井澤信三『教育心理学年報』2021, 60,91-103
ここに出てきた Table5 がすごく興味深かったです。
これが Table 5 です。
※以下、画像はすべてクリックすると大きくなります。
この Table 5 には
ASD 児者に対して同定されんたエビデンスに基づく実践 (Wong et al, 2015) 及び AFIRM モジュールにおける EBPの職業別による選択順位 (Morin et al, 2020) の統合 |
という題がついています。当然、アメリカの、論文に採択されたものの中で、というバイアスは大きく、アメリカの現場の一般的な状況とは乖離があるかもしれません。
各論文はそれぞれ
Wong, C., Odom, S. L., Hume, K. A., Cox, W,, Fetting,
A., Kucharczyk, S., Brock, M. E., Plavnick, J. B.,
Fleury, V. P, & Schultz, T. R. (2015).
Evidence-based practices for children, youth and young adults with autism spectrum disorder: A comprehensive review.
Journal of Autism and Developmental Disorders, 45,
1951-1966.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25578338/
A., Kucharczyk, S., Brock, M. E., Plavnick, J. B.,
Fleury, V. P, & Schultz, T. R. (2015).
Evidence-based practices for children, youth and young adults with autism spectrum disorder: A comprehensive review.
Journal of Autism and Developmental Disorders, 45,
1951-1966.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25578338/
Morin, K. L., Sam, A., Tomaszewski, B., Waters, V., & Odom, S. L. (2020). Knowledge of evidence-based practices and frequency of selection among school-based professionals of students with autism.
Journal of Special Education,
First Published on September 18.
https://doi.org/10.1177/0022466920958688
Journal of Special Education,
First Published on September 18.
https://doi.org/10.1177/0022466920958688
ここで「エビデンスに基づく実践」とされているものは、ある局面の指導技法といったものから、パッケージされたプログラムまでいろいろあります。
どんなものかというとアルファベット順に
1 Antecedent-based intervention (ABI)
2 Cognitive behavioral intervention (CBI)
3 Differential reinforcement of alternative, incompatible, or other behavior(DRA)
4 Discrete trial teaching (DTT)
5 Exercise (ECE)
6 Extinction (EXT)
7 Functional behavior assessment (FBA)
8 Functional communication training (FCT)
9 Modeling (MD)
10 Naturalistic intervention (NI)
11 Picture Exchange Communication System (PECS)
12 Parent-implemented intervention (PII)
13 Peer-mediated instruction and intervention (PMII)
14 Prompting (PP)
15 Pivotal response training (PRT)
16 Reinforcement (R+)
17 Response interruption/redirection (RIR)
18 Scripting (SC)
19 Self-management (SM)
20 Social narratives (SN)
21 Structured play groups (SPG)
22 Social skills training (SST)
23 Task analysis (TA)
24 Technology-aided instruction and intervention (TAID)
25 Time delay (TD)
26 Video modeling (VM)
27 Visual supports (VS)
2 Cognitive behavioral intervention (CBI)
3 Differential reinforcement of alternative, incompatible, or other behavior(DRA)
4 Discrete trial teaching (DTT)
5 Exercise (ECE)
6 Extinction (EXT)
7 Functional behavior assessment (FBA)
8 Functional communication training (FCT)
9 Modeling (MD)
10 Naturalistic intervention (NI)
11 Picture Exchange Communication System (PECS)
12 Parent-implemented intervention (PII)
13 Peer-mediated instruction and intervention (PMII)
14 Prompting (PP)
15 Pivotal response training (PRT)
16 Reinforcement (R+)
17 Response interruption/redirection (RIR)
18 Scripting (SC)
19 Self-management (SM)
20 Social narratives (SN)
21 Structured play groups (SPG)
22 Social skills training (SST)
23 Task analysis (TA)
24 Technology-aided instruction and intervention (TAID)
25 Time delay (TD)
26 Video modeling (VM)
27 Visual supports (VS)
日本語化して略語と書き出してみると(間違っているのがあるかもしれませんし、日本で通常使われている約語と違ってしまっているものもあるかもしれません。またそういうことがありましたら、コメントか、Twitter でのメンションで教えて頂けるとありがたいです)
1 事前事象に基づく介入(ABI)
2 認知行動療法(CBI)
3 代替行動分化強化(DRA)
4 不連続試行訓練(DTT)
5 運動(ECE、運動だと教えて頂けました)
6 消去(EXT)
7 機能分析(FBA)
8 機能的コミュニケーション訓練(FCT)
9 モデリング(MD)
10 日常発達介入(NI)
11 絵文字交換コミュニケーションシステム(PECS)
12 親による介入(PII)
13 ピアを介した指導と介入(PMII)
14 促し(PP)
15 ピボタル反応訓練(PRT)
16 強化法(R+)
17 反応妨害と再方向づけ(RIR)
18 スクリプト(SC)
19 自己管理(SM)
20 ソーシャル・ナラティブ(SN)
21 構造化された遊びのグループ(SPG)
22 ソーシャルスキルトレーニング(SST)
23 課題分析(TA)
24 術的支援による指導と介入(TAID)
25 遅延、待つ(TD)
26 動画を見本にする(VM)
27 視覚的支援(VS)
2 認知行動療法(CBI)
3 代替行動分化強化(DRA)
4 不連続試行訓練(DTT)
5 運動(ECE、運動だと教えて頂けました)
6 消去(EXT)
7 機能分析(FBA)
8 機能的コミュニケーション訓練(FCT)
9 モデリング(MD)
10 日常発達介入(NI)
11 絵文字交換コミュニケーションシステム(PECS)
12 親による介入(PII)
13 ピアを介した指導と介入(PMII)
14 促し(PP)
15 ピボタル反応訓練(PRT)
16 強化法(R+)
17 反応妨害と再方向づけ(RIR)
18 スクリプト(SC)
19 自己管理(SM)
20 ソーシャル・ナラティブ(SN)
21 構造化された遊びのグループ(SPG)
22 ソーシャルスキルトレーニング(SST)
23 課題分析(TA)
24 術的支援による指導と介入(TAID)
25 遅延、待つ(TD)
26 動画を見本にする(VM)
27 視覚的支援(VS)
ABAに関するもの
「応用行動分析」という項目はありません。しかし、応用行動分析である局面で使われる技法としては(他で使われるものも含む)
1 Antecedent-based intervention (ABI,事前事象に基づく介入)
3 Differential reinforcement of alternative, incompatible, or other behavior (DRA,代替行動分化強化)
4 Discrete trial teaching (DTT,不連続試行訓練)
6 Extinction (EXT,消去)
7 Functional behavior assessment (FBA,機能分析)
8 Functional communication training (FCT,機能的コミュニケーション訓練)
9 Modeling (MD,やって見せる)
10 Naturalistic intervention (NI,日常発達介入)
14 Prompting (PP,うながし)
16 Reinforcement (R+,強化)
17 Response interruption/redirection (RIR,反応妨害と再方向づけ)
18 Scripting (SC,台本,プロンプトとフェーディング込み))
21 Structured play groups (SPG,構造化された遊びのグループ)
23 Task analysis (TA,課題分析)
25 Time delay (TD,遅延,待つ)
26 Video modeling (VM,動画を見本にする)
27 Visual supports (VS,視覚支援。ただしプロンプトと考える場合が多そう。私はそうじゃない場合もあると考える)
3 Differential reinforcement of alternative, incompatible, or other behavior (DRA,代替行動分化強化)
4 Discrete trial teaching (DTT,不連続試行訓練)
6 Extinction (EXT,消去)
7 Functional behavior assessment (FBA,機能分析)
8 Functional communication training (FCT,機能的コミュニケーション訓練)
9 Modeling (MD,やって見せる)
10 Naturalistic intervention (NI,日常発達介入)
14 Prompting (PP,うながし)
16 Reinforcement (R+,強化)
17 Response interruption/redirection (RIR,反応妨害と再方向づけ)
18 Scripting (SC,台本,プロンプトとフェーディング込み))
21 Structured play groups (SPG,構造化された遊びのグループ)
23 Task analysis (TA,課題分析)
25 Time delay (TD,遅延,待つ)
26 Video modeling (VM,動画を見本にする)
27 Visual supports (VS,視覚支援。ただしプロンプトと考える場合が多そう。私はそうじゃない場合もあると考える)
17個もあります。ですから、圧倒的に ABA ですね。
しかも、まだ、応用行動分析を基とした指導パッケージもあります。
2 Cognitive behavioral intervention (CBI,認知行動療法、これは上なのか迷うところ。また ABA を基にしている、という言い方も正しいのかよくわからない。何でもあり、に見えるから)
11 Picture Exchange Communication System (PECS,絵カード交換コミュニケーションシステム)
15 Pivotal response training (PRT,機軸行動発達支援法)
別になんちゃら法と言わずとも、どこの誰でもこうできたらいいよな、あるいはしたいと思うもの
5 Exercise (ECE)
12 Parent-implemented intervention(PII,親による介入、要するに親御さんが関われるようにすることでしょう?)
13 Peer-mediated instruction and intervention (PMII,ピアを介した指導と介入)
19 Self-management (SM,自己管理)
21 Structured play groups (SPG,構造化というのがどのレベルかはわからないけれど、友達と遊ぶのもいいよね。)
22 Social skills training (SST,社会に出た時のあれこれ、特に現場でできたらいいよね)
25 Time delay (TD,要するに「待つ」ってことだから、たぶんどんな立場の人もよしとすると思う)
13 Peer-mediated instruction and intervention (PMII,ピアを介した指導と介入)
19 Self-management (SM,自己管理)
21 Structured play groups (SPG,構造化というのがどのレベルかはわからないけれど、友達と遊ぶのもいいよね。)
22 Social skills training (SST,社会に出た時のあれこれ、特に現場でできたらいいよね)
25 Time delay (TD,要するに「待つ」ってことだから、たぶんどんな立場の人もよしとすると思う)
どこに入れたらいいかよくわからないもの
20 Social narratives (SN、ソーシャルナラティブ、ソーシャルストーリーを含む)
AAC(拡大代替コミュケーション)
24 Technology-aided instruction and intervention(テクノロジーに支援された指導と介入(CAI や SGD/VOCA を含む) )
TEACCH
8 Functional communication training (FCT,機能的コミュニケーション訓練)
27 Visual supports (VS,視覚支援,これは単なるプロンプトではなく暮らしの環境そのものとして大事にする)
27 Visual supports (VS,視覚支援,これは単なるプロンプトではなく暮らしの環境そのものとして大事にする)
TEACCH は自閉症スペクトラムの人たちの特性に基づいて視覚支援を強調するし、「機能的コミュニケーション」とは言わないと思うけれど、コミュニケーションが機能しているかどうかは厳しく判定するしね。
また、これらはアメリカのことだから、日本のあれこれは関係ないけれど、おめめどうのあれこれもこのあたりに入りそうです。おめめどうの人たちは「訓練」という言葉は嫌がるだろうし、「全然違うのに」と怒るかもしれないけれど。
で、もうすでに、それぞれがそれぞれに影響しあって、新たに勉強し始めた人が「これ、うちのオリジナル」と思っていても、そうではなかったりするものも多いですね。どう強調するかの濃淡で違いが出てくるところもありますが。
で、まあそれぞれがそれぞれの(表面的でない)いいとこどりをして、進化していけばいいと思います。
(この「いいとこどり」。それぞれをかなり学び、実践した上でのことで、伝聞やちょっと本を読んだだけ、でいいとこどりや、わるいところはずしができるってものでないことは確かだと思います)
(この「いいとこどり」。それぞれをかなり学び、実践した上でのことで、伝聞やちょっと本を読んだだけ、でいいとこどりや、わるいところはずしができるってものでないことは確かだと思います)
ここから下、元論文を読んでみると(今、その最中)私は右側の部分を「よく使われている」と書いてしまいましたが、AFIRM という、オンラインで勉強するサイトで、どれだけ勉強されたか、というランキングでした。表は置いておきますが、説明を変更します。
どの介入方法の実践が多く報告されたかが左側。報告された単一事例の数の多いもの順に並べてみました。
なお、認知行動療法の報告(2015年)が少ないのに、職業別で勉強している介入方法(2020)では多いのは、5年のタイムラグのせいだと思います。
特別支援教育担当教員がよく勉強した介入方法。
1番が「事前事象に基づく介入」つまり、なぜその行動が起こるかを考えてその前の事象を変えていく、ってことですよね。
2番が「視覚支援」
3番が「不連続試行訓練、DTT」。これよくわからないのですが、課題学習などの場でプロンプトをだんだん無くしていく、ってやつかな。
一般教員がよく勉強した介入方法。
1番、2番は特別支援教育担当教員と変わりません。
この変わらない点にちょっとびっくり。
しかし3番目が「モデリング(やって見せる)」というのはわかるのですが、4番目に「機能分析」が入っているのに「へえ〜」と思いました(特別支援教育担当教員の場合、「機能的コミュニケーション訓練、FCT」が入ってます)。これは、ひょっとして停学・退学に関わることが多いからかな、と思いました)
スクールサポーター的な人のよく勉強した介入方法
1.事前事象に基づく介入(ABI)
2.プロンプティング(促し、PP)
3.代替行動分化強化(DRA)
4.強化法(R+)
5.認知行動療法(CBI)
やはりより細かく観察が必要であったり(やることはは地味だったりする)、専門的な訓練がより必要なものが上位にあがってたりするな、と思いました。
管理職がよく勉強した介入方法。
1番、2番は他の教員と違わないのですが、3番目に「機能分析(FBA)」が来ています。これも停学・退学に関わることが多いからかな・・・
によると
「個別障害者教育法」(Individuals with Disabilities Education Act : 以下、IDEA の修正条項 (1997) では、 ○深刻な問題行動を示す障害のある子どもへの支援方略を立案するために、学校が FBA(機能分析) 手続きを使用することを推奨している。 ○障害のある子どもを (10日以上の ) 停学、あるいは退学処分にする前に FBA を実施することが義務づけられている。 |
ってことですから。
なお、ご自分でいろいろデータを加工してみたいという方のために、下に xlsx ファイルのダウンロードができるようにしますが、何か不具合が起こりましても責任はもてませんので、ダウンロードは自己責任でお願いします。