異食について調べていて、このレポート(論文?)を見つけました。
「重度知的障害者に対する行動障害軽減〜の取り組みー排泄物の異食が消失した事例の支援からー」
伊豆山澄男・田口正子・篠原浩貴:『国立のぞみの園紀要』(2014),7:72-77
伊豆山澄男・田口正子・篠原浩貴:『国立のぞみの園紀要』(2014),7:72-77
しかし、参考文献について検索していたら、下のニュースレターを見つけ、この事例も載っていました。
ひょっとしたらこちらのほうがカラー写真もあるしわかりやすいかと思います。
のぞみの園ニュースレター 第40号平成26年(2014)4月1日発行
(特集ーのぞみの園における強度行動障害への取り組み)
(特集ーのぞみの園における強度行動障害への取り組み)
ではレポートから。
対象者 Aさん
重度知的障害・自閉症
IQ測定不能、障害区分5、男性、レポート執筆時 50代後半。
乳児期よりクレヨン・紙・砂などを口にする異食が頻繁に見られた。
7歳で知的障害児施設に入所後も、タバコの吸い殻、コーヒー粉、石鹸、茶葉、毛髪、ベニヤ板、紙、毛糸、靴下のゴム、自分の排泄物の異食が頻繁だった。
IQ測定不能、障害区分5、男性、レポート執筆時 50代後半。
乳児期よりクレヨン・紙・砂などを口にする異食が頻繁に見られた。
7歳で知的障害児施設に入所後も、タバコの吸い殻、コーヒー粉、石鹸、茶葉、毛髪、ベニヤ板、紙、毛糸、靴下のゴム、自分の排泄物の異食が頻繁だった。
1996年(43歳)のぞみの園に入所。安全や健康に対する配慮のために生活に一定の制限。
2004年 これまでの支援を見直し「異食改善への援助について」をまとめる。
・当時,激しい異食のため,支援員による絶え間のない見守りや生活全般で多くの制限
・意図的と考えられる尿失禁の回数が増えた
・意図的と考えられる尿失禁の回数が増えた
↓
絶え間のない見守りが行動障害を助長している可能性
↓
支援会議により,「異食改善への援助について」の以下の内容をB寮全体で周知
絶え間のない見守りが行動障害を助長している可能性
↓
支援会議により,「異食改善への援助について」の以下の内容をB寮全体で周知
@過干渉をやめ穏やかに見守る
A寮内の役割・当番の習慣化に試みる(コップ配り,洗濯物たたみ)
B 夜間に他利用者の居室で寝ている時は特に注意して見守る
C支援方法について職員の意識統一を図り実施すること
A寮内の役割・当番の習慣化に試みる(コップ配り,洗濯物たたみ)
B 夜間に他利用者の居室で寝ている時は特に注意して見守る
C支援方法について職員の意識統一を図り実施すること
結果
寮全体で統一的な支援を行ったことで,寮内の役割・当番の内容を理解し、次第に本人にとって心地よい環境へ向けて改善が見られ、異食が軽減していった(消失はしていない)。
2005年(52歳)より専門的な支援を受けられるC寮転所。
転所当初はそれまで減っていた異食が増加。
実践は TEACCHプログラムのアイデアを参考に
・居住環境の構造化「居住の場における混乱防止の為の応急措置」
・日中活動「居住の場から通い,安定した活動を行うことにより自尊心を高める」
・自立課題は「居住の場における余暇対策としての自立課題の設置」
・スケジュール「見通しを持ち,安定した生活を送るため」
・日中活動「居住の場から通い,安定した活動を行うことにより自尊心を高める」
・自立課題は「居住の場における余暇対策としての自立課題の設置」
・スケジュール「見通しを持ち,安定した生活を送るため」
行動障害全般は,次第に穏やかになり,安定した生活を送っていた。
しかし,異食,特に排泄物の異食が消失することはなかった。
しかし,異食,特に排泄物の異食が消失することはなかった。
2009年(56歳?)同様な支援を受けられるD寮転所。
D寮で新たに工夫されたこと
(5)作業の代替活動 D寮に転寮してから,これまでの 4つの取り組みに加え、新たな支援の検討が加えられた. 天候などの様々な都合により作業活動へ出られない日の代替活動として,居住場所で作業の代替活動を行うこととした。毎日行う作業活動と同等の時間が過ごせるよう,居室において自立課題を用意した。 また, 自立課題棚の最下段には「お茶カード」を用意し,課題終了後にはお茶と交換することとした(写真3.自立課題とお茶カード).A さんの大好きなお茶カードは,自立課題終了の見通しを持つとともにモチベーションを高めることが可能となり,居室における代替活動の意欲に繋がった. |
(「やることがあること」「楽しみがあること」ですね)
(6)報酬の工夫 A さんは,お茶だけでなく,缶コーヒーも好きである。そこで,缶コーヒーを報酬とする方法を検討した.缶コーヒーと交換ができるコーヒーバックを片手に日中活動へ出かけて行くことが日課となり、作業が終了し D 寮に帰すると、楽しみにしていたコーヒーを飲むことが日課となった。このコーヒーバックの利用は、日中活動の場所と寮との移動を,支援員の付き添い無しで移動する初めての試みでもあっ た。 また,週末の活動後の報酬はお茶と決め,活動後にお茶と交換した。A さんは曜日の理解は難しいが,このバックにより平日(日中活動のある日=缶コーヒー)と週末(日中活動のない日=お茶)を区別し,経験的に一週間単位の見通しが持てるようになったと考えられる |
(これも「楽しみがあること」と、ひょっとしたら「カレンダー(月・日の見通し)の必要性」という話もあるのかも)
このレポートが出た時点(2014年)で過去2年半、異食が完全消失しているということだから、2011年くらいに消失したと考えていいだろう。D寮に転所して2〜3年くらい、ということか。
1996年から考えれば、いろいろ考えてから15年、支援の見直しが2004年ですからそれから7年くらいかかっているわけです。
もちろん長くかかっているのですが、成人になっても改善できるんだ、という希望でもあり、また幼少時からこのような暮らしができていたら、もっと早い段階で「異食の消失」は起こったかもしれません。
なお、参考文献にあげられていた『あきらめない支援』は検索をかけても手に入れる(購入する)方法を見つけることはできませんでした。私は持ってて記事も書いているので、そちらのリンクを貼っておきます。
参考文献
1) 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園:あきらめない支援−行動問題をかかえる利用者に対する入所施設における実践事例集一.朝日印刷工業株式会社(2011).
1) 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園:あきらめない支援−行動問題をかかえる利用者に対する入所施設における実践事例集一.朝日印刷工業株式会社(2011).