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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2012年02月08日

映画「人生ここにあり!」 イタリアの精神病院解体の話



 2008年 イタリア作品

 すっげえ良かった。
 もう声を上げて泣きまくりました。

 めっちゃ長くなるので少しずつ書いていきます。



===== ネタバレです。嫌な人は読まないでね。 ======

 1978年5月18日に、イタリアではバザリア法の制定されました。これによって、次々に精神病院が閉鎖されました。

 でも閉鎖されただけやったら困るわけですよね。

 この映画は1983年の話。5年後ですね。

 最初、主人公ネッロのそれまでが短く描写されます。たぶん組合員(共産党員?)として過激と目され、浮いていき、恋人サラともうまくいってない、って感じ。で、上司がたぶん困ってというか、左遷というか「共同組合180に行け」と言うわけ。この共同組合180っていうのはたぶん精神病院に変わる施設(修道院??)内にあり、結局のところ「多量の薬で無気力になった精神疾患者」の集まっているところ。

 で、ネッロは訪れた日に「患者」さんとちゃんと対話しようと別になんの考えもなく(素人だから)「◯◯さん」と呼びかけます。で自己紹介をし、「あなたは?」と問いかけます。もうこれだけで、患者さんによっては驚天動地のできごとで、あわを食って答える人も出る。面白かったのは「インテルのファンです」って言ってた人がいた。「阪神ファンです」みたいなもんやな。でネッロが尋ねても答えない人がいて他の人が「彼は自閉症なので答えません」と言ってた。

 で、その自己紹介の時だったか、ちょっとルカって人に関わりにいき過ぎちゃったのかな?ネッロは殴られてしまいます。

 その施設の医師(?という立場なのかどうかよくわからない)ベッキオにケガの理由を問われますがネッロは「こけた」と答えます。この時点ではネッロは何が何だか状態なのですが、とにかく「告げ口はしちゃいけない」と思ったのでしょう。実際、報告すればその時点でかなりネタキリ状態のルカは何らかの罰を科されるか、さらに薬を増量されていたでしょう。

 ベッキオに「殴られた」と言わなかったことで「おしおきされる」に賭けていた患者が負けてお金を払うシーンがあります。

 で、ネッロはなんせもともと組合活動家だし、「会議して協議して仕事をしよう」と発案します。はっきり覚えていませんが「日本人ですら共同することが効率を活かす手段と気づいたのです」みたいなセリフがありました。なんでここで「日本人ですら」になるのかよくわかりませんが。

 で仕事を請け負うか会議をネッロと「患者たち」でやります。いろんな意見が出ます。これは会議の前に相談してる時だったかな。

「顧客の要求と仕事の質」(を考えると無理じゃないか・・・)
「(俺は)イカレテもバカじゃない」
 これは、まあ「バカ」(この場合は自閉症や発達障害の偏りではなく、いわゆる物覚えが悪いタイプの知的障害をバカにしての言葉でしょう)」をバカにしてるけど、イカレテルとされてる人の叫びということでしょう。
「僕は普通の仕事はできない」

 で、会議でみんなでいろんな意見を出し合います。ブレーンストーミングですね。

 これはネッロの意見だったと思うけど「人生、何か仕事をしないと」これはよくわかります。まあ「賃仕事(お金を稼げる仕事)」が無理な場合もあるかもしれない。でも「何か」やりたいよね。

 でいきなり仕事を取ってきます。床貼り。それを廃材を利用してやろうというもの。昔の恋人(?)にも相談するのだったかな。
でサラの「手を貸さなきゃ。左翼でしょ」なんてセリフも。

 現場でカタトニーの人かな。確か右足から出るか左足から出るかをネッロに尋ね、ネッロが「お好きな方を」と言ったために動けなくなった人がいました。これは仲間が「指示」してあげたことで動けます。ほんまいろんな場合があるよな。(基本は指示なしで「お好きな方を」だろうけど)

「大事なことは過ちから学ぶこと」これはどういう状況のセリフだったか。

 確か最初は、なんかひどい状態の納品で、ネッロが後始末をし、お金もかぶったのだったかな。

 しかし、注文が入ってまた仕事ができることになります。この時、ゴッフレードが「エイドリアーン!」と叫びます。調べてみたら映画「ロッキー」は1976年だから、もう見てるわけですね。

 古い友人でありアパレル業界で、今は成功している人に「昔の放火を黙っておいてやるから」と脅し(?)仕事を取ってきます。この時誰が誰に言ったか忘れましたが「トロツキー(「革命家」とルビをふってた)によろしく」ってセリフがあった。

 で、納期が迫ってくる中、ネッロは「ベルリンゲル(元イタリア共産党書記長)が死んだ」と言って、お葬式に出なくてはならなくなります。現場を離れなくてはいけなくなった。すると・・・

 仕事中、「当然通ると思っていた道」が工事中で通れなかったのに、木組み用の材料を運んできた人が迂回するのではなく「では待とう」とやっちゃったために材料が足りなくなります。で現場の人たちが自分たちで工夫して駅などの壁に貼ってあったポスターで見た「☆」の形で床を組みます。で、納品の直前に見に来たネッロは激怒します。「なんで赤い旅団のマークなんか!!」というわけ。オールド左翼たるネッロであるからこそ余計過敏になるわけ。ああ、たいへんなことだ、どれだけ損害賠償しなければならないか、と心配していたら「何も知らない」発注したデザイナーが見に来て「素晴らしい!!他店舗でも注文したい」となり、その言葉を聞いたとたんネッロはおろおろしていたのが豹変し、「いえ、我々も仕事が込んでいて、少々お高くなりますが・・・」ここらへんも笑えます。

 「何も知らない」人だと、それをそのまま見て「素晴らしい」と判断できることがあるんですよね。変な話、昔でもTEACCHの話や私の実践の話をすると知らない人は「素晴らしい」と言って下さり、「業界の人」は顔をしかめる、なんてよくあったよな。

 そういうふうにしてみんなでできる仕事を探していくわけです。しかし、自閉症で何もしゃべらない、でどっちかと言うとこわい顔をしている人が出て来ます。動きもゆっくり。でネッロはこの人にも何か仕事ができないか、と考え、立派なスーツを着てもらい「理事長」と呼ぶことにします。

 仕事はネッロと営業に回る。ネッロが口八丁で交渉し、交渉相手二人が「値下げを」と言ったら、ネッロは「理事長」に「我々はここまで下げましたが、これ以上下げてもいいでしょうか?」と言うと「理事長」は不機嫌そうな顔で黙っている・・・で、急に立ち上がり出ていこうとするのをネッロは追いかける。相手が「お名前は?」と尋ねると黙って名刺を突き出す。で結局元の値段で引き受けることに。

 二人が去ってから交渉相手が若い方に「お前も見習え。あの若さでなんという迫力だ。サメのような威圧感だ」と言います。

 そうやってうまくいきだしてからネッロは医師ベッキオに「(カトリック?)施設の外でアパートを借りて(より)普通の生活を」と提案し、「お前はあほか」みたいな態度を取られます。それを横で聞いていた太った男があわてながらネッロを「ちょっと来い」というふうに引っ張って行きます。

 でベンチに座ってまず尋ねたのが「君はバザリア派なのか?」ネッロは精神科業界(?)に詳しくないので何のことかわかりません。

 この太った男はフルランという医師で、若く、1978年のバザリア法のもとになったバザリアに共感している人みたい。でベッキオはどっちかというと「そんなのは現実を知らないやつの言うことだ」って感じかな。

 この「バザリア派なのか?」というのは、2000年のATACで私の実践動画を見て、発表を聞き、「いいなあ。kingstoneのやってるのはTEACCHですか。私はまだTEACCHはできないんです」とおっしゃった療育センター職員さんの言葉を思い出させます。なんかもうニュアンスがそのまんま。

 で、ネッロとフルランは「徹底抗戦だ!」と言って、医師ベッキオは本来「協同組合に雇われている医師」(なのに、全ての人の上に君臨しているというか慈父というのかそういう立場だったわけですが)なので、ベッキオを協同組合の決議で解任してしまいます。

 そして(カトリック施設の?)外にアパートを借り、みんなで移住してしまいます。もちろん薬はフルランが医師だから処方できるわけ。ほとんどネタキリだったルカも薬を減らし、元気な時間が増えてきます。

 で、よくわからんが「EUの助成を受けた」とか出てきました。ECととも見えたけど。とにかく行政から助成を受けた、ってことでしょう。

 あ、ECとEUの違いってFAQだったらしくこちらに説明がありました。当時だからECになるわけですね。

 アパートの中は何も無い。で一人が「家具は?」と尋ねたらネッロが「家具は買いに行くんだ」でみんな大喜び。

 で、家具屋さんで「分割で買えばなんとかなるか」と考えて、みんな「あれがほしい、これがほしい」と言うわけですが、店長と交渉すると「ローンは使えません」と言う。ネッロは困り、まずみんなを部屋から出し、店長と一対一になると態度を豹変させ「恫喝」します。で店長は一発でローンを認めてしまった。

 で、仕事もありいの、みんなでのアパート生活を始めえの、またフルランが考えて薬を減らしていきいの、しているうちに、なんかみんな元気になってくるんだけど、すると男はやたら女性に声をかけたり、さわりに行ったり、窓から女性を見ながらオナニーする人が出て来たり・・・

 で、まあ、ここは女性に顰蹙を買うかもだけど・・・対策を会議で話し合ったら「組合が女性を手配すればいい」とか言う人が出てきて・・・ネッロとフルランは困ってしまうのだけど、あれこれ考えて、これまた助成金を「情操教育の会」とかいう名目で取ってきて、何というか・・・「街の女」に協力してもらって・・・これはまあみんなが無茶元気にすっきりしちゃった、という・・・いや、怒られるかもだけど、でもよくわかるんだよなあ・・・

 ここからは2つの話が錯綜していきます。

 ひとつはジージョ。この人は何なんだろう・・・統合失調症?いやアスペルガー症候群?どっちも?まあそんな人です。で元気に仕事をしていた先で恋に落ちちゃう。(なおアスペルガー症候群っぽい人はいろいろ出てきたみたい)

 それからネッロがパリのエッフェル塔での仕事が取れそうになります。もういろんなことがうまく回りそうに思えます。ネッロの言葉。

「10人ならオトギ話。200人なら先例になる」

 ここでちゃんと仕事をすれば有名になってどーーんと注文が来るようになるかも。しかし問題はその仕事では給料が払えないこと。ネッロは「これは先行投資」と考えます。で、みんなとの会議にはかるのですが、一人「給料が貰えないならやらない」と意見をいい、それが多数になりこの仕事をやらないことになります。ネッロは怒り、残念がり、落ち込みます。しかしそのネッロにルフランがかけた言葉。

「みなの反対は君の最大の勝利じゃないか」

 で、さっきの恋したジージョですが、何かちょっといい雰囲気になりかけたのだけど、いろいろあって自殺してしまいます。

 この時のあれこれでルカは人に暴力を振るってしまったりとか。(これ、仕方がない面もあったのだけど)
 この後のルカとフルランとのやりとりも良かったです。「(薬を)5mgだけ増やしてみるかい?」みたいなの。本人と相談しながらっていうか聞きながらやってるわけね。

 よくね、精神病にしろ、発達障害にしろ、「薬なんか飲んじゃだめ」みたいな話をする人とか、「いやあ薬をじゃんじゃん」みたいな話をする人とか、0か100かみたいな。もちろん「できるだけ薬を使わずにできる部分はそれでやったほうがいい」「そのために環境を整えることが必要なら整える努力をするべき」で、「しかし薬の助けを借りてもいい」わけで、そこの微妙なバランスでやっていくもんなんだよね。

 まあ、精神科医さんも、ついつい「良かれと思って」薬を「多種・多量」に処方する傾向はあるかもしれないけど(で、これはお医者様だけの問題ではなくて、本人(?)や家族が望む場合も)・・・

 仕事の件、ジージョの自殺の件はネッロにショックを与え、引きこもり、共同組合をやめる決意をします。でその話をしに行ったら、医師ベッキオがいて「いや、君は大切なことをやった。続けるべきだ」と言います。おお、ベッキオいい奴じゃん、みたいな。そうベッキオだってちゃんとしたものを見ればわかるんですよね。しかし、それまでの医学界の常識とか、それこそ精神科医として「心に自殺者を弔う小部屋」を持っていたために、より慎重になり、薬を多量に使うようになっていただけなんじゃないかな・・・

 でもネッロはやめて昔の友だち(以前「放火のことは黙っておいてやるから」と言った)のやってるアパレル業界に行くんだけどね。で、ファッションショーをやっている最中に「やっぱりネッロに戻って来てもらおう」と相談がまとまった患者たちがファッションショーに押しかけます。そしたらまあその「昔の友だち」が失礼な態度を取り、ルカがどついちゃう。するとすぐにネッロがどつく格好をします。つまり「ルカがやったんじゃない。俺がやったんだ」ということにするわけ。

 で、ネッロはみんなの元に戻ります。

 またアパート生活。そして仕事。そこへ他の精神病の人たちが集められている施設(精神病院という名前じゃないよな。もう解体されてるんだから)から出てきた人が一緒に住み、仕事をするためにやってきます。で、みんな集まってきて、対面し、ネッロだったかが「では理事長あいさつを」と言うと、「自閉症で何も言わない人」が前に出てきてやって来た人たちをじーーっと見ていきます。でね、お話だったらここで一言何か言いそうなもんじゃない。結局「理事長」は最後まで何も言いません。ここ、良かった!!

 この話、実話がもとになっています。

 ネッロはルドルフ・ジョルジェッティ
 「共同組合180」は「ノンチェッロ共同組合」

 まあ、問題としてはこれは助成を受けてうまく行った例だと思いますが、今はどうなんだろう・・・イタリアも日本と同じで財政破綻が言われているけど・・・
 あとネッロは「お金を取れる仕事をする」にこだわってはり、もちろんそれはめちゃ大事。でも、そこまでいけない人がいることも確かだろうな、と。

 他にネットを検索したらこんなのが出てきた。

『やればできるさ』

映画「人生、ここにあり!」――精神病院のないイタリアで熱血漢が患者と床貼りの協同組合を作る(富山市)

精神病院のない国−イタリア 

映画『人生、ここにあり!』とバザーリアの改革
 

posted by kingstone at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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