竹内康二(2023)『発達障害研究』Vol.45, 3, ,184-192
専門的指導技法は、個別の事例研究による検討を経て適用方法の大枠としてのガイドラインが作成され。モデル化されることで汎用性が確立され。多くの現場で用いられることになる. |
発達障害児者への支援は個に応じた目標や手続きによってなされることが原則であるため、専門的指導技法もまた個に応じたカスタマイズが必要となる。つまり、支援を受ける人の数だけ微調整された技法が存在する。 |
「見本合わせ課題」というのは例えば
A適切に順番や位置を計画する
B即時強化
C記録
Charlop-Christy et al は対面による指導よりもビデオ映像を用いた視覚的な介入の方が ASD 児者の行動獲得を促すことができることを示した。 Charlop-Christy. M. H.. Le, L. & Freeman, K. A. (2000) : A comparison of video modeling with in vivo modeling for teaching children with autism. Journal of Autism and Developmental Disorders, 30 (6). 537-552. |
@ビデオフィードバック(VF) VFは、対象児者自身の一連の行動(適応的な行動もしくは不適応的な行動またはその両方)を撮影したビデオを作成し、対象児者がそのビデオ映像全体を観察した後、フィードバックを受けて自己の行動が適切であったか否かを評価することを求める手続きである。 |
Aビデオプロンプト(VP) VPとは一連の標的行動を実行するモデルやタスクを客観的視点または主観的視点から撮影したビデオを作成し、そのビデオを個々の行動ステップに細分化(課題分析)する、または行動ステップ間に休止を挿入して提示する手続きである. |
B代理的自己モニタリング ビデオを用いた自己モニタリングは、自身の行動が記録されるビデオを視聴し,自身の行動について評価を行う手続きであり、不適切行動が減少し適応行動が増加したと報告する研究が数多くある。 |
う〜〜む。私には@とBの違いがよくわからない。また@とBはかなり知的に高い児童・生徒にしか適応しないような気がするが、重度知的障害の方に適応した例があるとのこと。(榎本拓哉・竹内康二(2014):重度知的障害児へのビデオフィードバックを用いた行動支援:自由遊び場面での不適切行動の修正から、明星大学心理学研究紀要,32,19-23.)あれ?この論文ではBのところで出てきたけれど表題に「ビデオフィードバック」と書いてあるな。
しかし、1つ思うのは、このビデオフィードバックは、特別支援学校や特別支援学級の教師が適切な指導法を身につけるためにこそ、非常に有効な方法だと思う。
またAは、タブレット端末の実践例でよく出てくるのだけれど、手軽さから言うと、1枚ものやめくり式の手順書のほうが良い場合が多いのではないかと思ってしまう。もちろんタブレットだと注目してくれやすい、ということがあるのだけど、それ以前に視覚的支援をいろいろやっていたら、手軽に紙でできそうな気がするが。
まず要求を伝える、質問に回答する手段の確保について語られ、 AAC(Augmentative and Alternative Communication : 補助代替コミュニケーション)について説明があり、その後 PECS の解説、また実際の現場での使用法(PECS とは言えないかも)が解説される。
知的障害が重度の方の場合は、単に絵カードを用意するだけでなく、本人の生活環境のなかで使いやすい工夫を施したコミュニケーションの方法を検討する必要があるだろう。このような本人中心の特別仕様を絵カードに行うのも現場で求められる専門的指導技法の1つであろう. |
PECS は「専門的指導技法」というのにふさわしい体系、技法の集積があると思うけれど「本人の生活環境のなかで使いやすい工夫を施したコミュニケーションの方法を検討する」というのはもっと一般的なことではないだろうか(というかそうなって欲しいという願いかな)
応用行動分析学に基づいた行動問題へのアプローチとしてポジティブ行動支援(Positive Behavior Support : PBS) がある。PBSは、個人の行動レポートリーを拡大し個人の生活環境を再設計し、個人の生活の質を高めることで個人の問題行動を最小化するための応用科学である。 |
その前段階(?)の ABC 分析だって、かなり慣れないと、役に立つ分析にならないし。その C の部分がどういう機能を果たしているかを分析するのが「機能的アセスメント」だろうし。
紹介した内容を俯瞰してみると、確かに発達障害児者の支援において専門性の高さは重要ではあるものの技法を使うこと自体を目的とすべきではないことが確認できたように思う。支援者は技法の意義を理解し、柔軟にその技法をカスタマイズすることが求められること、つまり個に応じた支援を探求することが専門的指導技法を用いる目的であるということである。 |
結局ここに行き着くのですよね。
社会実装が実現するために何が必要なのかを検討した研究は少ないため、今後の課題としたい。 |
で、そこに少しでも爪痕を残したいのだけど。