まず「日」(もちろん月日)を伝えるための「巻物カレンダー」
月日が横に横に1系列でわかるカレンダーです。たいていのお宅には7曜式で日〜土の列と、1週目、2週目というふうに5行くらいの組み合わせのカレンダーがあると思います。
これでわかる人は良いのですが、月日の流れが一方向ではないので、わかりにくい人がおられます。また一見わかっておられるようでも、「自分のものとして使えない」場合もあります。
巻物カレンダーは基本的に「自分のもの」として使って頂きたいし、実際に使っておられる例があります。
おめめどうでは、ほとんどのグッズを、ご本人に「自分のもの」として使ってほしい、という思いでグッズを作っています。
なお「家の壁面にこんな横に長いもの貼れないし」というお家もあることかと思います。その場合は必要なところだけ出し、両端をクルクル巻いておけばいいですね。「巻物」ですから。
えらぶメモ
「11.おめめどうが大事にしていること」の「選択活動」や「自己責任」で書いたように、「選択」「えらぶ」というのはものすごく大事なことですね。その「えらぶ」をしてもらうためのメモです。
もちろん最初は「11.おめめどうが大事にしていること」みたいに本物の「プリン」「ヨーグルト」とかでやってあげる必要があるかもしれません。で、写真なんかでも大丈夫になったら「えらぶメモ」に貼り付けたり。あと、字でいけるようになれば字で書けばいいし。メモそのものは薄い線で4択までできるようになっていますが、その上からサインペンで黒黒と2択にしたり、3択にしたりしてもいいだろうし。
でも最初は2択からですね。
3択だと「お正月に向けてのメモのあれこれ」
ただし、この「初日の出を見に行くかどうか」のアイデアはおめめどうのスタッフさんからは大ブーイングでした。
またユーザーさんの中には何枚かで11択の中から選んでもらった例もあります。
それからおめめどうは「自分のもの」として使って欲しい、また「本人からの表現」として使って欲しいと考えています。本人の選択が周囲にわかる、という意味で。こちらを見て下さい。「選ぶ?メモ」
おかあさんがご本人に「行くか、行かないか」を尋ねようとしたら、本人さんが取り上げて「いく、いく」と書いたという例です。まさにご本人が「本人からの表現・選択」がわかる道具として使って下さっています。
みとおしメモ
これは私が、今、シュッシュッと書いたものですが、この「みとおしメモ」はこのようなスケジュール(実はスケジュールというのはTEACCHでは「移動を伴う場合」に使う言葉らしいです)にも使えるし、ある場面での手順(この場合はワークシステムの一部とも言えるし、おめめどうでは子スケとか孫スケとか呼びます)を示すことにも使えます。
このみとおしメモの例ですと、作業1と作業2のところを空白にしています。これはその部分は本人さんに選んでもらおうという意図です。実はsyunさんが1997年にすでに知的障害者通所更生施設でこのようにして「スケジュールを本人に選んでもらう。作ってもらう」をやっていたのですね。(もちろんおめめどうの商品なんてなく、最初はB5の紙をタテ半分に切って使っていたそう)
「自閉症の人が多い成人施設で一人一人自分持ちのスケジュールを持つ(1997年段階)」
上のエントリにも紹介していますが、その事実がわかった時のやりとりの一部を動画にしたものです。この音声の入ったCDは現在は「syun LIVE in SASAYAMA Vol.1」として販売されています。
こういうふうにして「自分のスケジュール(自分のもの)」としていってほしいわけです。
なお、「書く」ことが苦手な方、小さい字は読みにくい方、などに「自分で書いてもらう」ためや「絵や写真も貼りやすい」という目的のためには「みとおしビッグ」というものもあります。
TEACCHの本などを読んだりした時、あるいはセミナーなどでまず「こんなふうにするのか」と覚えるは下のような壁掛け式タイプのものが多いです。
この写真はホワイトボードの上に「コミュメモボード みとおしビッグ」を貼り、その上にMITECAバーを貼ってスケジュールをわかりやすくしたものです。
TEACCHを学んだ始めは、このMITECAバーをもう少し大きな絵カードや写真カードにする場合が多いです。でも実はそんな本に載ってる「形」はどうでも良くて、大事なのは本人にわかる「物(具体物であったり、写真であったり、絵であったり、文字であったり。何でもいい。本人にわかりさえすれば)」で示すことなのだ、というのを、私は日本のTEACCHの指導的立場の方から学んで行きます。
そしてその時に「自閉症の人にこのスケジュールを触らせてはいけない(自分で作らせてはいけない)」ということを指導者が言ったこともあります。(1999年時点でノースカロライナのTEACCH部の人が確かにそう言った)これは、「ある条件の場合」ということがあるのかもしれません。しかし、どうもそれが日本で伝えられていく時に金科玉条とされてしまった部分があるようです。
しかし、1999年〜2000年頃、私がやっていた研究会に来られた特別支援学級の先生方から「うまくいきだした。コミュニケーションが取れるようになってきた」という報告がいくつも上がって来たのですが、その報告は必ずといっていいほど、スケジュールがわかって来たら本人さんがスケジュールを変更しようとする、あるいは(たぶん自分が嫌なイベントや授業の場合)スケジュールに横線を引いて消してしまう、という現象がありました。で、先生方は変更できるものは変更し、できないものは「次に本人のやりたいことはいつ起こるか」などを見てわかるようにして交渉し、本人さんに納得してもらい、うまくいっていった、というものでした。
私は教えられたことは教えられたことですが、目の前に起こっていることは目の前に起こっていることで「へええ」と感心していたので、「まあそういうもんなんやろ」と思っていました。しかしこのあたりはTEACCHとおめめどうの「違い」と言っていい部分になるのかもしれません。(まあ、本や講義で学んだことも私の頭にはしっかり入らない、という言い方もできる)ただし「今」はTEACCHではどうなっているのかは私は知りませんが。
でsyunさんは、当時の知的障害者通所更生施設では、このような壁掛け式のスケジュールにした場合、他の方が別の方のスケジュールを持って行ってしまうので使えなかった、と言ってはるわけですね。
もちろん使える環境、使える人ならおおいに使って頂いたらいいと思います。使える環境ならめちゃ便利ですし。
で、このタイプのスケジュールの場合、この写真でもMITECAバーを本人さんに選んでもらって貼ってもらうなんてことも簡単にできてしまいますし。そんなふうにしていくと「自分のスケジュール」「自分のもの」になっていきやすいですね。
考えたら、我々(って私が自閉症スペクトラムでないのかあるのかはよくわかりませんが。ADHDは完璧にありそうです)の場合だって同じです。自分の手帳にスケジュールを書き込み、それはたいていは「外から決められた」スケジュールなわけですが、なんとかやりくりして自分のやりたいことを入れたり、変更したりして自分のスケジュールにしていくわけですから。自分のやっていることを他人に認めないなんて変でしょ?
おはなしメモ
自閉症の方は、コミュニケーションそのものに気づきにくい、ということもありますし「誰から」「誰へ」伝えようとしているかに気づきにくい、ということもあります。その点を支援しようと「人の形から」「人の形へ」「伝えたいこと」をふきだしで目に見えるようにしようとしたものが「おはなしメモ」です。
これはタイマーを壊してしまったお子さんに、お母さんから「あなたが壊したのだから、あなたが2100円+送料を払う」ということを伝えたもの。これを音声言語で言ってもなかなか伝わりません。それを「見てわかる」ように伝えているわけですね。またこれは「自己責任」の話でもあります。
最近出たものに「おはなしビッグ」というB5サイズのおはなしメモもあります。
購入されたその日に本人さんから「くるねこ9よやく」と書いて来てくれたもの。「本人からの表現」「本人のものとして使う」ですね。大きいので、書くのが苦手な人でも書きやすい、ということもあります。
おはなしツイン
「おはなしメモ」は一方向ですが、互いのやりとりを「見てわかる」ようにしたものが「おはなしツイン」です。
これはあるおかあさんがお子さんを何かで叱って(怒って)しまわれたのですね。で、あとでおかあさんは「理不尽やったなあ」と反省された。そこで「イライラして怒ってごめんなさい」と書いた。するとお子さんが「かまへん、かまへん」と書いてくれたわけです。やりとりですね。(ちなみに「かまへん」でなく「かまへん、かまへん」と2回繰り返すのは正統関西弁です)
この「おはなしツイン」をA4サイズのボードにしたものが「コミュメモボード おはなしツイン」です。例えばこんなふうに使います。(このボードは裏が磁石になっていてホワイトボードに貼り付けることができます。すると裏に磁石をつけたMITECAやMITECAバーを簡単に貼り付けることができます)
こんなふうに書いて、下に行きたい場所のカードを置く。
MITECAに亀の写真を貼って「すいぞくかん」と書いたもの。
MITECAに観覧車の写真を貼って「ゆうえんち」と書いたもの。
これらを、今このエントリではブログの仕様上縦に見えるようになってますが、横方向に並べて本人さんに選んでもらうといいですね。(縦方向だとスケジュールと間違うかも・・・)
そして選んで貼ってもらうとこうなるわけです。
こんなふうにやりとりの中で「選んで」もらうこともできます。
「◯×メモ」と「四コマメモ」
「◯×メモ」は「(ここで)していいこと」「(ここで)してはいけないこと」などルールを伝えるのに使います。
最近はたくさんの専門家の方が「してはいけないと言うだけでなく、していいことも伝えましょう」と親御さんや支援者さんにアドバイスするようになりました。しかし、悲しいながら人間ってのは「◯◯しちゃダメ!」はすぐに言えても、「□□していいよ」はなかなかとっさに思い浮かばないことが多いです。そういう時、このメモがあると「あっ、ちゃんとしていいことも考えなきゃ」と周囲の者に思い起こさせてくれる素晴らしい効果があります。
最近あった例を元に私(kingstone)が描いたもの(なので実際に使われたものとは違っているかもしれません)で、こんなのがありあます。
他人をつねって反応してくれるのが嬉しくて繰り返すお子さんに対して。(こういうお子さんは多いです。これは自閉症の3つ組で簡単に理解できますね)
まず「◯×メモ」で「握手は◯」「つねるのは×」を伝えます。
そして同時に(こちらの方を先に伝えられたかもしれません)「四コマメモ」で「つねられると相手が嫌な気持ちになるのでしません」を伝えています。
これで「他人をつねる」が無くなったそうです。
実は、私自身は「◯×メモ」もあまり使いたくないなあ、という気持ちがありました。そこで2010年9月8日(これ、長いネタキリ生活の後、始めて「誰かに会いに行く」ができた時です)にこんなことを書いています。
「○×メモ帳と説明すること」おめめどうの「ダイレクトセールス in 明石 魚の棚」11
そしてこのエントリに呼応してハルヤンネさんが2010年9月8日に書いたのが
人生変わります
また最近2012年3月15日にこんなのも書いてはります。
順番
なお、「◯×メモ」を「ルールを伝える」以外でも、「今日は◯◯のTV番組は有るけど、□□の番組は無い」などを伝えるためにも使って下さっている例もあります。
どうしてメモ(おにぎりメモ)
四コマメモは起承転結や時系列のある話を伝えるものです。それに対して「どうしてメモ(おにぎりメモ)」は時間の流れには関係ないことで理由があることを伝えます。
これは「台風で休校になります」を伝えたもの。
これは「特別支援学級の担任の先生が病気でお休みします」を伝えたもの。
上の2例は「周囲が本人さんに理由を説明する」という使い方ですが、これをよく使っているとこんな使い方もできます。
「学校で帰りの会(あるいはその前)に、帰る用意をしない。それを先生から言われても、また先生から「白紙」に書かれてもしようとしない。本人はイヒヒと笑っているだけ」ということの理由を本人さんに尋ねたら「すごく嫌な気持ちになるから。『おはなしメモ』に書いて欲しい」と伝えてくれ(これはお母さんが聞きとって書いていかれたようです)」ということがわかった、というもの。
聞き取りはお母さんだったようですが「本人からの表現」を受け止めようとしてはるわけですね。
この「どうしてメモ」はもともとTEACCHが「自閉症の人の問題行動(と言われるもの)」の説明に使っていた氷山モデルがアイデアの元になっています。「氷山」という海の上(水面上)の現象はほんの一部で水面下にたくさんの大きな理由がある、そして水面上の氷山を小さくしようとすれば、水面下のものも小さくする必要がある、という説明をするのに使います。
「れもん」ボランティアさんへの講義9「問題行動の理解と対処」
まあ、こんなふうに「四コマメモ」や「どうしてメモ」で「なぜそうなるのか」を説明していくわけです。
そして「◯×メモ」を使っている例をお聞きした時、もちろんその現場にいないと本当のところはわからないわけですが、「あれ?この場合、×はいらないような気がするなあ」と思う例もよくあります。
TODOメモ
「TODOメモ」は、「やる必要のあること(To Do)」を書きだしておくためのもの。まあそういう類のものはどこにでもたくさんあると思います。
これは、私がまだおめめどうフェローになる前。3月11日に東日本大震災が起こったため、「勝手に紙おむつプロジェクト」の作業をするために2011年3月14日に使ったもの。
なお、私自身は、最近はA4のチラシなどを印刷した時の失敗や不要になったものなどがいっぱい出るので、その裏にToDoはなぐり書きしていきますので、「TODOメモ」は使っていません(^_^;)
で、「そういう類のものはどこにでもたくさんある」と書きましたが、最近購入された方のご感想
もうダメだと思ったら、物 でも人でも助けてもらおう!
に
「私のようにぼ〜〜っとした頭でも、えんぴつを持って書き込むことが出来る。
その日一日を頭の中で計算したり組み立てたりしなくても、思いついたまま書き込んでいけばいい。
通常のTO DOリストでも、それで良いのですが、印刷されているかいないかでこんなにも書き易さが違うのかとビックリしました。」
と書いて下さっています。
TELCA
TELCAはクレジットカード大のプラスチック板に「人の形」と「ふきだし」がついています。
本人から周囲の人への表現の手段として使います。
これはkingstoneがお話を聞いて想像で書いたものです。
お便り♪TELCAinポケット
上の例でなくても、自閉症や発達障害の方は、例えば40人学級で主として音声言語の授業を受けていたりすると、頭の中が混乱してくるので心を落ち着けることのできる部屋(カームダウンエリアとかクーリングだうんの部屋とか言います。部屋でなくても囲われた空間であるだけでいいこともあります)に行きたくなることがあります。しかし、ある程度音声言語を使えている人でも、とっさの時、あるいは少し混乱しかけた時に音声言語では言えないこともあります。そんな時、このTELCAを先生に示してわかってもらえれば、先生にもよくわかり、本人も落ち着いて部屋に向かえる、ということになります。
もちろん普段から音声言語の無い人でも使えるわけです。
こんなふうに、ストラップ(って呼ぶのじゃないのかな?)につけて腰のポケットに入れておくと便利です。
それから不思議なことに、こんなふうにTELCAや他のカードでも「自分で持っている」と、普段適切な時に適切に音声言語で言えない人が、このTELCAやカードを他人に示すのではなく適切に音声言語で言えちゃう、というようなことも起こります。これを「心覚え(リマインダー)」としての使い方、と言います。(ただし、だからって「音声言語を使わせるために利用しよう」なんて考えないで下さい。それは考える方向が逆です。私達は「本人がいごこちよくなる」という方向からしか考えていません。その他のことは「おまけ」でしかありません。いくら「おいしいおまけ」であっても)
なお、複数の方から「これが一番役立った」と報告があったのがこちらです。
特にお母さんに対して・・・
考えたら私もそうでした。小学校高学年から中学生にかけて「おかん、あっち行け!!」って言うことも・・・
で、たいていのお子さん、そういう過程を経ておとなになり、そしていつしかまた仲良くなったりできるんじゃないでしょうか。
それを自閉症の人に限らず、障害のある人はさせてもらえないことも多いような気がします。それができるようになるんですね。
イヤーマフ
「4.自閉症の3つ組」のところでも述べましたが、自閉症や発達障害の方で音に過敏な方は多くいらっしゃいます。
その苦労を軽減しようというのが「イヤーマフ」です。
これも「使って良かった」という声がたくさん届いています。特にアスペルガー症候群の方はご自分で感想を述べて頂けることが多く、役に立ったという感想を頂いています。
今まで「苦痛だった場所に行けるようになった」とか「作業に集中できるようになった」とか。しかし
『初 めて♪イヤマフ』と出会う
のような話もあります。やっぱり「できる」からって無理するのはよくないので、そこらへんは塩梅をよく見て(また感じて)やっていくことが大事ですね。
こんなふうにおめめどうではご本人がいごこちよく過ごせるための「見てわかる」グッズやコミュニケーションサポートのためのグッズを、他にもたくさん揃えています。
「「サポートセンターわかくさ」での自閉症・発達障害についての話」に戻る
なお「5.自閉症と丸い知的障害」と「8.いろいろな人がいるのだという話」のチャート図については @guriko_ さんに相談にのって頂きました。ありがとうございました。
|事務所とか、学校なんかでも月予定は横一列のホワイトボードというのが多いです
これこれ。
先日観た映画「おかえり はやぶさ」でも会議室には横一列のホワイトボードがありました。
書くのを忘れていた・・・