現在、千葉大学で教授をされてる伊藤智義さんが、自らがスーパーコンピューターGRAPEの開発にあたった時のことをドキュメンタリ風に書いたもの。もともとプロジェクトXで取り上げられるはずが、取り上げられる前に番組が終わってしまったことがきっかけになって書いたものだって。伊藤さんは漫画原作もされていて、「栄光なき天才たち」の原作者です。で、その原作料が入ってきてたので、大学院に入った頃が生涯でいちばん収入があったって。
「栄光なき天才たち」との日々雑感 伊藤智義さんのブログ
主な登場人物は
杉本大一郎(現:放送大学)
牧野淳一郎(現:国立天文台)
伊藤智義(現:千葉大学)
途中から戎崎俊一(現:理化学研究所)
当時、すでの汎用(?)スーパーコンピュータはあり、しかし時間貸しだからすごくお金はかかり、手元に自分たちだけで使えるコンピュータがあればなあ、という発想で開発が始まっています。で、自分たちは「重力多体問題」だけがとければいいや、ということで市販されているICを組み合わせて回路を作っていきます。でも、それは「今までに存在しない物」だから、よく考え、工夫しながら作っていかなければならない。また、検査・分析するための機器も自作する必要がある。
で、ハードの部分は当時大学院生である伊藤さんが結局20万円で作り、牧野さんがソフトウェアを書く、という形で開発されたわけです。杉本さんがプロデューサで、戎崎さんが広報と叱咤激励役、みたいな感じかな。
完成し、ちゃんと計算できることがわかると、杉本さんはすぐに論文を執筆し、あのネイチャーに掲載されます。
大学院生だった伊藤さんの名前も共著者として出てます。後年、伊藤さんは最初に名前の出た論文がネイチャーに載った幸運がよくわかった、ということを書いておられます。
伊藤さんがひとつ後悔されていることがあるとか。当時からインタビューを受けることがあり、「開発は簡単でした」と答えていたこと。確かに、当時、国立天文台にいた近田さんからアイデアを教えてもらい、伊藤さんは「できるんじゃないか」と考え、やってみて、本当にできたわけ。でも、そのアイデアは公開されていたにも関わらず、やってみたのは杉本さん率いるグループしかなかったわけで。確かに「簡単」、しかし「簡単じゃない(難しい)」。それ、両方とも本当なんだよね。で、世間の人が「なんだ、簡単だったんだ」と思いはったら、伊藤さんとしては複雑な気持ちになる、と・・・
私も似たようなことがある。自閉症の人との関わり方についてね。(私のオリジナルの関わり方なんかひとつも無いよ。先人のまねっこでしかない)
自閉症の人と関わるのはむつかしいのか簡単なのか
私の場合は、本当に「簡単」と思っていて、なんで自閉症の人に関わるみなさんが同じようなことをせず「寄り添う」とかを大事にして、しかし事態を混乱させ続けてる、ってのがね・・・まあ「方法」は「簡単」なんだけど背後にある「考え方」「価値観」を変える、というあたりが「難しい」んだろうな。