という場合、私なら
チャーーーンス!!
と思います。学校や教育委員会側が「通常学級で」とおっしゃってると思われます。つまり「特別支援学級」とか「加配」という形とかで人件費は出せない、人手は出せない、ということをおっしゃっているわけです。
実のところ、「理解」がないまま「人手」で解決しようとしてまずくなった例はいっぱいあります。「人手」があるから、とりあえず「本人にわからない状況」でも、そばにいる人が「音声言語で指示し続け」それでだめな場合は「手を添える」「手で押さえる」「手で引っ張る」「手で押す」などでとりあえずその場をつくろって(いるように見える)すます場合がおうおうにありますから。
もちろん「理解」があった上で「人手」があるのはおおいに結構なのですがね。しかし、なかなかそれがむつかしいのも事実です。「お金が無い」というのも現実としてあるでしょうから。
で、あるなら、現在の通常学級担任や学校全体に「理解」をもとめ手立てを講じてもらったらいいのじゃないか、と考えます。最初は教師や学校全体が「なんで今までの通常学級での普通のやり方(たぶん音声言語一本。身振りとか表情も入るが)でダメなんだ。なんでこんの余計なこと(準備であるとか、教室整備とか)しなくちゃならないんだ」と考え、嫌がるかもしれません。しかし、そこはねばり強く訴える必要がありますし、またその教師や学校にとって、その理解をすることは、後で振り返ればものすごい財産になります。たぶんアスペルガー症候群のお子さんにとっていい環境・いい授業を考えることは他のお子さんにとってもいい環境・いい授業を考えることにつながります。
そして、「人手をかけず、環境で」本人に自立的に動いてもらうことをするのは、結局、本人・周囲の人にとってとてもいいことです。(で、本当に人件費のことから考えたら馬鹿みたいに安い)
障害特性の理解
で、まず教師や学校にアスペルガー症候群の人への理解と対応方法を学んでもらう必要があるのですが、そのためにはこちらの冊子を手に入れることをお勧めします。1冊50円ですが、無料でPDFファイルをダウンロードすることもできます。
「〜知って下さい〜自閉症の子どもたちの支援」

無料のPDFファイルはこちら
http://www.geocities.jp/alcion_hoshi_no_ko/sapport/jihei-shiori.htm
えーーっ、うちの子自閉症じゃないし・・・と思われるかもしれません。しかし、この冊子を発行している団体は、もともとカナータイプの自閉症のお子さんへの支援から出発しているのですが、会員さんにはアスペルガー症候群のお子さんの保護者も増えています。
また、ある学習障害のお子さんのために発足したはずの団体が、現在、カナータイプの人の保護者を(学者や実践家でなく)を招いて講演会をすることもあります。
つまり、「支援」の考え方はアスペルガー症候群の人にでも、自閉症の人に対しての支援の考え方が、非常に役に立つのです。学習障害と従来(今はどうかわかりませんが)言われていたお子さんの中に、多くのアスペルガー症候群の人たちがいたことも事実です。(実のところ、「自閉症」という診断名を出すと保護者がショックを受けるから他の診断名にしておこう、みたいなこともあったりするので)
で、まあこの本を持って行き担当教師・教頭・校長・養護教諭(保健室の先生)・特別支援学級教師・特別支援教育コーディネータに渡して読んでもらう。これで6冊。300円です。(PDFを印刷しても良いのですが、手にとって読んでもらうには冊子のほうがいいかもしれません)
もちろん「自閉症」を「アスペルガー症候群」に読み替えて読んでいただくように伝えておきます。
結局のところこの冊子に書いてあることも「障害特性の理解」と「視覚的・具体的・肯定的に伝える」、ということにつきると思います。(「具体的」という言葉は使われていません。しかし内容はそういうことです。)
例えば音声言語で指示するとしても
「それちゃんと置いてね」ではなく
「コップは机の上の◯印の上に置いてね」
と伝えるとか。音声言語でも「具体的な映像が頭に浮かぶ」ように伝えるわけです。
どんな方法で伝えるか
次にすることは、では「視覚的・具体的・肯定的」に伝えるには教師や学校がどうしたらいいか、ということです。
冊子の中にも、「見てわかるように伝える」「禁止ばかりでなくしていいことも伝える」と書いてあります。それを実現してもらうにはどうしたらいいのでしょう。そういう時はおめめどうの「◯×メモ帳」を使います。
◯×メモ帳

100枚綴りで315円です。
人間、実のところ「これしちゃだめ」「これはできない」はすぐに伝えられるのに、「これしていいよ」「これはできるよ」を伝えるのは忘れがちなものです。このメモ帳があると「あっ、同時に伝えないといけないんだ」ということをすぐに思い起こさせてくれます。なおおめめどうの「メモ帳類」について、私はいつも「こうやったらええ、と気づいたらその場で白い紙に書いてしゅっーしゅっーとできる」みたいなことを書き、それもある程度事実なのですが、それは「わかっている人」の場合の話です。今やって頂こうとしているのは「あなた」ではなく、詳しくない担当教師・教頭・校長・養護教諭(保健室の先生)・特別支援学級教師・特別支援教育コーディネータに対してなわけです。ならば、こういう「きっちっとした形のある」商品、しかもリーズナブルな値段(というか安すぎるかもしれない、と私は思っていますが)の商品があることは強みです。
また、ほんまのところ「わかっている人」でも、いちいちその場でこういうメモを作るのはめんどくさいことです。あるもんがパッと使えたらそれにこしたことはありません。
なお、こういうものも最初は保護者が学校に持っていって使ってもらう、ということが必要かもしれません。しかし、「役に立つ」「必要だ」と学校側が考えるようになったら、学校に備えておくべきもの、として学校の「消耗品費」で購入してもらうようにして下さい。入れておくにはホームセンターなどに売っているレターケースが便利です。
また、「◯と×」だけでなく、「なぜそうなるのか」の理由を説明しないといけない時もあるでしょう。そういう時はおめめどうの「どうしてメモ(別名おにぎりメモ)」や「四コマメモ帳」を使います。
「どうしてメモ(別名おにぎりメモ)」

100枚つづり。315円。
ほんとうは別名は「氷山メモ」と言います。「氷山モデル」というのに基づいています。氷山の水面に見えている部分は、水面下の見えない大きな部分にある理由によるんだ、というわけですね。なぜ「おにぎりメモ」と私が呼ぶかは、見ていただければわかると思います。

これは自閉症のお子さんに、「台風で学校がお休みです」を伝えるために描いたものですが、アスペルガー症候群のお子さんなら字だけで伝えることが可能かもしれません。(しかし考えてみれば、学校教育は、新1年生はまだひらがなも読めない、ということを前提にしているはずですが。だから国語で「ひらがな」の勉強から始めるわけですし)
「四コマメモ」

50枚つづり。263円。
これは、起承転結のあることがらを伝えるために使います。

これは雪の日に、いつもの自動車でなく歩いてバス停まで行ってスクールバスに乗ることを伝えたもの。
またアスペルガー症候群のお子さんは、音声言語が出ているように見えても、誰に向かって言ったらいいのか方向性がわかっていないことがあります。私が直接目にした例では、校外学習の列で周囲の子たちがぺちゃくちゃおしゃべりしていたら、うるさいのが嫌いなそのお子さんが人のいない方に向かって「うるさいなあ!!」と怒鳴っていたり・・・このお子さんは勉強は結構優秀でした。そんなお子さんでもそんなことがあるのですね。そういう誰に向かって伝えるのか、をはっきりさせてあげるには「おはなしメモ帳」がいいです。
「おはなしメモ帳」

100枚つづり。315円。
また、アスペルガー症候群のお子さんは、他人に自分の気持ちなどを伝えるのが苦手なこともあります。このメモ帳を使うと、自分で「言いたいことが字や絵で見える」という点で伝えるのが楽になることもあります。
また「やりとり」を目に浮かべるように伝えたり、他人のその時の気持ちを伝えたりするのに「おはなしツイン」が便利だと思います。
「おはなしツイン」

100枚つづり。315円。
これは学級集団など、人が多くなると1人の絵でなく、たくさんの人の絵を描かないといけなくなるかもしれません。その時は白紙に手書きして下さい。こういうやり方はコミック会話と呼ばれます。
ここまでは、ほぼ「アスペルガー症候群のお子さんにどう伝えるか」を中心に書いてきました。(おはなしメモ帳とおはなしツインは本人からの表現にも使えますし、おおいに使って頂きたいですが)しかし、本人に表現してもらう、本人に選択してもらう、ということが大事になってくる、という点は頭に置いておいて下さい。
教室環境整備
教室環境についてです。
どこの教室でもカレンダーは置いてあると思います。アスペルガー症候群のお子さんが在籍するならば、是非「巻物カレンダー」を掲示してあげて下さい。7曜で別れたカレンダーよりも横長で続いたもののほうがわかりやすいです。大なら1月分が231円です。たぶん他のお子さんにもわかりやすいでしょう。

昔から、このようなものは、いわゆる健常と呼ばれるお子さんのクラスでも「卒業式まであと何日」とかの掲示に、6年生でも作られて来ました。しかし、そんなこと、誰も実践報告としては書き残していないでしょうが。そんなこと、何でもないことだと思って気にもとめていないと思います。健常なお子さんだってわかりやすいのですね。
時間割について。時間割もごく普通にどの教室にもあるものです。その日の授業の予定がわかりますね。しかし、これも普通は月・火・水・木・金と一緒に提示されています。これは1日ずつ別のものがあった方がいいです。もし、教室の前の提示がむつかしいというのなら、そのお子さん一人のために手元における時間割を作っておけば良いでしょう。(これはスケジュールですね)
そのために、おめめどうには「みとおしメモ帳」80枚つづり。263円。とか「みとおしビッグ」50枚つづり。263円。とかがあります。

この写真は「みとおしメモ帳」と「みとおしビッグ」を一緒に撮ってるもの。ただし、これらは「文字・文の使用ができる人向き」かもしれません。小学校新入学のお子さんなら、別の絵や写真も入ったものを作られたほうがいいかもしれません。
落ち着ける場所について。
アスペルガー症候群のお子さんの場合、教室のたくさんの人の刺激、ざわつき、ひしめき、などが耐えられなくなる可能性があります。そんな時に刺激の少ない所に移動することができることが大事になります。これは教室の後ろに「ダンボールハウス」を作ってそこに入る、というのもいいかもしれませんが(実際にそういうものを勧める方もおられる)しかし、ダンボールというのは見た目があまりにもあまり、かもしれません。(狭い空間を好む、という場合もあって、本当にいろんな意味で良い場合もあるのですが。もらって来ればタダだし)
でも、やはりホームセンターなどで、安いパーティションを買って来る、安いカーテンを垂らして区切った空間を作る、などの方がいいかな。また廊下にそういう場所を設置する場合もあります。
それから空き教室を使ったり、特別支援学級を使わせてもらったり(在籍していなくても、使うことは可能です)、校長室を使ったり(この場合、来客が多いのが難)、保健室を使ったりしている例があります。
これはお子さんから「どこそこへ行きたい」と表現してもらえるようにするといいですね。この表現してもらうのも「音声言語」「おはなしメモ帳」「カード」などいろんな手立てが可能です。音声言語を使ってもらえたら便利ですけど、本人が使いやすいものにすべきです。
時々、こういうことをするのを「甘えている」「がまんが足りない」「さぼりや」と考える教師がいますが、そうじゃないんだ、感覚的に耐えられないんだ、ということはお伝えしておいた方がいいと思います。
授業について
もともと小学校では学年によって、授業で使う言葉が違います。当然ですね。6年生にはより複雑で抽象的な言葉が、1年生ではより単純で具体的な言葉が使われます。アスペルガー症候群のお子さんに対しては、同じ配慮を個人的にすればいいだけのことです。あるいは音声言語でわかりにくければ、文字や絵を添える。
あと、授業の中で「いいところ」を見つけ、周囲の子供たちに知らせていく、ということも大事でしょう。よくあるのが「字はよく覚えている」「地図は上手」「計算はよくできる」など。そういうところで褒められれば、本人も嬉しいし、周囲の子どもたちも「◯◯君、すごい」とか思ってくれます。
あと保護者は教師に過剰適応の問題を伝えておく必要があります。教師は知っておく必要があります。例えば「運動会」や「音楽会」などの練習の時、一度練習を通して、「はい、ではもう1回最初からやってみよう」なんてことはよくあります。しかし、アスペルガー症候群のお子さんの場合、こういう時、「えっ、もう終わったはずなのに、なぜなんだ!!」と混乱することがあります。やっかいなのは、授業中にそういう混乱を見せずに家に帰ってから混乱することがよくあること。
教師は授業場面で問題が無いので、保護者から「学校で何かあったんでしょうか?」と尋ねても、教師は「いえ、学校では何も問題はありません」と答えがちです。実際、授業の現場としてはそうなわけです。そのため学校は「家で何かまずいことがあるのではないか」と逆に疑ってしまうことがあります。
これもアスペルガー症候群の特性を知っていれば何のことはないことなわけです。そのお子さんについては1回終われば別室で休憩とか、いや3回はやる、とか、それも本人に選んでもらってあらかじめ約束しておけば、いいことです。(あらかじめ見通しが立てば、ずいぶん耐性が上がる)
この過剰適応の問題は、こういった「運動会」や「音楽会」練習だけに限りません。いろんなところで、それが問題にならないか注意深く見ていくことが大事です。とにかく「学校でいい子にしているから」と安心することはできません。もちろん過剰に心配することもありませんが。
IEP(個別支援計画)とか連絡帳とか
本来、特別支援教育であればIEPを書くのは当然ですが、しかし「通常学級相当」と判断され、人的サポートもつけない、という場合、IEPも作ってもらえない場合もあります。
その時はサポートブックを作って持っていくのも手です。本来サポートブックは、「初めて会ったボランティアさんにとりあえずお子さんとのつきあい方をわかってもらう」というものであり、学校の教師はそんなレベルはクリアしていなければならないのですが、実際問題として担当教師・教頭・校長・養護教諭(保健室の先生)・特別支援学級教師・特別支援教育コーディネータは「わかっていない」という前提で考えていった方がトラブルがありません。
サポートブック
おめめどうのハルヤンネさんの作ったサポートペーパーのひな型はこちら。
サポートブック(サポートペーパー)のひながた(おめめどう)無料
もちろん、学校での場面は日々変わっていき、サポートブックの内容は教師自身がそれに合わせて更新して、あるいは考えていく必要があります。
また日々の連絡、やりとりは、連絡帳を利用しますね。連絡帳はどこでも当たり前に存在します。こつはできるだけ短く、できれば伝えることは1日1個にしていた方がいいと思うのですが。教師もいきなりたくさんのことを言われても頭に入らないと思うので。
おめめどうにはこんな物もあります。
e☆テキスト 連絡帳の書き方 300円
印字したものもありますが、ネット環境が使えるならe☆テキストでダウンロードできます。200円。
http://www.dl-market.com/default.php/manufacturers_id/213
もひとつこんな物もありますね。
新しい環境に進むにあたって 200円
DVDは
新しい環境に進むにあたって 2980円
あと参考になりそうな本をあげると
いろんなケースが載っていますので、当該のところだけコピーして先生のところに持っていく、という使い方もできます。
しかし「はじめに」でも
「ちなみに、本書で紹介した支援方法は、あくまで例にすぎません。実際の支援の方法は個々の子どもによって、またクラスのありようによって異なります」
と書かれているように、現実には一人ひとりの担任が頭をひねらないといけません。それは当たり前のことですね。また、この本も、本来、学校で購入して置いておいて欲しい本です。
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ネットショップ
携帯ネットショップは携帯からomeme@am.mdに空メール送信するとおめめどうURLが送られてきてショップに行ける。
一度に書いてしまうと、「うへえ、えらいこっちゃ。こんなことできひん」と保護者も教師も考えてしまうかもしれませんが、ひとつひとつはすごく単純で簡単なことです。順番にひとつずつやっていくと良いと思います。そして繰り返しになりますが、人件費をかけるより、よっぽど安く効果的なことです。
アスペルガー症候群のお子さんにグッズを使ってもらう時に
特別支援学級で在籍数は増えるのに人手もお金も増えない場合