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 あくまでも、私個人の意見です。

2018年08月18日

善意で貧困はなくせるのか? D・カーラン & J・アペル 著




 著者は特に開発途上国への支援をどうすれば、より費用対効果が上がるかを、ランダム化実験(RCT)を通じて研究、実践してはる。

 「ビフォアーーアフター評価」というのがある。

 ある人々のビフォアーとアフターを比較して、介入が効果あったかどうかを調べる。

 しかしこれはは役に立たない。(と筆者は言い切る)いろいろな外部要因が入っている可能性があるから。

 だから「介入を受けない対照群」を設定してランダム化試験をすることが必要になる。

 で、多くのエビデンスのある提言をしてはるのだけれど、日本とは現状があまりに違いすぎて、全然適用できないことも多いだろうな。

 しかしやってみて実証して意見を言う、というのは大切だと思える。

 いやあ、特別支援教育の事例研究はたいてい「ビフォアーーアフター評価」で、ランダム化するのは1実践者には手に余るなあ・・・
 しかし、著者の場合は協力してくれる(調査したい)マイクロファイナンスの会社を探し出して、RCTをやっていきます。しかもたくさん。



マイクロクレジットについて。

 マイクロ・クレジットは1976年にバングラデシュのモハメド・ユヌスさんが高利貸しからお金を借りていて貧困から抜け出せない人(女性)に、事業資金を融資し、高利貸しよりは低い利率で返済させる仕組みを作ったことから始まっている。
 また特徴としてグループに貸す、という形をとったところに特徴がある。

 それが成功したからユヌスさんはノーベル賞を受けたのだけど、その後、マイクロ・クレジットは「成功した女性企業家」とかたくさんの国の男女限らず「起業した成功者」のストーリーを宣伝してるけれど、実はそんなにみんな起業したいと思っているわけではないし、グループローンの場合、リーダーがだんだん疲れてくる、というのもある。

 そりゃそうやわな。
 それに、お金って借りてしまえば、例えば100ドル借りて、事業に70ドル使い、30ドルは趣味に使い、しかし返済日にちゃんと100ドル+利子を返せばわからないですもんね。

 またマイクロクレジットでお金を女性が借りても、手に入れるとすぐに、夫が取り上げて飲んでしまう、というのもありそう。

 利率の問題もあって、例えば日本だと

プロミス(三井住友系列)のホームページによると実質年率 4.5% 〜 17.8%

アコム(三菱UFJ系列)のホームページだと実質年率 3.0% 〜 18.0%


 しかしマイクロクレジットをするための資金を集めるのは例えばこうなっている。

 人気のあるkiva.orgというサイトはいろいろなストーリーが書いてあり、気に入ったストーリーにクリックして融資すると、その顧客が返済すればお金が戻ってくる、というシステム。

実際はこうなる。
 銀行(レンダー)がお金を借りたい人Aさんのところに行き、写真を撮り、ストーリーを作る。それがkiva のホームページで見ることができる。
 Bさんが見てストーリーを気に入り、クリックしkivaに100ドルを無利子で融資する。
 その100ドルはマイクロ融資者(これが銀行、レンダーだと思う)のポートフォリオに入る。
 マイクロ融資者は顧客(Aさんではなく、誰か。Aさんは既に借りているかも)に年率40% 〜 70% で貸し出される。(確か100%なんてのもあったはず)
 Aさんが返済すれば、Bさんに100ドルが返される。
 Aさんが返済できなければ、Bさんに100ドルは返されない。
(しかし、実際は他の誰かが肩代わりをするか、レンダー自身が肩代わりし、返済されることが多い。それは記録に傷をつけずに、よりたくさん融資を受けるため)
 BさんはAさんに融資したと思っているけれど、実は違う。
 (ひょっとして、感動的なAさんの話で100人から融資を受け、銀行はAさんも含めて99人に融資できる、って話だわな。あるいは9900ドルを別の儲け話に投資するとか・・・)

 この誤解を生じさせている、というのも問題

 し、マイクロ・クレジットって、実は日本の消費者金融の何倍もの利率をとってるんですよね。

 ただ、銀行には出向かなければいけないけれど、高利貸し業者は「取りに来てくれる」のが便利とか、返済期間が短くて毎日の商売にはわかりやすい、とかいろいろ、本人にとっては「便利と思える」ところがあったりするんだよね。

 なお、後の方でRCTをした結果、確かにグループ貸し付けのほうが、返済されることは多かった、ということではあります。



南アフリカでクレジット・インデムニティとどういうダイレクトメールにローン申込者が多いか。条件を変えてやってみた。
申込数が多かったもの。

1.低利率のローン(当然)

その他
・きれいな女性の写真(融資条件と関係無し)
男性に対して、男性の写真を使った場合に比べて利率を40%下げるのと同じ効果があった。
女性の人種は関係無かった。
・融資例の数(融資条件と関係無し)
融資例の表を4つ載せた場合、1つの場合より申請数がはるかに少なかった。


 もうひとつひとつのRCTの内容が面白いのですが、長くなるのでそれらに基づいた提言のところ。
 ただし、あくまでも開発途上国の例で、日本とはいろいろな意味で違う場合もあると思います。

1.貯蓄のほうがいい場合がある。
・毎月定額貯金、財形貯蓄みたいなもの。
 妻が仕事のためにローンで借りても夫が飲み食いに使ってしまう。
 あるいは「何か少し高めの物を買おう」と思ってもついつい使ってしまう、などの場合に有効。
(これは日本に既にあるな)

2.お知らせメールで貯蓄をうながす。

3.前払いで肥料を買う。
これは肥料が必要な時期にもう肥料を買うお金が無くなっている、というのが避けられる。
収穫して手元に現金がある時に、全額払う。
これで収量が多くなり、収入が増える。

4.と 5.は後で第9章の紹介の中で。

6.塩素ディスペンサーできれいな水を
下痢で命を落とす人がいないよう。
1)各家庭に塩素を配るのは効果がなかった。
2)地域のネットワークを使う(塩素ディスペンサーで消毒した水を地域(といっても狭い範囲)に流すのは効果があった。
ただし、最初、無償提供し、「もし(安い)金額で提供されたら」と尋ねられると地区によっては「無理」、地区によっては「払ってもつけてもらう」と意見が分かれた。

7.コミットメント装置
月1回、1年の積み立て預金のさいに時期が来たことをメールで(携帯の普及していないところでは手紙で)知らせるようにすると、総貯蓄額は6%増え、貯蓄目標を達成する人も6%増えた。



なお、著者はアメリカでstickk.comを運営している。


これは自分の決めた目標を達成するため、コミットメント契約ができる。
達成目標、賭けるもの、成功(または失敗)を証明してくれる人を決める。

1週間に1度はジムに行く。
失敗すると100ドル払う。

例チャリティー
1週間に1度はジムに行く。
失敗するとユニセフに100ドル寄付する。

例アンチチャリティー
1週間に1度はジムに行く。
失敗すると自分の嫌いな団体(例えば全米ライフル協会)に100ドル寄付する。

同じ割合の儲けになるとしても、仕組みによって大きく変わってくるものの例として、退職年金のマッチング拠出を上げてはる。それっていったい何かと思ったら、日本でもこんなのありました。
控除や払い戻しより、マッチング拠出をオファーされた人が拠出する割合が高かった。
(ただし、アメリカは個人が出すのが主で、会社が出すのが従、日本では会社が出すのが主で、個人が出すのが従、かな?)

第9章 学ぶ 大事なのは学校に来させること

例 ガーナの場合。
原則としてSSS(高等学校に相当)まで公教育は無料。
しかし学校に行けない理由
1)教育の機会費用(その本人が働けば得られたお金が失われる)
2)制服、ノート、教科書、ペン、鉛筆、昼食代、交通費などのお金
3)PTA会費
4)受験準備の補習の追加費用
5)全国標準試験(センター試験みたいなもんだな)の出願料
などたくさんの費用がかかる。


メキシコの「プログレサ(進歩)」(今では「オポルトゥニダデス(機会)」と呼ばれている)
貧しい家庭の子どもたちが85%以上の出席率を維持できたら母親にお金を払う。
これをRCTで一部のコミュニティには支援を出し、一部は対照群とした。(実のところ予算も少なくて一度に出すことができなかった、というのもある。災い転じて福となす、みたいな感じか)
プログレサの結果、参加したコミュニティでは支援を受けられた生徒の退学率が大幅に減った。


コロンビアのボゴタで実施されている「スプシディオス(補助金)」は「プログレサ」の改良型。
RCTの条件
1.(はっきりは書かれていないが)何もなし
2.毎月給付。普通のプログラム。
3.毎月、2/3は給付され、1/3は貯蓄口座に入れられ、次の年、学校に再登録したら受け取れる。
4.毎月、2/3は給付され、1/3は貯蓄口座に入れられ、(もともとの額は再登録あるいは年度末に受け取れ、ということだと思う)次の年、学校を卒業したら大きなボーナスが受け取れる。高等教育機関に入学したらボーナスを早く受け取れる。進学しない場合は1年後にボーナスを受け取れる。


1.2.をまずランダムに割り付けてやり、次に2.3.4をランダムに割り付けてやってみた。

結果。
2.3.4.は欠席率が12%〜26%低かった。
翌年、学年が変わっても就学する率は1.と2.ではあまり変わらなかった。しかし3.4.はかなり大きかった。
高等教育機関に進学する率は3.では5割上がり、4.では3倍上がった。
(進級、進学時のお金の必要な時に、手元にお金がある、ということが大きいか)


一番費用対効果が高かったもの
4.寄生虫駆除
これはなんと「学校にやって来る児童・生徒を増やす」に効果があった方法。
ケニアで約3.5ドルで学校に通う期間が1年伸びた。
次にいいのは制服のある学校の場合、貧困家庭に制服を無償で提供すること。
しかし費用はおよそ25倍かかる。
(制服が無いと恥ずかしくて登校できない、というのは日本でも数は少なくてもあるよな)


5.学力増強には少人数グループでの補習授業
小学校を卒業しても字も読めない、計算もできない、という事態も多い地域でやってみた。

インドの「NGO プラサム(Pratham)」のムンバイでのバルサキ・プログラム

成績が最低レベルの生徒をクラスから取り出して、毎日2時間、プラサムが雇って訓練した講師をつけて基礎的な学力の勉強をさせるプログラム。

プログラムを受けた生徒は大幅に試験の得点が向上した。

しかし、取り出した後のクラスはより少人数教育になったが、特に恩恵を受けたデータは無い。(これはプラサムに訓練されていない元々の教師の問題もあるかもしれない)


ケニアでRCT。
1年生を担当する教師をもう1人雇う補助金を出す。
そのさい、半分の学校では生徒を前学期の試験の成績で振り分けた。
あと半分の学校は、生徒をランダムに振り分けた。

結果。試験の成績で分けたほうは、上位の成績のクラスも下位の成績のクラスも、試験の成績が大きく伸びた。




過去に私がマイクロクレジット関係で書いたエントリなどへのリンクを貼っておきます。



posted by kingstone at 19:45| Comment(0) | お金・暮らし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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