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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2011年04月28日

中間管理職育成講座初級編 第7回〜第9回

マチート 中間管理職育成講座初級編7


Eさんへ

レポート提出の締切はありません. また,昇級試験のカンニングは大いに結構です. ついでに,答案の書き直しも認めましょう.非常におおらかな講座なのだ.

さて,Eさんの回答ですばらしいのは,問題点そのものの定義です.それも, 有無も言わせず,中間管理職が決めてしまう点は,唸ってしまいました. その上,ミーティング開催の目的を瞹昧なタイトルにするなんて,レベル1の実態を本当によく理解されていますね. ただ,エクセルを使った記録フォームは, この段階では猫に小判になるかもしれません.レベル2に行く前に使っておきたいが, 微妙な賭けですね.それから,怖いおやじへの対処法が,まさにレベル1の教育に欠かせないものです.

Fさんへ

またまた, 芸達者なタレント登場ですね.ここで,エディプスコンプレックスで有名なフロイトを持ち出すなんて, フロイト自信も草葉の陰で驚いて(怒って? )おられることでしょう.私は,学生時代にフロイト系の心理力動的セラピーの本を何冊か購入しましたが, 10ページ以上読み進んだためしがありません. フロイトといって連想されるものが,ピンク・フロイトとアブドーラ・ザ・プッチャー, それにコーヒー・フロイト(一部地域ではフロートともいう)くらいです.

それにしても, どれも笑っちゃいけないが,笑える解決方法ですね.フロイトの用語と具体的な解決方法の関連づけはわかりませんが, 一度真剣にこういう話し合いをするというのもいいかもしれない. でも,それができるのはレベル3の職場ですね.Fさんの職場は,レベル3?

□ レベル1の教育の前に

以上, 遅れた回答へのコメントです.これだけ回答があれば,皆さんもかなり問題を整理されていることでしょう. 次の講座からは,テツオくんの学校がレベル1を脱するための戦略(ストラテジー) を考えます.今回は,その前にレベル1の職場の中間管理職に必要な心構えを軽く紹介して終わりにいたします.

■ 職場のレベルで判断すること
この業界, 現場担当者の中には,たいそうなベテランや勉強家など,有望な人材がたくさんいます. 会議での発言や企画案など,中間管理職のあなたではとてもかなわない, すばらしい,そして立派な意見を持っている人もいることでしょう. でも,こんなに優秀な人材がいるのだから大丈夫だと,安心してはいけません. 職場(その中の部門)として,どれくらいの力を持っているのか,あなたは冷静に判断しなくてはなりません. うまく判断できないなら,レベル1だと思って間違いありません. あなたの仕事は,職員個人の自己実現を手助けすることではなく, その優秀な能力を職場で発揮できるように援助し,職場の力を向上させることです.

■ 計画は不確定な将来の予測
トラブルの解決とは, 将来の計画を行うことです.「将来のことを完璧に予測できる者はいない.」 この事実を,私たちはよく忘れてしまいます.過去から現在にいたる状況分析をどんなに詳細に行っても, 完璧はありえないのです.この業界では, 何か難しい困難点にぶち当たると,過去の経緯を事細かに調べて話し合い, 何ら計画も立てずにみんなが満足してしまうという,非常に幼稚なケース会議が横行しております. これから中間管理職になるあなたは,不確定な将来の計画を立てるのが仕事なのです. 完璧な計画はありません.ときには, 直感的なひらめきやカンが頼りになるのです.このような直感力を養うには,何度も職場で計画・修正を繰り返す経験が必要なのです.

■ 夢を描く計画はやさしい
「将来は不確実だ! 」を認識すると,計画はやさしいと錯覚してしまいます.夢を描く計画は確かにやさしいのです. でも,夢を実現する計画は難しいものです. 現場にいる優秀な人材のうち何割かは,夢を描く計画だけにしか興味を持っていません. あなたの仕事は,現状のさまざまな制約の中で,夢を実現するための計画作成なのです. 高級管理職育成講座を担当している私の同僚は,よくこんな話をしています.

「障害者問題の近年の傾向や職場の将来の発展を考えると, A事業がぜひとも必要である」という提案までは,誰でも考えつくものです.でも,その計画は,資金をどこから捻出して, いつからいつまで,誰が責任を持って,どこで行うものかまで計画するのは難しいものです.

■ 人を動かすのは難しい
中間管理職は,障害を持つ人に直接サービスを提供する機会は少ないものです.計画の実行の大部分は, 自分ではなく人がやるものなのです.どんなにすばらしい計画を立てても, 人が動いてくれなければ,どうしようもありません.つまり,計画の立案段階で,人が動きやすい状況を作らなくてはならないのです.

もし, 自ら計画どおり動いてくれない人がいた場合,あなたは以下の3つの方法のどれかを選択するしかありません.

1)脅す,
2)おだてる,
3)泣き落とす.

どれも決してやさしいものではありません.多くの場合,特にレベル1では,計画に「人が動きやすい」状況を入れていくしかありません.


マチート 中間管理職育成講座初級編8


テキストの分量の割には進みが遅い本講座も, やっと具体的な戦略の話題に入ります.テツオくんが通ってきているレベル1の養護学校の中間管理職である,あなたはこれからどうすべきかを一緒に考えて行きましょう.

□ 共通化の手法

レベル1の職場の問題は, 見方が共通化されていないことです.

 テツオくんの担任は, あらゆる場面で開いているドアを衝動的に閉めようと突進する傾向を「自閉症固有のこだわり」 と名前づけし,この根本的な解決(つまり,こだわりがなくなる) にもっとも関心を示しています.

 一方,母親はというと,「学校へ登校できない」 現状が非常に負担になっております.ただし,両者は,このトラブルに対して見方が異なっているとは思っていないようです. 見方の違いが認識できないのも,レベル1の典型的な症状のひとつです.

見方を共通化するには, お互いに話し合いをするしかありません.つまり情報交換の場, ミーティングが必要になります.別に,文書でもパソ通でもいいのですが,手っとり早くコストがかからず,汎用性のある手段は「ミーティング」に尽きます. ここで,中間管理職のあなたは,このミーティングが,本に(Dさんの奥様やEさんも) 書いてあるIEPミーティングのように簡単には実施できないことを知っておかなくてはいけません. なぜなら,これがレベル1だからです. ミーティングを通して,見方を共通化するには,あなたがかなり強力なリーダーシップを発揮する必要があります. このリーダーシップには, 性格や態度,顔つき,声の大きさ,年齢は関係ありません(本当は関係するが) .ミーティングを行うための準備をいかにしっかり行うかにかかっています.

□ ミーティングの準備1(参加者)

ミーティングの準備のまず最初は,誰とミーティングするかを決めることです.既にトラブルが起こっているのですから, 手っとり早く顔を揃えられるメンバーで十分です. テツオくんの事例では,「担任」「母親」そして「あなた」が参加メンバーです.

■ ブレーンストーミング
発達障害児者の療育・福祉・教育業界では, 何かことが起きると,あるいは何らかの計画を作る際, 必ず「本人の問題,本人の教育,本人への援助」で話し合い, 報告書を書きます.

 たとえば,「テツオくんは○○で困っている」「テツオくんが○○になるよう頑張らなくては」...なぜなら, 「私たちはこのように考えているが,どう思う?」と障害をもつ本人に問いかけても, 意志を確認することが難しいからかもしれません.あるいは, 日本の伝統的な師弟関係の風習が幸いしているのかもしれません.でも,本人のためを思ってのヒューマニティーが根底にあることは間違いなさそうです. 確かに,本人を抜きにして,「私はこうしたい」「あなたはこうした方がいい」 とだけ話し合い,周囲の人間だけが利益を受ける決定を下すのは問題です. しかし,現実のトラブルは本人を主語にした会話だけでは,全く太刀打ちできません.トラブルの多くは,周りの人たちの見方の違いにあるのです.

kingstone追記
 この部分については、現在(2011年)のおめめどうは「本人に聞く」を強く主張するようになっています。もちろんあの手この手を使って、また行動を観察してですが。


ミーティングの前に,誰がどんな思いをもっているか「想像」してみましょう.

頭に想い描くだけではいけません. 紙(画面)に,対象となる人をあげ,その下に空欄の四角を描きましょう. そして,想像した思いをできるだけたくさん書き込みます.

【母親】
+--------------------------------------------------------------+
|・学校に行けないのは不安だ |
|  一日中自分と一緒にいるとまったく休まらない |
|  将来もどこにも通えないとしたら |
|・あのオヤジが憎い |
|  窓はちゃんと閉めておけ |
|  クーラーくらい買えよな |
|  そんな些細なことで怒っていると早死にするぞ |
|  家の子のような障害にもう少し理解を示して |
|・学校へ連れていけない自分の不甲斐なさ |
|  あんなオヤジの怒鳴り声に負けるなんて |
|  母親としての自覚が足りない |
|・誰も助けてくれない |
|  夫がもっと助けてくれれば |
|  夫に毎晩遅くまで仕事をさせる会社は何なんだ |
|  学校は通学指導といいながら何もしてくれない |
|  家の子の外出を助ける制度は何も無い |
+--------------------------------------------------------------+

【担任】
+--------------------------------------------------------------+
|・こんなにこだわりが強い子はまっぴらだ |
|  学校で四六時中注意しているなんてできない |
|  私は歳よ.中学生を追っかけるのは大変 |
|  こんなに努力しているのに |
|  学校が休みの日はゆったりとクラス運営ができる |
|  誰だってこのこだわりは抑えられないわ |
|・私はこの子の指導に向いていない |
|  自分の経験ではこの子をうまく指導できない |
|  誰も私の悩みを理解してくれない |
|  早くクラス替えにならないかしら |
|・家庭でちゃんとしつけてくれなきゃ |
|  小さいときからしっかりしつけていればこんなにならない |
|  そんな些細なことで母親が学校へ連れてこれないなんて |
|  私が親ならもっとちゃんとしつけているわ |
|・変なオヤジ |
|  窓はちゃんと閉めておけ |
|  クーラーくらい買えよな |
|  そんな些細なことで怒っていると早死にするぞ |
|  我が校のような生徒にもう少し理解を示して |
+--------------------------------------------------------------+

【あなた】
+--------------------------------------------------------------+
|・これ以上不登校が長引くとまずい |
|・トラブルを早く丸く抑えたい |
|・誰かこの役割を肩代わりしてくれないか |
|・自分が担任だとうまくやれるのに |
|・こんなトラブルは自分たちで解決しろ |
|・何度もミーティングの準備に時間はかけられない |
+--------------------------------------------------------------+


マチート 中間管理職育成講座初級編9



■ 誰の何が問題か?
いつでも, だれもがそうなのですが,トラブルに巻き込まれると特に,知らず知らずのうちに,自分の立場からしか物事が見えなくなります.ここはひとつ,中間管理職のあなたが, それぞれどんな立場から,どのようにトラブルを見ているかを考えます. そのための道具が,先の空欄用紙です.とにかく,可能な限りリストをあげることを勧めます.

誰の何が問題なのかを考えるうえで有効な道具がもう一つあります. ドクター・ワインバーグの名著「ライト, ついてますか」がそれです.この講座の何割かは, ドクター・ワインバーグのアイディアをちょうだいしております.この本には, 「誰の・何が問題か?」を考えることがいかに重要であるか,ユーモアたっぷりの例題とセンスの無い挿絵を使って解説しています. 詳細はそちらを当たってください.

ドナルド・C・ゴース & ジェラルド・M・ワインバーグ著,木村泉訳 (1987)
ライト,ついてますか : 問題発見の人間学.共立出版.

■ ミーティングのシミュレーション
さて, 先のリストを使って,ミーティングをシミュレーションします.とはいっても, 所詮レベル1です.これまで,建設的なミーティングを行った経験はありません.誰がどのような発言をするか,どのように議事が進行して行くか,全く予測できないのが現実だと思います. そこで,おおざっぱに二つのシミュレーションを行ってください.一つは「袋小路」,もう一つは「抜け穴」です.

【袋小路】
これは, ミーティングで絶対に進んではいけない方向を事前に確認する作業です. 袋小路は,たいていいくつもあるものです.そして,いったんはまると,なかなか復活できないものです. レベル1の職場では,袋小路にはまると,まず抜け出すことはできません.

テツオくんの事例のリストには, 典型的な袋小路が二つのタイプが隠れています. 一つは,「欠席裁判型」と呼ばれるものです.つまり,ミーティングに参加していない(できない) 対象に責任を押しつけ,自分たちに問題はないんだと, 傷を舐め合う行動です.たとえば,「あのオヤジは本当に変なやつだ.近所からも嫌がられている名物オヤジらしい. 困ったものだ.」で全員納得してしまう場合がありますね. また,「私たちの街は,発達障害に対して理解も配慮も無い, 福祉後進地域だ.行政や社会教育担当者はいったい何をしているのか. 」も同じですね.ある面,真実かもしれませんが,現状のトラブル解決にはなんら進展がありません.まさに,袋小路の話し合いです.

もう一つは, 「プロレス型」と呼ばれています.つまり,善玉と悪玉を明確にしてしまうことです. どちらが,善玉になるかは,力関係や話しの流れで決まってしまいます. たとえば,「家の学校は,自立登校が原則ですから,本来は1人で登校できなくてはいけないのですよ. 歩いて通える距離なのだから,早目に自立登校の練習をお母さんがやっていれば, こんなことにはならなかったのです. 本人が元気なときは何としてでも家族が学校へ連れてくる責任があることは, 覚えておいてくださいね.こだわりも,家庭のしつけに問題があったからじゃありませんか. 」と担任がたたみかければ,悪玉はもう決まりです.これ以上,話は進展しません.

一見,弱い立場のような母親ですが,3人のミーティングでは逆転も簡単です.そうです, 女子プロレスの善玉を見てください.いつも前半は悲鳴をあげているでしょう. ハンカチを取り出し, 涙を2〜3滴滲ませ, 30秒ほどおいて「シクシク」 あるいは「ワーワー」泣くだけで,今度は担任がヒールです.中間管理職は, 「まあまあ.それは言い過ぎだな...」とはじめて,担任を積 極的にこき下ろします. 母親は,後で一言「前の担任は良かった」と言えば十分です.どっちにしろ,こんなに空しいミーティングはありません.

袋小路を予測するシミュレーションは絶対に忘れてはいけません. もし,そちらへミーティングが進みそうなら, 素早くその芽を摘み取ってください.あるいは, ミーティング前に,マイルドに,1)ここにいない人の批評してもはじまらない, 2)誰に責任がある訳でもくみんな精一杯頑張ってきた,と口火をきっておくのも手です. ミーティングが袋小路にはまり込んでしまったら,他でもない,中間管理職のあなたの責任です.

【抜け穴】
ミーティングがどのような結末へ収束するか, 事前に想定しておくことも大切です.もちろん,細かな想定はできませんし,収束の方向はたくさんあります.このようなシミュレーションをここでは「抜け穴探し」と呼びます.

テツオくんの事例では, 母親にとって「オヤジの怖さを緩和する」 あるいは「オヤジに会わずに済ませる」 方向へ向かう話合いが大切ですね.それによって, 「テツオくんが学校へ来れる」状況を作りあげなくては,話しになりません. 担任にとっては,「日々の突進行動に対する無力感を消滅させる」話合いが無くてはいけません. さらに「登校に付き添う母親へ自分も援助できることを知ってもらえれば」最高です.

□ 小休止

見方を共通化するには, ミーティングを開催します.でも,レベル1では,あ
なたの事前準備が重要です.

1) 参加者の選定
2) 各参加者の立場と問題をリスト
3) ミーティングの袋小路をシミュレーション
4) ミーティングの抜け穴をシミュレーション

おっと, 忘れていました.2)で作成したリストは,早々とシュレッダーにかけてくださいね.人に見られると大変です.

ミーティングの準備は,まだあります.

p.s. 何度もしつこく書かないとマズイので,書きますが.この講座は,ジョークですよ.真剣に聴講しても,中間管理職なんてなれませんよ.
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