おはようございます。
今日の天気予報は曇り後雨。
予想最高気温は 25℃。
冷房、入れなくてすむかな?
・ 第百八十八段(その3)
京に住む人、急ぎて東山に用ありて、既に行きつきたりとも、西山に行きてその益まさるべきを思ひえたらば、門(かど)よりかへりて西山へゆくべきなり。こゝまで來つきぬれば、この事をばまづ言ひてん。日をささぬことなれば、西山の事は、帰りてまたこそ思ひたためと思ふ故に、一時の懈怠(けだい)、すなはち一生の懈怠となる。これを恐るべし。
一事を必ず成さむと思はば、他の事の破るゝをも痛むべからず。人のあざけりをも恥づべからず。萬事にかへずしては、一の大事成るべからず。人のあまたありける中にて、あるもの、「ますほの薄(すすき)、まそほの薄などいふことあり。渡邊の聖、この事を傳へ知りたり」と語りけるを、登蓮法師、その座に侍りけるが、聞きて、雨の降りけるに、「蓑・笠やある、貸したまへ。かの薄のこと習ひに、渡邊の聖のがり尋ねまからん」といひけるを、「あまりに物さわがし。雨やみてこそ」と人のいひければ、「無下の事をも仰せらるゝものかな。人の命は、雨の晴間を待つものかは、我も死に、聖もうせなば、尋ね聞きてむや」とて、走り出でて行きつゝ、習ひ侍りにけりと申し傳へたるこそ、ゆゝしくありがたう覺ゆれ。「敏(と)きときは則ち功あり」とぞ、論語といふ文にも侍るなる。この薄をいぶかしく思ひけるやうに、一大事の因縁をぞ思ふべかりける。
京都の東山に用があると思って辿りついたけど、「あっ西山の方が良かったんや」と思ったら、即西山に行きなさい。ちょっとさぼったつもりが、一生のさぼりになるのを恐れないとね。
1つのことを成就しようと思ったら、他のことがダメになるのに心を痛めてるような場合じゃないよ。人があざけってきても恥ずかしいと思うようなこっちゃない。渡邉の聖は知りたい言葉があったら、知ってる人に質問するために雨の中でも出かけようとした。止めたけれど、走り出てしまった。人の命はどうなるかわからないのだから。