おはようございます。
外は暗くてよくわからないですけど、天気予報では「晴れ」ですね。
落葉やんで
三好達治
雌鶏が土を掻く、土を掻いては一歩すざつて、ちよつと小頸を傾ける。時雨模様に曇つた空へ、雄鶏が叫びをあげる。下女は庭の落葉を掻き集めて、白いエプロンの、よく働く下女だ、それに火を放つ。私の部屋は、廊下の前に藤棚があつて、昼も薄暗い。ときどきその落葉が座蒲団の下に入つてゐた。一日、その藤棚がすつかり黄葉を撒いてしまつて、濶然と空を透かしてゐた。
飴売りや風吹く秋の女竹
やまふ人の今日鋏する柘榴かな
病を養つて伊豆に客なる梶井基次郎君より返書あり、柘榴の句は鋏するのところ、剪定の意なりや収穫の意なりや、弁じ難しとお咎め蒙つた。重ねて、
一つのみ時雨に赤き柘榴かな
そして私も、自らの微恙の篤からんことを怖れて、あわただしく故郷へ帰つた。そこにも同じ果実が熟してゐた。
海の藍柘榴日に日に割るるのみ
冬浅き軍鶏のけづめのよごれかな
二三度母のお小言を聞いて、そして全く冬になつた。或は家居し、或は海辺をさ迷ひながら。
冬といふ壁にしづもる棕櫚の影
冬といふ日向に鶏の坐りけり
落葉やんで鶏の眼に海うつるらし
Wikipediaによると、梶井基次郎とは東大仏文科の時に出あってますね。陸軍幼年学校に行ってて、大脱走(距離的に・・・北海道まで逃げた)したために、歳くってからの高校・大学だったらしく、27歳で東大仏文科を卒業したばかり、と書かれてますね。
この「落ち葉やんで」を読んでると、実家は破産、父は失踪しているにも関わらず、結構高等遊民(要するに今で言うニート)っぽい暮らしをしてるような・・・