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 あくまでも、私個人の意見です。

2022年07月10日

自閉症スペクトラムが背景要因のひとつと思われる引きこもり者・児に対する CRAFTA




※なお、私が読み取れていなかったり、まとめ方が言葉足らずだったりするところは多々あると思うので、興味を持たれた方は是非元論文にあたって下さい。

  こちらは児童例と成人例の2つが出ていますが、児童例のみ取り上げてみたいと思います。
  ※福祉分野では18歳未満を児童と呼ぶので、その例に従います。(教育分野では小学校6年生以下)

児童プロフィール
幼少期より些細なことへのこだわりや癇癪あり。小学校は小規模で目が行き届いていたよう。中1になって「学校に行く意味がわからない」と登校しぶり。母親は本人中二の4月に来談。
中1の時の様子。
@月ごとの学校出席頻度
 ※図はクリックすると大きくなります。
ターゲット行動@.png
A月ごとの自発的相談行動の有無  無し
B月ごとの地域支援者との交流の有無  無し
C月ごとの暴力の有無  8月から毎月

背景要因  ASD特性による
@行動レパートリーの少なさ
A情動的予測の困難
B自発性行動の少なさ
Cプロンプト依存傾向
D社会的に適切な行動の般化と維持の困難

○これらにより、学校でのふるまい方がわからず、級友や教師から着目や賞賛を得られない。
○ゲームを取り上げられた時に暴力をふるいゲームを手に入れることを覚えた。
○家族(母)はどう対応したらいいかわからなくなっていた。

やったこと

枠組み

1セッション1回60分、月1回、無料。セッション間に電話で数分相談対応することあり。

連携

母の了解を得たうえで、学校、病院、児童相談所、警察など諸機関と連絡。
必要に応じて支援会議を開いた。

セッション内容

@母の自尊心や自己効力感の回復。面接スタイルは指示的
A母への障害特性とかかわり方に対する心理教育

○母のコミュニケーションスキルの向上

・本人に対してポジティブなコミュニケーション
・本人への説明は情に訴えるのではなく、論理的に
・本人に対してプロンプトを出さず動因操作(たぶん動機づけ操作に同じ)をする

B暴力の減弱(警察への連絡練習など)

中3の4月の途中経過(つまり開始1年後)

暴力は7月から消失。(4月から3か月後)
8月から地域支援者と定期的交流を開始。

学校出席は安定せず。母に「教育を受ける目的がわからない」と言い、また気に入らないことがある時は母に「学校に行ってやらない」と言ったりすることも多かった。(これを筆者は「プロンプト依存」と呼んでいる)

(「本人が行きたい」ではなく、「行かせたいのは親やろ。私が気にいらないことを言ったりしたりすれば「親に対する罰」として行ってやらない」と駆け引きの道具にされてしまっている)

対応

中3の10月に母から本人に、家庭のルールと考えていた以下のことを言語化して伝えた。
「子どもが中学卒業後に就学か就労のどちらにも進まないのなら、親として子どもを家庭に置いておけないと考えている。今、親が何か手伝えることがあれば言ってほしい」

(前半だけでなく、後半があることがめちゃくちゃ大事なんだろうと思います)

結果

中3の12月、本人に就学の意欲が出て相談動機も高まり、1月に本人自ら希望しB相談機関を利用。B相談機関はあらかじめ筆者と母が受け入れを事前にお願いしていた機関。
母は周囲の人から「中学生に進路選択を強いてかわいそう」と言われて動揺することがたびたびあったので、筆者は「思春期の子(ひきこもりの?)を持つ母たちのグループワーク」を作り、想いの表出や共有の場とした。
中3の3月、本人の自発的相談行動が安定、暴力完全消失のため、終結。 

○全22セッション
○支援会議4回
○電話相談7回

フォローアップ

終結後(たぶん高1の3月くらい?)母親と相談機関Bに確認すると、本人は学校は1日も休まず、家庭内暴力も無かった。学校コーディネーター(特別支援教育コーディネーターとは書かれていない)が本人が活躍できる場面を作り、困惑しそうな場面ではフォローしてくれることで積極的に登校するようになっていた。

母の感想

「2年前が嘘のように穏やかな生活です」
「発達障害と診断を聞いた時から専門家が何かしてくれるに違いないと思い、様々な専門機関へ行ったが、セッションを通して本人に対峙するのは専門家ではなく自分だと気づいた」

ーーーーーーーーーー

 やはり山本さんが多くのところと連携したり、母親を支えるためにグループワークを作ったりされています。

 そして、「面接スタイルは指示的」と書かれているのは、ありがちな積極的傾聴のみのスタイルじゃない、ということですね。

 Twitter で紹介した時に「(疲れきっているのにさらに)家族に頑張れと(言うのか)」というツッコミを頂いたのだけど、ひきこもり状態が長くなっていると、ご家族は本当に疲れ切っておられてまともに考えることもできなくなっておられる場合が多いと思うのですね。しかもご家族の外部との交流も絶たれがちで、孤立し孤独感に苛まれることになりがちです。そしてまともに本人に向き合うこともできなくなる。

 しかし、特に自閉症スペクトラムの方について思うのですが(もちろん他の方もですが、特に)、特性を知り対応方法を知ることで、ご家族の自己効力感が上がり、うまくものごとが進み出す場合も結構あるのではないか、と思います。最後の母親の感想にもあるように。

 もちろん、うまくいかない例もあるでしょう。「とりあえず離す」が必要な場合もあるとは思います。私も実際にそう判断し、そう実践したこともあります。

 だから、「自閉症スペクトラムが背景要因のひとつと思われる引きこもり者・児に対する CRAFT@」でも枠組みのところで山本さんが、1年で結果が出なければ他機関を紹介する、とも書かれているわけで。(しかし、この児童の例では2年間継続しておられますが)


 しかし、途中ではご本人は「プロンプト依存」というか「指示待ち」になってしまっており、また「本人がしたい」「本人がわかりたい」と思うことがわからなくなっておられるよな。これって「自分で判断して、自分で選択して、行動し、自分で責任をとる」をさせてもらえてこなかった場合起こりがちなことで、たぶん小さな頃からそこを意識してやっていると「家を出るか出ないか」という強烈な選択を(もちろん「今、支援するよ」ということを伝えつつですが)迫らなくても済んだだろうな、と思います。


 あと2つほど続きます。








posted by kingstone at 05:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 福祉関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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