いやはや、引用したいところが多すぎてなかなか進みません。
1.カロライナ生活・学習センター Carolina Living & Lerning Center (CLLC)
「CLLCは1990年に開所した自閉症の成人のための入所施設と職業支援施設を兼ねたモデル機関で、職住接近のサービスを提供している。3万2千平方メートルの広大な敷地に、2つの居住棟、作業棟、倉庫などがあり、野菜畑、ハーブガーデン・花壇・温室などが点在する構造となっている。」
でかい。約1万坪。でも東京ドーム(4万6755平方メートル)のほうがでかいんや。
「1983年にCLLCを開設する準備が始まった。」
それでも7年かかっているわけですね。作るのはなかなかたいへんです。
で、たぶん昔のそこの所長さんが言ったエピソードがこちら。
「TEACCHと人間性」の訂正
2.就労支援プログラム
概要
ジョブコーチ
「TEACCHの就労支援プログラムのスタッフは約25名、そのうちジョブコーチは約20名だ。直接TEACCHが関与するジョブコーチを利用して働いている自閉症の人は300人程度であって、それほど多くはないかもしれない。
ジョブコーチ制度そのものはTEACCH独自の制度ではなく全米で行われている。ノースカロライナ州内にもTEACCH以外のジョブコーチを行う機関が多数ある。」
TEACCHのジョブコーチ1人あたり、15名の方を担当していることになります。結構たくさんの方のサポートをしているのですね。
就労支援プログラムの必要性
「プログラムの予算の8割が健康保険システム(※メディケイド)から、あとはノースカロライナ州や連邦予算から出ている。全体で80万ドル(約1億円(kingstone注・今日だと6800万円))、うちノースカロライナ州からは約13万5千ドルの資金援助がある。この資金を就労支援や生涯にわたるサポートに使う。」
う〜ん、6800万円とすると少ないですね。ノースカロライナ州は840万人の人口で大阪府と同じくらいだから。
大阪府の作った「「虐待はアカン」大阪府がテレビCM 5局で9日から」のCMが9800万円とか。
就労支援の形態
「TEACCHでは次の四つのモデルを採用している。@1対1モデル、Aモバイルクルー、Bサポート共有モデル(シェアドサポートモデル)、C自立型モデル。」
アセスメント
アセスメント後の支援
まとめ
「就労することのメリットは多い。何よりも本人が自己効力感を持てるし、自由に使えるお金が手に入るということも成人が成人らしく生きるために好ましいことだろう。
日本の学校教育では就労するためには『〜ができなければならない』『〜などの癖は就労までに矯正しなければならない』といった『ねばならない』が主流のような気がする。しかし、自閉症の人は知的なレベルもさまざまだし、こだわりの強さやコミュニケーションの能力もさまざまで、『就労するためには〜しなければならない』といった考えでは無理なことを強いるような教育になりがちである。」
例えば「大きな声で挨拶ができる」とか。挨拶はもともと苦手な場合が多いし、またできたとなったら「いつでもどこでも大声で」になったりとか。もちろん適切な挨拶はできればそれにこしたことは無いけど、どうでもええっちゃどうでもええ。
3.教育との連携
概要
自閉症の子どもの成功を助けるための支援
「機能の高い自閉症児は、一見適応しているように見えても、実際には非常にストレスがかかっていて、これ以上受け入れられないという限度まできているときがある。そんな場合、小学生なら教室の後ろでテントに入るなどで安定することもある。高校生なら、5分間でもメディアクラス(インターネットなどが使える教室)に行って、また戻ってくるということもできる。」
これは私も「http://ameblo.jp/kingstone/entry-10521957422.html」でも提案していることでもあります。また現在の日本の学校でもいろんなところで様々に取り組まれているようです。
TEACCHと学校の関係
「自閉症スペシャリストは教育局の職員で、TEACCH部のスタッフではない。しかしTEACCHセンターとは密接に連絡している。」
「自閉症スペシャリストはTEACCHのみでなく、応用行動分析(行動療法)など他のメソッドを使うこともある。しかし構造化は基本であって、子どもを支援する際にはまず教室に行って、子どもが気が散りやすいような教室構造になっていないか、席の位置は適切か、視覚的にわかりやすく子どもに情報が伝わるような構造になっているかなどをチェックする。自閉症の子どもを指導する限り構造化は欠かせないと、校区の自閉症スペシャリストは考えている。」
「かんたんな解決策を求める教師も多いが『はい、これが答えです』とマニュアルを取り出せるわけでない。状況に応じて、こちらのメソッドから一部、あちらのノウハウから一部ということになる。」
ですねえ。
教師の研修の重要性
「教師の資格を取るために、自閉症に関する詳しい知識や経験は必ずしも必要ではない。『自閉症をわかる教師は空から降ってこない』とよくいわれる。自閉症のわかる教師を育てるための研修は非常に重要である。」
そう思います。ただし、教師になる学生に自閉症に関する授業を1コマ取ることを必須にする、とかいうんじゃないと思います。現場に出て、困ったら、あるいは自閉症のお子さんと関わることがわかったらその時点でトレーニングセミナーを受けることが大切かも。本文の中でも、2デイズトレーニングや5デイトレーニングのことが書かれています。私の体験はこちら。
TEACCHの2日間セミナーへ
過去の記事1(TEACCHの5日間セミナーにて)からのあれこれとか
教師の配置
通常高校の中の自閉症クラス
「日本では高校になると特別支援学級はなくなり、特別な支援を受けようとすれば実質的に養護学校のみが選択肢になる。この学校区には普通の高校の中に併設された自閉症クラスが2クラスある。」
日本の高校でも自閉症クラスでは無いですが、特別支援学級が作られるような流れではあるようです。
「教師は一度たてた指導計画の改変を常に行うべきだ。」
「生徒の課題を作るときには、生徒の長所と達成できない点をいつも考えて工夫する。
たとえば、文字が苦手な生徒が、色のマッチングが得意だとする。その場合、文字に色をつける。そうすることで文字の形にも興味をもつかもしれない。今ある能力の上に積み重ねることで、新しいことを少しずつ教えていく。色の分類ができない場合、同じ色のものを箱に入れることから始める。」
私がやった例は
自閉症の人が「字」「単語」「文」が使えるようになることについて
あと本文にはポケモンを使った例も出てきます。私もポケモンはいろいろ使いました。
まとめ
「TEACCHはもともと臨床心理学者や精神科医が『治療』の対象としていた自閉症の子どもを『教育』の対象としてとらえ直した。」
「TEACCHは他の領域の手法も参考にしながら、自閉症の子どもに適した教育方法や学校とのよりよい連携のあり方を、今後もオン・ゴーイングで模索していくだろう。」
4.メンタープログラム
「メンタープログラムのメンターは、プロフェッショナルではなく保護者がなる。」
「メンターになる人は自閉症の子どもを持つ保護者であるが、保護者なら誰でもよいというわけではない。TEACCHのメンタープログラムであるから、TEACCHプログラムに子どもが参加した保護者、つまりTEACCHセンターのスタッフが人となりをよく知っている人の中から、子どもへの対応が上手で周囲の人ともトラブルなくつきあえる人、地域の情報をについてよく知っていて、自分の子どもについて話すことに抵抗がない人などが条件になる。」
「メンターは48時間以内に電話をし、家族が正式なサービスを受けるようになるまで定期的にコンタクトを取ることになる。メンターのコンタクト量は家族のニーズによって異なるが、メンターは最初の電話から1〜2週間後にもう一度電話をする。」
困っている保護者に「孤立しているんじゃないんだ」というメッセージを送れるのはいいですね。
5.TEACCHクライアントのインタビュー
●先の見通しがもてた
●有意義だった母親同士の交流
●息子は自立をめざす
「マイクは通常の高校の中にあるTEACCHクラスに在籍している。」
「マイクは21歳で家を出ると言っている。自分の意見をきちんと言えるようになったので数年前から先の見通しが持てるようになった。ルームメイトと一緒に暮らすこともできるのではないかと今は思っている。現在は州政府の費用でホームリビングスキルのトレーナーを雇用している。
大人になってからは、※CAP(コミュニティ代替プログラム)のサービスをメディケイド(P112参照)で購入していけばよいと思っている。」
6.TEACCHと他の組織との連携
自閉症グループホーム会社 Group Homes for the Autistic, Inc. (GHA)
「GHA(自閉症グループホーム会社)という名称からはグループホームだけを運営しているように思うが、GHAは自閉症の成人と子どものために、地域社会をベースとした統合的な社会参加支援サービスを提供するNPO法人であり、1978年に設立された。グループホームや援助つきアパート、デイサービス、自閉症学級などを運営している。」
「GHAはかなりの大所帯だ。スタッフの数は140人(内30人は管理職・事務職)で、直接支援を行っている人数は110人である。」
すごい!!
●GHAの自閉症学級
●カロライナファーム
●ファームでの仕事
●GHA援助付き就労プログラム
●まとめ
ノースカロライナ自閉症協会
●概要
●ASNCの歴史
「ASNCは、1970年に自閉症児の保護者たちによりNPOとして登録された。州レベルでも、身近な地域レベルでも自閉症の人たちとその家族の代弁者としての力を発揮している。1971年に設立に関与した保護者のグループがノースカロライナ大学病院のチャイルドリサーチプロジェクトの専門家と協働し、州政府にTEACCH部を創設するための基金を要請した。」
「ASNCがノースカロライナ州内の各地の拠点事務所を通して支援を開始したことで、CAPプログラムによる支援を受ける自閉症の子どもや成人たちが急激に増大した。CAPサービスが拡大するにしたがい、ASNCのスタッフも劇的に増加した。今では、約100名の有給職員と400名弱のパートタイム職員を雇用している。」
すごい!大阪府の人口で。北海道・東北6県を合わせた広さの中ではかなり薄まるかもしれませんが。
「また個人のアドボケイト(代弁活動)だけでなく、地域として住みやすいサービスを提供するように地域全体のアドボケイトも行っている。アドボカシーの役割は情報提供サービス(年間1万件くらい)、学校での個別教育プログラムを作成する際に、どのように担任と協働するのが効果的なのかアドバイスすることなどである。」
「メディアへの対応もASNCの重要な役割である。メディアに対して、自閉症についての正しい知識を提供している。その目的でメディア向けにメディアパッケージを作成した。また、さまざまな理由で警察が自閉症の子どもとかかわることも多くなった。警察の理解のために保護者が作った自閉症についてのビデオを州の警察に貸し出したりしている。」
「専門家との連携についてはTEACCHセンターとの連携を重視しているが、TEACCHセンターだけと連携しているわけではなく、他のサービスやプログラムとも連携している。たとえば、家族が構造化ではなくて行動療法を望んだときはその家族に行動療法のサービス機関を紹介する。最近はさまざまなアプローチを試す家族が増えてきているし、学校の教師もいろいろなプログラムを組み合わせて使うようになってきた。」
「保護者のメンタープログラムも重視し、TEACCH部のメンタープログラムはASNCが資金を半分提供している。診断されてまもない子どもを持つ保護者のグループから、学校から就労に移行する年代のグループまでさまざまなニーズに応えている。」
「全国的な大規模な自閉症の研究会へ参加したり、TEACCHの研修会、トレーニングにも参加したりもする。また、障害福祉関連の新しい法律ができたら、その研修には必ずだれかが出席する。そしてそこで得た情報を支部へ持ち帰る。」
「アスペルガー症候群の人たちの中にはインターネットで知り合ってコミュニケーションを取っている人もいる。ASNCにもアスペルガー症候群の人のためのソーシャルグループがいくつかあるし、TEACCHセンターも同じようなソーシャルグループがある。」
この自閉症協会、相当活発ですね。
小児発達サービス局(CDSA)
「ノースカロライナ州には小児発達サービス局(Children Debelopmental Service Agency CDSA)という州のエージェンシーがある。就学前の子どもに何らかの発達の問題が疑われる場合に、言語・運動・社会性などの発達の評価や、聴力・視力などを含めた基礎的な医学的評価を行い、その後の対応やサービスについて提言を行う公的な発達センターで、州内に18か所ある。」
大阪府の人口で18か所!!
「もっとも、CDSAがいつも自閉症を正しく診断できるかというと、地域によってかなり差があるようだ。早期診断を行う医師の質の向上も、今後、重要な課題であろう。」
あらま。