選択の科学
コロンビア大学ビジネススクール特別講義
シーナ・アイエンガー著
原題 The Art of Choosing
実験とか事例とかをまとめていきたいけど、めっちゃ私流のバイアスがかかっているでしょうから、興味ある人は元の本を読んでね。引用部分はボルドー。
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「大西洋漂流76日間」
1982年2月4日
スティーブン・キャラハンのヨットは鯨に激突され転覆。
キャラハンは空気漏れしたゴムボートにわずかな物資をのせ漂流。
76日後救出された。
遭難直後の精神状態。
「わたしの周りにはソロ号からの回収品がある。装備はしっかり固定され、命に関わるシステムは機能している。日々の仕事の優先順位は決まっていて、異論の余地はない。耐え難い心細さと恐れ、苦痛をなんとか抑えている。わたしは危険な海に浮かぶ、ちっぼけな船の船長なのだ。ソロ号を失った後の動揺を乗り越え、とうとう食糧と飲み水を手に入れた。ほぼ確実と思われた死を免れた。そしていまや私は選ぶことができる。新しい人生を探して進むか、あきらめて死を受け入れるかだ。わたしは可能な限り、死に抵抗する道を選ぶ。」
(「やること」は「運命」によって「決められている」んだけど、その中でも本人の「選ぶ」がある)
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犬の無力感の実験
1965 コーネル大学 マーティン・セリグマン
第1段階
犬に電気ショックを与える
A.パネルを押せば電気ショックが止まる
B.何をしても電気ショックは止まらない
B.はすぐ萎縮。実験後も続く。
第2段階
電気ショックが来る部屋と来ない部屋の間に低い仕切りがある
A.の犬はすぐに仕切りを飛び越えた
B.の犬の2/3はじっと横たわって苦しみ続けた
現実にコントロールできるかより、コントロールできるという「認識」がポイント。
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ラットを迷路に入れて、まっすぐな経路と、枝分かれした経路のどちらを選ぶか。得られる餌の量は変わらない。
複数回の試行でほぼすべてのラットが枝分かれした経路を選んだ。
ボタンを押すと餌が出てくることを学んだハトやサルも複数のボタンのついた装置を選んだ。
カジノのチップを与えられた被験者は、回転盤が1つのテーブルよりも2つあるテーブルで賭けたがった。
(好奇心とも言えるな・・・)
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ホワイトホール研究(選択の自由度に対する調査)
ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ マイケル・マーモット
1976年以来、イギリスの20歳〜64歳の公務員男性1万人あまりの追跡調査
「収人の高い仕事ほどプレッシャーが大きいにもかかわらず、冠状動脈性心臓病で死亡する確率は、最も低い職業階層の公務員(ドアマンなど)が、最も高い階層の公務員の三倍も高かったのだ。これは一つには、低位層の公務員が高位層に比べて、喫煙率や肥満率が高く、定期的に運動する習慣がなかったせいでもある。だが喫煙、肥満、運動習慣の違いを考慮に入れても、最下層の公務員が心臓病で死ぬ確率は、まだ最上層の二倍も高かった。最も地位が高い人は収入も高く、自分の生活を思い通りにコントローールしやすいからという見方もできるが、それだけでは低位層の公務員の方が健康状態が悪いことを説明できない。社会的な基準からすれば富裕な部類に入る、二番目に高い階層の公務員(医師、弁護士、その他の専門職など)でさえ、上司に比べれば、健康リスクが著しく高かったのだ。」
で後でわかったことは「自己決定権の度合い」しかも現実のそれではなく「認識」によっていた。
さらに収入が高くても日々無力感を抱いている重役は健康状態が悪く、収入が低くても「自己決定権の認識」によって健康状態に差があった。
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1976年 コネチカット州 高齢者介護施設アーデンハウスでの研究(実験だよな・・・)
A.ある階では、入居者ひとりひとりに鉢植えを配り、
看護師が世話をする、と告げた。
また映画を木曜日と金曜日のどちらかに見れるので
また連絡すると伝えた。
B.べつの階では、ひとりひとりに好きな鉢植えを選ばせ、
世話は自分でするように伝えた。
映画上映会を木曜日と金曜日にするのでどちらの日に
見てもいい、と告げた。
3週間後
B.はA.より満足度が高く、生き生きしていた。
A.の70%以上に健康状態の悪化が見られた。
B.の90%以上が健康状態が改善した。
6か月後
B.のほうが死亡率が低かった。
(これ、今だったら倫理的に無理な実験かも・・・)
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筆者の父母はシーク教徒であり、結婚式までお互いの顔を知らなかった。
戒律の厳しい宗教のもとでは人は無力感を感じるであろうか、という疑問から筆者は学部生の時に各宗派の人に面接調査した。
対象
信徒に多くの日常的な規則を課す原理主義として
カルヴァン主義・イスラム・正統派ユダヤ教
保守主義
カトリック・ルター主義・メソジスト派・保守派ユダヤ教
最も規則の少ない自由主義
ユニテリアン主義・改革派ユダヤ教
調査の結果
原理主義の信徒
「宗教により大きな希望を求め、逆境により楽観的に向き合い、鬱病にかかっている割合も低かった。多くの決まり事があっても、人々は意欲を失わず、かえってそのせいで力を与えられているように思われた。かれらは選択の自由を制限されていたにもかかわらず、「自分の人生を自分で決めている」という意識を持っていたのだ。」
ユニテリアン
「悲観主義と落ち込みの度合いが最も高かった。特に無神論者。」
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「集団主義と個人主義」の項で筆者の京都でのエピソード
お店で緑茶を出してくれたので、砂糖を頼んだら店長さんが「あいにく砂糖を切らしておりまして・・・」。でコーヒーを頼んだらちゃんと砂糖がついてきた。
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ヘールト・ホフステードによる全世界のIBMの支社出働く従業員に対しての調査
個人主義指標(100点満点)
アメリカ 91点
オーストラリア 90点
イギリス 89点
西ヨーロッパ諸国 60〜80点
ロシア 39点
中国を含むアジア 20点台
日本 46点
インド 48点
グアテマラ 6点
東アフリカ数カ国 20点〜30点
豊かさは個人主義指標と正の相関
人口密度は個人主義指標と負の相関(というか集団主義指標と正の相関)
(そりゃ、密集して住むのに、個人主義を強くしてたらたいへんやわ)
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恋愛結婚と取り決め婚(つまり結婚まで顔も見たことがない、みたいな・・・そのちょっとゆるいのが「見合い婚」かな)
インド ラジャスターン大学のウシャ・グプタとプーシバ・シング
ジャイプール市で50組みの夫婦、結婚期間はばらばら、を対象とした調査
ルービンの恋愛尺度(91点満点)に対する回答
恋愛結婚
1年以内 中70点
10年以上 40点
取り決め婚
1年以内 58点
10年以上 68点
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筆者のスタンフォード大学院時代の実験
学習(アナグラム)課題
A.道具も課題も自己選択
B.スタッフが決定
C.お母さんが「こうして欲しい」と言ってたわ
アングロサクソン系
A.が一番よくできた
C.については露骨に嫌がった
アジア系
C.が一番よくできた。そしてやる気を出した。
(ある子は、「私が頑張ったって、お母さんに言っておいて」と言った)
(つまり文化によっていろいろ)
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日本人は背景を見る。アメリカ人は個人を見る。
水槽にバスが泳いでいる絵を5秒見せ、口頭で説明してもらう。
アメリカ人は一番大きなバスについて話す。
日本人は水槽の環境とか全体について話す。
(確かに私もそうするな)
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1998 筆者のシティーコープでの調査
アングロ系・ヒスパニック系・アフリカ系は日常業務を、自分の意思で選択可能なものと見なす傾向が強かった。
アジア系はそれほど選択の自由があるとは考えていなかった。
ラテンアメリカ人はその中間。
次に勤務実績を調査すると、アジア系以外は自由度が高いと考えていると、意欲・満足度・業績がよくなり、上司が決めていると考えている人は低くなった。
しかしアジア系は日常業務が上司に決められているという意識が強い人ほど、意欲・満足度・業績のスコアが高くなった。
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ソ連や東ドイツをなつかしむ人
「ソ連じゃ金があっても、何も買えなかった。今じゃ何でも買えるが、金がない」
「昔は旅行といえばハンガリーにしか行けなかったが、少なくとも休暇をとった気分にはなれた。今じゃどこにでも行けるが、どこにも行く金がない」
「昔はテレビのチャンネルは2つだったが、みんながそのチャンネルを見られた。今じゃすっかり事情が変わってしまった。100のチャンネルが見られる人もいれば、全然見られない人もいるんだからな」
「前は診てくれるお医者は一人しかいなかった。今なら何人ものお医者から選べるけど、ちっとも親身になってくれないのよ。良い医者に診てもらうにはお金がかかるし。病気になっても、だれも心配してくれる人がいないような感じ」
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アメリカでの最近の研究
西ヨーロッパ諸国に比べて、親子の所得に強い相関がある
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コールドリーディング(性格透視)
実は・・・
1.人は自分が思うほど他人とは違わない
2.人がもっている自己像や理想像は、大体同じ
3.だれもが自分は個性的だと思い込んでいる
この3点を頼りに予言者は賭けに出て、たいていは期待通りの効果を上げる。
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人はその他大勢と見られることに我慢できない
他人の選んだものは選びたくない
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就職活動で認知的不協和を解決する方法として筆者は自分でも知らないうちに優先する価値観を変えていくということを書いてはるのだが・・・
初期は理想・理念
最終期はお金(年棒・待遇)
に優先する価値観が変化していく、と言うのだけど、それ、変化か?
だんだん絞り込んで、最終的に年棒・待遇の差で決める、って当たり前じゃないのか?
変化してるのか?
う〜〜ん、わからん。
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ヨナ・バーガーとチップ・ヒースのスタンフォード大学学部生を対象にした実験
学生寮に住む学生を個別訪問して、ランス・アームストロング基金のガン撲滅運動への小口寄付と、活動支援を示す黄色いリストバンドの装着を求めた。
1週間後、「オタク系」の寮に行き、リストバンドを訪問販売した。
さらに1週間たって、まだイエローバンドを装着している人がどれくらいいるか調べた。
オタク系の寮の近所の寮では32%がオタク系がつけ始めた時点で装着をやめた。
遠くの寮では6%が装着をやめていた。
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ポール・エクマン(人間嘘発見器)
サルの表情と、その後の行動との研究から始め、人の表情を「読める」ようになった。
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筆者のジャムの研究
ジャム売り場と別のところで
A.24種類のジャムが試食できるようにした。
試食後クーポンを渡した。
B.6種類のジャムが試食できるようにした。
試食後クーポンを渡した。
A.の客でジャムを購入したのは3%
B.の客でジャムを購入したのは30%
選択肢が多すぎると選べなくなる。
(これって・・・携帯電話の料金プランなんかでもそうだよな)
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マジカルナンバー 7プラスマイナス2
(でも、私にとっては7は多すぎる)
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多数の選択肢から選り分ける方法
専門家はより細かい部分を選択していける。
(これは、実感。自分の詳しい分野では、短時間で細かい部分を選択し、楽に実行できる。それが専門性というもんだろうと思う)
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401k
続ければ、全体としては役立つようになっている。
しかし選択肢が多すぎて、どれにしようかと先伸ばしにしているうちに加入せず、結局お金が残らないという事態になりがち。
(これ、勝間和代さん推奨のドルコスト平均法と同じようなもんやな)
スゥエーデンではたくさんの選択肢とともに、選べない人のための既定の「デフォルト・ファンド」を作った。政府既定以外を選ぶ人が多かったのだが、運用成績は3年後に10%、7年後に15%も開いた。(政府既定の方が良かった)
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ジョージ・ブッシュのメディケア改革
ネットワーク内の医療機関にしかかかれないけれど割安にしたら不評。
しかし不評を言ってる人たちは、自分たちがどの保険に入っているのかわかってない場合も多かった。
その後、ネットワーク外の医療機関も受けることができる、ただしその場合は割り増し料金が必要、としたら満足度が上がった。
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インフォームドコンセント
昔の医療は父権主義
延命措置がずっと必要になるだろう赤ちゃんの延命措置をやめるかどうか
アメリカでは親御さんに決定させる
フランスでは親がはっきりとした異議申し立てをしない限り医者が決定
「辛い経験から数か月を経た時点で、アメリカとフランスの親たちの感じていた苦悩に違いはあったろうか?」
一方(フランス)の集団が他方(アメリカ)よりうまく対処しているように思われた。フランスの親たちの多くが、「こうするしかなかった」という確信を口にし、そのせいかアメリカの親たちほど、「こうだったかもしれない」、「こうすべきだったかもしれない」という思いにとらわれずに、自分の経験について語ることができた。
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ソフィーの選択
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ワクチンを打ちたがらないことについて
行動を起こさないリスクよりも、行動を起こすリスクを恐れる
(それがはるかにリスクの高い選択肢であっても)
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ヨーグルト実験
筆者とシーナ・ボッティとの実験
事前準備としておいしそうな4種類とまずそうな4種類を選ぶ
おいしそう
黒糖・シナモン・ココアパウダー・ミント
まずそう
セロリシード・タラゴン・チリパウダー・セージ
半数の学生(選択者)は、自分の選んだ物を1つ試食。
他の半数(非選択者)は、くじを引いてそこに記されたものを試食。
実は、非選択者は選択者が選んだものと同じ物が書かれていた。
その上でそれぞれが
「どれだけおいしかったか」
「値段をいくらにすればいいか」
を回答。
おいしいグループ。
選択者は非選択者の1.5倍を食べた。
選択者は非選択者より、250gカップで1ドル高い値段を回答した。
まずいグループ。
非選択者の方が選択者より食べた量が多かった。
非選択者は選択者より、250gカップで1.5ドル高い値段を回答した。
まずいグループの場合、選択者は「こんなまずい物を選んだのは私だ」という意識にひとくちごとに苛まれる。しかし、非選択者は「私が選んだわけじゃないし」と思える。
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禁止されたものを人は欲しがる。
押すことを禁止された「真っ赤なボタン」
(押したくなるわなあ・・・)
「心理的反発」を惹起する。やりたくなる。
1972年、フロリダ州マイアミの住民は、販売禁止条例が出た「リン酸塩」を含む洗剤の買い占めに走った。よく考えれば規制にも合い、美白効果も同じ洗剤があるにもかかわらず・・・
煙草やアルコールにもその側面がある。これらは「心理的反発」を起こさないですむように、税金という形で抑制策をとっている。
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選択の放棄を選択する
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事前公約
自分で「○○できたら、□□する」とか、
「○○できなかったら、□□する」とか宣言してそれを守る。