※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2021年05月26日

ゼロ・トレランス施策について



 アメリカのゼロトレランス施策(寛容性ゼロ施策)について。

片山紀子(大阪女子短期大学)
比較教育学研究第30号 2004年

現在(2004年)アメリカで行われている懲戒処分

タイムアウト(Time-Out)
早朝登校/放課後の居残り(Detention)
学内停学/学外停学(In School Suspension/Out of School Suspension)
オルタナティブスクールへの一時的転学、退学(Expulsion)

(タイムアウト以外は日本でもよく行われているだろうな。しかし、このタイムアウト、ABA で定義されたタイムアウトとは違うだろうな・・・一部は機能として同じになることはあるけれど)

 よくある対応。問題行動を起こすと所定の用紙に記録。その日のうちに校長、副校長に面接に行かされる。尋問(!)の後、過去の履歴も鑑みて処分などの判断がくだされる。(これが ORS システム)

 で、どのような子どもが懲戒リスクにさらされているかというと、

男   > 女
貧困  > 貧困でない
有色人種(特に黒人)> 白人
障害児 > 健常児

 しかも銃器持ち込みや破壊、落書き(あの街の中に大きく描かれたタイプの落書きだろうな)などは少なく、より小さな違反行為に対するものが多い。

(日本の校則違反みたいなものか・・・日本の校則違反の取締も「不服従」の観点からされているような気もするし)


1989年カリフォルニア州のオレンジ(Orange)郡やケンタッキー州のルイビルLouisville)学区で、ドラッグの使用があった場合やギャングに関連する活動に参加した場合に退学を求める政策として公表されたことに始まる

1994年の「学校における銃規制法:Gun-FreeSchoolAct」制定によって公的に承認され、公民権局も全米の各初等・中等学校を対象とした調査でゼロ・トレランス政策を根拠に退学した生徒数を問うなど(30)、アメリカでは周知の施策となっている。

全米一般に、ゼロ・トレランスという厳格な施策を確立し実行したことによって、問題行動が激減した結果、規律が向上し、学習環境が整ったといわれている。

 しかし、著者は「6. 懲戒に求められる新しい視点」で

 懲罰的な懲戒の対象と見るのか、教育のチャンスと見るのかで、違いが出てくるのではないか、と書いている。


伊藤秀樹(東京学芸大学)
日本教育学会第76回大会 (2017)

ゼロトレランスの理念は2006年に国立教育政策研究所の報告書でその意義が報告されて以降、賛否両論を巻き起こしながら全国の学校に普及していった。(結構、最近?しかし1990年代からアメリカで普及していってたということなら、もっと早く紹介されてそうなもんだけど)

(で、対抗言説を主張する人たちは、教育困難校などの教師がゼロトレランスを指示する言説に回答できていない、というのが著者の主張かな。しかし対抗言説と、教育困難校の課題解決は、並立できそうな気がするのだけど・・・)
posted by kingstone at 00:33| Comment(0) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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