内容説明はNHKのホームページにあるように
「いま、自閉症児などが自分の意志を伝える「ツール」として、スマートフォンなどの携帯情報端末が注目されている。
(1) 持ち運びしやすい、(2)視覚的な情報を触れることで操作する、(3)ソフトを増やせる、という携帯情報端末の特徴は、自閉症児などが使うツールとしてぴったりなのだ。
携帯情報端末の利用は、障害児教育の現場でも広がっている。香川大学教育学部付属特別支援学校では、半年前から授業に取り入れたことで、子どもたちが視覚的に授業の流れを理解できるようになり、自発的に行動できるようになったという。
また、これまで「福祉」と関わりがなかった技術者たちも開発に参加し、ユニークなソフトが次々と生まれている。スマートフォンなどの携帯情報端末と、障害児教育のコラボレーションをお伝えする。」
で、解説が中邑賢龍先生でした。
しかし・・・いやいろいろなスマートフォンの利用(で、出てきたのは全部iPhoneだけど、まあAndroidでもできないことはない)とかの紹介としては良かったです。しかし・・・解説は中邑先生だけど、監修してもらったか?>NHK
とても専門家だったら言わないようなナレーションがあったのですが。
ここから書くことは、中に出てきたお父さんを批判するものではありません。(しかしお父さんの周囲にいる特別支援教育担当者や専門家、またNHKの番組制作担当者への批判ではある)
まず最初の方で自閉症のお子さんにお父さんが音声言語で語りかけるシーンがあります。しかしお子さんはそれには全然反応していません。それに対してナレーションが
「◯◯君は言われていることはわかっているのですが、表現することができません」
あの動画を見てそんなナレーションを被せるか!!
これを言われたために、どれだけの自閉症の人が苦しんできたと思っているんだ。
で、また「愛情豊か」で「熱心」で「よく勉強した」人でこういうことを言う人が多かったのも事実です。まるでさも「これだけ私はこの子のいいところを見つけているんだ」と言わんばかりに。
まあね、こういう文脈だったらわかります。「わかっていないように思えても、馬鹿にしたようなこと、悪口みたいなこと、きたないこと、そんなことは言わないように」でもこれは人間でも動物でも無生物(機械など)に対しても同じことでしょう。
でも、それは「わかっておろうがおるまいが」同じことです。
で、画面に出てきたお子さんと私はつきあったことがあるわけではないから、しかとはわかりませんが、複雑な音声言語はまずわかっておられません。これが例えば自立課題学習ができた時に「やったね」「すばらしいね」などの短い褒め言葉だったら、何事かを理解してくれるかもしれませんが。
それを「わかってる」と言いだしたら、「だから音声言語でいい」「視覚支援は使わない」「音声言語で理解しているのに言う通りしないのは怠けださぼりだ反抗だ」はすぐ近いところにあります。
そこらへん、NHKわかってないなあ・・・誰かに何かを遠慮してるのかな。
それと、お父さんはiPhoneでVoice4uを使ってはりました。私が昔紹介したのはこちら。
自閉症の方がiPhoneを使ってコミュニケーションする映像(ネタバレごめん)
ただ、iPhone(スマートフォン)を買ったら幸せになれる、という話では無いですね。その前に整理がつかなくなるほどの多量の絵カードを使っていろいろやろうとして来られたことを忘れてはいけないと思います。それがあってのiPhone(スマートフォン)
また・・・あの場合の使い方が全てお父さんが提示してお子さんが選ぶ形だったのね。「自閉症の方が〜」の方の使い方は、自閉症の方本人が持って要求するのを横にいるお母さんが「気づいてるけど気づかないふり」をして待っているのがおわかりになるでしょう。
もちろんテレビの方に出てきたお子さん、いろいろと困難なことのあるお子さんであるのは間違いないと思います。しかし「絵カード」や「スマートフォン」の使い方の部分で、自発性のコミュニケーションを大事にする、という視点を周囲の特別支援教育担当者や専門家は指摘してきはったのだろうか?またあの番組、また再放送がありますが、それを見る特別支援教育担当者さんや専門家はそこらへんも注意して見て頂けたら、と思います。