新進気鋭の社会学者(?)の書。
面白かったです。
これを出す前に「絶望の国の幸福な若者たち」で注目され、じゃあ次は自分の周りで「起業」してる人も多いし、そのあたりを書こう、とかいうことで書いたそう。でもって「僕たちの前途」という題名ですが、著者は第1章でも取り上げられている松島隆太郎さんと「ゼント」という会社を起ち上げてるってことで・・・シャレかいや・・・
で、この本、2012年11月に出版されてますが、その時点で著者27歳、松島氏29歳、また著者の周囲の起業家も同じように若い。で、みんなの特徴は「起業」しようと思って「起業」したわけじゃなく、あれこれ面白いことをやってたら請け負う仕事が大きくなってきてしまって「もうそれなら会社を作ったら」とか言われて、作っちゃったって人ばっか・・・
松島氏だったらプログラミング(開成高校時代、プログラミングの本を読んでいて山手線を3周したとか)と、あと会社のシステム作りか。で、大きな仕事を請け負うのだけど、社員は3人、それ以上増やさないって。もちろんプロジェクトごとにいっぱい人は集まってくるのだけど。でみんな「松島さんと仕事がしたい」とやって来る・・・固定費がかからなくていいよね。
村上範義氏はトーキョーガールズコレクション(TGC)のプロデューサー??32歳か?1981年生まれってことだけど。とにかく人と人とをつなぐ。(しかし・・・神戸コレクションというのはぽしゃっちゃったけど、TGCは元気なのかな?)
また著者は「起業家」の定義がいかに曖昧で、かつ変遷してきたか、というのも社会学者らしく書いてる。言い出したのはなんとジョゼフ・シュンペーターで、意味をいいかげんにして広めたのはあのドラッカーだって。
で「自分で事業を始める」ということでなら、明治がすごく多くて(なぜなら雇用してくれる「会社」が少なかったから)、統計を見てみれば、現在はより少なくなっている。それは「雇用されて働く」というのが戦後、常識になっていったから。(官公庁も、かつては「大企業の雇用」以外を割の悪いものとしようとしてたみたい。「中小企業が日本を支える」なんてごく最近らしい)
日本の場合は高度成長期というのは「人口ボーナス」で老人が少なく青年労働者が多く、社会保障費用は少なくていいし(また政府が面倒みない分、企業が福祉の面倒をみた)、それで高度成長ができた。しかしそれが少子高齢化になっていき、うまく回らなくなる。それを「人口オーナス」というそう。
で、この人口ボーナス期、フランスでは115年、イギリスでは47年、ドイツでは40年あったのが、日本では24年、でもって中国では23年、インド22年、フィリピン18年とどんどん短くなってるって・・・
教育社会学者、苅谷剛彦による「努力」に関する研究。社会階層が上位の子どもほど授業の理解度が高い。だけでなく「努力をする能力」も高いというか、社会階層が低いと「努力から撤退」が起こる。
まあそうやろな。それには様々な理由が考えられるけどね。
あと、ある美容院の例が出てて、長時間労働だしたいへんなんだけど、キャリア作りに工夫が凝らされているというか、研修体制を整えている、というのは参考になるな・・・
例えば、学校なんかどういう「出世」があるか、たいていの人を知ってるし、一応の「研修体制」はある。それがソワサポートみたいなところならどうなるだろう・・・私自身は、「『資格』?『免許』?そんなもんクソの役にも立つかい」みたいな働き方だけど、(と言いつつ、ヘルパー2級と、これは資格と言えるかどうかはわかんないけど相談支援従事者研修は受けた)若い人に来てもらうには、こんな資格を取ってゆくゆくはこんな仕事とか、独立とかできるよね、みたいなのを用意しないとだめなんだろうな。
最初にのってる松島隆太郎さんの言葉。
「『起業した方がいいと思いますか?』よく相談される。
でも、僕のこたえは『100%絶対に起業はやめた方がいい』に決まっている。
(中略)
そもそも『起業はやめた方がいい』と言われて起業しない人は起業に向いてないんだ。」
そやろね。