それまで、私は主として知的障害もある肢体不自由児とか、知的障害の重い自閉症児とかのつきあいが多く、知的に軽いタイプの自閉症スペクトラムやADHDのお子さんとはあまりおつきあいがありませんでした。もちろん無かったわけではなく、「この子はそうだな」というお子さんもいたし、また知らずにつきあってたお子さんも多かったとは思います。
しかしソワサポートでは、少なくとも行き始めた頃は、知的に重いタイプのお子さんは少なく、ははあこれは周囲の人にわかりにくいよなあ、というお子さんとつきあうことが多くなりました。それはもともとソワサポートの前身が障害のあるお子さんに限定しない「モンテッソーリ教室」であったり「学習塾」であったりした影響も強いかもしれません。
2012年10月からソワサポートでは、児童発達支援と放課後等デイサービスを始めました。
だんだん体制も整い、記録ファイルや個人ファイルが整備され、外部でとられた発達検査の記録なども持ってきて頂ける方には持って来ていただき、綴じ込めるようになりました。
私は1997年頃からTEACCHやPECSを学び、またその頃の一緒に学んだ仲間であるハルヤンネさんが2004年におめめどうを起業したりした中で(しかし2005年〜2007年という頃は私はうつ状態で、ほとんどネタキリになってしまうのだけど・・・)常に「視覚支援がちゃんとされていない」ということに腹立たしさを感じていました。
しかし少なくとも2014年以降見たそれぞれのお子さんの発達検査の所見欄を見てみると、ほぼすべて「見てわかるものがあるといい」ということが書かれていました。
おい、ちゃんと書かれてるやん・・・
なお、私が勉強を始めた1997年頃と言えば、私の周囲でもまだまだ「自閉症と言ってはいけない」という時代で、医師が親御さんに対してはもちろん、専門家が教師にそう言い、教師間でも「あの子は自閉症かな」とか言えば叱られるという・・・そんな時代でした。
しかし、2014年以降見た診断書には「広汎性発達障害」であるとか「自閉症」であるとか、これは、かなり書かれています。つまりお医者様はちゃんと仕事をしている。(まあ・・・学習障害も結構多いってのはちょっとなあ、ですが)
そして診断を下す前の発達検査の所見欄には「見てわかるもの(つまり視覚支援)が大切」と書かれている・・・
しかし、家庭でも学校園でも視覚支援がされてなくて、トラブルが起こっていること多いのですよね・・・
つまり発達検査をする心理士さんと、診断を下すお医者様はちゃんとスペシャリストとしての仕事をしている。
ただ、そこから親御さんに、どうすりゃいいか伝えることがされていない。
しかし、それはお医者様や発達検査をする心理士さんの仕事ではないのではないか。
ちゃんと診断し、所見も書いて下さってるのだから。
そこから後は実践家(教師であったり、保育士であったり、児童デイのスタッフであったり)の仕事じゃん。
お医者様や検査者と実践者の関係
でね、学校や家庭でトラブルが起こる。そして親御さんが悩んでソワサポートに相談をかけてくる。そういう時、浅原さん(社長)や私が面談を担当します。
で、実のところソワサポートでだってトラブルが起こっていないわけではない。しかし構造化や視覚支援をはじめあの手この手で解決してるわけ。特に私はいつもA4クリップボードを持ち歩いていて、それにさささっと書いて見せることで解決することも多いし、ちょっとこじれてそうな場合は、おめめどうのコミュメモを利用して解決したりね。(決して心理療法を用いて解決しているわけじゃない)
で、その実例(実際にそのお子さんに使ったのをとってある)をお見せすると、親御さん、決まって
「こんなやり方初めて聞いた」
とおっしゃるわけ。
でもそんなわけはなくて、啓発の講演会などで「見て分かるもの」の利用などは聞いてると思う。しかし目の前の自分のお子さんとは結びつかないのよね。そこを具体的に伝えてあげる人がいなかったり、実践できる人(例えば教師とか、保育士とか、児童発達支援や放課後等デイサービスのスタッフとか)がいなかったりするわけ。そら親御さん、わからんわあ・・・
(注・特別支援教育担当になってる教師とか、保育士とか、スタッフとかは仕事でやってんだから、「わからんわあ」ではすまないっすよ。でソワサポートではスタッフのみなさんにわかって頂くために私を雇って下さったわけね。学校とか公的機関なら当然もっとお金があるだろうし、そういう役の人がいるはずだよなあ・・・)
でね、教師とか保育士とかスタッフとかはジェネラリストになるべきだと思う。
ひとつひとつのカテゴリの知識・技術は低いけど、まんべんなく知っている。
過去の記事1(TEACCHの5日間セミナーにて)
本当のTEACCH 内山登紀夫著 (T入門編 TEACCHプログラム入門)
でね、ST(言語聴覚士)・OT(作業療法士)・心理士などはスペシャリストに徹して欲しいのだけど・・・
なんかねえ・・・そりゃたいへんだと思うよ・・・
親御さんがお子さんを連れてくるわけね。
あんまりお子さんから最初に「あそこ行きたい」と言って自ら行く、という例は聞かない・・・
でSTさんの場合、明らかに親御さんは「音声言語の獲得」を希望されて来ている。
しかし自閉症スペクトラムのお子さんの場合は、それよりもそもそもコミュニケーションというものがわかってなかったり、音声の単語をいくら覚えても、それをコミュニケーション手段として使えなかったりするわけじゃない。
もちろんコミュニケーション・セラピストとしての動きをしてはるSTさんもいることは知っている。
しかし、親御さんに「あなたのご希望は誤解です」ということをきっちり言えるのも専門家の力量だと思うのだけど。
また最近、ソーシャル・スキル・トレーニングをしているSTさんもいる、との話を聞きました。
ソーシャル・スキル・トレーニング??
ソーシャル・スキルを身につけるのに、STの部屋でやるの??
基本的にソーシャル・スキルは社会の現場で身につけていくもんじゃないのかな??
いや、親御さんの要望に応えようとしてはるのはわかるのだけど・・・
OTさんは・・・まあ上肢や姿勢の巧緻性を高めて生活をしやすくするのがお仕事だと思うのだけど、感覚統合が入ってきてるからそっち方面で関わることも多いと思う。でも・・・何を目指しているのかはきっちり親御さんに伝えてあげて欲しい。(まさか「治る」なんて言わないよね?)
もちろん「楽しみの場」としていろんな場があっていいのは確かだけどね。
医療の心理士さん。
たぶん臨床心理士さんだと思うのだけど・・・
あるお子さん、週1回の箱庭を中心とした遊戯療法を延々と何年も続け、で学校での学習がついていくのがむつかしいとなるとそのセッションの時間に教科学習もして下さってるとか・・・
いや、この場合、そのお子さんが「あそこは楽しいから行きたい」と言ってる可能性はある。
そりゃ箱庭でのコミュニケーション、遊戯療法、楽しいもん。
で、親御さんも期待を持って連れていく。
もちろん教科学習を利用して心理療法するイメージも私にはわく。
しかし、「自閉症」のお子さんに何年も医療としての遊戯療法と箱庭を続ける??
教科学習を続ける??
教科学習は別の場があるでしょう。(ってか無いなら学校とか、塾とか、場合によっては児童デイとか、連絡をする、っていう手もある・・・で、連絡してみたら実は・・・ってこともよくあるだろうけど、外部には連絡しないやろな・・・)
当然、その時間は他の心理療法を受けたい人は受けられないわけよ。
また実は親御さんこそが心理療法による積極的傾聴や共感的理解を必要としているのかもしれない。
お子さんではなく、親御さんのためのカウンセリングが必要なのかも。
そのあたり、専門家ならちゃんと見てあげてほしい。
私は積極的傾聴などしない、という話
もちろん、親御さん、いろんな人に共感を求めてはると思う。また夢を見たいだろうと思う。しかし、「そのために必要な場は、ここじゃなく、別の場ですよ」と言ってあげられるのも専門家(スペシャリスト)の役割じゃないかな。で、その場を紹介するとか、情報を教えてあげる。
また場合によっては「その夢はちょっと違うと思いますよ」「こんな夢(現実)を見ることだってできるんですよ」ということも教えてあげることが必要だろうし。
そうじゃなきゃ、専門家の時間がどんどん削られていってしまい、必要なサービスを受けられるはずのお子さんが受けられないことになるじゃない。
まあ、そこをコーディネートしていくのが相談支援の仕事になるのかもしれないなあ、とは思うのだけどね。
で「医療モデル」から「生活モデル」に移行していくようにしていかないとなあ。
で、そうしつついろんな資源開発・資源開拓をやっていかないと、ほんとスペシャリストはスペシャリストらしく、ジェネラリストはジェネラリストらしくたって、そうはいかない、という話にはなる。