「行きすぎた指導」奈良市教委、体罰と認めず という報道について
にぴよぴよさんがコメントをつけて下さいました。もともと毎日新聞が記事にし、産経が後追いをして書いたのだけど、産経は不正確である、と。あと、「自殺騒ぎ」事件の時と同じ事件とも教えて下さいました。エピソードはちょっと違うのですが、いろんな話に変わっているのかもしれません。
毎日JPのサイトにこの記事がありました。
暴行?:「教諭が児童に、校長隠す」同僚が証言−−奈良・特別支援学級
転載します。
奈良市立小学校の特別支援学級で、元担任教諭が男児(12)に暴力を振るった疑いがあるにもかかわらず、校長(当時)が事実に触れない報告書を市教委に提出していたことが分かった。男児は顔をたたかれたり足を蹴られたりしたと、毎日新聞の取材で報告書の内容を知った現在の担任教諭が証言した。校長は報告書に「職員朝の会では、力をもって制する指導は慎むよう指示した」と記載したが、複数の教職員が指導の事実を否定している。
目撃していた担任教諭によると、昨年5月10日の休み時間、当時5年生だった男児が女児にファイルを投げるなどしたため、元担任の男性教諭が腕をねじ上げ、教室から引っ張り出した。元担任が顔を突き出したので、男児が顔を払った。元担任は「たたいたな」と言って顔面を殴り、男児が足を蹴ると、左足で回し蹴りにして転倒させ、もみ合ったという。
男児が帰宅して両親が知り、校長が関係者から事情を聴いて、昨年7月16日付で市教委に経緯などをまとめた報告書を提出した。しかし、顔を殴ったり回し蹴りをしたりしたとする部分はなく、「(男児は)左手で教諭の右ほほを1回たたいてきた。教諭は厳しく指導し移動させようとした。(男児が)右足で2回蹴ってきたので、教諭は制止しようとして、とっさに左足で右足を払った。不適切な指導があった」と記した。また、トラブルの翌日の職員朝の会で、「全教職員に、力をもって制するような指導は厳に慎むよう指示した」とも記載したが、複数の教職員は「指導はなかった」と指摘している。
報告書を受け、市教委は「行き過ぎた指導はあった」としつつ、「体罰や暴力ではなかった」と結論付けた。
担任は「報告書は事実を隠蔽(いんぺい)している」と憤り、男児の両親は「殴った教諭と当時の校長は謝罪してほしい。二度と起こらないよう、学校で何があったのかを考え、みんなで解決するのが理想だ」と訴えている。
暴力を振るったとされる教諭は「もう終わってますので全部ノーコメント」とし、当時の校長は「退職して何も言えません」と話している。【上野宏人】
私のコメント書きたいが、なんかこれ読むだけで疲れてきたので後ほど。
ここから書くことは、この公開の情報と、私の体験と、そこからの妄想に基づいています。事実かどうかは保証しません。でもって、いつも私の書いてることの繰り返しにすぎません。また、私の妄想には「私怨」があり、まためちゃくちゃな「偏り」があります(笑)
まず公的な報告書に
「(男児は)左手で教諭の右ほほを1回たたいてきた。教諭は厳しく指導し移動させようとした。(男児が)右足で2回蹴ってきたので、教諭は制止しようとして、とっさに左足で右足を払った。不適切な指導があった」
「厳しく指導し」ってわけわかんないですね。具体的な行為(音声を含む)を書いてもらわないと。「厳しい」「優しい」って、何をどうしたかはわかりません。はっきりわかるのは「左足で右足を払った」ことだけですね。
で、それに対して校長がやったことは
「職員朝の会では、力をもって制する指導は慎むよう指示した」
と主張されているのですが、
複数の教職員が指導の事実を否定している。
とのことです。しかし、ここは校長先生の報告された通りと考えてみましょう。まず校長先生が「職員朝の会」などで、例えば事件が発覚した翌日などにこれを言うことは大切です。これを言わずに済ませば教職員が「力をもって制する」(しかし「制する」??はっきりと「どつく」「蹴る」と言えばいいのに)ことは当然許されると思ってしまいます。しかしこれを言うだけでいいわけではありません。その後、具体的に校長先生はどんな方策を取ったのかな?
またリーダーとしての校長が「力をもって制する指導は慎むよう」と言うことは大事でありながら、言うだけであれば現場の職員は「現場知らないくせに」と反発したり「そんならどないせい言うんじゃあ」と思ったり、「校長の言うことは単なる建前。後で誰かに責められないように一応言ってるだけ」とか思ってしまう可能性もあります。
この事件、どう考えても、お子さんは自閉症スペクトラムのお子さんです。であるなら、職員全体に自閉症スペクトラムのお子さんの特性はどんなものであり、どんな対応をしなければならないか、研修を実施する必要があるでしょう。OJTも含みます。もちろん校長が講師できなくてもいいです。これは専門性を必要とすることですから、校長先生ができなくても当然です。講師をできる人を呼んでくればいいだけ。ただし気をつけないといけないのは、自閉症スペクトラムに関しては、「特別支援教育の専門家です」「大学教授です」「医師です」という方が、必ずしも詳しいわけではないことには留意しておく必要があります。ほんまに講師ができる人を呼んでくる必要があります。
そういう対応はなさってるのかな?
私の経験をいくつか。
これは大昔の私が通常校の通常学級の担任の頃。ある先生はクラス経営に威嚇と暴力をお使いでした。それこそ「顔を殴ったり」「回し蹴りをしたり」それをもちろん現場の同僚は知っていました。私はその方に「期待」されていたようです。俺のような教師になって欲しい、という感じで。その方はまた校長からの信任は厚く、生活指導主任をしていました。
しかし、校長赴任3年目か4年目、ある保護者から「暴力を受けた」という申し出で、校長にそれまでの威嚇と暴力がばれます。なんの時だか忘れましたが、校長が私に愚痴りました。「裏切られた思いや」
びっくりしました。同僚教師がみんな知っていることを、校長は知らなかったのだ、と。3年か4年たってやっとわかったと。
結局この教師はその後特別支援学校をずっと回られます。何故だろう・・・
私が知的障害特別支援学校に異動してから。この学校は後年知ったところでは当時暴力問題で新聞社に張られていたらしいです。その学校にそんなこと(新聞社に張られているかどうかはさておいて威嚇と暴力が蔓延してる)なんて、私は特別支援教育畑にいながら全然知りませんでした。これは私が他の教員と「世間話」をすることが少なかったせいかもしれません。
私が赴任した時に、校長も新しい方が赴任して来られたのですが、ひょっとしてその方は教育委員会からその学校の暴力的な体質を改めて欲しいという「密命(?」を帯びておられたのではないか、というのは私が教育委員会に幻想を抱きすぎだろうか?よく職員朝の会で職員に対し「体罰はしないように」ということは言っておられました。特にその前日に何か事件があったということでも無いと思うのですが。もし暴力事件があり、校長の知ったところとなっても、その情報が職員間で共有されることが無く、私はヒラの一教員ですからよくわからなかったのです。
で、まあ・・・校長がいくら「体罰はしないように」と言ってもやってる人はいましたが。しかし、それ以上蔓延するのを防ぐ抑止力にはなっていたと思います。
これも校長先生が教師に対して、本当に役立つ研修を持って来れなかった、というのも大きいかな、と思います。
いくつか過去のエントリを上げると
見本になるということ
この時も職員室内の噂で「ほっぺたをつねって跡をつけた。それで校長から注意を受けた」という話が入っただけで、公式に情報共有されることはありませんでした。
自主研修会
これはものすごく珍しく職員会や学部会で情報共有された例です。
あと威嚇と暴力の例、いろいろ書いてますがいちいちあげません。面白かったのは、この校長先生、授業参観の前日の職員朝の会で
「明日は授業参観ですから大声での指導はやめておいて下さい(少なくして下さい、だったかな)」
とおっしゃったことがありました。「大声での指導」ってのはつまり「威嚇」です。暴力はさすがに見えないところでやるようになっていましたが、威嚇のほうは結構まだまだおおっぴらにやっていたので、ついこう言われたわけですね。当然これでは何も解決にはなりませんね。
まあこの校長先生も私生活で障害のある人に対するボランティア活動をやったりしておられた(祭り上げられるほうではなく実践しておられた)素晴らしい先生なのですが、自閉症のお子さんにどう対応したらいいかを当時ご存知なくても、それはそれでしかたなかったことと思います。
でね、大学教授やお医者様に教師を研修してもらえばいいと思うでしょ?
その教授が例えば
大学教授の講演会
や
超有名大学の超有名教授がやって来た
だったりするわけですよ。また校医さんがその地域では自閉症に関する権威としてしられている精神科医さんなんだけど
私が大昔に関わった地域のお医者様(自閉症関連)
のA医師だったりするわけです。
まあね・・・A教授にしろ超有名大学の超有名教授にしろA医師にしろ、現場からの正確な情報が上がってなかったから判断できなかっただけかもしれません。
でもなあ、ほんと私「大学教授なんて現場を知らないから」という悪口はそれまで言ったことが無かったけど、こういう体験を数積むと、やっぱりほんまなんやなあ、と思わざるを得ないことも多かったです。まあこれは現場の教師が管理職・大学教授・医師などに正確な情報を出さない、ということにも問題はありますが。
私も、やってる教師を直接怒鳴りつけたりしたことはあるし、校長に「私はつらいのです」と泣きついたことはあるけど、校長に「◯◯教師が威嚇と暴力を使ってます」とは報告しませんでした。それは仲間を売るような行為と思ったから。
でもねえ・・・校長はある意味「管理」がお仕事。しかし「教員養成学科の大学教授」や「指導主事」はほんま専門家やねんから報告が無くても実践を見たら見抜けなあかんやろ。それは直接威嚇や暴力を使っている場面でなくてもまずい指導であるというのは見抜けると思います。
たとえば、ある、頻繁に威嚇と暴力で子どもとやりとりする先生。この先生、普段は仏頂面で声かけもせず乱暴に子どもに対していました。(ただし、この「仏頂面(愛想の無い顔というか、特にニコニコするでもない表情)」「声かけの少なさ」は自閉症のお子さんに良かったとと思われます。本人は「子どもを威嚇しなければ」「子どもに怖いと思わせねば」と考えておられたと思われますが、その意図は子どもには伝わらず、結果的にはわかりやすい、ということになっていたと思います)ところがビデオに映るとか参観日とかなるととたんにニコニコ愛想よく、子どもたちに声かけしまくっていました。しかし見る人が見ればその対応がめちゃくちゃ頓珍漢になっていることがわかるはずです。つまり「普段威嚇や暴力で対応しようとしている」人の指導は「威嚇や暴力を使わない場面」でも頓珍漢になっているから、「ここは間違っていますよ」「こうしたらいいですよ」ということは伝えられます。
そして、やってみせ、環境を整えしているうちに、たぶんその先生も「威嚇と暴力を使わなくてもいいんだ」ということに気づきはると思います。実際にそんな例を知っています。
市教委は「行き過ぎた指導はあった」としつつ、「体罰や暴力ではなかった」と結論付けた。
あほかいな。
たぶん、担任も含め、教師集団・管理職・教委みんな「どうしたらええか」がわかってないだけやろなあ。
当時の校長は「退職して何も言えません」と話している。
ええっと、変な理屈ですね。
それから守秘義務についてですが、裁判で争えばどっちに転ぶかわかりませんが、
「「公務員の守秘義務違反」については、「周りを取り囲んで『お前が悪い』と指摘し続けろ」という医師の「アドバイス」や教育現場での「威嚇や暴力行為」の存在が、公務員の職務上知り得た「秘密」に該るか疑問。仮に該当するとしても、その漏洩が正当な目的のために行われたものなら、守秘義務違反にはなりません。」
という御意見もあります。まあ言えば「公序良俗に違反するものはこれを保護しない」ってのもありますし。
でね、私は「ちゃんとした人から(OJTを含む)研修をやってね」と書いてますが、しかし、確かにどうやってもできない教師もいるかなあ・・・私自身はかなりいろいろできる、とは思っているのですが。下のエントリに書いたみたいに。
指導力不足教員について
でね、ここから書くことは「現実的」ではない、と思われるかもしれませんが・・・
確かに、いろんな能力の低い教員がいることと思います。私がウツで退職する前なんか、ほんとまさに「指導力不足教員」だったし「問題教師」でした。でも「限定的な責任」「限定的な仕事」なら、そこらへんの特別支援教育担当教師以上のことができたと思います。で、その時大事なのは「限定的な給料」ね。当たり前のことです。まあ、そこらへんをどう評価するか、ってのは難しいのですが。
私は橋下市長が「給料を下げる」というのには賛成する部分もあるのです。しかし「市長が教師を自由に馘にできる」というのはあかんと思う。
たとえば問題があれば、研修室付にするとかして、給料を劇的に下げる(給料と言えないくらいでも良し)。そして自ら学び働いてみようと思いだせば、少しずつやらせてあげ、給料も少しずつアップしてあげる。そういうふうにすればそれこそいきなり長期休職・しかも給料はそのまま払わなければならない、なんてことなしにできるし、本人のためにもなると思うんだけどな。
もちろんお子さんもだし、いろいろ問題のある教師(こちらは給料をもらってるだけに子どもと一緒にはできないですが)も、生かせる道を模索したいですね。
あっ、それから、このエントリのもととなった話。残念ながら別に珍しい話では無さそうです。(私はネタキリになっている間に世の中進んで珍しい話になっているのかと思っていた)
ラベル:自閉症 発達障害 特別支援教育
まぁ,米国だったら「タイムアウト」あたりでおしまいの話ですが,日本でそれをやると「教育権を奪われた」とかになりますからね。西欧諸国では「他人の教育権を侵害する児童生徒の教育権」は「制限されて当たり前」という考え方なのですけどねぇ。
私の意見はのちほど。
まだエントリを書く元気が出ません。