教育心理学年報 2020年 第59巻 P92-106
「排除しないインクルーシブ教育に向けた教育心理学の課題 ー障害観と研究者の立場性に着目してー」
栗田季佳
という論文に面白い表が載っていました。
まず「学校教育法施行令第22条の3」というのは、養護学校(特別支援学校)に進むのが適切とされるお子さんの基準を示したものです。
※画像はクリックすると大きくなります。
論文の Table 2 は
「学校教育法施行令第22条の3 に該当する障害のある子どもの小中学校の在籍」
というものです。
つまり評価としては「特別支援学校(養護学校)が適切だよ」と就学指導委員会などで評価されているけれども、通常学級や特別支援学級に在籍している児童・生徒の数です。
H24(2012)〜H29(2017)について数字が出ています。
表の下の注には「文部科学省(2013〜2019)より」、とあるので、筆者が文科省のデータから作られた表でしょう。
知的障害と肢体不自由のみの数字を私が抽出したものが下の表です。
※画像はクリックすると大きくなります。
やはり注に「平成25年から、障害の種類と程度によって振り分けられた従来の仕組みから『本人・保護者の意思を最大限尊重』し、総合的判断によって就学先が決定される仕組みへと改正された。」とあります。
その影響が H26 (2014年)に大きく現れています。
特に肢体不自由に関して顕著なので、そちらを見ると
普通級に在籍している数は例年と特に代わっていない
支援級に在籍している数は1000人強から10000人強に増えた!
つまり、例年なら特別支援学校に行っていたお子さんが地域の学校の支援級に入ってきたのだろうと推測されます。
ところが翌年から1000人強に戻ってしまっている・・・
もし「やっぱり支援級に行って良かったね」と本人・周囲のみんなが思ったのだったら、10000人強が続いたり、増えたりしたと思います。しかしそうはならなかった、ということじゃないかな。残念なことに。
もちろん受け入れ体制(人的、環境的に)が整っていれば10000人が続いたでしょうが、そうはなっていなかったということでしょうね。
しかし・・・神戸市や周囲の自治体では2000年より以前から「本人・保護者の意思を最大限尊重』し、総合的判断によって就学先が決定される」になっていたと思うのですが・・・全国的にはそうでも無かったのですね。