる(あるいは行動分析の言葉で記述できる)、ということになるのじゃないかな。

 さて、実際の実践を見ていきます。

対象児について(一部kingstoneが簡潔にしている)

(1) 対象児A:支援学級在籍5年生女子(知的発達の遅れは無い)
得意:絵を描く。パソコンを操作する。
一人で遊ぶことが多く休み時間は、本を読んだり、折り紙を折ったりしている。
興味のあることには集中して取り組む。
一度集中するとやめられなくなり、ルールを守れないことも多い。
勝敗へのこだわりが強く、負けてしまうと暴言、暴力で気持ちを表すことが多い。

 アセスメントでセルフコントロールスキルのチェックを保護者・学校・事業所など5名の担当者で行った結果の一部(表1)。
これは
当てはまる・・・4点
やや当てはまる・3点
あまり当てはまらない・・2点
当てはまらない・1点
の4件法でやっているので、平均というものがあれば2.5点になるはず。

 この図(表1)のように、いずれも低い点数が出ている。

スクリーンショット 2024-03-24 23.01.27.png

 なお、交流級で行った横浜市教育委員会の Y-P アセスメントによると

「自分のことがあまり好きではない」
「自分をあまり大切に思わない」

と回答している。決して「今の自分でいい」とは思ってないんだな・・・



実践展開

指導目標の設定

長期目標:友だちとなかよく学校生活を送ることができる。
短期目標:負けても気持ちを切りかえて最後までゲームをすることができる。(2学期)

グループ学習の流れ

ウォーミングアップ
全体の見通しを持つ部分?
チャレンジタイム
ゲームをする
ワークシート活用
お楽しみタイム
チャレンジタイムでできるようになったゲームをする
ワークシートは使わない
児童で進める

ゲーム内容

どんなゲームをやったか、どういう内容で、どういう配慮をしたが、表4にまとまっていますが、こちらでは私が適当に

@どんなゲームか
Aどんな配慮をしたか(全部ではなく、省略したものもあります)

をそれぞれかいつまんで説明してみます。おおむね 1.から9.に向かって進んでいったようです。

1.ティッシュゲーム(iPad 無料アプリ)
@たぶんこの「無限ティッシュ」のことだと思うのですが、現在のをやってみると規定時間内に100枚出せたら、また次の回が始まるので終われるのかな?と不思議に思いました。何か1箱終わったら終わりとか時間で区切ったりとかしているんだろうか?

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「まあいいか」「ありがとう」の言葉をプリントにしておき、その言葉を言ったらポイント。
・気持ちを切り替えてゲームを続けられたらほめる。

2.ドッカンゲーム
@タイマーをセットし、ボールを回す。
ボールを持った人はその回のテーマ(例えば果物とかだな)にそった内容の言葉を言う。
タイマーが鳴った時にボールを持っていた人がアウト。

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「まあいいか」「ありがとう」の言葉をプリントにしておき、その言葉を言ったらポイント。
・アウトになった人に「ドンマイ」と言ってポーズをする(これ、雰囲気が良ければめちゃ受けると思う)。
・アウトになった人は次のテーマを決められる。
・友達を傷つける言葉を言ったらNGワードと知らせマイナスポイント。

3.ぼうずめくり(ひらがなカルタ)
@百人一首でも、他のカルタでもできます。
字札・絵札を混ぜて裏返して積み上げる。
あらかじめ「あ行」「か行」「さ行」などと当たりの行を決める。絵札が出たら、その札は(もし既に持っている札があれば)自分の持っている札も合わせて全部前に出す。
「あ行」「か行」「さ行」などの当たりの札が出たら前に出ている札は全部もらえる。
当たり以外の字札が出たら(たぶん)その札だけ自分のものになる。
(しかし、こんな学校っぽいことをしなくても、普通の坊主めくりでも楽しめるな)

Aどんな配慮をしたか
・当たりになった人に「おめでとう」という(で、たぶんポイント)。
・絵札が出た人に「どんまい」と言ってポーズをする(で、たぶんポイント)。
・友達を傷つける言葉を言ったらNGワードと知らせマイナスポイント。


4.反対言葉カードゲーム
@裏を上にした単語カードを2枚めくり、反対言葉だったら自分のものになる。
 (別に普通の神経衰弱でも楽しめるな)

Aどんな配慮をしたか
・「どんまい」「おめでとう」「おしい」「すごい」などの言葉を(自分で?)選びプリントに書く
・NGワードを(自分で?)選びプリントに書く
・友達をほめたり、はげましたりすることができたら認める(と書いてあるのだけど、ポイントは?)
・よい言葉かけができたらとりあげて、次回の言葉選びに加える

5.ソーシャルスキルカルタ
@なんかソーシャルスキルカルタというのがあるのですね。私は知りませんでしたが、あっても不思議は無い。それを並べて先生の言葉を最後まで聞いてからカルタを取る。
(正直なところ、いったい何がどうなのかわかりません。で、検索をかけたら画像が出てきました。なるほど、動作や、言葉や、気持ちなんかが書いてあるから先生が「こういう時は」と具体的な状況をあげて、それに適切なカードを取るということかな)
カルタの並べ方は漫画や映画『ちはやふる』でおなじみの競技かるたの形式でやっている。

Aどんな配慮をしたか
・気持ちを切り替えてゲームを続けられたらほめる
・イライラしたら深呼吸したり休んだりする

6.探偵ビンゴ
@たぶんですが、マス目(2✕2からいけると思う。5✕5までいくとかなりたいへんか?支援級とかだと、その場にいる人数全員分のマス目が作れる必要があると思う)を作った紙を用意し、自分の名前と他人の名前を好きなところに書く(余ったところは オールマイティーにする必要があるだろう)。
 名前の人のいいとこをカードに書く(いいところカード)。(ひょっとしたらマス目にも同じことを書く?)
 先生がカードを引き、書かれていることを言う。
 そのいいところがある人は立ち、「◯◯さんです」と(先生が?)名前を発表する。
 みんなで確認し「なるほど」と言い、マス目に◯をつける。
 ビンゴになったら「ビンゴ!」と言い、そのまま参加し続ける。
Aどんな配慮をしたか
・友達の名前がわからない場合は名簿(名前が見てわかるもの)を用意する
・発表したら周囲のみんなは「なるほど」と言う。


7.黒ひげ危機一発
Aどんな配慮をしたか
・まず最初に飛び出るのを「当たり」にするか「はずれ」にするかを決める(なるほどな)
・友達がやっている時に待てたらほめる。(こういう、「特に行動しない場合」に対して ABA で「死人テスト」と言って認めない場合があるけれど、状況によっては「特に行動しない場合」を認めるのはすごく大切だと思う。これは私の誤解なのかな?)


8.カードマッチング(動物絵あわせカード)
@配られたカードを相手から見えないように持つ
 自分の番が来たら、1回だけ「◯◯さん、△のカードを持っていたら下さい」と言う。
 ◯◯さんが持っていたら「はい、どうぞ」と言って渡す。
 「ありがとうございます」と言う。
 持っていなかったら「ありません」と言う。
 それに対して「そうですか」と答える。
 他の人は「おめでとう」「どんまい」と言う。
 カードが揃ったらみんなに見えるように置く。
 たくさんカードが揃った人が勝ち
 特別賞として一番早く無くなった人にポイント?
Aどんな配慮をしたか
・他の人の質問をよく聞いて覚えていると、相手が何を持っているかわかるかもしれないことを意識させる
・勝ちのポイントを複数用意し、1つにこだわらないようにする


9.風船バレー
Aどんな配慮をしたか
・「◯◯さん、お願い!」「OK」「おしい」「どんまい」「サンキュー」など友達をはげましたりできたら認める。

で、論文に方法のところに「準備物」としては出てきませんが、上に書いたように考察のところで

「ルールの説明書」

を作っていることがわかります。これも大きな配慮ですね。私は放課後等デイサービスでは、よく1枚ものの「ルールペーパー」を作っていました。もちろん、お子さんによってよくわかってもらえるように書き方も工夫しないといけないことがよくありました。
また「はげまし言葉」と獲得ポイントを書いたワークシートは論文中に出てきます。

 そして、こういうゲームを、交流学級でもできるようにしたとのこと。

結果

スクリーンショット 2024-03-25 4.24.06.png

 暴言やもの投げが6回目以降出現していなかったのに、10回目にたくさん出たのは、「児童たちのみ」で行ったためだそうです。

 しかし、全体を見ればどんどん落ち着いていっているのがわかります。

 このゲームの配慮事項を見ていて、それ以前の他の子たちとも楽しい雰囲気のクラスを作れていたら「『どんまい』と言いながらポーズをする」とかを取り入れたら、めっちゃ楽しい雰囲気になり、対象の児童もそれに巻き込まれていくだろうな、と読んでていても楽しくなりました。

 ゲームそのものの勝ち負けにも工夫を凝らしたり、ゲームそのものは負けていても面白いことが起こったり、ポイントが得られたりして、ゲームをすることが「楽しくない」ものにしない工夫がされている、というのがいいですね。

 で、繰り返しゲームをやっていくうちに、ゲームの勝ち負けだけを楽しむのではなく、ゲームをすることそのものを楽しめるようにしていった、その中でソーシャルスキルも身につけていった、というところがポイントかな。

 「何とかしたい」と思っている教師やスタッフの人たちがマネした場合は、結構高い確率でうまくいくんじゃないだろうか、と思えました。

posted by kingstone at 05:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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