著者は大学で、就職に有利になるのでは、という理由でオックスフォードで「日本学」を専攻。1985年に交換留学生として「東京」に来たが「ゴミゴミしている」という印象で、学んできたイメージと違うなあ、という印象だったとか。海に行けば消波ブロックだらけだし、富士登山もゴミがいたるところに落ちてるし・・・
私が大学生時代(1985年よりもっと前)に日本観光にやってきたドイツ人(確かロケット学者だったと思う)と話した時も、嵐山から保津川にかけて観光して来た日に「ガベッジ(ゴミ)」と吐き捨てるように言ってたなあ・・・確かに当時、観光道にもいっぱいゴミが落ちてた頃だった。
著者は卒業後、アンダーセンに入り、その後ソロモン・ブラザーズへ。そこで日本の銀行を担当し、そしてゴールドマン・サックスへ。
しかし、ソロモン・ブラザーズの時に「銀行の不良債権は20兆円」というレポートを書いたら、日本の銀行の人から「我々が言ってることをそのまま書け!銀行の素晴らしさを伝えて投資家が下部を買うよう薦めるのが君の仕事だろ!」と恫喝されたそう。右翼の街宣車まで来たそう。
でも後から20兆円どころじゃなく100兆円くらいあったってわかったってことですが。
で、それで心がすり減って、「茶道」を始め、別の日本に目が開かれていったとか。
そして、若くして京都で隠遁生活をしていた時に請われて「小西美術工藝社」の経営に参画するようになり、今は社長さん。
日本の高度経済成長は「勤勉な国民性」「すぐれた技術」などによるという「神話」に対して「実は基本的には人口による」という説を出してはってなるほどな、と思います。
GDPと人口の相関関係(「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」より)
で、現在でも、日本は、GDPなら世界第3位なわけですが、「1人あたり購買力平価」の順位はだいたい25位くらいで、つまり一人あたりが稼ぎ出してる額は小さい、つまり決して技術が優秀とかそういうことでない、ということがわかると。
「国の国内総生産順リスト(1人あたり購買力平価)」
しかし「ここには大きなチャンスがある」とのこと。
なるほど、改善の余地がある、ってことだから。
ゴールドマン・サックスはウーマノミクス(この言葉は初めて知った。要するに女性の力の活用)を薦めているが・・・
最大GDPを12.5%上げる効果があると・・・ただし問題点というか課題も指摘してはります。
2013年において、日本では、男性就業率80.6%。女性就業率62.5%。
世界銀行のデータでは、男性就業率と女性就業率が同じ国は4か国しかない。
数千万人以上の国で女性就業率が70%を超えている国はひとつもない。
また諸外国では女性就業率が高まると男性不況が起きている。
(しかし・・・それはひょっとすると社会全体の価値観を変えていくことで「それでいいじゃん」の世界になるかも)
まあだから就業率よりもより高い地位への登用率を上げるほうがいいのかも、とのこと。(ってことは安倍総理の言ってることと同じか)
日本の効率の悪さの元凶。
「数字に基づいた分析と、細かい改善をしない」(特に大企業の管理職)
しかしデービッドさん、「効率」と言うからには「コストカット!」と主張するのかと思うと、そうでもない点もあります。例えば本業の「小西工藝社」の国宝の修復での「漆」について。
・文化財の漆の7割が中国産。理由は「安い」
・しかし、中国産も単価が上がってきた。
(あちらの生活水準も上がってきてるし。
それでも単価で5〜7倍)
・しかし修復の総事業費の中で漆の占める割合は
小さいので国産にしても事業費は5%しか上がらない。
入札によって余る予算よりかなり少ない。
(この後ろの文の意味、私にはうまく読み取れない。
まあ「会社の儲けはそう変わらないよ」という意味やろな)
・国産を使うことによって、日本の漆文化
(漆生産者・途中の工程の職人・技術)が
守られる(雇用の確保・知識や技術の継承)
・国産漆を使うことがストーリーとして
アピールポイントになる
しかし各方面からの意見
「メリットがあるのは十分承知していますが、日本産にするとなるといろいろ手続き上のことがあるのでやめておきます」
ところが後で下村文部科学大臣の決断で日本産漆を使う方向に進みつつあるとか。
下村元大臣、私の深く関わる発達障害の分野ではちょっと困った方面の方なのですが、これはいい決断だったのでは・・・
文化財の客観的評価(検査)が無い→職人のモチベーションが上がらない
う〜〜ん、検査と言われると・・・私の働く、児童発達支援や放課後等デイサービスではどうなるんだろう・・・検査と言うとスタッフの資格やら何やら、必要な書類が揃っているか、などで「子どもの幸福」という点から見られた検査とかはやっぱり無いよな。(だいたい、「子どもの幸福」とかが検査にのっかるものかどうか・・・)
デービッドさんが「小西工藝」で取り入れたこと
・在庫管理
・実行予算管理
・進捗の確認
・研修制度
・品質検査
・営業
・会社の存在自体のアピール
・研究室の設置
・「受け身的な働き方」から「挑戦をしていく組織」へ
・どんぶり勘定だった本部コストの中で削れるものは徹底的に削る
・職人の正社員化(良い職人を育てるためには安定した雇用が必要)
なおこのおかげで「ベビーブーム」が起きたとか。
若い職人を養成することは短期的には非効率(OJTとかしなきゃいけないし)だが、養成しないと長期的には自分たちの首をしめる
アメリカ
管理職 数字に基づき考えよく働く 平社員 質悪い
日本
管理職 精神論が多くあまり働かない 平社員 真面目で忍耐強くよく働く
アメリカと日本はさかさまだって。もちろん一概には言えないだろうけどね。
外国での和食が「良い」とされる点
1.ヘルシー
2.消化しやすい(フランス料理のようにしつこくない)
3.洗い物が少なくてすむ
日本で「外国で人気」と紹介される時、3.の視点などほとんど紹介されない。(現地のことは現地の人に聞こう、という話)
「悪いところと比較しない」
しかし、これは「あそこもこうやってるし(だからうちもこれでいい)」という言い方をしない、ということやね。「うちはこういうところで頑張ってんねんで。こういう所がいいねんで」という方向だったら、別にいいような気はする。もちろん「絶対的な基準から見たらまだまだこうしなきゃ」という点は頭に入れつつね。
あと「文化財保護」について、もちろん「文化財修復」の小西美術工藝社の社長さんだから、という立場もあってのことだけど、「文化財保護」「文化財のアピール(英語やその他外国語の説明が少な過ぎる)」英国での文化財保護の歴史など、参考になりそうな点が多々ありました。