2017年9月5日 京都大学と日立製作所のニュースリリース
「国や自治体の戦略的な政策決定への活用をめざす」
a) 都市集中シナリオ
主に都市の企業が主導する技術革新によって、人口の都市への一極集中が進行し、地方は衰退する。出生率の低下と格差の拡大がさらに進行し、個人の健康寿命や幸福感は低下する一方で、政府支出の都市への集中によって政府の財政は持ち直す。
b) 地方分散シナリオ
地方へ人口分散が起こり、出生率が持ち直して格差が縮小し、個人の健康寿命や幸福感も増大する。ただし、以下に述べるように、地方分散シナリオは、政府の財政あるいは環境(CO2排出量など)を悪化させる可能性を含むため、このシナリオを持続可能なものとするには、細心の注意が必要となる。
「細心の注意」ね。
でも、都市集中シナリオだと、政府財政は持ち直しても、みんなの幸福感は下がる。
で、この本は、その「細心の注意」は何か、をさぐり、実践した地域を紹介する、ということでいいのかな?
「漏れバケツ」モデル
現在の世の中、地域で閉じてしまうわけにはいかない。けれど、地域で生産し、地域で消費し、お金が地域で回っていけば「衰退」の速度を落としたり、逆に「繁栄」することも可能。
しかし、地域から「漏れバケツ」のようにお金が出ていくばかりになっていれば、地域創成など不可能。なので、まずどれだけのものが生産され、どれだけのお金を儲け、どれだけのお金が域外に出ていくのか、それを可視化した上で、考える。
もともと英国のロンドンに本部がある New Economics Foundation (通称 NEF)が提唱した概念。
政府からの補助金・交付金、観光客の使うお金、企業を誘致、などをしても、東京や外国の本社に利益が吸い上げられる構造であれば、お金は地域外に出ていく。
また、企業は外国に出て行き、補助金や交付金が減らされ、公共事業が無くなり、また店も地元のじゃないからどんどんお金が地域から出ていくのみになっちゃう。
なお「漏れ」で日本で大きいのは「エネルギー」
データに基づいて施策や自分たちのやることを考えるためにはまずデータ。
調査をするにはどうするか。
日本の場合
しかし市町村レベルの産業連関表は無く、独力で作成する必要がある。
「生産」=粗付加価値
「分配」
家計外消費支出(生産活動のための消費支出)
雇用者所得
営業余剰
消耗減耗引当
純間接税
「支出」
最終需要ー移輸入額=粗付加価値額
これらを調べられるのが
地域経済循環マップ これがめちゃ面白い
神戸市
明石市
播磨町
篠山市
NEFの調査。
ホテルと小さなB&Bのお金の出入り。
ホテルの客はB&Bの客より70%多く支出していた。
しかし地元経済の収入をみるとB&Bのほうが多かった。
NEFの開発した Local Multiplier 3 (LM3)
ある組織や企業の地域内乗数を3巡目まで計算したもの。
買い物調査(行政自身が買う物は「調達調査」と呼ばれる)
こんなのもあるな
「地産地消」から「地消地産」へ
これは、なるほど。その地域で何が消費されるかを調べ、それを地域で作ってくれるところを探したり育てたりする。そしてそれで仕事が作れていく場合も。
仕事がなければ地方創生は無い。
そうか、何もアイデアなしに「地域興し協力隊員」を連れてきても、補助金が切れれば終わりだし、そうなる前に「自分で何とかなるよう考えてね」ってのは無茶なんだ。
あと、以前読んだ本の中で、「商店街を活性化しよう」という補助金で呼ばれる立場の講師さんが書いていたのを読んだのだが、「お客さんを呼び込むために、こんなDMを送るのも効果的です」と文例を示したら、一字一句変えずに出した商店主がいて、それじゃあ活性化するわけない、みたいなことを書いておられた。
しかし「そうなることも当然。じゃあどうするか」をコンサルさんに考えて欲しいし、これも「商店主」が集まって「どうしようか」とアイデアを出し合って、下から作っていったものじゃなく、上から「補助金が出るから」といってやったからの失敗かもしれない。(そしてその上でつぶれる商店はつぶれるのもしかたないのかも・・・)
コンサルさんにしても、本気を出すなら「私もその地域で暮らす」というような姿勢が必要なのかも。
「地消地産+域内循環向上=所得が確保できる新規事業→定住」
いろいろな例。
毎日地元の米飯給食。
また他の食材も、地元の生産者がいつ何を出荷できるかを調べ、それを元に学校での献立を考えてもらう。しかし天候などで予定通りいかないことがある。その時は相談すると学校ごとに献立を1日ずらしてくれたりしてうまくいくようにしてくれる。
そのコーディネートを農業公社さんがやってくれてる。めっちゃ面倒なはずだけど・・・つまりそういうことをして下さる人がいてこそだよね。
それまで納入していた業者さんとは軋轢があった・・・それも町、学校関係者、農家が一体となって説明していった。
やはり「みんなで相談」「面倒くさいことを引き受ける人がいる」などの条件があったってことだよな。
地域で生産した物を域外に売り、さらに加工して売られている場合、地域で加工することができれば地域興しになる。
高知県のショウガ
これって、インドで綿花を作り、イギリスで加工し、インドにそれを買わせる、みたいな話と同じだよね。
で、インドで加工できるようにすることでイギリスへの依存を脱することができる。
こちらはめちゃ有名
もともと海士町のリネン・クリーニングは海士町の会社がやっていたが廃業してしまった。そこで松江市の会社に発注。しかしロットが小さくて細かな注文には応じてくれず、輸送費もかかる。観光協会の職員は宿泊施設の実際の現場で働いたりして実態を知るようにしている。その中でリネン・クリーニングの問題に気づき、山陰合同銀行の子会社「ごうぎんキャピタル」の出資するファンドの協力を得て「株式会社 島ファクトリー」を設立した。
で、地元の信用金庫などの利用もこの文脈で大事とされるわけだけど・・・
私、「合同会社KS」じんぶな〜の法人口座を作ろうとした時、メガバンクと全国規模の銀行は面倒な手続きは必要だったが、手続きをすれば粛々と口座を作って下さった。地元の信用金庫は、担当者が家庭訪問に来ていろいろ話をした上で「あなたの口座を作るのはお断りします」と言いはったもんな・・・
まあ私のプレゼン力とかが無かっただけかもしれないけれど、もう二度とあそこには頼まないでおこうと思う・・・
イギリスのトットネス
リコノミー・センターはコワーキング・スペース+インキュベーションセンター
コワーキング・スペースの使用料は財布に応じてでいい。
推奨は2ポンド(約300円)
だからお金の無い若者も使える。
トットネスでは、まず問題が認識されると、いきなりプロジェクト化するのでなく、課題を丁寧に調査し報告書を作ってからプロジェクト化する。
地元企業家フォーラムに登壇できる基準
1.事業内容がエシカルで持続可能で、適切な形でローカルであること
2.事業計画やこれまでの実績から能力が示されていること
3.ビジネスモデルが寄付や助成金に頼っていないこと
4.お金やお金以外の必要な「投資」によって、事業を次のレベルに引き上げられること
5.「地元経済の青写真」に取り上げた飲食物、再生可能エネルギー、住宅の省エネ改修、介護・健康の1つ以上のセクターに関わるものであることが望ましい
6.コミュニティの長期的レジリエンスに資すること
エシカル(ethical)とは、「倫理的」「道徳上」という意味の形容詞である。 ... 近年は、英語圏を中心に倫理的活動を「エシカル(ethical)○○○○」と表現し、エシカル「倫理的=環境保全や社会貢献」という意味合いが強くなっている。 身近な倫理的活動としては、主にエシカルコンシューマリズムが挙げられる。