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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2024年03月09日

『VB指導法』(メアリー・リンチ・バーベラ著)を読む




『VB指導法 発達障害のある子のための言語・コミュニケーション指導』
著:メアリー・リンチ・バーベラ 協力:トレイシー・ラスムッセン
監訳:杉山尚子 訳:上村裕章
原著は2007 日本語版は2021

 すごく興味深く、今までわからなかったところがわかった部分もあったりしました。

 一部、見出しとかも紹介してますが、自分のこころ覚えのためで、全部では無いので、興味を持たれた方は、本を購入して実際に読んで下さい。

 著者メアリー・リンチ・バーベラは、長男ルーカスが1歳9か月で自閉症の診断を受けた時、看護師(当時看護師長)で、夫は医師。

 夫が長男に自閉症の可能性がある、と言った時、強く反対した。

 しかし、その後1999年の診断(診断を受けるまでには時間がかかったとのこと)の後は、ABA による療育を受け、またメアリーも BCBA(認定行動分析士)の資格をとり、大学院に行き、地域の自閉症協会を立ち上げ、指導的立場にまでなった。

 1999年からロヴァース研究所から1名のコンサルタントに月1回来てもらい、セラピスト3名とメアリーをトレーニングしてもらった。

 その後、ロヴァース法(DTT)でない「VB(言語行動)指導法」をするようになっていく。

 VBではスキナーの『Verval Behavior』(1957)を重視し、1998年にサンドバーグとパーティングトンの出版した『Assessmento of Basic Language and Learning Skills』(ABLLS:エーブルスと発音する)をよく参考にし利用(評価用紙としても使える)する。

追記
『Verbal Behavior』はアマゾンの kindle 版だと今日の価格で 649円。
ただし・・・英語だけど・・・



第2章 応用行動分析の"いろは"

 この本全体を読んで、メアリーさんが非常に慎重に、かつ「強化子」「強化」を使って、教えようとすることがよくわかる。

 あなたは、子どものすべての要求が満たされ、強要されない状況を作ってから、子どもと課題を始める必要があります。しかし、心配しなくてもそのような状況を長く続ける必要はありません。私は、親と専門家が、悪気はないのにこの有意義な出発点を見落としていることをずっと見てきましたが、その結果は子どもと専門家の双方にとって、悲惨なものでした。

 また問題行動はコミュニケーションであるとし、しかし

 大多数の行動分析学者は、問題行動がいつ起こるのかを知りたいものです。これは重要なことではありますが、私は同時に、その問題行動が起さないのは、どこで、いつ、なのかも確認します。それによって、何から手をつければよいのかがわかるのです。

 とも述べている。

 また行動の機能を分析することの大事さも言っている。

 ジョニーの噛む行動には、2つの異なる機能があることがわかります。1つは彼が望むものを手に入れることであり、もう1つは望まないものから逃れることです。これらの2つの噛む行動には、それぞれ別々に対処する必要があります。

1.行動の ABC 分析
2.データを集める
3.行動の機能を特定する
4.問題行動の機能に基づく介入計画の作成
5.注目やものの獲得が機能の行動に対処する(「『注目』や『ものの獲得』という機能をもった行動」に対処する)
6.逃避が機能の行動に対処する(「『逃避』という機能をもった行動」に対処する)
7.感覚刺激で強化される行動
8.問題行動に対処するためにあなたが今すぐ始めるべきこと
(8.では介入したい行動を選び、計画を立て、また周囲の人とも情報共有し、一貫した対応をすることを述べている。)

第3章 子どもをアセスメントする
第4章 強化子を最大限に増やし、強化のしくみをつくりあげる

1.誰もが強化子に反応する

2.強力な強化子を見つける
 レイサム博士は、Power of Positive Parenting (1990)の著者ですが、すべての人間は、否定的なコメントや「ああしろこうしろ」という指示1つに対し、8つの肯定的なコメントが必要だと述べています。彼の講演を聞いたことは、私にとって人生の転機でした。彼は否定的なコメントが多い学級と、肯定的なコメントが多い学級とを比較し、否定的なコメントの8倍の肯定的なコメントを与える必要があることを学んだのでした。
(これは「強力」というのではなく、数の問題だけど)

3.強化子を選ぶ
(量的には小さい、あるいは小さくできるものが使いやすい)

4.テレビや DVD を強化子として活用する

5.強化子を見つけるために自己刺激行動や問題行動を調べる

6.強化子をアセスメントする

7.年齢に適した強化子の開発
(年齢相応)

8.学習環境と強化子のペアリング
ペアリングとは、環境、人、教材と、子どもにとって既に強化子となっているものとを組み合わせる(ペアにする)方法です。

(場所、部屋、人、教材とかが嫌なものにならないように。居心地のいいものになるように、ってことだよな。不登校になる、ってことは学校がペアリングできていない、ということだよな)

 私は専門家たちが、「私たちはまず1週間でペアリングを行ない、それからプログラムを始めます」と言っているのを実際に聞いたことがあります。しかし、それは効果的ではありません。親や専門家が子どもと一緒に作業をする間は、ペアリングを続ける必要があります。学校やセラピー中など、指示が非常に強力な場面では絶対です。

9.強化子とペアリングする方法

(ここで、人とペアリングする時は、まず強化子を渡してから離れることを推奨している。人への不信感がある場合も多いだろうしね。そんなふうにゆっくりゆっくり近づいていく、というような態度がこの本のいろんなところで見ることができる)

10. 指示は出さない

(まず最初にするのは、子どもからマンド(要求)ができるようにすること。それまで指示はしない。これ、めちゃ大事かも)

11. VR強化スケジュール
 強化子のペアリングと簡単な指示を出すときは、VRスケジュール(変率強化スケジュール)を知っておく必要があります。VRとは、強化と次の強化の間に子どもが行なった正反応の平均数です。始めは、指示なしで強化子を与えます。その後係々に指示の回数を増やしながら、すべての正反応の後に強化子を与えます。これを“連続強化"といいます。その後にVRのスケジュールに移行します。
 VR 強化スケジュールでは、強力な強化子を1つ得るために、子どもに何回課題をすればいいかが予測できないから有効なのです。VR スケジュールは、時間の経過とともに強くて安定した反応を起こさせることが証明されています。

(ここらへんになると、むちゃくちゃ難しいのじゃないかな)

第5章 マンド(要求言語)

(ここで非常に面白かったのは「1つだけ(例えば「ビデオと言う」→「ビデオを見せてもらえる」)のマンドを教えるのでなく、複数のマンドを教える」というところ。過剰汎化、なんでも欲しいものがある時「ビデオ」と言う、が起こるから。しかし・・・例えば「ください」ですべての要求を伝えるとかはこの本で否定的に語られているけれど、別にいいんじゃね、と思うのだが、目の前のお子さんによるのかな?)

第6章 無発語あるいは最小限の発声しか出ない子どもの発話の増加と改善

1.手話とその他の代替コミュニケーション
(著者は代替コミュニケーションとして手話推し)

2.音声出力装置
(VOCA:Voice Output Communication Aid のことで専用機もあれば、最近だとスマートフォンやタブレットのアプリでもあります)

3.絵カード交換式コミュニケーション・システム
PECSRのこと)

その他略

第7章 誤反応をさせない教え方と言葉を転移させる方法

1.プロンプト

2.侵襲性の度合いによるプロンプトの階層
(言語プロンプトは侵襲性が低いと考えられているけれど、あまり繰り返してやっていると、まるで小言になる、っての面白かった)

3.誤反応をさせない教え方と言葉を転移させる方法

4.誤反応の修正
(ここらへんも難しいなあ・・・というか正確な発語をさせる方法なのだけど)

第8章 受容言語とその他の非言語行動の指導

1.受容言語または聞き手スキルの指導
(スキナーが「受容言語」という言葉の「受容」は認知的すぎると考えていたので、マーク・サンドバーグが「聞き手スキル」という言葉を使ったという話。
 ここ、私が「認知主義」の立場にあるからだけなのかもしれないけれど、「聞き手スキル」という言葉は音声言語に偏りすぎじゃないか。「見てわかる」受容性コミュニケーションもあるじゃないのかな。そして自閉スペクトラム症のある人にはそこが非常に大切になるのじゃないかな。必要な情報が簡単に手に入るのに、スキルアップしないと必要な情報が入ってこない、というのは困ると思う)

2.日常的な環境の中で受容言語を伸ばす

3.集中指導で受容言語を教える

4.模倣の指導

第9章 言語行動の指導

1.タクトの指導

2.エコーイックの指導

3.イントラバーバルの指導


第10章 集中指導と日常生活の中での指導を組み合わせる
第11章 トイレとその他の重要な身辺自立スキルの指導
第12章 最後にお伝えしたいこと

1.診断をすぐに受け入れること

2.失敗の定義
(「普通」にならなければ「失敗」と考えることの間違い。治りはしないけれど成長する、という話)

3.高機能・低機能の罠をさける

4.できる限りたくさんのセラピーをできる限り早く受ける
(この「たくさん」は種類ではなく、「良いセラピー」という前提があっての「時間数」のことと考えられる)

(リンク先に別記事)

6.新しい治療は1つずつ試す
ルーカスを診断した児童発達精神科医であるジェームズ・コプラン博士は、自閉症治療に投薬を使うのは良質な行動的プログラムが実施された後だ、けだと言ってくれました。
(ここは深くうなずく。)

7.子どもの治療のためにできることすべてを学ぶ
(たぶん、この「治療」は「treatment」の訳だと思うのだけど、治すための「医療」ではなく、「treatment」には「もてなし」というような意味もあるから「良き関わり方」みたいなことだと思う。)

8.体に気を付けて、一日一日を大切に
(子どもに関わらない自分の余暇を大切にすることも)

9.逆境を最大限に利用する

 もともと親御さんで、ひとごとでなく自分のこととして学んで来られた方の言葉はすごく参考になりました。

 しかしもともとメアリーさんは、修士をもっていて、お子さんがどうであれ博士課程にも入るつもりだった方。お子さんが診断を受けた当時看護師長もしておられたということはリーダーシップもある方。とても、多くの親御さんがマネできることとは思えません。

 アセスメントのところでも、表を使ってすごく多くのことにチェックを入れたり、もうたいへん。

 ただ、特別支援教育担当教師や障害のあるお子さんに係る保育士さんなどは、専門性を身につけるためには読んでみるとすごく参考になりそうです。

 しかし私にはやはり音声言語にこだわりすぎてるような気がして、「しんどいな」「めんどくさいな」と思えてしまい、もっと楽にできるところですませてもええやん、別に正確に聞き取れたり、しゃべれたりしなくても、視覚的支援で簡単に(受容的に)わかってもらったり、視覚的支援も併用して意思表出してもらったりしたらええやん、と思ってしまいます。

 エリック・ショプラーがロヴァース法に対して「家族を圧力鍋の中に入れてしまうというリスクがある」と述べた、というのを思い出してしまいます。

自閉症に関する The NewYork Times の 1987年の記事 
 
 しかし、メアリーさんは、いたるところで「あせらないように」「子どもが強化される環境で」という意味のことを書いておられるのは強調しておきたいです。だから子どもは圧力かけられないけど、支援者側が圧力かけられる感じかな・・・もちろんプロになるにはそれも必要な時期があるのかも。で「考えるんじゃない。感じるんだ」というレベルで使いこなせるようになり、と。しかし親御さんは、知っておくといいけど、できなくても全然問題ないのじゃないか、と。

 ただ、私がこんなことを書けるのは、「本当にたいへん」な状況をまだ目にしていないからかも。世の中には音声言語にこだわってなくても「親子で圧力釜の中に入るしかない」場合もあるのはわかりますから。

 う〜〜ん、しかし特別支援学校には最低2人、このレベルで「わかっている、できる」人は欲しいな。1人は校内指導、1人は地域の学校からの相談にのる。それでなきゃ「センター機能」なんて、口はばったくて言えないでしょう。

 あと、メアリーさんも、いろんな人に相談をかけています。相談できる人、欲しいよなあ。

 放課後等デイサービスのスタッフだったらどうだろう・・・やはり「放課後」だからのんびりしたいよね。まあ ST さんとか心理士さんとかがいらっしゃるなら、このレベルのことをやってもいいかとは思うけれど、一般職員に「できて当然」というのは酷だと思う。

 で、親御さんにものんびりして頂き、成果だけ受け取って頂きたいけれど、メアリーさんがそうであったように、日本もまだまだ親御さんが勉強しないとお子さんを守れないからなあ・・・










posted by kingstone at 22:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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