kingstoneには「確立操作」という言葉がわからぬ。
ということで
「確立操作の概念とその有用性 より包括的な支援を可能にする分析枠の再検討」
武藤崇・多田昌代(2001)『特殊教育学研究』Vol.39(1), 25-30
武藤崇・多田昌代(2001)『特殊教育学研究』Vol.39(1), 25-30
を読んでみました。
三項随伴性とは
三項随伴性 (the three・term contingencies )とは、「弁別刺激反応一結果」で表される「オペラント(operant)」という有機体 (人間を含む)の行動に関する分類方法である。 |
その特徴
1)行動を個体の側の属性としてではなく、環境との交互作用の表現とした 2)行動はその結果事象から定義づけられる 3)何を標的反応とするか は結果事象の配置を検討する分析・援助者によって恣意的(arbitrary )に決められる |
(この論文は2001年に書かれていて、今では3)の部分について ABA の人たちもこうは言わないのじゃないだろうか。「標的反応(標的行動)」を分析・援助者によって恣意的に決定する」わけではなく、本人の QOL を一番に考えるだろうし、それを相手が表現(例えば選択行動として)できるように考えるのじゃなかろうか。もちろん、今でも「分析・援助者によって恣意的に決める」と考えている人もいるだろうし、そういう人とは友達になれそうにない。あとこのあたりのことが、本人や周囲の人への「社会的妥当性」として議論されているところになるのじゃないか)
確立操作とは
Michael(1933)は「動機づけ」としての機能をもたせるような先行事象を「確立操作」と呼んだ |
Michael,J. (1993)Establishingoperations . The Behav− iOT Analyst,16. Lgl 206.
確立操作の機能
@ ある事象の強化効果を変化させる機能 (reinforcer establishing effects ) A そういった事象と関係する行動の生起頻度を変化させる機能 (evocative effects) |
(わかんないのは、「強化」というのは「生起頻度」を増やすという意味じゃないの?これ、同じことを言ってるわけじゃなく、分けられるの?)
確立操作の種類
@ 特定的な確立操作 (specific establishing operation ) A 般性的な確立操作(general establishing operation ) |
@ の例として、バスケが好きな子にバスケができない状態は、バスケをするのがより強い強化子となる
A の例として、「睡眠不足」は、いろんなことのやる気を無くす
(しかし「お布団に入る」という行動は強化するよな・・・)
A の例として、「睡眠不足」は、いろんなことのやる気を無くす
(しかし「お布団に入る」という行動は強化するよな・・・)
弁別刺激と確立操作の類似点と相違点
類似点
@ 反応(行動)の前に提示される A 提示されると反応(行動)の頻度が上がる(下がる場合もあるよな) |
相違点
@ 確立操作は結果の効果を高めるが弁別刺激はその機能がない A 弁別刺激は結果の生じる可能性を示すが、確立操作にはその機能がない |
(ここは具体例が思いうかばない。後ろに図解入りで説明があるのだけど、よくわからない)
確立操作の導入による支援方法の拡大
1. 三項随伴性に基づく分析・介入だけでは問題行動を低減できない場合に確立操作の関与を検討する |
ある問題行動について機能分析し、頻度が減ったがまだ出る場合もある。よくよく調べてみるとある子は通学時のバスの停車回数、ある子は朝寝坊した時に出ていた。(だから、そこをうまくいくようにすればもっと減らせたり、無しにしたりできるということだろうな。そこまで書いてないけど)
2.問題行動が複数の機能をもつと推定される場合に確立操作の関与を検討する 問題行動に対する機能分析は、代表的な4つの条件を交代させることによって査定する方法が一般的である。 |
lwata, Dorsey, Slifer, Bauman,& Richman,(1994)Toward a functional analysis of self−injury, Journal of Applied Behavior Analysis,27,197−209.(Reprinted from Analysis and Intervention in Developmental Disabilities. 2, 3-20, 1982)
(ここ説明読んでもわからなかった・・・)
3.問題行動を低減・予防するために課題の嫌悪性を高めている確立操作を分析・変容する |
(例えば作業学習を頭に浮かべると良さそう。作業がうまくいかない、あるいは逃げ出す、暴れるなどの問題がある場合)
@ 課題自体の変容
1) 好みの課題に変える
2) 課題の難易度を下げる
3) 課題の新奇性を下げる
4) 課題に動作を組み込む(頭ばかり使うのではなく、ちょっとした移動や、大きめの動きを入れたりだろうな)
5) 課題の量を減らす
6) 1試行に含まれる反応数を減らす(これは量や難易度と同じ?)
7) 課題に対象児が興味をもつような結果を伴わせる
2) 課題の難易度を下げる
3) 課題の新奇性を下げる
4) 課題に動作を組み込む(頭ばかり使うのではなく、ちょっとした移動や、大きめの動きを入れたりだろうな)
5) 課題の量を減らす
6) 1試行に含まれる反応数を減らす(これは量や難易度と同じ?)
7) 課題に対象児が興味をもつような結果を伴わせる
(あと、自閉スペクトラム症の方だと、「課題を見ただけで手順がわかるようにする」「見てわかる手順書をつける」なども重要だろう)
A 課題を提示する以前事象を変容
1)(やりにくそうな)課題をより簡単で強化的な事象の間に散在させる
2)難しい(未習得)課題を簡単な(既修得)課題と組み合わせる
3)従事率の低い課題を提示する直前に、従事率の高い課題を提示する
4)従事率の低い課題を提示する直前に「今日はよい日ですね」といった社会的コメントや楽しいお話を提示する
2)難しい(未習得)課題を簡単な(既修得)課題と組み合わせる
3)従事率の低い課題を提示する直前に、従事率の高い課題を提示する
4)従事率の低い課題を提示する直前に「今日はよい日ですね」といった社会的コメントや楽しいお話を提示する
(この4の手法には笑ってしまったけど、実際に役に立つ場合も多そう。ってか全体の雰囲気は良くなる場合が多そう)
(結局のところ「うまくいくように環境設定をしておく」みたいなところか。
これで思い出すのは「うちの子、晩ごはんを食べてくれません」という悩みをお聞きした時のこと。そのお子さん、学校ではまったくそんなことが無いので、不思議に思って丁寧に聞いていくと
・学校から帰って来たらずっと、机の上のお菓子を食べたり、冷蔵庫から食べ物を出して食べたりしている
・晩ご飯の時に、「頂きます」をしてもすぐ立ち歩いてしまう。食べないのかな、と思ったらしばらくしてまた戻ってきて、つまんでとかダラダラ食べ続ける。
・晩ご飯の時に、「頂きます」をしてもすぐ立ち歩いてしまう。食べないのかな、と思ったらしばらくしてまた戻ってきて、つまんでとかダラダラ食べ続ける。
という状態だということが判明。
そこで、
そこで、
・帰ってきても決められたおやつしか食べない
・晩ご飯の開始と終了をはっきりさせ、終了になったら片付ける
・晩ご飯の開始と終了をはっきりさせ、終了になったら片付ける
ということを提案したのだけど、特にこの前半は確立操作にあたるのかな。でも、これ学校なら簡単なことだけれど、お家ではお子さんや環境によっては結構難しかったりするよね。教師は家庭よりかなりやりやすい環境で実践させてもらってることを肝に銘じておかないといけないよな、と思います。
あと、私は視覚的支援にこだわるけど、ABA の方って、視覚的支援をプロンプト(弁別刺激)として捉える方が多い。確かにそういう使い方をする場合もあるけれど、カレンダー、スケジュール、手順書、また判断のための情報提供、選択肢の提示など、プロンプトとは言えないよなあ・・・弁別刺激以外の部分も多いよな、じゃあ確立操作かっていうと、そうでもない。何かもっと根源的な情報提示、それこそやんなきゃ人権侵害になりそうなもん、というふうに思うのだけど。
何かそのあたりがもやもやする)