※このブログに書いていることは、私の関わりある法人の意見ではなく、
 あくまでも、私個人の意見です。

2010年04月16日

視覚支援することを理解して頂くために出した文書

 大昔の話です。

新年度を迎えて」の直後のことです。

 たぶん公式の、年度初めての学年打ち合わせで、Bさんに視覚支援するこ
とを新担任になった若めのベテランさんに断られたものと思われます。っ
ていうか、他の担任全部も「反論」はせずとも「使わな」かったのですが。

 そして私以外の他の担任さんは「音声言語の指示、指さし、腕を引っ張る、
背を押す」という対応になっていきます。

 もちろん、自閉症の人が幸せになるのなら、こだわる必要は全然ありま
せん。しかし

目の前でお見せしてもなかなかわかって頂けない

のように
−−−−−−−−−−−−−−−
 すると若めのベテランさんは
「自閉症の子は難しいですね。自閉症の子は難しいですね・・」
とうわごとのように繰り返し始めました。
−−−−−−−−−−−−−−−
なるのですから、なにをかいわんや、です。この文のAさんが「過去の記事
シリーズ」のBさんです。

 自信があるから、反対したのじゃ無いのか・・・


 以下、その時出した文書です。
−−−−−−−−−−−−−−−
                               日付
○年生の先生方へ
                             kingstone

 昨日は学打ありがとうございました。

 その中で先生から「Bさんになんでいきなりカードなの」という疑問が出た
のに対し、ちょっといろんな思いがわいたもので、先生にとっては「そんな
言われ方したら反論も何もできへんやん」と言うような口調になってしまい
どうもすいませんでした。
 本当に私もコミュニケーション障害の一面があります。昨年もなかなか口で
伝えられないので、こんなふうに文にしてみなさんに読んで頂いたりしました。
もし良ければおつきあい下さい。

 で、考えたのですが、ほんと外の人から見たら「いきなり」に見えるだろう
な、と思いました。

 ちょっと振り返ってみます。
 2年前の4月からBさんと同じ学年になりました。この頃のBさんは手を
引っ張れば座り込む。何かをさせようとすれば手を振り払う。また上手に
やりとりしてよく人間関係のとれた方となら比較的いろんな活動ができるが、
それ以外の方とならもひとつうまくいかない、そんなところがありました。
私となど、とてもとてもです。

 そんな中で私はBさんと「グループ別学習」の「言葉・数グループ」を担当
することになりました。最初は「とんでもない話やなあ。Bさんにそんなこと
できるわけないんちゃう」と思っていました。実は私が風疹で休んでいる間に
人選が決まっていたのです。 でもいろいろ課題をやってみるとパズルなんか
は得意なのだなあ、というのがわかってきました。しかし「グループ別学習」
の勉強に行こうと誘ってもなかなかBさんは来てくれませんでした。あっち
こっち遊び回り逃げ回っていました。

 2年前の10月に研修に行ってから「自立課題(ひとりでする課題)」のやり方
で学習に取り組み、机マークカードを使うようになりました。これは声かけも
しながら机マークカードを渡して学習する机のところにやって来るように
教える、というものです。しかしこれにしてもなかなか来てくれませんでした。
しかたないから手を引っ張って座りこもうとするのを連れて行ったりしたことも
あります。

 2年前の12月頃、中庭のブランコで遊んでいたところででいるところで渡そう
としたら、「ンッ!」と声を出し、手を「あっちへ行け」というふうに激しく
振りながらパッと離れて行ったことがありました。周囲で見ていた先生方から
大笑いされました。

 昨年の3月、教室で本を見ていたBさんに「机」カードを見せると「ンッ!」
と声を出します。また「やだよ」と怒ってるのかなあ、と思ったのですが、
本を置き、カードを手に取りました。教室から出て自分で靴をはき、一人で机の
ところに行き、封筒にカードを入れ、イスをひいて着席しました。この間、声に
よる指示はいっさい無しです。

 そして「早く課題を出せ」と言うように「ンッンッ」と言ってました。
(これはしばらく無視していると自分から課題の入ったカゴに手を伸ばし
ました)

 すごく嬉しかったです。

 この後「机」カードを渡すとスキップするように走って課題学習をする机の
ところまで来るようになりました。

 しかし、これだけBさんに「視覚」を使った手がかりが有効かもしれない、
ということがわかってもまだ私はなかなか他の部分では使おうとしていません
でした。「どんな準備をしていいかわからない」「どんな場面で使ったらいい
のかよくわからない」というのが大きな理由でした。いや、基本的に私は
怠け者だ、というこがあるのかもしれません。もっといろいろ試行錯誤する
べきだったと思いますが。

 昨年の9月になって「移動にカードによる指示を使ってみよう」とA君と
C君に試み始めました。まず「体育館へ」は全員使ってみました。教室へは
最初はA君とC君だけでした。そこで有効でしたので(一人で教室に帰ることが
できるようになった)Bさんにも課題学習の部屋から教室に戻る時に使って
みました。いくら「終わりだよ」と言っても手を引いても動こうとしなかった
Bさんが、すっと立ち上がって教室に行きました。

 また先日もお伝えしましたが、昨年10月ターザンごっこの時に声をかけても
動かない、声をかけながら手を引っ張ると反対方向に逃げようとする、そんな
Bさんに体を固定するための布を見せるとさっさと立ってターザンの台の方に
やって来ました。これは誰がやっても同じことができました。

 昨年11月22日にモップ掃除に行こうよ、と誘った時にBさんは怒って
いました。そこで写真を見せるとすっと一緒にモップのところまで来て、
モップを見るとやることがわかってモップを持って行きました。

 これまでのところを見ていた新人Bさんが「Bさんにはもっとこんなことが
必要かもしれませんね」とおっしゃいました。そしてこれ以後、新人Bさん
がいろんな写真を用意して下さいました。ロッカー、着替え、たたむ・・・
これらはひとつずつ先生が持っていて見せていました。そしてひとつひとつに
手応えがありました。

 うまくいくので新人Bさんと「何でもっと早くからやっておかなかったん
やろなあ、なんて気持ちになるね」と話し合ったものです。
(そういう意味で
私は本当に怠け者だと思います)

 またBさんの場合、ひとりでの課題学習の時は「上から下に順番にする」
ということを理解してできるようになってきていました。(これも最初は
なかなか理解できなかったようです)

 そういうことをいろいろ考え合わせ、将来の自立的な活動にむけて
「上から下」へのスケジュール形式を今年の2月頃に取り入れてみた
わけです。

 外から見れば「いきなり」に見える、カードの提示にもこれだけの積み重ね
があるわけです。またBさんのための様々な視覚支援を作られたのは最近では
すべて新人Bさんです。

 カード(と言うより視覚支援ですね。人によってはまたBさんの場合も
具体物を使った時もありますから)が有効だったことについて書きました。
しかし逆に「危険性」も考えておく必要があります。

 自閉症の方の場合「視覚に強制された行動」というものが出る場合があり
ます。「嫌なのにしてしまう」という可能性もあるわけです。それを防ぐ
ために「選択肢を用意する」「本人が本当にしたがっているのか一生懸命
感じ取ろうとする姿勢」はやはり大事なものだと思います。

 まあ、Bさんの場合、本当に嫌な時はカードを見せても放り投げます。
そういうBさんっていいなあ、って思います。

 人間関係をすごく上手に作ることのできる方の場合、こんな方法は必要
無いのだと思います。しかし「誰にでもできる方法」があって、その上で
さらにいろんな人間関係がある、それでもいいんじゃないかな、という
気持ちもあります。

 また感受性の鈍い、人間関係作りの下手な、そんな私でもやりとりできる
方法がある、そんな私の存在も許される、そういうことであってくれたらなあ、
という願いもあります。


posted by kingstone at 19:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 特別支援教育や関わり方など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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