※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2015年05月31日

イギリスの文化財保護の歴史など(「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る」より)




 昨日は疲れてしまって、引用できなかった部分。

 かつてイギリスがポンド高に苦しみ、経済が低迷し、製造業の衰退で仕事がなくなった。
 そこで文化財保護を産業政策のひとつに位置づけて、文化財保護予算を増やした。
 それによって文化財を守ることができたのはもちろん、文化財保護にまつわる様々な仕事が生まれ、雇用促進につながった。

P153 表6 日本と英国の比較(年度の入っているものもあるが、入っていないものもある)
数字をExcelに入れて画像化してみた。データは文化庁、観光庁、English Heritage、世界銀行、UNWTOなどのデータを元に作成しはったもの。

スクリーンショット 2015-05-31 16.09.32.png

 「文化財訪問率」ってのは全観光客数の中で文化財を訪問した人の率かな?

 

イギリス文化財保護の歴史

18世紀〜19世紀 イギリスの貴族の館の最盛期
        「コーン法」という法律に基づいて、
        小麦の価格が統制されていたため、
        食料価格が非常に高かった。
        その中で力を握ったのが地主。
        つまり貴族。

(検索をかけてみたけど、「コーン法」がよくわからない。少なくともトウモロコシのことではなさそう・・・)

自由化によってコーン法が廃止される。それまで穀物輸入は2%台だったのが

1880年代 45%
     農地の価格の下落。
     所得税・相続税の上昇。
     貴族の力が無くなる。

1875〜1975 1116件の館が潰された。
1955     76件の館が潰された。

1974 ビクトリア・アンド・アルバート博物館で主として貴族の館について展示会が開催された。
   ここから「貴族の館は『文化財』で国民が守らなくてはならない」という意識が生まれた。


1965 SAVE設立
   修理すべき物件や救うべき物件を本や展示会、新聞記事などで広く訴える活動を開始。
   新聞記者や歴史の専門家で構成。
1983 SAVEは「パブ」も保護すべきとキャンペーン。(日本だと小さな居酒屋か)


その他の団体

1895 ナショナルトラスト設立
   田園風景と自然公園の確保
   海岸や山の土地を寄付金で購入する
1907 「ナショナルトラスト法」制定
1937 「ナショナルトラスト法」改正
    買い取りだけでなく、貴重な資産の所有者と
    トラストが保存の契約を結び、両者が協力し
    て資産を保護し、管理することを認めた。
    所有者には相続税の減額などの特典が与えら
    れることになり、大規模建造物の所有者や
    土地をナショナルトラストに寄付する人が
    増えた。
団体の拡大
    スタート時 100人
  第二次大戦後 12500人
     1965 150000人
     1981 1000000人突破
(この人数ってどういう立場の人かな?昔、よく玄関に「赤十字社社員」という紙を貼ってある家があったけど、あのノリかな?基本はボランティア団体とのことだし)
現在、所有しているのはイングランドとウェールズの海岸線の25%に相当する1194km。
現存する貴族の館、5000のうち1000以上。
土地は7億4千万坪。(東京23区の約4倍)
2009 収入 約345億円
   文化財の維持管理・修理費用 約167億円
    そのうち建造物に当てるもの 約83億円


イギリス政府の活動
1984 独立行政法人「イングリッシュヘリテージ(EH)」設立
    文化財などで縦割り行政だったものを統一した
    やっていること
     ・国が管理する建造物の保護
     ・文化財の規制
     ・保護建造物の指定
    EHスタッフ 2578名
          女性比率 61.2%
          ストーンヘンジもEHの所有
    EHの収入     317億円
         補助金 170億円
     メンバーからの会費 39億円
        入場料収入 30億円
      カフェなど販売 25億円
    EHの支出
     建造物の運営とアウトリーチ 137億円
     (アウトリーチはこの場合イベントの宣伝のこと)
              リサーチ 57億円
     (この中に修理費も含まれる。考えてみればそりゃそうか)

 「リサーチ」できる予算があるのが「文化財」がビジネスとして成立する大きなポイント。
 予算があるので、いろいろな専門家や第三者に分析の依頼ができて、その予算の正当性をアピールできる。
 だから予算を維持したり増やしたりすることができる。


 なるほどなあ。

 EHの2009年の調査では、波及効果は3兆5020億円と推定され、直接的な雇用は195000人。波及効果も含めると466000人。これは全人口の0.8%。

 なお、直後に別の調査の結果も出てる。

 イギリス中部の「ブラックカントリー」(この名前そのものが石炭の煤でそのあたりが黒っぽかったからみたい)での産業構造の転換による失業の増加と、それが文化財保護で雇用や観光がうまくいった例が出てる。

イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る デービッド・アトキンソン著


       
posted by kingstone at 16:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・記事・番組など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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