ちょっと必要あって読んでみました。
著者メアリー・リンチ・バーベラさんは、元々看護師さん(当時看護師長もしていた)で、夫は医師。
長男ルーカス君が1歳9か月、夫氏がルーカス君に自閉症の可能性がある、と言った時に「ルーカスに自閉症の可能性がると言い出したのはどうかしている。ルーカスは自閉症ではないし、二度と『自閉症』という言葉は聞きたくない」と抗議されてます。
しかし、その後1999年の診断(診断を受けるまでには時間がかかったとのこと)の後は、ABA による療育を受け、またご本人も勉強され BCBA(認定行動分析士)の資格をとられ、大学院に行き、地域の自閉症協会を立ち上げ・・・という指導的立場にまでなられた方です。
いろいろ面白かったのでまたまとめたいのですが、今日、こんな記事を見つけました。
この中で渡米したママさんの思いとして伝聞で伝えられたのは
「子どもが支援級行きになることがわかり、入るはずだった学童もそれを理由に断られてしまい、日本の教育はクソなので渡米して9月入学に備える」 |
ということなのですが・・・『VB指導法』の他の部分はまた別にして、まずこのあたりを書いてみたいと思います。
『VB指導法』は、最終章で、自閉スペクトラム症のあるお子さんをもった親御さんたちに語りかけているところがあります。
その中の
5 子どもの権利を擁護する
の中にいろいろなことが書いてあります。
私が住んでいた郡は(他の多くの郡と同様に)少なくとも10年は遅れており、1990年代後半でもABA セラピーが提供されていませんでした。しかし、子どもが危険にさらされていると確信していたので、すぐに動きました。適法手続きのために同時期に動いていた友人たちの助けもあり、教育機関の上層部の人々が動いてくれ、ルーカスだけでなく郡の子ども全員のためのサービスが向上しました。 権利擁護をしたくないという家族もいるでしょう。擁護する代わりに、より良いプログラムを求めて、学区を文字どおり「追いかけて」引越しをする人もいます。私の考えでは、引越しをするよりも住んでいる地域の教育プログラムの選択肢を変える方がよいと思います。なぜなら、引越しをしたとしても、そのサービスはいつ変わってもおかしくないメンバーで構成されている教育行政や教育委員会によって決定されることが多いからです。「自閉症の治療に良い」区域に引越ししたとしても、1年後に選出されるメンバーがプログラムの予算を打ち切ってしまうかもしれないのです。あるいは、素晴らしい先生を見つけて家を売って家族ごと引っ越しても、その先生が病気にかかり、いなくなってしまうかもしれません。 |
「ここが良い」と思っても、年度変わりで変わってしまう可能性はアメリカも同じです。
結局は「今、住んでいる地域を自分の力で変えていく」というのが一番確実なわけですね。まあメアリーさんほど頑張れる人は少ないでしょうけれど。
で、「地域」もかなわなければ、まずは「自分の家」だけでも、というところから。
また、上の引用のところでも、アメリカでも「そんなに整っていない」ことが書かれています。
私は1990年頃からアメリカの教育制度に興味を持ち「なんかIEP(個別教育計画)があって、IEP会議では専門家も出て来てくれて支援方針を決められるらしいで。すごいなあ」とか思っていましたが、前掲書の同じ権利擁護のところにこんなことも書かれています。
アメリカでは、特別なニーズのある子どもは無料で適切な公的教育(FAPE)が受けられます。こういうと聞こえがよいですが、学校の管理者が FAPEに該当すると思われるサービスを子どもに提供したがるわけではありません。 すべての資料をファイルに綴じて準備しておきましょう。必要な報告書をすぐに見つけられるようにしておきます。必要があれば、子どものプログラムの欠陥を指摘しておくとよりよいでしょう。 個別の指導計画(IEP)やプログラムを検討する場、お子さんの教育について話し合うすべての場に家族や友人も連れて行きましょう。そして会議の記録をとってもらうか録音をしてもらいます (これを行なぅ場合は責任者に数日前に知らせておく必要があります)。このような会議にひとりで臨むと怖気づいてしまうものです。 |
※FAPE(Free Appropriate Public Education:無料で適切な公的教育)米国連邦法では、障害のある3〜21歳の子どもはこの教育を受ける権利がある。(とされている・・・連邦法でそうだからといって州によっては結構ええかげん)
また私がかつて見た映画「いろとりどりの親子」を見ていても、IEP できちんとした教育を受けてきているようには見えませんでした。
(ただし、良い IEP を作ってもらって教育を受けて帰国したお子さんを、私は担任したことがあります。ですから機能していないわけではないのですが、地域差、学校差がえぐいくらいにある、ということです)
でも支援会議に、夫婦で参加はもちろん、友人にも来てもらう、というのは良いアイデアやなあ・・・