「ショプラー VS ロバース 論争」について、知りたくて 「Shopler Lovaas controversy」という検索語で Google 検索してみました。ここで Google Scholar でなかったもんで、論文が出てこなかった・・・
でひとつひっかかったのが、
RESEARCHER REPORTS PROGRESS AGAINST AUTISM
(研究者が自閉症に対する進歩を報告)
(研究者が自閉症に対する進歩を報告)
という The NewYork Times に1987年3月10日に投稿された記事。36年前ですね。
ネットの無かった時代の記事もアーカイブしてるそうです。
これは、1996年にオンライン出版が開始される前の、The Timesの印刷物アーカイブからの記事のデジタル化バージョンです。これらの記事を原文のまま保存するため、The Timesは記事の変更、編集、更新を行いません。 時折、デジタル化の過程で転写ミスなどの問題が発生することがありますが、これらのアーカイブ版を改善するための作業を続けています。 |
記事の内容は、まあ、だいたい知ってる内容ですが、「新聞記事」である、という点にご留意下さい。日本でも新聞や雑誌の記事は不正確であることも多いですから。
訳はだいたい DeepL に翻訳してもらいましたが、一部訂正も入れます。
USING an intensive behavior modification program and training parents to continue treatment at home, U.C.L.A. psychologists say they have been able to transform a large proportion of autistic children into apparently normal children. U.C.L.A.の心理学者は、集中的な行動修正プログラムを用い、家庭で治療を続けるよう親を訓練することで、自閉症児の大部分を一見普通の子供に変えることができたと述べている。 |
ロバースのグループ(?)ことですね。
例の周40時間ってやつ。
''If you met them now that they are teen-agers, you would never know that anything had been wrong with them,'' said Ivar Lovaas, the psychologist who directed the study. For instance, one now has an I.Q. of 130 and hopes to study meteorology at the Air Force Academy. この研究の責任者である心理学者のアイヴァー・ロヴァースは、「10代になった彼らに会っても、何か問題があったとは分からないだろう」と語った。例えば、ある子はIQ130で、空軍士官学校で気象学を学ぶことを希望している。 |
う〜〜ん、「anything had been wrong with them」。もちろん、なんか問題が起こればそのつど対処は必要なんだけど、ひょっとしてここに「特性」も含めてないかなあ・・・
もちろん「支援のための診断」は必要なくなってる人がいたとして、特性は無くならないんじゃないかと思う。
There are several different patterns of autism and the U.C.L.A. treatment may not work with all of them. For instance, autistic children whose symptoms are combined with severe retardation - with an initial I.Q. below 30 - do not seem to gain significantly from the U.C.L.A. treatment, according to Dr. Lovaas. While some autistic children have normal intelligence, only about 30 percent have an I.Q. of 70 or more. The average for people in general is 100. 自閉症にはいくつかのパターンがあり、U.C.L.A.治療がすべてのパターンに有効とは限りません。例えば、症状が重度の知恵遅れを併せ持つ自閉症児、つまり初期のI.Q.が30以下の自閉症児は、U.C.L.A.治療で大きな利益を得ることはないようだとロヴァース博士は述べています。自閉症児の中には正常な知能を持つ者もいるが、I.Q.が70以上の者は30%程度である。一般的な人の平均は100である。 |
なるほど、ある程度知的には軽いお子さん対象であると。
(何が軽くて、何が重いのか、私にはよくわからなくなっていますが)
In a follow-up study, he found that while the children had made strong gains during treatment, those who were sent back to mental institutions regressed to their earlier levels. But those who went to live with parents, who continued the training, were still making progress. ''The training only really works if you get the parents involved,'' he said. さらに追跡調査を行ったところ、治療中に大きく成長した子どもたちが、精神病院に戻され、以前のレベルに逆戻りしていることがわかったのです。しかし、親と一緒に暮らすようになり、トレーニングを続けた子どもたちは、依然として進歩し続けていたのです。「訓練は、親を巻き込んでこそ効果があるのです」と彼は言った。 |
早期「療育」とそれに親御さんも関わることの重要性を言ってはるわけですね。
家族が自閉症スペクトラムのあるお子さんとの関わり方を知ることは大事だと思います。しかし「訓練」としての関わりを続けるのはしんどい・・・私自身、そういうことをやろうとして親子関係もまずくなってる例も見たことはある・・・
もちろん ABA それ自体の問題ではなく、それを「技法として使う場合の背景とか哲学」の問題であり、やはり36年の年月を経て、当時とはずいぶん変わってきていることは実感していますが。
で、やっと最後のほうにショプラーが出てきます。
Some experts on autism, though, question the approach for many or most families of autistic children. ''The risk is that it puts the family in a pressure cooker,'' said Eric Schopler, editor of the Journal of Autism and Developmental Disorders. ''It's an intense burden on the family -they give so much time, energy and money, which may shortchange other children in the family. For many families the cost of the training may just be too great.'' しかし、自閉症の専門家の中には、多くの、あるいはほとんどの自閉症児の家族に対するこのアプローチに疑問を持つ人もいる。『自閉症と発達障害』誌の編集者であるエリック・ショプラーは、「家族を圧力鍋の中に入れてしまうというリスクがある」と述べた。「家族が多くの時間、エネルギー、お金を費やすことで、家族の他の子供たちが犠牲になる可能性があるのです。多くの家族にとって、トレーニングにかかる費用はあまりにも大きいかもしれません」。 |
このあたり、「家族の他の子ども」だけでなく、どの家族も犠牲になる可能性は高いと思うな。
なお、記事の中で当時の日本の「統合保育」が高く評価されていたり、今ではコクラン計画で推奨されないサプリのことが出てきたりしてました。まあ時代かな。
なおこの記事中の記述だけを見ていても「その統合保育、その後、こうまずくなるよな」と想像はつくものでした。
Google 検索でひっかかって来たもうひとつの記事(これにはショプラーは出てくるのか?)もなんか興味を引かれました。こちらは論文を、野良としてネットの世界に放流したもののようでした。
しかし、やっぱりちゃんとした論文を読んでみないといかんか・・・