物語フィンランドの歴史
北欧先進国「バルト海の乙女」の800年
石野裕子著
2017年10月25日発行
なんで800年かというと「地域的まとまり」ができてきたのが、「スウェーデン統治時代」と言われる13世紀頃からだから。
でもこの本を通読しての一番大きな感想は、
「強い国に囲まれた小国はたいへんだ・・・」
というもの。
第二次大戦後の「フィンランド化」という言葉は、私なども日本での言論を読む限り、ソ連の属国とされている、というイメージだったけれど、この本を読むと「ソ連より」の政策を現実主義としてとりながらも、独立した国としての自国を守ろうというものすごい努力だったんだな、とわかる。
先史時代、4万年前のネアンデルタール人の遺跡が見つかってるって。
寒いところでも人間は移住していくんだなあ・・・でも豊かな地を追い出されたのかもしれないけれど。
なお十字軍の遠征って北欧に対しても行われたのね。
スウェーデン統治時代はスウェーデン語が公用語となり、官僚、エリートはスウェーデン語を使った。(フィンランド語は下々の言葉だった)
1495 「古き怒りの時代」
モスクワ大公国が攻めてきた
1700 「大北方戦争」
スウェーデン軍対反スウェーデン連合との戦い
1713 「大いなる怒りの時代」
大北方戦争のドサクサにロシアが攻めてきた
(何か「風の谷のナウシカ」に出てきそうな名前)
1809 ロシア統治始まる。
ロシア統治時代のほとんどは、統制はゆるく(それによって、離れていくことを防ぎ、スウェーデンへの守りとしたかった)、自治がかなり許されていた。
1835 口承叙事詩「カレワラ」が編集される。(決定版は1849年版)
1871 ドイツが統一を果たし、ロシアは警戒を始める。
1880年代 本格的なロシア化が始まる。自治権の制限。
1917年3月 ロシア帝政崩壊
ケレンスキー内閣ができる。
10月 レーニンのボルシェヴィキ政権ができる。
12月 フィンランド独立宣言
1918年1月 フィンランド内戦勃発
「白衛隊」隊「赤衛隊」
「白衛隊」の勝利に帰すが、
内戦時、その後の虐殺などがあり、
「触れてはいけないもの」となる。
1930年代からスウェーデンでは「国民の家」(北欧型福祉)の概念ができた。
フィンランドではそこまで定着した考えではなかった。しかし
1921 義務教育法(あれ?これは日本のほうが早いな)
1922 「ネウヴォラ」が始まる。
妊娠期を含む子どもを持つ家庭を対象とする支援制度。
相談ができる育児支援の保健師が駐在する拠点。
地方自治体まで広がったのは第二次大戦後。
1926 職業上の平等に関する法律(男女平等)
1937 女性の炭鉱労働禁止。
出産給付金支給。
年金の支給。
1923 「純正フィンランド性」運動が内戦でバラバラになった国をまとめようと始まる。
1930年代に、フィンランド語を第一言語にする動きが強まった。
1939年12月 冬戦争勃発
ドイツを信じないソ連から領土交換をもちかけられ、断った結果。すごく善戦したが負けた。
それが元でドイツと組もうとし(バルバロッサ作戦への参加など)・・・そのドイツが結局負けて、エライ目にあう。運が悪いと言うか・・・
冷戦時代、それこそ悪口として(ソ連に迎合しているとして)フィンランド化という言葉が使われたけれど、結局、なんやかやとねばってワルシャワ条約機構には入らずに済ませている。
「ムーミン」の作者、トーベ・ヤンソンはスウェーデン語を母語とするフィンランド人。だから「ムーミン」はスウェーデン語で書かれている。フィンランドでのマイノリティとしての思いがあって、あの深みが出たのか。
1995 EU加盟
なお、2014年のノキアの携帯部門をマイクロソフトに売却したノキアショックにより、政府をあげてのベンチャー企業の応援をし、2016年から小学校でのプログラミング授業を始めているとのこと。
現在、力をもってきているのは「真のフィンランド人」党という保守で今の世界のポピュリズム政党に分類される党だと。