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※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2011年03月06日

学習指導要領についての話

レデックス通信から

特総研セミナー・レポート「特別支援教育のさらなる進展」の記事

 実のところ、私はこのあたりの話、苦手です。現場で起こっていることから授業を考えていくのは得意というか、それしかできなくて、文部科学省がこう言ってるから、こういう授業を作る、というのは大の苦手。

 現役時代、この手の話を聞く研修は苦痛でした。

 でも教師・学校・指導主事・教育委員会によっては「文部科学省がこう言ってるから、かくかくしかじかして下さい」と要求すると「じゃあやろうか」と思ってくれる人もいることは事実です。だから知っておくのは大切ですね。

追記
 コメントでもずらいとさんが、「自立活動に「人間関係の形成」などという,内容が加わりました。」ということを教えて下さっています。「自立活動」というのは特別支援教育の根幹と言っていい部分。でこれは、使いようによって良くも悪くもなりますね。「人間関係の形成」ができなきゃ他のことしない、という方向にいくとまずい。けれど「具体的なやりとりができることによって人間関係を形成していく」と考えればすごい武器となる。まあ、使い方次第です。

 それから上で「学習指導要領を持ち出すと『じゃあやってやろうか』と考える人もいる」と書きましたが、ひらの教師だと「うるさいこと言いやがって」と反発だけする人もいるかもしれないので、お気をつけて。教育委員会の人だと、そういう人はいないと思いますが。

 あと、「道徳の重視」みたいなことが言われていて、「う〜む、むつかしいなあ。どうすりゃいいんだ」と思っていましたが、考えてみるとソーシャルスキルトレーニングと捉えればいろんなやり方があるんだ。「教える」こともできるし、「一緒に考える」こともできるし。まあ、それでも肢体不自由特別支援学校の最重度のお子さんだと、いろいろ考えなきゃいけない点があるでしょうが。
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(1)特総研セミナー・レポート「特別支援教育のさらなる進展」1
http://www.ledex.co.jp/mailmag/index.html?no=fin110204
(2月4日号)

 今年4月から改訂された学習指導要領に基づいての学習指導が小学校で始まります。特別支援学校や通常学校の特別支援学級、通級においても同様です。いったいどのようなものに指導が変わっていくのか、国の専門機関が実施するセミナーを何回かに分けてレポートしたいと思います。

 国立特別支援教育総合研究所、略して「特総研」は障がい児の教育に関する日本の唯一のナショナルセンターです。学習指導要領に基づく指導の開始に備えて、700名の全国の特別支援教育関係者を集めて、1月28日29日の2日間、国立オリンピック記念青少年総合センターで行われました。

テーマ:特別支援教育のさらなる進展へのチャレンジ−学習指導要領改訂にあわせて−

1.シンポジウム:特別支援教育のさらなるチャレンジ−現状の把握と今後の展望
2.講演:学習指導要領と学習評価
3.分科会
   第一分科会:障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ
   第二分科会:特別支援教育におけるICT活用の在り方
         −障害の重複化・多様化への対応−
   ※ICTは、情報通信技術のことです。

 平成22年度国立特別支援教育総合研究所セミナー1
 http://www.nise.go.jp/PDF/H22semmner1_annnai.pdf

 まず、今号と次号の2回で安彦忠彦・早稲田大学大学院教授(中央教育審議会委員)の講演を紹介します。

 この講演は、幼小中高や特別支援学校という全校種に共通する、新学習指導要領の改訂のポイントを示すという位置づけです。

改訂の背景は、次の3点です。
(1) 日本の歴史的位置の変化
 諸外国へのキャッチアップが終わり、覚えて まねる(記憶力)から新しいものを生み出す(思考力)重視の教育へのシフト。これは、前回の指導要領の改訂の方針を維持。
(2) 日本社会の教育力の衰退
 地域と家庭の教育力の低下を補う、社会全体の取り組みによる教育再生に取り組む。
(3) 国際比較上の変化
 OECDのPISA(国際比較調査)の学力観と学力の低下傾向。

(3)は特に重要です。社会に求められる、主要能力:キー・コンビテンシーは「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することができる力」と定義されました(中教審答申)。

OECDにおけるキー・コンピテンシー http://bit.ly/aBmkpj

 例えば、読解力では「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」となります。従来、日本で読解力が指した内容は、国語的な理解でしたが、ある意味で、教科を越えた実社会での問題処理能力ということができます。また「書かれたテキスト」には、文字だけでなく、図や表、イラストも含まれます。

 そして、それら三項目を実現するための、新学習指導要領の趣旨は、7点に集約されます。

(1) 改正教育基本法を踏まえた改訂
 義務教育の重視と道徳教育の重視。
(2) 「生きる力」という理念の共有
 「実社会・実生活に生きる力」に焦点を当て、時間数、学習形態等を改善。
(3) 基礎的・基本的な知識・技能の習得
 思考力のみを目指すのでなく、基礎と思考のバランスを重視。

 2000年と2003年のPISAテストで読解力で世界一になったフィンランドは国内で読み書き能力の低下が問題になり、基礎・基本に当てる時間数を増やしたそうです。日本でも思考力を重視しつつ、基礎・基本の時間数を増やすことになりました。

(4) 思考力・判断力・表現力等の育成
 「総合的な学習」を主、教科学習を副として育成。

 ※「総合的な学習」は前回の指導要領の改訂で、教科時数を削減して新設された時間で、課題(プロジェクト)を設定し、それに取り組むことで思考力等を伸ばすことを目的として活動を行う。

(5) 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保:長期休暇の短縮
 時数増は、基礎・基本の習得よりも、思考力等の育成に用いる。

「学力の確かさ」は、三つの面から実現します。
  ア.知識・技能(正確さ) 
  イ.思考・論理(確実さ) 
  ウ.内省・吟味(確かめ)

 中教審委員の市川伸一・東大教授は、学習を習得型、活用型、探究型という3つのタイプに分類することを提唱しています。教科の時間では基礎・基本を習得型で学習し、発展的内容を活用型の学習で行います。さらに、総合的な学習の時間で、探求型の学習をすることで、確かな学力を身につける、という構造です。

 ※上記は安彦先生の講演内容です。市川先生自身は、活用は型ではないがとして、以下の本で、その辺りを解説しています。

「『教えて考えさせる授業』を創る」 市川伸一著、図書文化、1470円税込
 http://amzn.to/ihqIu6

(6) 学習意欲の向上や学習習慣の確立

 志水宏吉・大阪大学大学院教授は、著書「学力を育てる」で、調査に基づき学力と相関があるのは親の収入でなく、学習習慣の形成の有無だと明らかにしています。

「学力を育てる」 志水宏吉著、岩波新書、700円税別
 http://bit.ly/elwAtG

(7) 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実

 新指導要領では、各教科のすべてで、それぞれの教科の特質に応じて、道徳について適切な指導をすることが明記されています。ただし、安彦先生は、各教科の本来の目標を実現することが優先されるべきで、その指導を全体として「道徳臭く」することではないと明言されました。
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(1)特総研セミナー・レポート「特別支援教育のさらなる進展」2
http://www.ledex.co.jp/mailmag/index.html
(2月18日号)

 1月28日29日国立特別支援教育総合研究所セミナー基調講演「学習指導要領と学習評価」の後半です。講師は安彦忠彦・早稲田大学大学院教授(中央教育審議会委員)です。

 教師あるいは学校管理職向けの話なので、読者の理解しにくい(しなくてもよい)部分は割愛した点があることをご承知おきください。

1.学習評価の改善の狙い

(1)「生きる力」の理念の継承・発展

 2002年から施行された前指導要領で導入された「生きる力」。知識、道徳、体力のバランスがとれた力と定義され、今回の改訂でも最も大切な力として評価の中心に据えられます。

(2) 新学校教育法第30条第2項の学力規定に従った観点

 同条文の抜粋「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、表現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなければならない」

 ここで列挙された項目一つひとつにどの程度則っているか、という複数の観点から、学習への子どもの取り組みを評価します。

(3) 「確かな学力」の重視

「基礎基本」と「思考力等」をバランスを取りながら評価します。ただし、思考力等が最終的な目標であることに留意します。

2.学習評価の改善の方向

(1) 目標準拠評価(いわゆる絶対評価)の全面的採用を継承

「観点別学習状況の評価:プロセス」も「評定:結果」も絶対評価です。学校間の「評価基準」のズレについては、地域の学校間ないし教育委員会が調整します。観点別学習状況については、後述します。

(2) 「質的評価」を重視し、過度の量的評価は避ける

 ポートフォリオ評価やパフォーマンス評価を重視し、実際の言動とその記録で評価します。具体的には、論述試験・口述試験・実技試験等を行います。小学校に導入される英語についても同様です。

※パフォーマンス評価(アセスメント):身に付けた能力を活用しなければ解決できない課題を与え、達成できるかどうか実際に確認して評価する。

(3) 学習意欲の喚起や主体的な学習活動の促進

「個人内評価」による絶対的評価・肯定的評価を主とします。また、自己評価・相互評価により、主体的学習を創造し、自己評価能力を育成します。

3.「観点別学習状況の評価」と「評定」

(1) 4つの観点で、学習状況を評価します。
 ア.関心・意欲・態度
 イ.思考・判断・表現
 ウ.技能
 エ.知識・理解

 以前「表現」は「技能」とセットで評価しました。今後は「思考・判断」とともに働かせるように指導して評価します。また、芸術表現ではなく、言語活動の一環で表現力を捉えることがポイントです。

(2) 「評定」の存続

 端的な子どもの達成度を知る上で必要なものと位置づけます。ただし、相対評価ではなく、絶対評価で行います。

 最後に、まとめとして、以下の3点を確認されました。

(1) 目標準拠、つまり「指導する前に目標を設定する」ことから評価が始まる。さらに評価する観点で準拠するものが異なる。
 ア.知識・技能 ドメイン準拠 到達度:二分法
 イ.思考・態度 スタンダード準拠 次元分け

(2) 相対評価は採用しないが、集団内の位置については何らかの方法で示してもよい。

(3) 究極の狙いは「指導と評価の一体化」。カリキュラムや指導法・学習法の改善に役立てるために、評価を行うことを忘れないように。もし、そういったデータが得られない時は、評価活動を見直すべき。


この記事へのコメント
 昨年度まで肢体不自由特支で高等部の準ずる課程の国語の教員をやってました。入学選考検査問題作成で中学校の学習指導要領をみて「ダメだこりゃ」と思いました。古典なのですが

指導計画の作成と内容の取扱い
イ 古典の指導については,古典としての古文や漢文を理解する基礎を養い古典に親しむ態度を育てるとともに,我が国の文化や伝統について関心を深めるようにすること。その教材としては,古典に関心をもたせるように書いた文章,易しい文語文や格言・故事成語,親しみやすい古典の文章などを生徒の発達段階に即して適宜用いるようにすること。なお,指導に当たっては,音読などを通して文章の内容や優れた表現を味わうことができるようにし,文語における言葉のきまりについては,細部にわたることなく,教材に即して必要な範囲の指導にとどめること。

という「歯止め規定」がありました。つまり,掛詞や枕詞は「細部」なのです。もちろんたいていの学校では教えていたでしょうが,この規定があるので,少なくとも公立学校の入学選考問題としては出しづらいわけです。実際,多くの自治体の問題では出ていません。しかし,掛詞を教えず平安女流歌人の歌をどう味わえと?百人一首の小野小町や小式部内侍の歌なんて掛詞の絶妙さがすばらしいのに。

 で,新学習指導要領は同じ中学国語では

1年の伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項で

(ア) 文語のきまりや訓読の仕方を知り,古文や漢文を音読して,古典
特有のリズムを味わいながら,古典の世界に触れること。
(イ) 古典には様々な種類の作品があることを知ること。

3年の伝統的な言語文化に関する事項では

(ア) 歴史的背景などに注意して古典を読み,その世界に親しむこと。

とあり,さらに

〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の(1)に示す事項につ
いては,次のとおり取り扱うこと。として

ア知識をまとめて指導したり,繰り返して指導したりすることが必要な
ものについては,特にそれだけを取り上げて学習させることにも配慮す
ること。

と180度方針変換となりました。

 今までの学習指導要領のダメだった点は安易に内容を軽くすれば良いというだけの方針であって,中身の精査もなく,決定的なのは「知的好奇心を満たす」ということを重視していなかったことです。

 特別支援学校の新学習指導要領も,発達障害を教育対象に入れたからであろう,自立活動に「人間関係の形成」などという,「コミュニケーション」と実質的にどう違うのか分からない(コミュニケーションとは人間関係の形成の手段ではないのでしょうか?)内容が加わりました。
Posted by もずらいと at 2011年03月06日 13:19
もずらいとさん、いつも貴重な情報、ありがとうございます。

このコメントを読むと、「古典」については「良くなった」と考えていいんですかね。

|自立活動に「人間関係の形成」などという,内容が加わりました。

ほほお。

|コミュニケーションとは人間関係の形成の手段ではないのでしょうか?

まったくその通りと思います。

Posted by kingstone at 2011年03月06日 13:31
>「古典」については「良くなった」と考えていいんですかね。

 前の指導要領の内容が非道すぎましたからね。その点では「良くなった」といえると思います。まぁ,教える側の技量次第ではありますが,前の学習指導要領に則った教科書だと,知的好奇心を喚起すること自体が難しかったですから。
Posted by もずらいと at 2011年03月06日 13:43
kingstoneさん、レデックス通信のご紹介、ありがとうございました。
もずらいとさん、はじめまして、ご意見、拝読しました。

安彦先生の話を聞いた立場として、
コミュニケーションの捉え方として補足させていただきます。

新指導要領でいうコミュニケーションは、単に言語の表現にとどまらず、
自分の意思を他の人間に伝えることで、社会で何か意味のあることを
なすこととのことです。
例えば、自分のやりたいことの理解の獲得とか、それによって協力者の獲得
といった実際の行動につながることです。
また、表現の手段としては、言語以外の図や、態度なども含めてのことです。

OECDの考えに立脚していますので、社会に出てから役立つ意思伝達方法が
コミュニケーションという訳です。

その意味では、発達障がい児に関しては、絵文字などの使用もそうでしょうし、
自分が何かをやりたいことに気づかせて、それに向かっての行動を
促す、ということも、コミュニケーションに含まれると思います。

あと、細部の制限については、ご指摘の興味関心を中心にして行うことに
役立つのであれば、細部に言及してもよいのだと思います。
ただし、細部の重視によって、プロジェクト的な取り組みの時間が少なくなる
のであれば、本末転倒という意味のようです。

以上、とりとめのない話ですが、コメントまで。
Posted by gotoledex at 2011年03月07日 08:00
gotoledexさん、コメントありがとうございます。

|新指導要領でいうコミュニケーションは、単に言語の表現にとどまらず、
|自分の意思を他の人間に伝えることで、社会で何か意味のあることを
|なすこととのことです。

おお、それはいい!
Posted by kingstone at 2011年03月07日 08:37
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