邱永漢著 「香港・濁水渓」
邱永漢さんといえば
「お金は寂しがり屋です。仲間がいるところに集まりたがります」
という言葉で有名な実業家ですが、こんな小説も書いてはったんですね。「濁水渓」で直木賞候補になり、「香港」で直木賞を取ったと。
「濁水溪」は邱永漢さんが1924年生まれだからちょうどそのくらいの主人公が、日本(内地人)が植民地支配している頃の台湾で育ち、敗戦前に東大で学び、朝鮮人・台湾人志願兵制度ができた時に逃亡し、敗戦を迎え、希望に燃えて台湾に戻ったものの、内省人は本省人の支配に苦しみ二・二八事件事件を起こす。主人公は香港に脱出する。
もう時代に翻弄され、多くの仲間や友人から裏切り者よばわりされながらも、自らが自らであろうとした軌跡、といった感じかな。
大東亜共栄圏に夢を託し民族問題は解決できると主張する大学の日本人の師との、意見は対立しつつも逃亡の時に援助をしてくれたりなど師弟関係はあり、その微妙な心のつながりなど、そうやなあ、と思います。
なお映画「非情城市」は二・二八事件を描いたもの。
ラベル:本